君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十三話「追憶の破片」 

2012-03-25 02:23:36 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十三話「追憶の破片」

  Messiah・Shangri-La
 太陽系、第3惑星地球の衛星「月」で、ジョミーが消えてから約半年が過ぎた。
 ソルジャーズのジョミーが代役を務めつつ、休養する為、その公務の数を減らしていった。
 ブルーはフィシスと共にスメールへ戻り、カナリア達と暮らしていた。
 この間、ジョミーのシャトル「ベルーガ」にジョミー宛てで定期的にスウェナから通信が入るので、気になったシドがトォニィに連絡をする。
 惑星ノアに来ていたスウェナとトォニィが会う事となった。
 彼は、ジョミーの今の行方不明の状態を話、彼女からはある事実が知らされた。

  Noah・現在
 それからまた数ヶ月後
 ジョミーがスメールで倒れてから約一年。
 惑星ノアにある育成都市からキースへ連絡が入る。
「今朝、町中で保護された子供がいるのですが、その子はどこにも登録のされていなくて、記憶が無く、キース総裁の名前しか覚えていないのですが…」とその対応に困っているとの事だった。
 キースはその子供の映像を見ると午後からの予定を全てキャンセルしてその都市へと向かった。
 子供が収容されている保護施設へと着くとすぐにその子に会わせるようにと言った。
 施設での検査中だったその子を遠くから見るガラス越しの対面となったキース。
 次の検査を待つ姿を見て「この子ですが、ご存知ですか?」と職員に聞かれた。
「知っている。何故ここに来ているのかはわからない。が、彼の事は私が保証しよう。保護する為に必要な書類はすぐに揃えさせる。残りの検査も政府でしよう。すぐにでも引き渡してくれ」と言った。
 大体の検査は終えていたので、その子とはすぐに会えるようになった。
 施設の医師と共にキースの待つ院長室に現れた子供。
 立ち上がる事が出来ないので車イスで移動する十歳~十二歳くらいのその子は、キースを見ると、笑って言った。
「キース」
 その声を聞いて、安心したようにキースも答えた。
「おかえり…」

 首都ノアへと向かう政府専用機の中でキースは聞きたい事は山程あるが、と前置きして、
「トォニィに知らせたから官邸に着いたら忙しくなる。今は、ゆっくり休め」と言った。
「どうして僕は、君だとこんなに甘えてしまうのだろう…」
「……」
「眠るまで傍にいて…」少年は眠った。



  時の在り処 「銀の祈り 金の願い」に続く




『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十二話「追憶の破片」

2012-03-21 02:56:08 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十二話「追憶の破片」
 
  Shangri-La
 やがて、シャングリラは三度目にワープをした。
 太陽系へと到達する。
 通常航行で後二日で「月」だ。
「キース。僕は「月」が嫌いになりそうだ」とトォニィが言う。
「だから…なのか?お前やフィシスや、僕達ミュウが地球を恋してやまないのは。いつでも、地球の為に犠牲になれるようにと、そういう事なのか?」
「そうではない。人類が人であるなら「地球」は、還るべき故郷。侵さざるべき最後の故郷だ」
「なら…人類とミュウと皆で再生するのが当然なんだろう?」
「そうだ」
「なんで、お前はそんなに平気なんだよ!」
「事は四百年前ブルーが生まれてからが始まりだ」
「だから?」
「俺はジョミーもブルーも信じる」
「もう。何もわからないよ。ブルーもジョミーも、お前もわからない」
「あいつは、俺に何も残して行かなかった」
「……」
「トォニィ、最後にあいつが行きたくない。と言った時、俺はあいつを殴った。行きたくないは本心だったと思う。だが…そう言っても、それに抗えないのなら、そこで俺なんかに弱い心を残して行ってはいけないと思った。だから…殴ってでも…」
「……」
「それが良かったのかはわからない。ジョミーが出てゆく時に振り返り「ありがとう」と言った顔は「ソルジャー・シン」だった」
「キース」
「信じてみないか?もう一度」
「信じる…か、キース。思い出した。ジョミーは…信じたら信じきる。決めたらどこまでも進む。愛がどこまでも大きいグランパ…。戦うしかなかった状況で第三の道を探し続けていた僕達のソルジャー。再び訪れた勝ち目の無い戦いに、あんたは、しっかり前を向いて進めと送り出したんだ。グランパが自分の命を懸けてでも守っただけの本当に価値のある男だったんだな、あんたは」
「それには…礼を言うべきなんだろうな…」
 キースは苦い思いを?みしめて静かに言った。
「ジョミーはずっと、自分の命を意識して生きていたんだね。僕はカリナが生まれた時、戦うのが怖くなった。今までそんな事は全然感じなかったのに守りたいものが出来て強くなるって言うけど…僕は弱くなったよ。あの子を失うのが怖くなった。それに自分があの子の前からいなくなる事も怖くなった」
「自分の命が自分だけの物では無いと気が付いたのなら、失うのが怖いと思うのは、人として当たり前の事じゃないのか?」
「お前たち軍人は守る為に戦うんだろ?それは怖くないのか?」
「守るべきモノを守る。その為に死んでゆくのは、尊い事だと思わないと戦えない。それに、軍人は死ぬ覚悟はしているが、死ぬつもりで戦ってはいない」
「僕は違ってた。ただ強いから戦ってた。自分が死ぬなんて全然…感じた事がなかった。だから、皆を守れと言われれば守るけど、ジョミーみたいに何年もずっと皆を守り続けて、今度は人類まで守ろうとして、遠い先の未来の為に自分を命を投げ出すなんてそんな…事は到底出来ない…」
「ジョミーと同じになる事はない」
「でも、それはそうだけど…」
「……」
「僕はメサイアでカリナが生まれた時にジョミーが贈ってくれた言葉の、最後の「ありがとう」を聞いて、ジョミーが遠くなっていくのを感じた。居ても立っても居られずに、セルジュと追って、そこでセルジュもありがとうと言われて…、それが僕達には「さようなら」と聞こえた。スメールでジョミーが倒れた時、ブルーも言われたって、彼は遠くなっていくジョミーを直に感じてたから、まだ立ち直れていない…」
「ジョミーの言葉だが、俺は「さよなら」とは聞こえなかった」
「何て思った?」
「行ってくる。と」
「……そう聞こえたの?」
「メサイアでの感謝の言葉に、あいつの覚悟を感じた。犠牲になりにいくつもりなど無い。自分の出来る事を果たしにゆくだけなのだと…」

 僕らが目指す未来はこうしてゆっくりとしかし確実に大きく育ってゆくだろう。
 僕らはそれを大切に育てて未来に繋げよう。
 それは、僕一人では出来ない。
 今までもこれからも皆の力が全てを築いてゆく。
 僕はこの世のすべてに感謝している。
 本当に、ありがとう…。

  月・黄昏の海
 月で眠るブルー。
 シャングリラで眠るジョミー。
 磁気嵐の中シールドを作って停泊するシャングリラ。
 三年前にキースとジョミーが来た頃より氷が大きく建物全体を包み込む青い塊になっていた。
 突き出た何本もの青い水晶、それはまるで墓標のような氷棺。
 溶けない氷がどこまでも青く青く透き通り…淡く浮かんでいた。
 シャングリラからその青い氷を見ているミュウ達が皆泣いていた。
 彼らは、その氷はジョミーの悲しみの塊なのだと言う。
 見ているのがとても辛いのだと言う。

「こんなとこに悲しみを置いてきたりするから、泣けなくなるんだよ」とトォニィが言う。
 月面に降りたトォニィが氷の中に跳ぼうとするが、強力な反発がくる。
 壊れないし、入れもしなかった。
 拒絶されるトォニィ。
 僕を拒絶するのはブルー?ジョミー?
 それとも二人共?
 ソルジャーズが協力を申し出るがトォニィはそれを断った。
「これは、苦しいのに苦しいと言えず、悲しいのに悲しいと言えなかった。ジョミーの心だ。ここは、何者も侵す事は出来ない。この僕に出来なかった事を、君達にさせるつもりは無い!」

 キースにはわからないが、能力的には多分ソルジャーズの方がトォニィより強いのだろう。
 ジョミーがクローンの二人を自分の側から離そうとしなかったのは、トォニィを守る意味もあったのかと、苦悩するトォニィを見つめた。
 そして、眼下の青い氷を見てキースは思った。
「ここで決心したのか?ジョミー」
 メサイアへミュウが旅立ち、月でブルーに再会した。
 お前はここで進むと決めたのか?
 もうあの日に答えは出ていたのか?
 なら俺のやってきた事は意味がないものだったのか?
 ブルーが俺に言った言葉。
「だが、お前なら、彼が…ジョミーが、道に迷わないようにする事は出来るだろう」
 俺はあいつを迷わないように導いて来てなどいない。
 信じると共に歩むと誓っただけだ…。
「その心のままに、愛すればいい」
 あれを、俺はどうとれば良かったのだろう…。
 人を誰かを愛するなんてした事の無い俺に、彼は何をさせたかったのか?
 結局俺はこうして何も出来ないまま、またお前を見る事になった。
 お前は俺を情けないヤツだと見ているのだろうな。
 この青い氷は…。
 キースは自分が泣いているのに気が付いた。
「泣くなんて久しぶりだな…」
 この涙は悲しみではなく後悔の涙だ。
 本当に彼を一人で行かせて良かったのだろうか?
 何をしてでも行かせるべきでは無かったのではないか?
 大切な人を死地に送り込み平気でいるやつなんて…。
 信じると言って本心をごまかしても駄目だ。
 俺はあいつを引き戻したい。
 取り戻したい。
 あの時、
「そうだね。僕は間違えていた…。ありがとう」
 そう言ってあいつは出て行った。
 俺達はこの道しか選べないのか?
 あの時、キースは閉まりかけたドアをこじ開けた。が、そこにはもうジョミーの姿は無かった。
 この俺が、先を見て進む事が出来るからと、あいつは俺を選んだのに、俺は何も出来ていない。
「最低で…最悪だ…」
 ジョミーが向かった先にブルーが居るのなら、ブルーは俺にジョミーを託すと言ったが、今度は、俺がお前に託す。
「あいつはまだ何も…何も掴んでいないんだ」


「トォニィ!大変です」
 月面にいるトォニィにシドが叫ぶ。
「ジョミーが消えました」
 その時、「青の間」には誰も居なかった。
 直前にフィシスの消え入りそうな悲鳴が皆に届き、青の間に向かったが、もうすでにジョミーの姿は無かった。


 
 続く







『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 (閑話)「ホワイトディ」2※BL風味

2012-03-16 22:51:54 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
 五章「時の在り処 」 (閑話)※BL風味

「ホワイトディ」くじ引きの続き。「小説家になろう」での「海をみたかい」の主人公、秋月海の名前を入れてみた所、見事に(?)彼を引いてしまいました…。
自分自身どうなるのかわからない展開です…(オイ…)
では、ここでしか書かないCPをほんの少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
☆カイは普通?の高校生ですので、自分と置き換える(ドリーム)として読めるかもしれない。かも。

「ホワイトディ」2
※時間軸なし 場所設定なし、関連性も全くなし。
CP-ジョミーと秋月 海(カイ)

「はじめまして」
名前は秋月海、16歳、高校1年。
カイでいいです。と、俺は自己紹介をした。
目の前の金髪の青年は、ちょっと考えてから、
「ジョミーです」と言って右手を差し出した。
このわけのわからない、未来(?)な世界でも、こういう握手する習慣はあるのかと俺は緊張しながら
彼の手を握った。
彼はにっこり笑った。
笑うとちょっと幼くなったが、二十歳歳くらいのふわっと優しい印象だった。
簡単な挨拶が終わると彼は俺を見て
「お互い、困った事になったね」と言った。
どうやら僕らは同じ心境のようだ。
いきなりくじで決まったから、と、○○してきて。と言われたのだ。
拒否は許されなく、俺は仕方なくここまで来た。
だから、もしかしたら、これは無しってなるのかもしれない。
そんな事を考えていると「君って、初めてなんでしょ?」と彼が聞いてきた。
こんな状況で見栄を張る事は一つも得は無いと思いつつ、それでも「あなたは?」と聞いてみた。
落ち着いてる感じからしても、それなりに経験があるのはわかるが…。
「あるけど…。くじだと僕が攻めなんだよねぇ。君、初めてじゃ嫌だよね?」
 と、彼が「困った」と言っていたのは、ソコか?
 にわかにこれは、ヤバイかも?と思えてきた。
「あの。見栄も意地も張りません。すみません。俺には出来ません。あ、あの、男がだからとかじゃ無くて、たとえあなたが女性でも。こういう事って、俺は、愛が…。あの…愛する人でないと…その…出来ません」と俺は頭を下げた。
「そっか、じゃ。一方的になるけど筆下ろしでもする?」
「な、なんで…そうなるんです」
 俺のさっきの恥ずかしい発言はスルーなのか?って、筆下ろしって。恋愛未経験の俺でもわかるぞ。
 このSFっぽいこの男は…。
 そんな事を考えている間に、ジョミーはこっちに向かって歩いてくる。
 もう、頭で考える暇なんてない。
 逃げよう。と身を翻すと、俺は腕を掴まれてベッドに投げられた。
「???」
 投げられた?投げられてない。
 手を掴まれて抱きかかえられて運ばれたんだ。
 それは瞬間だった。
 俺はベッドの上で、彼は俺の上に跨っていた。
 今のは何だ?と思ったが、そんな場合じゃない。
 ともかく彼の下のこの状態を何とかしないと!
 俺は彼の下から逃げつつ、こう言った。
「あの、あの。シャワーにいってきます!」

 で、俺は今、シャワー室の中だ。
「こんな所に逃げたって…何にもならない…」
 ここにはベッドルームとシャワー室しか無い。
 出て行けるようなドアも窓も無かった。
 うなだれていると、コンコンとノックされた。
「は、はい」
「あのさ、君はシャワーの使い方がわからないよね?」
 と入ってくる。
「ここに服を入れると洗濯してくれるから、それで、ここのボタンを押すとシャワーが出る。温度とかは調節されてるけど、強弱はここで。そのままで五分たつとシャワーが温風に変わって、乾かしてくれる。シャワーを延長したければ、もう1回押すと五分、また押すと五分伸びるんだ。体が乾いたら、さっきのここを開けたらガウンが入っているからね」と彼は丁寧に説明して出て行った。
 やっぱり悪い人ではないようなんだけど…。
 説明をされる間、俺は彼を観察していたが、他には何も得られるものは無かった。
 服を言われた所に放り込み。
 シャワーを浴びた。

 カイがシャワーを使い出して十分、十五分、二十分…三十分がたった。
 ジョミーは立ち上がりシャワー室をノックする。
「はい」と返事が返ってきた。
「どうしたの?」
「シャワーが止まらなくて…」とカイは言ったが、彼が自分で延長を押し続けているのは明らかだった。
「入るよ」とシャワー室のドアを開けた。
「止めるのはここに」と彼はマントの付いたコスプレみたいな服が濡れるのも構わずに、少しかがんでシャワーを止めた。
 止まってすぐに温風が四方から出てくる。
「タオルも入ってるからね」
 身体を起こした彼は、そんなに濡れていなかったのかすぐに乾いた彼の髪が、温風に煽られていた。
 明るい金髪が目の前でサラサラと揺れる様はとてもきれいだった。
「?」
 と僕の不躾な視線に気が付いたジョミーは、
「温風も五分、延長したかったら同じだから」と言って出ていった。
 俺が出るに出られずいたのは見透かされていたのだ。
 だから、三分程で乾いた体にガウンを着込むと出て行く事にした。

 シャワー室から出ると、部屋がさっきより薄暗くなっていた。
 彼はどこに?
 と見るとベッドの反対側の壁の前にガウンに着て立っていた。
 濡れたので着替えたのだろう。だけど、脱いだ彼の服はどこにも見あたらなかった。
 彼は壁を見たまま「ここに来てごらん」と言った。
「?」
 俺が壁の前まで来ると、急に壁が明るくなった。
 暗闇に慣れかけた目にはとても眩しかった。
「この壁はね。ちょうど君がいる頃の地球を見せてくれるんだ」
「……」
「僕はこれが好き」
 そう言って出したのは、海だった。
 コバルトブルーの海、悠々と泳ぐイルカの群れ。
 ゆらゆらと部屋中が海の中のようになった。
「カイ。君にもっと時間があったなら僕の船に案内してあげられるのに。僕の船はイルカの名前が付
 いているんだ」
 そう言ってジョミーが壁に触ると白イルカの群れに変わった。
「ベルーガ」と俺が呟くと、とても嬉しそうに微笑んだ。
「僕らは実物を知らないけどね」とジョミーが言った。
「……」
「君は何が見たい?」
「え、これでいいです」と答えたが
「草原とかが似合いそうだね」
 ジョミーは映像をどこまでも続く緑の草原に変えた。
 その時、俺の頭には故郷の山と川と広い水田が浮かんで居たので、彼の感じた緑の海原は俺の思いその
ままだった。
 俺はしばらくその映像を見ていた。

 そんな俺を見ていたジョミーが「君は?君の後ろに何か…見える」と言った。
 俺は思わず振り返った。
 その拍子に俺の手が壁に触れて、壁が白い雪の舞う雪原になった。
「あぁ、そんなに構えないで、はっきり見えている訳じゃないから」
「だけど…」
「君は、人じゃないモノが見えるの?」
「いえ…」
「見えるのでしょう?大丈夫だから」
「……」
 俺は何が大丈夫なんだ。何が言いたいんだ。と思ったが言い返しはしなかった。
 俺は彼を見た。
 彼は俺を見つめてこう言った。
「いい?見たいなら見てもいい。だけど、ゆっくりと僕を視てごらん。いいかい?しっかりと視てはいけないよ。そして、すぐに戻ってくるんだ」
「?」
 そう言われて、俺はジョミーの背後を探るように見つめた。
「……」
「戻って!カイ」
 俺は腕を引っ張られた。
 目の前にはジョミーがいた。
「本当にちゃんと視えるんだね。君は」とジョミーは言った。
「い…今のは何?」
「何が見えた?」
「死者の魂。沢山の…気が遠くなる程の人が…」
「そっか…」
 俺はこれ程の人を背負った人間を見た事が無かった。
 こいつは何をして生きてきて、これから何をしてゆくのだろう。
「僕が怖い?」
「いや、だけど…歯の根が合わない」
 俺は霊気に当てられて震えた。
「ごめんね。見せた僕がいけないんだ。どうか怖がらないで、こうすればもう怖くなくなるからね」
 と言って俺の手を取った。
 そして、ジョミーが目を閉じた瞬間、彼を中心に明るいオレンジ色の光が何重にも輪になって広がって
いった。
 部屋の色が、明るくなったような気がした。
 壁の映像は一面のひまわり畑になっていた。
 俺はもう震えていなかった。
 俺の後ろにいたモノも消えていた。
「…祓った…のか…?」
「ううん」
 ちょっと次元をずらしただけ。と、とんでもない事を言った。
「………」
 何だかよくはわからないが会った時から俺は彼を人ではないと思っていた。
 だけど、人じゃないモノのスケールが違い過ぎるようだ。
 俺は笑えてきてしまった。
 それで思わす俺は「ジョミーって、人ではないよね?」と聞いていた。
「んー、人だけど、ミュウと呼ばれる能力者なんだ」
 とジョミーが答えた。
「能力者…、それって怖がられてません?」
「畏れられて嫌われて排除されてたよ」
「そうですか…俺が視えるのは幽霊とか人じゃないモノで、他の皆は見えないから、ずっと気味悪がられてるんです…」
「それなのに君はその者たちを嫌ってはいないんだね」
「嫌ってましたよ。こんな力なんていらないし、見えたっていい事なんて無いって思ってた」
「何かあったの?」
「この力で友人を救う事が出来たんです。この力が無かったら、あの時、皆どうなっていたかわからない」
「救えた事が嬉しいんだ」
「後で叱られたり、前よりもっと酷い噂がたったりしたけど、ただ救えたのが嬉しいんです」
「君は優しくて、いい子だね」
 ジョミーは優しく微笑んだ。

 僕は忘れていたのかもしれないな。
 カイのような純粋な心を…。

「優しい君にご褒美をあげよう」とジョミーが俺を抱きしめた。
「ちょっ…」
「くじの事忘れてあげようかと思ったけど、君があまりにいい子だったから構いたくなっちゃった」
「くじ!忘れててください。かまわなくていい」
「でもさ、カイ、君は僕でも良いと思い始めているよね?」
「…え?」
「さっき、君の後ろに居たモノに君は僕への攻撃をしないように言ったよね?」
「!」
「僕が人じゃないとわかっているのにね」と笑う。
 ジョミーの笑顔は俺を慌てさせた。
「じゃ、あ、くじが問題で、何にかしないといけないならキスだけってどうです?…ダメですか…」
「キスしていいの?」
 そう言って笑ったジョミーから妖しい感じがしてきた。
 こ、これは、もしかしたらヤバイ事を提案してしまったのだろうかと思った。
「…キスだけなら。…ですけど」
 俺が返事をした瞬間にまた前のように俺はベッドに飛ばされていた。
 それで、彼も同じように俺に跨っていた。
「何?何で、ベッドに寝…」
「キスしていいんでしょ?」
「だから、ベッドじゃなくて…」
「ここでしか出来ないキスもあるし」

 ない。ない。そんなの、あっても…。
 俺は知らない……。
 ジョミーの声が聞こえてくる。
(キスだけじゃ…物足らなくない?)
(足りなくないですーーー)



「ねえ。カイ。ホワイトディって、バレンタインのお礼をする日なんでしょ?」
「そうですが…あ」
「気が付いた?僕達は今日初めて会ったんだから、お礼をする事なんて無い。僕達が何かをしなければいけないって理由は最初っから無いんだ」
 と、ジョミーは微笑んだ。


 ひまわりを見るときっと彼を思い出すのだろうな…。
 そう思いつつ優しい空気に包まれ二人は眠った。




  終
  



☆普通の少年のカイの性格がジョミーの手に掛かるとこうなってしまうのか…。と面白おかしく書くことが出来ました。ですが、知らないのが相手ですみませんでした。
もし、カイに興味を持って頂けましたら、カテゴリー「海をみたかい」をポチッとしてみて下さい。^^




『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 (閑話) 「ホワイトディ」1※BL風味

2012-03-14 13:57:34 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
 五章「時の在り処」(閑話)「ホワイトディ」1※BL風味

「ホワイトディ」くじ引き
☆バレンタインで書いたので、こっちも書かない訳にはいかなくなりました^^
それでCPなんですが、久しぶりに「くじ引き」で決めました。
(紙に名前を書いたのを適当に引く)
では、多分ここでしか書かないCPを楽しんで頂ければ幸いです。

「ホワイトディ」1
※時間軸 未来
場所設定、あるにはありますが…今は不明で。
CP-ブルーとジョミー(ソルジャーズの二人)年齢設定ー十七歳

「ブルー、いる?」と部屋のロック内側から解除がされるのを待ちジョミーが部屋に入ると部屋の奥から女子が飛び出して来た。
 下を向いたまま走って出てゆくその子を見送る。
 ドアは彼女を感知しないまま閉まった。
「また連れ込んでる。ここのセキュリティに入ったの?」
服がはだけたままのブルーが奥から現れる。
その姿に不快感を抱いた表情を隠さずに、ジョミーは言った。
「あまり進入してると別棟に行く事になるよ」
 と言いつつ、ブルーのデータを出し、書き換えを始めた。
「優しい弟くんを持って、僕は嬉しいよ」と言う。
「あの子は誰?」
 ジョミーの質問にブルーからの答えは無かった。
「服は一般コースの二年だったね」
 ジョミーが確認するように言う。
「名前は…何といったっけ?…今日はホワイトディだから、何かをお返ししないといけないんだろ?」
「…それでセキュリティを麻痺させたの?」
「あぁ、いいじゃないか、別に」
 チラッとブルーを見てジョミーは書き換えが終わったデータを戻す。
「ありがとう。さずが早いね。僕は良い弟を持ったよ」とブルー
「さっきから、弟、弟って。それは、ここに来る為に作った設定じゃないか。気に入らないなら僕が兄になってもいいんだよ。双子って事なんだし、どっちが兄でもいいんだから」
「何を怒っている?ジョミー?」とブルーがじっとジョミーを見る。
「だから、ブルーが弟って…」と振り返る。
 しまった…。
 僕はブルーに呑まれかけている…。
「何を気にしている?」
「僕は…君がセキュリティに…入って…まで」
「何を?」
「…ああいう事を…」
「何?」
「もう…やめて…僕は…」
「……」
「こんな…事に力を…使うなよ…」
「僕は…の続きが知りたいんだ」
「嫌だ…」
「……」
「僕は…僕は、君のモノじゃない」
 ピリッと小さな電気がジョミーから流れた。
「手強いね」
「うるさい。これ、今日の課題。明日までに提出だからね。手伝おうと思ったけど止めた!」
 カードをブルーに渡しジョミーは部屋を出て行った。
 ジョミーは自分の部屋へ戻り、机のホログラムを見る。そこには皆と映るのと別にブルーだけのが
あった。
「馬鹿だよ。全く…僕は君しか見てないのに…」
「なら意地を張らずに言えばいいのに」
 と背後から声がした。
 振り返らなくても声の主はわかる。
「どうして、ここに?」
 ミュウにこの質問は愚問だ。
 僕らはこの距離くらい簡単に跳べる。
 そして、それを誰にも気付かれる事なく出来る。
「それは…しちゃいけない事だ…よ」
 後ろから抱きしめられて、ブルーの心が伝わってきた。
「お前に会う為なら違反なんて怖くない」
「だから…僕は君のモノじゃ…ない」
「嘘を言うな。僕ら何年一緒に居ると思っている?お前と主席を争ってでもちゃんとここを卒業してやるから、もう心配するな。たとえ何が起きても、僕はお前の為に生きるから」
「…ブルー、それこそ今更だよ。僕達は生まれてからずっと一緒にいるんだ。もう知ってたよ」
 そう言いながら、ジョミーは自分の部屋のデータを書き換える。この部屋には誰も居ない。と、だけど、
僕らは確かにここにいる。
「今から、僕が何をしても怒らない?」とブルーが聞いた。
「怒るかも…」
「じゃあ、怒られたら止めるからね」
 返事の替わりにジョミーがブルーの方に体の向きを変えて、その目を見つめてキスをする。

 僕らはこの世界に二人だけの存在だけど、きっと、二人なら何も怖くない。



   終






『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十一話「追憶の破片」

2012-03-12 21:53:13 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十一話「追憶の破片」

  Shangri-La
 トォニィは展望室を出て「天体の間」に向かった。
 部屋の前にはセルジュが待っていた。
「トォニィ。顔色が悪い。一度、部屋に戻った方がいいんじゃないのか?」
「月に着くまでに出来るだけ集めたいんだ」
「…今、お前まで倒れたら…」
「僕はまだ大丈夫」
「そうは見えないけど…」
「僕はさ、今まで長としてちゃんとやって来ていると思っていたけど、それはミュウの間だけで、人類の事は全部ジョミーにやってもらっていた。僕には同じようには出来ない…」
「トォニィ、俺たちは最初はいがみ合ってばかりだったよな」
「ん?ああ」
「人類とミュウの繋ぎをする前は、俺がジョミーが気に入らないと言って、お前は大佐が嫌いだと言って、全然かみ合ってなかった。それでも、こうして話せるようになった」
「……」
「だから、お前はお前でやってゆけると思う。いつもの自信満々はどこにいった?」
「わかった。少し部屋に行くよ。ソルジャーズの事を頼む」
「了解。子供の顔でも見て元気出せよ」
「うん。そうだ、セルジュ。結婚の年齢を上げるのと一緒にメンバーズエリートの婚姻も許されるようになったんだったよな?」
「ああ、でも何か条件があった…はずだが…」
「興味ないのか?」
「無いな…。若い者達は喜んでるんじゃないかな。俺はもう今更だよ」
「ふーん」
「ま、まさか俺をミュウと結婚させようなんて思ってないよな?」
「少しだけ考えた」
「俺は無理だ。俺は君たちの同胞を沢山殺しているし、それに俺は一つの所に長く居られないから、俺みたいなのと結婚したら相手にとても寂しい思いをさせてしまうよ」
「それなりには、考えてはいるようだね…。ねぇ、セルジュ。前に言ってた一緒に長く居られる事が幸せなら、その次は何だと思う?」
「それは…わからないな…」
 トォニィが彼の部屋へ向かうのを見送りながら、問いの答えの一つを、ジョミーなら答えられたような気がするセルジュだった。

  数時間後
「ブルーの意識を解析する?」
 俺がかつてかけられたあの機械にブルーが座っているを見てキースが言った。
「普通に彼の記憶を見るだけではダメなのか?」
「多分、彼はクローンだから普通の記憶には無いと思うから、もっと遡ってDNAまで行ってみる」
「そんな事が出来るのか?」
「僕らだけじゃ出来ないからこうして機械を頼るんだよ」
 とトォニィ。
「キース、ここが終わったら、あんたにはまだ聞きたい事がある。僕達は協力してジョミーを追うべきだ」
「…承諾しよう」
 やがてブルーの意識を探るように彼に力が加えられる。
 しばらくは何も起きなかったが部屋の隅に居たジョミーが突然駆け寄った。
「止め…て!」
 彼の全身から青い稲妻が走りうなっていた機械が止まる。
「ジョミー?」
 トォニィが押さえつけようとする。
「止めるんだ」
 と、トォニィを見据えるジョミー。
 それは、彼であって彼ではなかった。
「トォニィ。ソルジャーズを探っても何も出てはこない。彼らは僕と同じではないんだ」
「ジョミー?」
 ブルーが言った。
「何で?どこにいるの?」
 トォニィが聞く。
「彼らの中には居ない。これは自動書記だ。彼らを解析しようとしたら発現するようにしておいた。この子達を無駄に苦しめないで欲しい」
「戻ってきて。ジョミー!」
 トォニィがジョミーの腕を掴んで叫ぶ。
「トォニィ、すまない…」
 そう言うとジョミーは優しくトォニィを抱きしめる。
 その彼の背後で青い光と共に機械がショートし煙が上がった。
 ジョミーは電池が切れたようにそこで止まり、今の自分の状態が飲み込めないでいた。
 この事で、消耗してしまったソルジャーズを医療班に任せてトォニィは壊れた装置を見つめていた。
「僕は間違ったのかな…」
「ただソルジャーズが苦しむのを見たくなかっただけじゃないかな?」
 セルジュが答えた。

「もう、月しかないのか?」
 キースの部屋を訪れたトォニィは独り言のように言った。
「さっき、俺は協力する事を了承した」
「……」
「何が知りたい?」
「今は、月を教えて。ジョミーと行ったという事だったよね」
「月はブルーの遺体が安置してあるだけで、他には何も無い。ジョミーは何故マザーは、月(ここ)にしたのかと気にしていたが、その答えは不明なままだ。ブルーの体が月にあった事と、ジョミーが人類の医療船で治療された事で、あのクローン達が生まれた」
「僕らも、ジョミーのクローンは理解できたけど、何百年も前のゲノムでブルーが作られたって事には疑問だった」
 キースは四年前のペセトラでのジョミーとマザーの件を話した。
「答えはブルーの記憶にあるの?」
「ペセトラのマザーはもう何も出来ない。それにクローンのブルーの記憶を辿るのは薦めない…」
「部分だけなら…フィシスがいるし、大丈夫だと思う。でも、無理にでも…」
「そうか…。そこに何があるのか俺にはわからないが、半年前にジョミーが俺に言ったのは、自分の生まれる前のミュウの遺伝子が遺伝子レベルで自分達を守るために救世主を作ろうとしていた話とそれに関係していたブルーの事だ。、それで、その最終目的だが、ジョミーが出した答えはこうだった」
「……」

 キースの回想(半年前のジョミーとの会話)
「キース。グランド・マザーを作ったのは人間だ。全ては人類の未来の為に動いてゆくのは当たり前の事だ。ミュウは人から作られた。それを、人類の未来に組み込んで利用してゆこうとするのも当然だ。人々が忌み嫌い排除し、そうして、化け物は作られる。ミュウの力、その力が自分(マザー)を壊す程に成長したら…その大き過ぎる力は、人類の未来に使われるべきだと…」
「それで、お前をイグドラシルへ降ろした?」
「あの時点で、僕とグランド・マザーは対面する必要は無かった。キース、代理の君に言わせれば済んだ事だ。だが、そうしなかった」
「……」
「目的は、僕に自分(マザー)が倒せれるかどうかを見極める為と、僕を殺す事だった。力さえあれば、力さえ手に入れれば、僕の意思は邪魔でしかないからね。君が僕を殺していたらマザーも何もしなくて楽だったろうね」
「ミュウの力で何を…」
「そこでそのまま、僕を捕らえて地球再生へと計画が進んでゆく予定だった」
「地球再生?」
「人々は宇宙で生まれ育ち、もう地球に固執する事はただのスローガンみたいになっていただろう?後また、何百年かしたらそれも無くなるかもしれない状態で、マザーは地球を再生をしなくてはならなかった。そこに人類以上の力を持つ者が生まれたならその力を利用して…人間の力だけでは地球は再生出来ないとマザーは答えを出していたのだろうね」
「お前の人智を超えた力で地球再生を促進させる?」
「利用されて当然なんだ。僕の力は人としては無意味な程に大きくなった。この力で何が出来る?悪魔のように人々を虐殺して都市を焼き滅ぼしてどうする?星を一つ壊して何になる?そんな事をして何が出来る?ここまでの大きな力は、もう人として全く必要ないんだ」
「お前の力は破壊だけではない。地球再生は人類の悲願だ。お前だけでどうしようと言うんだ」
「キース、脅すつもりはないけれど…僕がいつまで普通で…いられると思う?」
 そう言って俺を見たジョミー。
 俺は「月」で感じた狂気を思い出した。
「ね。わかるよね。だからさ、僕の力は、もう必要ないんだよ。人にはね。でも、地球には必要なんだ」
 と笑う。
「地球の自転軸をずらすとマントルの対流が狂う。そして動き出す。荒療治だが、多分そこからが始まりで、火山活動を活発化させて大気を浄化して海を再生する。きれいな大気を作り治すんだ。そして新しい地球が生まれるんだ。地球は青く蘇る」
「それをするにはお前の力はどのくらい必要なんだ」
「全部かな?もしかしたらそれは完成させれないかもしれないし…」
「…それをしたらどうなる?」
「さぁ、消えるか、霧散か。わからない」
「……」
「とにかくさ…。僕が死んでも発動する計画だったのだから、僕には…イグドラシルの後は、ミュウと人類のその後が見れて楽しかったよ。人生のオマケのような時間は意外と濃密だった。まだ生きたいと願う程にね」


 話を聞いたトォニィは、戦艦アルビオンでのジョミーが浮かんでいた。あの時、生き延びてしまった自分と言っていた。
「ジョミー…」
 トォニィは何も言えなかった。


  続く