そよかぜから-映画

見てきた映画の記録です
ネタばれあるかも、気をつけて

ふみ子の海

2008年01月12日 | 人間/社会派ドラマ

2007年 日本 105分
2008.1.6 サロンシネマ2
■監督: 近藤明男
■出演
   鈴木理子(淡路 ふみ子)  
   高橋惠子(笹山タカ=師匠)
   藤谷美紀(淡路 チヨ=母)  高橋長英(慈光)
   中村敦夫(善吉=本家)  平田満(古川)
   尾崎千瑛(サダ)  遠野凪子(〆香)
   遠藤憲一(上田=軍人)  
   高松あい(高野りん=先生)
   あおい輝彦(高野=父)

 《story》

「本当に大切なものは、目に見えない」
「昭和初期の新潟、盲目の少女ふみ子の見た海は 
              きらきらと輝いて 運命を切り開く勇気をくれた」

貧しさゆえに、盲目の少女と母が海に入ったとき、その少女は、「海ってきれいだね」と言った。その言葉が母子に生きる勇気を与えた。1935年、戦争の足音が聞こえ始めた頃、新潟県頚城群、8才のふみ子は、盲学校の教師りんと出会った。しかし、貧しいため学校に行くことができず、本家からも援助を断られ、すすめられた按摩の師匠に弟子入りすることになった。師匠のタカはふみ子に厳しく指導していくが、ふみ子の努力は確実に技となっていくのだった。弟子仲間のサダのあたたかい心に見守られ、町中に稼ぎに出たふみ子に、おじいさんがパンを分けてくれたり、花街の〆香が客を世話してくれたり、厳しいながらも幸せな日々を送っていた。ある時、再びりんと出会い点字で書かれた書物に触れることができた。それは「ヘレンケラー」の話で、自分もいつかヘレンケラーのように勉強して力強く生きていくことを、ふみ子は夢見るのだった。そんなとき、サダが事故で死に、母親が病気で死んだ。タカは、ふみ子の願いを叶えるべく、盲学校に通わせる決意をする。

 一途な心に幸せがやってくる
自分の不幸をただ嘆くばかりなら、きっともっと不幸な出来事とそれに合うような暗くじめじめした気持ちに覆われてしまうだろう。幸せは、偶然を呼び込む一途な心から作られていくのだ。それはふみ子が生まれたときから持っていたものかもしれない。「海ってきれいだね」って、心で感じる感情の豊かさが、彼女を幸せに導いたのだろう。りんとの出会い、サダとの出会い、パン屋のおじいさんとの出会い、〆香との出会い、彼女自身が導いた出会いだと思う。それに、ふみ子自身欲がなく、勉強したいという一途さや、ふみ子自身も人のことを考えて行動する優しさをもっている。私自身、「勉強したい」という気落ちはほとんどわかなかった。楽をしたいという気持ちの方が強かった。そこがまずちがうのだろう。がんばり屋、努力を惜しまない心が、人々を魅了するし、自分を変える出会いを生むのだ。

 公式サイト「ふみ子の海」

13階段

2008年01月12日 | サスペンス/ミステリー


2003年 日本 122分
■2008.1.4 DVD
■監督 長澤雅彦
■出演 
   反町隆史(三上純一=元受刑者)
   山崎努(南郷正二=松山刑務所刑務官・看守長)
   田中麗奈(南郷杏子=南郷の娘)
   笑福亭鶴瓶(杉浦弁護士=樹原の弁護士)
   宮藤官九郎(樹原亮=冤罪の死刑囚)
   別所哲也(中森検事=樹原の担当検事)
   大杉漣(安藤紀夫=ホテル陽光のオーナー)
   井川比佐志(佐村光男=恭介の父)
   石橋蓮司(阿部所長=南郷の上司)
   崔洋一(武藤所長=南郷のかつての上司)

 《story》

「被告人ヲ処刑ニ処ス」

純一は、けんか相手を誤って殺し、三年の刑に服していた。仮釈放された純一は、実家にもどり、自分の犯した罪の影響に驚いた。そこに、服役していた刑務所の刑務官である南郷がやってきた。自分が罪を犯したのかどうか記憶をなくした死刑囚を救う手助けをしてほしいという。彼が殺したとされる彼の保護司夫妻。凶器もトラブルの原因とされる通帳も見つかっていなかった。状況証拠だけで、彼は死刑を執行されようとしていた。彼が唯一思い出した階段。純一と南郷は、その階段を捜すために山の中に入った。そして、埋もれた古い寺を見つける。そこに隠されていた秘密とは・・・。

 映画はイマイチ
先に本を読んだ。「死刑」という制度を考えさせられた。一概に賛成だとか反対だとか言えない。実際に大切な人を殺された人の立場で言うと、死刑はあって当然。でも、それを執行する立場になると、決断はできない。人を殺す、命を奪うのだから。「死刑にしろ」と言うのは容易い。実際にそのボタンを押す人は、良心があればあるほど苦しむことになる。考えるということは、本当にその立場になりきらなければわからない。わかったふりをしているだけで、実際にわかっていない。純一の立場だって、自分の大切な人が目の前であんなことになったら、いかにしてそいつらを陥れようかと必死で考えるだろう。「したたか」と言っていいのかどうかわからないが、彼と同じ行動を取ることだろう。しかし、刑期を終えて戻ってきても、それで終わったわけじゃない。新たな苦悩が始まるのだ。復習は、新たな苦しみを生むだけなんだ。自分の心を律し、人を許すことができたときだけ、安堵の終着を迎えることができる。純一が殺した男の父親は、純一に復讐しようとした。純一もその父親も同じことをしたのだ。ただ、父親の方が意地悪く見えるのは、純一が読者に近い主人公だからに他ならない。復讐の連鎖、憎悪の連鎖は、不幸をふくらませるだけなんだ。映画は暗さだけが目立ち、葛藤をおまり感じることができなかった。本を先に読んだからだろうか。

 公式サイト「13階段」