趣味の日記

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オセロー

2006-08-31 01:08:24 | Weblog
火曜日に東京日帰りで、植本潤さんご出演の「オセロー」を観てきました。
場所は梅若能楽学院会館。つまり能楽堂の舞台です。
能楽堂でシェイクスピアというのも面白かったですし、ちゃんと能の振りとかもあって、お衣装も和風テイストで、日本物好きの身には見ていて楽しかったです。
ホンモノの能楽堂に入ったのは初めてだったので、客席に入ってまずその風情にうわぁ~♪
これまで、能に興味はあれども、なかなか能楽堂に素人が一人で行く勇気はなく、普通のホールとか野外での能公演しか行ったことがなかったので、まずその能舞台を間近で見た迫力に圧倒されました。屋内ですが、ホールの中にドンと舞台がそびえ、周囲には玉砂利が敷かれ、松が飾ってある・・・。
そりゃ~これだけ雰囲気のあるところで能を観たら、迫力も風情もすごいだろうな~と思うと、やはり一度、ちゃんと能公演を観たい気分になりますね。

さて「オセロー」。
イタリアのヴェニスに仕えるムーア人将軍オセローが、ヴェニス貴族の娘デズデモーナを妻にし、キプロスへ赴任するのですが、オセローの部下イアゴー(イアーゴともいう)が、将軍の副官の地位を他人に奪われた怨みと嫉妬から、デズデモーナが副官と浮気をしているとオセローに吹き込み、それを真に受けたオセローが嫉妬に狂って破滅していく、というストーリー。

植本さんは、その陰の主役とも言うべきイアゴー役。
観に行ってよかった!飄々とした表の顔の裏に潜む深い闇を表現するのが上手い植本さんですが、ここまで鋭く妖気になって立ちのぼるような風情は、一目惚れした「アテルイ」の右大臣役以来!
正直者の仮面を被り、忠実にオセローに仕えるふりをしながら、言葉巧みにオセローの嫉妬と猜疑心を煽っていく過程に凄味があって、表情の変化から目を離せませんでしたね。
パンフレットのコメントや座談会を読むと、かなり四苦八苦したようなことを仰ってますが、苦労したゆえの透徹した感じというか、鋭く突き刺さるような迫力があって、強烈なインパクトがありました。ちょうど私の席が、植本さんの表情がばっちり見える場所だったのもラッキー☆
オセローが嫉妬のあまり無実の妻を殺し、真相を知って自害してしまったラスト、すべての企みが潰えて連行されていくイアゴーの目から、スッとひとすじ涙が頬を伝っていったのが印象的でした。
嫉妬に狂い、何もかもを失ったのはオセローだけでなく、誰よりもイアゴーが妬みゆえにそれ以外の何も見えなくなり、怨みだけを心に募らせていたために、相手が全てをなくした瞬間、イアゴーもまた抜け殻のようになってしまったのではないかと。
虚ろな目で座り込み、無表情に遠くを見つめていた植本さんイアゴーが、哀れでした。

オセローは、谷田歩さん。豪胆な将軍らしい誇り高さと我の強さ、それでいて自分がムーア人であるというコンプレックスと妻への愛ゆえの愚かさを、がっしり骨太に演じておられました。
デズデモーナは市川笑也さん。さすがというか、清楚な美貌で、無垢なお姿はデズデモーナにぴったり!殺されて横たわってる姿も、うわ~綺麗・・・と溜息をつきたくなるくらい。
オセローの副官キャシオーの市川喜之助さんも、色男ぶりはなかなか♪
演出をされた栗田芳宏さんも、自ら公爵役とキプロスの兵士役でご出演だったのですが、その兵士の姿が「パイレーツ・オブ・カリビアン」のスパロウ船長(ジョニー・デップ)にそっくり!大ウケさせていただきました(笑)。
‘嫉妬’そのものの具現として、常に舞台上には仮面をつけた悪霊がいたのですが、この悪霊はまさに能の形式を取り入れて、すり足で移動し、舞を踊ったり、オセローやイアゴーの嫉妬心を煽ったりと、人の内面の闇を表現した存在として、面白かったです。

さすが「オセロー」、休憩15分を挟んで、上演時間3時間強という長さで、観終わったあとはぐったりでしたけど(苦笑)、それでも充実した観劇でしたね。


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