大相撲の九州場所が終わって10日余りたち、全勝優勝を飾った照ノ富士への評価もほぼ出尽くしたようだ。
対戦相手に攻め込まれても、いつの間にか抱え込んで動きを封じ、力強く寄り切ったり投げ飛ばしたりする。
まさに横綱相撲とA紙が評価し、双葉山のいう「後の先」を体現しているのではないかと讃えた。
場所中何番かは土俵際まで押し込まれ、アブナイと思わせる場面もあったが、よく見るとまだまだ余裕のある体勢で簡単に逆転していた。
これを称して「負けない相撲」と表現する人もいるが、確かに照ノ富士の相撲は以前と変わってきているようだ。
事前の研究もぬかりなく、ツッパリには前傾姿勢で受け止め、はたかれても前に落ちない万全の取り口を身に着けていた。
研究といえば、相手得意の組み手に引っ張り込んで寄り切った対高安戦などは、解説者も感心していた。
まあ、格の違いというか、当然のように優勝して、優勝杯を手にした後のインタビューがちょっと面白かった。
「理想の相撲に近づいたかな?」との答えは、いつも謙虚な照ノ富士としては強気な言葉だったが、それほど他の力士との対戦に自信があったのだろう。
その中で、14日目に対戦した阿炎を挙げて、本気で相撲を取ろうと思ったとの発言があった。
阿炎は、相撲協会のコロナ対策ガイドラインに違反したため3場所連続休場の処分を受け、幕下まで下がったところから這い上がって再入幕にこぎつけた。
幕内復帰の場所で12勝1敗の快進撃、14日目に当てられたのが照ノ富士だった。
似たような軌跡を描いてきた二人だが、阿炎と比べればケガで落ちた照ノ富士はより深刻だった。
それはともかく、照ノ富士から見れば阿炎の力がどれほどのものか、本気で受けてみたいと思ったに違いない。
照ノ富士が、やる気を起こさせてくれた力士として阿炎の名前を挙げたゆえんである。
そして勝負の場面で阿炎の突き押しをまともに受け、土俵際まで押し込まれたが、徳俵に足が掛かったとたんに突き落としで逆転する。
見てるほうはヒヤッとしたが、照ノ富士は作戦通りだったと答えた。
とすれば、すでに横綱の風格が備わっている。
まだ、余裕があったのだ。
ビデオ画像を見直してみると、まだまだ・・・・という気配が見て取れる。
風格が感じられない横綱が多かった中で、双葉山の後の先を引き継ぐものとして、照ノ富士の名を記憶するものである。
そして千秋楽の表彰場面で、優勝照ノ富士と敢闘賞阿炎の間に互いをリスペクトする笑顔が見られた。
すがすがしい表彰式であった。
〈おわり〉
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