おいしい味を消したくないから
ぼくはお茶を飲まない
初めて就職した会社の社員食堂で
同期入社のその男はそう言った
意想外の独白を聞いて頭の中が混乱した
え? そんなこと考える人いるの?
緑茶の旨味に慣れ親しんできた身には
とても耐えられない発言だった
その人のせいとは言わないが
入社して一か月で退職した
紆余曲折のあった人生だが
昨夜ふとあの時の感覚を思い出した
半世紀ごしの感覚が
まだ納得のいかないまま残っていた
人間っておかしな生き物だね
こんな些細なことを引きずってきて
あと何年あるかわからない余生を
かさぶたを抱えたまま生きるのだろうか
とげが刺さったまま半世紀・・・・ふだんは忘れているのに時たま疼く・・・・ちょっと違うかな。
何とも言いようのない感覚です。