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【読書感想文】S&Mシリーズ

2007年06月06日 04時01分50秒 | 読書感想文
今回はS&Mシリーズの紹介というかまとめ。

概要:
作者のデビュー作である『すべてがFになる』から『有限と微小のパン』まで以下の10作からなるシリーズ。
『すべてがFになる』
『冷たい密室と博士たち』
『笑わない数学者』
『詩的私的ジャック』
『封印再度』
『幻惑の死と使途』
『夏のレプリカ』
『今はもうない』
『数奇にして模型』
『有限と微小のパン』

ストーリーとしては、主人公の犀川助教授が、教え子の西之園萌絵とともにさまざまな難事件を解決していくというもの。特に際立っているのが犀川助教授の知能で、どんな難事件もヒントが揃えば大抵はたちどころに解いてしまうのだ。また、ヒロイン役の萌絵は天才的な計算スピードを持ち、事件の解決についても、警察の上をいく推理を毎回披露し、なかには萌絵が解いた事件も存在する。
時間軸としては、①で萌絵が国立N大1年生の夏。⑩では萌絵は4年生の冬となっているので、約3年半の時間が流れている。
主な舞台は愛知県の那古屋市という架空の都市。

登場人物:
【犀川創平】
国立N大工学部建築学科の助教授。専門は建築史だが、その分野のコンピュータを駆使した研究の第一人者として学会では有名で、他大学からの引き抜きすらもあった。

典型的な理系人間で、自分の興味のないものには一切関心を払わない(といっても研究以外にはほとんど興味を示さないが)。⑧まで一度も有給休暇をとったことがなく、講義のない土日も大学で研究をしている。ただし朝には滅法弱い。

事件についても基本的には興味を持たず、積極的に関わろうとしないため、推理小説には珍しく事件の解決まで数ヶ月を要すこともあり、自分の推理で犯人が特定できても警察に情報提供したり、自ら犯人を捕らえるということも少ない。
他人にも興味を示さない性格だが、一部の天才科学者などの類は別。犀川が自らの意思で事件の謎に挑戦した①③⑩はそれぞれ真賀田博士、天堂博士という天才が関わっている。
ちなみにこれまでの事件の解決パターンを並べてみると

(1)自らの意思で事件の謎に挑戦・・・①③⑨⑩

(2)萌絵から聞かされたり、巻き込まれたりして事件を解決・・・②④⑤⑥⑧

(3)萌絵が自力で解決・・・⑦

厳密にわけるともっと細かくなるが概ね↑のようになる。
ちなみに(3)については、犀川の中では真相に気づいていたが、あえて萌絵に自分で推理させた。

人間関係については、両親は健在だと思われるが未登場で、妹の儀同世津子は結婚して新横浜に住んでいる。親しい友人は土木学科の助教授の喜多北斗のみといっていいくらい。過去の女性関係は不明。

萌絵に対しては、彼女の気持ちを知りつつも、価値観が不安定な年齢であることを理由にまともに取り合わないというスタンスを最後まで貫いている。ただし、一度萌絵が白血病に冒されているという嘘に騙された時は婚姻届を書いて萌絵に結婚を申し込んでいることから、少なくとも大事な人という認識はあるようだ。
また、話が進むにつれて二人でクリスマスイブを過ごしたり、初めての有給をとってドライブに行ったりと、だんだんと萌絵に対する態度を軟化させている。この2人の関係はラブコメとしかいいようのない展開のオンパレードで、それが好きになるかどうかがこのシリーズを好きになれるかどうかの分かれ目かも。

萌絵と同世代の女性からはさっぱり人気がないが(そのため萌絵をファザコン扱いする子もいる)、同年代の女性からは人気があったりする。
時々意味なしジョークというジョークを飛ばす。


【西之園萌絵】
本シリーズのヒロイン。父はN大総長で、犀川の恩師でもあった。高校生の時に両親を飛行機事故で一度に亡くし、それ以来自分の中でその事件をシャットアウトしてきている。真賀田四季などにそのことを穿り返されると非常に取り乱す。叔父が愛知県警の本部長であるため、捜査情報をリークしてもらうこともある(そしてその情報で犀川が難事件を解決することも多いため、だんだんと警察の方から犀川に情報を提供しに足を運ぶようになる)。叔母は愛知県知事夫人で、萌絵にお見合い話をよく持ちかけてくるが、萌絵は一向にとりあわない。

両親から相続した財産のおかげで執事の諏訪野と二人で裕福な生活を送っており、高級なスポーツカーを乗り回している。建築学には興味がないが犀川目当てでN大を受験し、建築学科に入学、その後犀川ゼミに所属するようになる。
頭脳は明晰で、数学、物理にめっぽう強い。高校時代の成績は常に学年トップ。ただし萌絵は一度も自分のテストの順位を確認したことがない。

記憶力も抜群で、例えば電話番号も一度聞いたら映像として記憶し、絶対に忘れない。計算能力も天才的でどんな複雑な掛け算でも瞬時に答えを出す。暗号などを解くスピードも犀川より速い。

犀川への一途な想いはあまり届いているとはいい難いが、完全にメロメロ。プライドは高く、犀川が約束の時間に遅れたときは激怒したこともあるが、だんだんと犀川に譲歩するようになり、犀川がどれだけ自分に失礼な態度をとっても腹を立てないどころか自分の怒ってる顔が見たいのだろうと曲解することすらある。もちろん嫉妬深く、犀川が別の女性と会っているだけで機嫌が悪くなる。
ちなみに萌絵の持つ車がすべてツーシーターなのは犀川と二人きりで車に乗るチャンスを増やすためである。


【真賀田四季】
5歳にして世界中から認められた超天才科学者。犀川は四季の命は人類すべての命よりも価値があると思うくらい評価している。14歳の時に両親を殺し(真相は別)それ以来孤島の真賀田研究所に住み着き①の事件を起こすまで一度も外には出ずに研究生活を送っていた。①の時点で29歳。
①の事件後、一度だけ犀川の前に姿を現す。その後⑩で再登場。ソフト会社ナノクラフトの研究所内に匿われており、社長の塙を抱きこんで犀川と萌絵にある罠を仕掛けた。⑩の事件後にまた姿を消す。
萌絵の中に自分を見、また、犀川の頭脳に興味を抱いている。


【儀同世津子】
犀川の実妹。結婚して新横浜に住んでいる。主人は未登場。時々東京に出張にくる犀川が気軽に儀同家に宿泊しにくることからもわかるとおり兄弟仲は良好。サバサバした性格。
世津子自身は雑誌社に勤務しており、取材で何度か愛知県に足を運び、事件に関わっている。
萌絵とも仲が良くメールのやりとりをよくしている。ただし世津子は萌絵と犀川が結婚する可能性はかなり低いと思っている。
⑨で双子を出産し、二児の母。


【諏訪野】
西之園家に30年勤めている執事。萌絵のためにはどんな労苦もいとわず、萌絵が犀川に手作りのケーキを作ったと見せかけるためにあえて下手なケーキを作ったりもする。ただし萌絵のわがままに振り回されることも多く、苦労が絶えない。
事件に関わったり、推理に口を挟むことはない。


【喜多北斗】
②で初登場。犀川と高校時代の同級生で、同じN大工学部の土木学科で助教授をしている。犀川の唯一の親友。無趣味な犀川のために様々なものを貸したりしている。事件にも何度か関わっている。
性格は社交的で女性関係も豊富な模様。


【鵜飼大介】
愛知県警の刑事。萌絵のファンでよく捜査情報を萌絵に教えたりする。外見は体育会系でその外見を裏切らず頭はそれほど切れない。


【三浦】
愛知県警の捜査一課長。愛知県警の刑事の中では最も頭が切れる。が、難事件に遭遇すると犀川のところに意見を聞きに行く。愛知県警の刑事には珍しく萌絵に興味がない。


【国枝桃子】
N大工学部建築学科の助手。有能だが犀川をして変人といわれるほどの変わり者。無駄口を叩かず、事件にも興味をまったく持たず(萌絵が話ても時間の無駄と切り捨てる)、必要な会話以外はまったくしない。私生活はまったく不明で、②で結婚したが誰も主人を見たことがないどころか、苗字が何になったかも誰も知らない。ほとんど珍獣に近い扱いで犀川は国枝が未来からきた可能性も否定できないとまで言ってる。ただし作品が進むにつれて若干感情を表すようになった。