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読書感想文【灰色の北壁】

2005年06月07日 17時58分30秒 | 読書感想文
あっという間に読み終わった。この作者の山岳小説といったらホワイトアウトが有名だが、そっちはまだ未読。
ちなみにこっちは短編小説集

灰色の北壁

「黒部の羆」
ストーリー:
剱岳源次郎尾根で遭難した大学登山部の矢上と瀬戸口。2人は浅からぬ因縁があり、互いに実力を見せつけようとしていた。富山県警は遭難した2人を救出するために山岳警備隊OBの通称『羆』に連絡。警察の救助が間に合わないとみた『羆』は単独で救出に行く。

感想:
読んでる最中にトリックがわかったが、それでも途中であれ?と思ったりした。
読後は良かった。本書の中では一番感動した。全体的に専門用語のオンパレードで、詳しくない人にはまったくわからない。まぁそれでも面白いんだけど。


「灰色の北壁」
ストーリー:
ヒマラヤの未踏壁カスール・ベーラを制覇した御田村良弘と、数年後に別ルートから制覇した彼の弟子で御田村の妻を奪った刈谷修。なぜか2人が頂上から撮影した写真はそっくりだった。刈谷が本当にカスール・ベーラを制覇したのかどうか…。だが刈谷はその名誉を回復することなく、登攀中の事故で死ぬ。そして意外な真実がわかる。

感想:
小説家である主人公の”わたし”が、かつて書いたノンフィクションと、現在のストーリーが交互に書かれていく。このノンフィクションが、刈谷の疑惑を提議したもの。
ヒマラヤに挑戦した男たちの歴史が延々と語られるが、ごちゃごちゃしてて整理しずらい。でも話そのものは感動した。最後の展開がびっくり。


「雪の慰霊碑」
ストーリー:
三年前に雪山の遭難事故で一人息子の譲を失った坂入慎作。彼は身辺整理をして、かつて息子が死んだ北笠山にひとりで登りに行った。かつて譲の婚約者だった多映子は、慎作の異変に気づき、譲の従兄弟の雅司とともに、慎作の捜索をする。

感想:
慎作・多映子・雅司の人間模様がメイン。意外な関係に驚いたりもしたが、いまいちインパクトが…。

読書感想文【半島を出よ】

2005年06月01日 20時49分26秒 | 読書感想文
おもしろいと評判だったので2週間以上かけて読んだ。
村上龍を読むのはこれで3冊。

半島を出よ(上) 半島を出よ(下)

ストーリー:
2011年。日本は円の暴落により経済的にも政治的にも国際社会から孤立していた。失業率は8%を越え、町にはホームレスが溢れていた。インフレが進み、預金封鎖された日本人たちは明日をも知れぬ生活を余儀なくされていた。
北朝鮮は米、韓との国交正常化の邪魔となっている反米強硬派の将校と12万人の兵を処理するべく、彼らを”北朝鮮の反乱軍”として亡命させて福岡の占領をさせる計画を立てた。それにより北朝鮮は表向き福岡占領の責任を問われずに済むからだ。
そして開幕戦が行われた福岡ドームが9人の北朝鮮コマンドによって占拠、続いて400名の先遣隊があっという間に福岡を占領し、”高麗遠征軍”と名乗って福岡の住人との共存共栄を唱えた。この事態に対し日本政府はなんら打つ手がなく、ただ福岡を切り離しただけだった。
そして12万人の兵士がやがて来ることが発表されると、福岡の住人たちは積極的に高麗遠征軍に協力するようになる。シーホークホテルに本部を置いた高麗遠征軍は意外にも、一般の商店・企業ときちんと取引をして物資を購入し、また凶悪犯罪の嫌疑がかかっている人間たちをかたっぱしから逮捕していったのも福岡人の好意を呼ぶこととなった。
同じ福岡の廃倉庫群に、世間から受け入れられない青年たちが暮らしていた。この”イシハラグループ”は、約400名の占領軍を倒すことを決意、それも途方もない方法で。タイムリミットは12万人の北朝鮮軍が福岡に到着するまで。わずかな時間しかなかった。

感想:
久々に睡眠時間を削って読んでしまった。最初の方は日本を含む国際情勢が色々と書かれる。で、それがまた面白い。万人が納得できるような近未来のシミュレーションはないと思っているので、多少の”?”はご愛嬌(例えば、日本がインフレになるなど、数千億の年金を持っている日本には考えられない)。また、北朝鮮の9人のコマンドのそれぞれの生い立ち、イシハラグループのメンバーの生い立ちなども結構おもしろい。
で、読み進んでいくうちに、このイシハラグループが北朝鮮を倒そうと決めるのだが、この動機がいまいちわからなかった。いつのまにか決定事項になっている気がしたのだが・・・。
ただ、高麗遠征軍を倒す方法が見つかったときは読んでる自分も興奮した。
綿密な取材の成果が随所に見られ、北朝鮮を知る本としてもいいと思う。また、日本がいかに危うい国なのかもよくわかる。