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【マンガ100選】その16 東周英雄伝

2006年09月30日 02時25分43秒 | マンガ100選
ミナミが高校生くらいのときに出たマンガ。内容はかなりマニアック。

『東周英雄伝』
作者:鄭問

東周英雄伝(1) 東周英雄伝(2) 東周英雄伝(3)

ストーリー:
東周時代とは中国の周王朝のうちの春秋戦国時代を指す。西暦でいうと紀元前771年から秦の始皇帝が中華を統一する紀元前221年まで。この550年間の間に登場した様々な英雄の話を毎回1話1人づつで描いたマンガ。題材はほとんどが司馬遷の史記列伝や、『戦国策』から採られている。
登場人物のエピソードはかなりおもしろいのは当然なのだが、それ以上に作画の素晴らしさが目を引く。映画のような、凝ったアングルでのコマ割りや、時代考証的にはどうだかわからないが、衣装や建築物の描写などは妥協がなく中国史マニアとしては瞠目に値するのだ。はっきりいってかなりマニアック。
この時代の中国というのは春秋時代(紀元前771~紀元前403あたり)が礼節を重んじた時代で、その礼徳によって天下を治めた、または礼徳で天下に聞こえた人物が後世に名を残した。逆に戦国時代(紀元前403あたり~紀元前221)はまさに血で血を洗う戦争と、凄まじい外交戦、そして百家争鳴と謳われた思想の時代であり、名もなき一庶民が才覚ひとつで天下の英雄となった時代である。
覚えてる限り登場人物を挙げると

〔春秋時代〕
要離(呉の暗殺者)
鉏麑(晋の暗殺者)
介子推(晋の忠臣)
申包胥(楚の忠臣)
孫武(呉の兵法家)
養由基(晋の弓の名手)
孔子(魯の思想家)
墨子(思想家)
穆公(秦の君主・春秋五覇)
桓公(斉の君主・春秋五覇)
西施(越の美女)
斉の太史(歴史を記録する官職)
隰侯重と華周と杞梁(斉の勇者)
頴考叔(鄭の庶民)

〔戦国時代〕
孫臏(斉の軍師)
王翦(秦の武将)
張儀(秦の縦横家)
藺相如と廉頗(趙の政治家と将軍)
信陵君(魏の公子)
始皇帝
屈原(楚の詩人・政治家)

だいたいこんな感じ。

感想:
宮城谷昌光の小説が好きな人なら間違いなくはまる。どれも味わい深いエピソードなのだが、特に面白いのは鉏麑。かいつまんで話すと、晋の霊公が、目障りな宰相である趙盾を暗殺しようとたくらみ、鉏麑に命じた。ところが趙盾の屋敷に夜中に忍び込んだ鉏麑は、夜明け前から仕事の準備に取り掛かっていた趙盾を見て感動してしまう。そして趙盾を殺すことは国にとって不利益を蒙ることになり、かといって暗殺しなければ君命に背くことになってしまうので自害するのだ。これを持って後世の歴史家は鉏麑を最高の刺客と賞賛する、といった感じ。
すでに絶版だろうから手に入れるのは難しいのが残念。あと続編が出ないのも残念。こういうマンガこそ売れるべきだと思うのだが。