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ゲーム攻略、読書感想文など。

読書感想文【震度0】

2005年07月25日 11時14分40秒 | 読書感想文
この作者の小説ははずれがない。短編集が多いが、長編も骨太で面白い。

震度0(ゼロ)

ストーリー:
阪神・淡路大震災が発生した1995年1月17日、N県(長野がモデルか?)の県警本部の警務課長不破が突然消えた。不破は県警幹部の中で最も人望が厚く、県警内の事情に最も精通していたため、県警本部長の椎野からも絶大な信頼を得ていた。
不破がいなくなってしまったことで、彼に内密な用事を頼んでいた椎野は困り果て、不破宅の家宅捜索を強行しようとする刑事部長の藤巻と対立。さらに不破の直接の上司である警務部長の冬木も椎野・藤巻と捜査の主導権を握って対立。本来は一枚岩であるはずのキャリア同士(椎野・冬木)の対立に加え、キャリアと地元幹部(藤巻)との対立まで起きてしまい、会議は回を重ねるごとに上下関係がくずれ罵声や怒号が飛び交うようになり情報の秘匿や命令無視の捜査が次々と行われる。誰も震災には関心を持たなくなっていた。
それぞれの捜査と、さらに生活安全部長の倉本が不倫をする幹部の妻たちに流した情報により、多くの情報が集まるが、誰もが主導権を握ろうと、持っている情報を公開しないため、会議も進まない。準キャリアの堀川は警備部長として震災の対策に3日間追われっぱなしだったが、県警幹部が内部抗争に明け暮れ、誰も不破の心配をしていない状況を知り憤慨、会議の場で持っているすべての状況を公開。
やがてある人物の登場により一気に事件は解決するが、最後は後味の悪い結末が待っていた。

感想:
ほんとに組織内でこんな対立が起きたらやばいだろうなぁと思った。サラリーマンとしては一度は上司に言いたい放題言ってみたいから、読んでてスカっとする部分もあって面白かったけど。
帯びに「警察小説はここまで進化した」と書いてあったが、たしかに警察組織そのものを舞台にしてここまで面白い小説が書けるのはすごいと思う。”落城”の異名を持つ落としの名人・城田や鑑識の鳥羽など、魅力的な脇役も多い。

読書感想文【サウスバウンド】

2005年07月11日 10時59分34秒 | 読書感想文
「空中ブランコ」がドラマ化された著者の最新作。
面白くてあっという間に読みきった

サウスバウンド

ストーリー:
主人公の上原二郎は中野区に住む普通の小学六年生。しかし父一郎は左翼の伝説の活動家で、今は組織とは縁を切り、毎日家でゴロゴロしている。サラリーマンは資本主義の手先だからという理由で会社勤めも絶対にしない。母のさくらも、かつては御茶ノ水のジャンヌ・ダルクと呼ばれた活動家だが、現在は喫茶店を経営しているごく普通の主婦。
国の存在を必要としないといいはる一郎は年金の督促に来た区の職員ともめたり、修学旅行の積立金が高いと言って学校に乗り込んだりと、家族の迷惑を省みずに色んなところでトラブルを起こす。
ある日一郎の後輩にあたるアキラが上原家の居候となった。そのアキラが内ゲバで人を殺してしまったために上原家は西表島に引っ越すことに。しかし、引越し先の住居がリゾート地の開発用地であったため、立ち退き問題でもめてしまう…

感想:
ストーリーは中野区と西表島の2部構成になっている。どちらもおもしろいのだが、中野区編では二郎の友人たちがみな持ち味を発揮して青春小説としてかなりおもしろい。西表島編では今まで働かなかった一郎が畑を耕したり、漁に出たりと、急に働き者になるのだが、おとなしかったのは最初のうちだけで、リゾート開発業者ともめだしてから本領発揮しだして面白い。

読書感想文【月に繭 地には果実】

2005年07月05日 14時19分36秒 | 読書感想文
作者は映画化される「終戦のローレライ」「戦国自衛隊1549」「亡国のイージス」の原作者。
ちなみにイージスは読んだが、ローレライは挫折した。

月に繭地には果実

で、タイトルだけだとぴんとこないが、ターンAガンダムの小説版である。元々文庫で全3巻だったものを1冊にまとめたため量がすごい。
ストーリーも途中から大幅に変更されている。

ここではストーリー紹介ではなく、原作との違いをあげていこうと思う。
【原作との相違】
・テテスがフィルの愛人
・ギンガナムはウィルゲムがザックトレーガーに格納された時に襲撃してき、しかもやられた
・ターンAの機能に瞬間移動がある
・核爆弾がテテスとロランの戦いの最中に爆発した
・アグリッパがグエンと手を組んで地球に向かうが、ハリーがカイラス・ギリで殺してしまう。しかも地球にまで届き、フィルやミラン、ミハエルなども死ぬ
・ディアナ専用のモビルスーツがあり、蝶の形をしたファンネルを飛ばす
・ターンAは2発目のカイラス・ギリが地球に届くのを防ぐが、そのままボロボロになって地球に降下、コア・ファイターのみが脱出し、本体は消滅した。その後コア・ファイターが再びターンAとして再生をはじめる
・ディアナはグエンと刺し違えて死ぬ
・ロランは最後にソシエと結ばれるっぽい

【小説版では登場しないキャラ】
コレン、ヤコップ、ブルーノ、キャンサー、メシェー、リリ・ボルジャーノン(故人になってる)、ギャバン、ジョゼフなど

【小説で明らかにされた設定】
・グエンがホモなのは幼い頃に祖父に女装をさせられたトラウマのため
・地球の大地にはナノマシンが残っており、地球の建物の電力はこのナノマシンから供給されている
・ハリーの祖先は100年以上前のギンガナムの反乱に荷担した
・アグリッパ・メンテナーは代々同じ顔に整形して、さも同一人物が何千年も生き長らえているように見せている。実際はクローン技術により歴代みんな百年ちょっとしか生きていない。初代アグリッパは発狂して自殺した
・ソシエは最初から最後までロランが好き


感想:
原作とはだいぶ違い、凄惨な戦いが地球でも月でも繰り広げられる話になっているが、これはこれで十分面白い。また、SF小説としても、細かい科学知識などがでてきて興味深い内容となっている。
一番の見所は原作にもあった黒歴史の開放のシーンか。レビル、ギレン、デラーズ、ハマーン、シャア、鉄仮面、マリアなどの演説シーンが登場し、それぞれにロランが突っ込みを入れているのが面白い。
ラストは結構感動した。
また、月に行くという目標のために何代も命を繋ぐウィル・ゲイム家、月の統治のために冷凍睡眠で命を永らえさせたディアナ、クローン技術で何千年も生きるアグリッパ(実際は代替わりしている)の三者の対比が面白い。ウィル・ゲイムは特にこの物語では重要人物。