goo blog サービス終了のお知らせ 

風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

十年ぶりの友と会う 1-2

2017-07-11 | 神奈川
その1からの続きです。

● 渋谷の呉服店

ガラス細工店を出てから、イゾルダが「ねえ、最初に来日した時のこと、覚えてる?」と聞いてきました。
「渋谷にある呉服店に連れて行ってもらったわよね。4,5階建ての建物の全フロアで着物を売っていたのよ。
リサイクル着物も売っていて、私、アンティークなものを購入したの」
「え、え~?」
彼女が着物を買ったのは覚えていますが、どのお店でだったかまでは、全く覚えていません。
イゾルダはおそろしいほど冴えた記憶力を持っており、日本での出来事を事細かに覚えています。
でも、思い出せないわー。

呉服店も、そこを目がけて行ったわけではなく、ふらふら歩いていてたまたま入ったんでしょう。
渋谷にそんなにすごい着物ビルディング、あったかしら?
チャコット(バレエ専門店)のビルならあるけれど、まさかそこじゃないだろうし。

一生懸命思い出そうとする私の横で、イゾルダは語り続けます。
「買った着物を次の(ファッション)ショーで使ったら、すごく評判がよかったから、また欲しいと思って。
今回は、ベル(猫)にかつお節、私に着物を買って帰るって決めているの!」

かつお節と着物が同列になっていますが、まあどちらも日本のものですからね。
渋谷のお店はさておき、ここは鎌倉。
イゾルダは「ここでも見つけられるかしら?アレンジするから古着でいいんだけど」と期待に満ちた目で私を見つめます。

うーん、鎌倉は私にとってもちょっとした観光地。
ここで着物を買ったこともないし。
でも、レンタル着物を利用している人は周り中にいるので、きっとリサイクル店もあるはず。

小町通を歩きながら、ネット検索をし始めたところで、さっちゃんが「あー!」と声を上げました。
「見つけたわ!」
指さした先の、2階に続く階段に、一見見過ごしそうなくらいに小さな「きもの」の看板があったのです。
さっちゃん、すばらしいわ!阿吽の共同プレイ!
みんなでいそいそと、2階へ上がってみました。

● アンティーク着物

そこは、きたの屋というアンティークの呉服店で、古い着物を売っていました。



地元の人向けのような優しいお値段に、イゾルダは大喜び。
「前に渋谷で買った時の、半額くらいだわ」
場所柄もあるでしょうし、材質にもよるのでしょうけれど、それほど着物に詳しくないので、テキトウなことは言いません。
ウンウンといって、彼女が猛然と選び出すのを眺めています。



着物と帯を合わせて2着分、選びました。
帯の一本は、普通と少し形が違っています。
「名古屋帯」だと教えてもらいました。
「おたいこを結ぶ時などにいいんですよ」

彼女に説明しましたが、あんまりピンときていない様子。
帯の結び方の名前までは知らないようです。
伝統的な着付けではなく、彼女の感性に沿った、オリジナリティあふれる帯の結び方をするんでしょう。
前の着物をコレクションで使った時の画像を、見せてもらいました。
うん、とってもオリエンタル・ファンタジーでした。(完全に日本の着付けではなかった)



● 一竹の辻が花

お店の人に、着物をたとう紙に入れてもらっている間、レジの近くに飾られていた反物を、イゾルダが撮影。
「それは初代の久保田一竹のものですよ」と、お店の人が教えてくれました。
いっちく?
イゾルダと私がぽかんとしている横で、さっちゃんは
「え、本当ですか?」と興奮した声になっていました。
良心的な価格のお店の中で目を引く68万円のタグに(わあ!)と驚きましたが、「この人の着物は、新品を定価で買うと2、300万はしますよ」とのこと。



さっちゃんは「久保田一竹!!!」と、感激しています。
染色工芸家で、辻が花染の第一人者だそうです。
確かに、吸い込まれそうに美しい辻が花。
「授業で絞りをやったけど、この人のような繊細さはとても出せないのよ」とさっちゃん。
どうやら、本当にすごい方のようですね。
山梨に、美術館もあるそうです。
残念ながら知りませんでしたが、ここで知ったし、以後勉強します!

望みを叶えて幸せそうなイゾルダと、再び小町通へと降りました。
「着物、結構重いでしょう。持つよ」と言っても、「この重みを感じるたびに、幸せを噛みしめるから大丈夫~!」と言って、買った着物を抱えています。
息子にはしっかり一着分持たせていましたが。
そんなに喜んでもらえて、良かったわ。

そして小町通りには、レンタル着物姿の女性が大勢います。
いつの間に、鎌倉は京都のようになったんでしょう。

「見て、彼女たちの着物はポリエステル製でペラペラよ。質がよくないわ」
いい着物を買えたと、すっかりごきげんの彼女。
いまにも歌を歌いながら、踊り出しそうです。

「着物も買えたし、東京に戻る?」
待って、イゾルダ、今はまだ観光の途中。
「グレートブッダはこれからよ」
「そうだったわね」
本当に、芸術家らしい彼女です。

● ポーランドの鯉

さっちゃんにお気に入りの布屋さんを案内してもらいました。
いつもなら興味津々だったでしょうけれど、なんといっても念願の着物を買った直後という間の悪さ。
心ここにあらずと言った状態でした。
どうも「ベルギーよりもお値段が高い」そうです。
フランダースレースなど、レース編みが文化の国では、もっとテキスタイルが身近なのでしょうか。



布屋さんのそばを流れる川には、大きな鯉がたくさん泳いでいました。
「ポーランドではクリスマス休暇に鯉を食べるのよ」とイゾルダ。
「鯉? ターキーじゃないの?」とっても意外です。
「違うのよ、鯉なの」
七面鳥のように、クリスマス当日に食べるのではなく、クリスマス期間中に食べるものだそうです。

「小さい頃、家にやってきた鯉と仲良くなって、名前まで付けてかわいがっていたのに、ある日その子が変わり果てた姿になってテーブルの上に並んでいたから、ショックでショックで。
あれはいまだにトラウマだわ」
わあ、かわいそう。

● サプライズ・ユー

再び鎌倉駅に戻り、今度は江ノ電ホームに入ります。
彼女たちがラッシュ並みの混雑が耐えられるか心配でしたが、平日だったこともあり、殺人的には混んでいませんでした。
それでも長谷駅で降りてからの道は細いため、列を作ってしずしずと歩いて行きます。

高徳院までやってきました。
「じゃーん、これが日本の大仏でーす」
「わあ、すごい!大きいね!こんなの、ベルギーにはないわ!」
「でしょうとも~」

イゾルダもダニエルも、口を開けて「はあ~、これは大きい!」と驚いていました。
「サプライズ・ユー!」できて、よかったわ。



● 大仏の中へ

大勢の人々の間をぬって、ぐるりと大仏の背中側に周りました。
「じゃあ、ブッダの中に入りましょう」
「『マルコビッチの穴』に入るみたい」

私が初めてこの中に入ったのは、小学校低学年くらいでしたが、入場料はずっと価格据え置きの20円!
4人分払っても、100円でおつりがくるんですよ!大仏ばんざい!

大仏の中に入り、出てくる人とすれ違いながら、奥へと進みます。
一昨年、牛久大仏の中に入って『ミクロの決死圏』気分になりましたが、それよりももっと前から、私はここで大仏内探検をしていたことを思い出します。



中には英語の説明もありました。
それを読んで「750年~!? そんな前に、こんな立派なブッダ像を作ったの?」とつぶやくイゾルダ。
「昔はパビリオンの中にあったけれど、その建物が洪水で流されちゃって、今ではブッダだけが残っているの」



● コスモクロック21

着物を抱えているので、今は良くても、あまり歩き回ると疲労が増してしまいます。
鎌倉はこのくらいにして、一路横浜へと向かいました。
乗り換えが楽なように、大船から根岸線に乗り換えます。
「あれ、BASFはもう見えない?」と窓の外を探すダニエル。
「ごめん、ルートを変えちゃった」
あれは戸塚駅のそばでしたからね~。



石川町駅に降りた時はまだ明るく、日も落ちていませんでした。
中華街で夕食を取るつもりですが、まだそんなにおなかが空いていないので、中華街を通り抜けて山下公園に行ってみます。
「横浜は初めて!」と喜ぶ二人。
私が横浜出身なので、地名だけは知っていたからです。

みなとみらいのコスモクロック21を見て、ダニエルが
「あの観覧車、前は世界一だったことがあるんだよね」と言いました。
「よく知ってるね」
「でもロンドン・アイに抜かされちゃったね」
そののち、中国とシンガポールにも抜かれて、今の世界一はラスベガスにあるそうです。

ところで観覧車って、英語で何ていうか、ご存知ですか?
「Ferris wheel」っていうんです。おもしろいですよね。
この言葉、結構発音が難しくて、なんども言ってみました。
フェリス女子大があるので覚えていましたが、言葉としては結構マイナー。
それを実際に使う日が来て、ちょっとカンゲキ~。



● 花と緑のフェスティバル

「横浜って大都市だよね。人口は何人いるの?」
いつも聞かれて詰まる質問です。
「200万?400万だっけ?」
調べてみたら、373万人でした。
外国人に聞くと、必ずすらすらと教えてくれるんですよね。
自分を含めて、日本人はこういった質問に結構疎い気がします。
もうちょっと気にしていないといけませんね。4 million people!

ちょうど今、花と緑のフェスティバル開催中でした。
水の女神像の前でチーズ。
いい感じに「横浜に来たよ!」画像になりました。



● Shot Bar ZORBA

中華街に戻りましたが、まだ夜にはなっていません。
食事の前にカフェに入ろうとしましたが、人がいっぱいだったので
「じゃあ、食事の前にバーに行こう」ということになりました。
あれ、食後じゃなくて?食前酒ってことかな?
そんな習慣がないので、ドキドキします。

「さっき駅から来るときに、良さげな店があった」と彼女。
Windjammer(ウィンドジャマー)じゃないかなと思います。



じゃあそこに行こうと、元来た道を戻って見つけたのは、Shot Bar ZORBAでした。
あれ?おかしいなあ?
さっちゃんと2人で、首をひねります。

おそらく私が道を一本間違えたようです。
でも、どこで間違えたのか、よくわかっていません。
地元民なのに、ガイドできていないわー。
彼女たちは全く気にせず「ここでいいじゃない」というので、中に入りました。

店内には誰もおらず、静か。
イゾルダはウイスキーのコーク割りを注文。
前はワインを飲んでいたイメージなんですが、
「最近はこればっかり。好きなのよ」
あとに残らないのがいいそうです。

● 青タンのわけ

お酒を飲んで、一息ついた彼女。
「この目のアザだけどね、ドライブ中に急ブレーキ踏んだら、反動がすごくて、ハンドルが目に当たっちゃったのよ。
シートベルトをかなりゆるゆるにしていたのも悪かったわ」」
と、教えてくれました。
「えー、目は大丈夫だったの?」
「直接当てたわけじゃないから大丈夫だけど、目の周りの骨を打撲しちゃって。
腫れが引いたら、今度は青くなっちゃって。
これでもずいぶん、色が引いてきたんだけど。どう?」
バーテンさんに気づかれない角度で、そっとサングラスを取って見せてくれます。
薄暗いバーの照明でもわかるほどの、痛々しい青アザ。
でもよく見ると、確かに少し黄色くなってきていました。
「大丈夫、治ってきてるよ」
「そう?この青あざがなくなるまでは、眼鏡なしでは過ごせなくて」

結構危険な思いをしたようで、視力に響かなかったのは、不幸中の幸い。
さらに、事件に巻き込まれたり、暴力を受けたわけではなかった点は、よかったです。
派手な親子喧嘩かなとも思いましたが、ダニエルだってそれなりのダメージを受けるでしょうし、この親子はとても仲が良いので、現実味がなかったので。
理由がわかって、スッキリしました。



ドリンクメニューに「ギリシャビール」とあり、目が吸い寄せられました。
バーテンダーが「マスターがギリシャ人なんです」と教えてくれました。
「この辺りにはギリシャ料理店が何軒かありますね。アテネ、スパルタ、オリンピア」
「そのアテネと同じオーナーなんですよ」

なるほど。よく見れば、フードメニューにはムサカもあります。
「それでゾルバなんですね」
『その男ゾルバ』というギリシャ映画を思い出しました。
まったりと過ごし、そろそろ夜になったかなという頃、「食事に行こうか」と出る段階になって(そういえば、どの店に連れて行こうか考えていなかった)と思い出しました。

● バーテンダーお勧め中華

お世話になったセレブ親子なので、きちんとした重慶飯店や聘珍樓あたりでどうかなと思いますが、先ほど中華街大通りを歩きながら「リカ、メインストリートのお店よりも、路地に入ったところの方が、混んでいないし食べやすいしリーズナブルだから、そっちがいいわ」と言われたばかり。
うーん、どうしよう。
以前通い詰めていた梅蘭は、昔は小さな店だったのに、今では渋谷や立川にまで店舗を増やしており、すっかりメジャーになっています。
もう少し別のところでないかしら。

するとバーテンさんが「本当に路地裏で、あんまり観光者向けじゃなくてもよかったら」という前置きで、北京というお店を教えてくれました。
「ああ、あの善隣門の隣にある?入ったことありますよ」と言ったら、
「あれは北京ダックで有名な北京飯店。あんなに立派なお店じゃありません」
違うお店のようです。

「そこは店構えも小さいし、北京ダックなんてメニューにないし、店のオヤジが頑固なので、女性や外国の方に勧めづらいところはあるんですが、おいしいです。
うちと店長同士が知り合いなんですよ」
(お店同士の交流があるのなら、点も甘めかしら)と思いましたが、「残念ながら、今年の5月に閉店してしまうそうです」と聞いて、興味がわきました。
もう食べられなくなってしまうお店なら、その前に行っておきたいわ。

● 路地で迷う

道を聞きましたが「うまく説明できない」ということで、さっちゃんに場所を調べて道案内してもらうことに。
香港小路を通り、かつての梅蘭一号店の前を通り、関帝廟近くまで来たところで、方向がわからなくなってしまったさっちゃん。
これだけ中華のお店ばかりだと、そりゃごっちゃになりますよね。
私もわからなくなってしまいました。実はお互い、方向音痴なので、ガイド向きじゃないの…。
でもせっかくここまできたからと、2人に関帝廟を見せます。
「さっき行ったのは日本の神社とお寺、そしてこれは中国のお寺」



「ワー、強烈な色」と極彩色に見とれる2人。
「全然違うのね」
「全然違うのよ」

ダニエルがさっちゃんに代わって、グーグルマップでお店を散策。
「すぐ近くだよ」

● 路地裏の北京

探していたお店、北京は、細い路地を入ったところにありました。
紹介してもらったのでなければ、通り過ぎてしまいそう。
小さすぎて、入る勇気もありません。
イゾルダたちの反応はどうかなと思ったら「お勧めなら行きましょう」と、抵抗なく入っていきました。



10人入ればもう座れない、小さなお店。
結構中華街はフラフラ散策していますが、このお店の存在は知りませんでした。
そもそも、この路地を通ったこともないし。
まだまだ未知のチャイナタウンです。





チンチン!ちょっと違うか。



● ユーリンチーとリン・チーリン
  
お勧めは油淋鶏(ユーリンチー)だそう。

「ユーリンチー!香港スターにそういう名前の人、いたよね」と言いましたが、
中国系のスターにも詳しいさっちゃんに「え~、いないよ~」と言われました。
そこで、一生懸命考えます。
「リー・リンチェイかな~」
「それはジェット・リーだよ」
「そうだった!女優さんでいた気がするんだけどなあ」
あとになって思い出しました。
『レッドクリフ』のリン・チーリンでした!
似てる~!
そんなリン・チーリンじゃなくて、リー・リンチェイじゃなくて、ユーリンチーを頼みます。



キクラゲ友の会としては、キクラゲ玉子炒めも外せません。
メニューのキクラゲを指さして、二人に「これ何かわかる?」と聞きましたが、知りませんでした。
「シャンピニョン(キノコ)だよ」と言うと「え、シーウィード(海草)じゃないの?」と、凝視します。
全くピンときていないようでしたが「よくわからないけれど、サラダによさそうね」と言いました。



あとは北京麺と水餃子。
お酒はハイボールがありましたが、「ソーダ割りよりコーク割りがいいわ」というイゾルダの希望を、お店の人は二つ返事でOKしてくれました。



お勧めというだけあって、本当においしいユーリンチー。
キクラゲも、おいしかった~。
2人も、食感を面白がって、食べています。

● 続投決定

おしゃべりしながら食べているうちに、ほかの席も埋まり、気づけば満席の店内。
料理が一段落したのか、調理をしていた店主が奥から出てきました。
「ゾルバでお店を教えてもらった」といったら、ご夫婦ともに「あそこの店長と仲がいいのよ」と言います。
「5月末にお店をたたまれてしまうそうで、残念です」と言うと、微妙な顔で押し黙る二人。
「あの人に言ってなかったかねえ」
「いやね、初めそのつもりでいたんだけど、結構周りから頼まれちゃって、やっぱり続けていくことにしたのよ」
わあ、それは朗報だわ!
2人にも伝えると「オウ、イッツグーッド!」とほおばりながら言うダニエル。

サービスで、杏仁豆腐を出してもらい、お腹いっぱいになりました。



この日はかなり歩いたので、みんなそろそろお疲れモード。
関内から帰ることにして、横浜スタジアムの広場を通って、駅に向かいます。

日本の働く女性は、子育てと平行するのが大変だという話になりました。
「ママさんたちは、働いて得たお金をベビーシッターに払っているんでしょう?それっておかしくない?」
おかしいですよー。

● 送り届ける

関内から有楽町までは一本。
銀座に着くと「ああ、もうわかるよ」とダニエル。
会えなかった初日に、けっこうホテル周辺を散策したようです。

ホテルに到着し、部屋から2人が、お土産をごっそりと持ってきてくれました。
ちなみに私は、ホテルであったタイミングで私、部屋に置いてきてもらっています。
ウォッカにベルギーチョコに、ポーランドの瓶詰ビーツに、そして彼女デザインの服!
「あちこちに穴が開いてるみたいだけど、これはデザインで、別に失敗作じゃないからね!」
「うんうん、ダメージデニムみたいな感じよね」
そうはいっても、これは着こなせなさそう~。
翌日はまたもや私の都合が悪くて、どうしようかと思っていましたが、目下日本に留学中のダニエルの友人と会うことになったそう。
その次の日の再会を約束して、お別れしました。



三越前には、様々な種類の満開の桜。まだ冬の寒さが残る町に、一足先に春がやってきました。

2日目に続きます。


十年ぶりの友と会う 1-1

2017-07-10 | 神奈川
● prologue(2017.3)

12年前、フランス一人旅の帰りのフライトで隣り合わせになり、空の上で友達になった、ベルギー人のイゾルダ。
彼女は、それから数回来日しましたが、本国での仕事が忙しくなり、ここの所ぱったり来なくなっていました。
今回は、息子を連れての10年ぶりの来日。ずいぶん久しぶりです。
とてもお世話になっているので、全ての予定をキャンセルしてでもおもてなししたい!と思っていましたが、おりしも時は3月下旬。
年度末の忙しさに加え、自分がロジ責任者となった国際会議、さらに家族の入院時期と、彼女たちの来日期間が重なってしまいました。
キャンセルできない、大人の事情ばかり。
残念ながら、滞在中ずっと一緒にはいられませんでした。

彼女は、かねてより一人息子のダニエルをよく日本に連れてきました。
透き通るような肌をした、陶器の人形のようにかわいらしい少年。
最後に会ったのは14歳でしたが、その後大学を卒業し、ポーランドで就職したとのこと。
つまり、母親はベルギー、息子はポーランドから、日本にやってくるのです。
10年ひとむかしと言いますが、長い年月ですよね。再会までドキドキです。

● 十年ぶりの来日



ドバイ観光をしてから来日した2人。
初日から私は都合が悪く、彼らと会えませんでしたが、2人は渋谷に行ったそうです。



プロのファッションデザイナーの彼女は、日本のモードチェックも欠かしません。
これが今年の流行色なのかしら?



クールな自撮り!カッコイイ親子!
ハー、なんかいろいろ違いすぎて、ため息が出ちゃいます。

● 少年が青年に

イゾルダは芸術家なので、繊細で難しいところもありますが、基本明るく華やかな人。
ほかの日本人にも会わせてあげたいと思って、さっちゃんと一緒に行きました。
私はファッションにからきし疎いですが、さっちゃんは服飾の勉強をした人なので、専門的な話がわかりそう。

十年ぶりの再会、やっぱりドキドキします。
彼女たちの宿泊先は、銀座のホテルソラリア。
ロビーで待っていると、大柄の青年がやってきました。
「ハイ、久しぶりだね!」
「ダニエル!?」
子供の頃と変わらぬキス&ハグの挨拶をしましたが、すっかり大きく成長した姿にめんくらいます。
「身長は180cm。もっと大きい人もいるよ」

男の子だし、背は伸びるだろうと思ってはいましたが、記憶の中の少年は、かわいい14歳のままなので、いきなり時を越えてやってきた実物との差に呆然。
すっかり低くなった声が、頭の上から降ってきます。

「イゾルダはおめかし中だから、待ってて」
「はーい」
いつものことなので、気にしません。
彼とお喋りしながら待つこと数分。彼女がやってきました。
「久しぶり~~!!」
お互い歓声をあげて、キス&ハグ。
彼女は全く変わっていません。でも前まで金髪だったのが黒髪に変わっていたので、すっかり変わったようにも見えます。

ひとしきりハグし終わってから「私の目を見ても、何も言わないで」と言われました。
薄暗がりのラウンジではわかりませんでしたが、明るいところへ出ると、彼女の左目に青あざができていることがわかりました。
えー、どうしたのー?
びっくりしましたが、本人に聞かないでと言われている以上は、何も聞けません。
そのため、彼女は大きな女優メガネをかけていました。

● サプライズ・ミー!

「いろいろ考えたけれど、まず希望を聞くわー。どこに行きたい?」
イゾルダに聞いても「どこでもいいわよ」なので、ダニエルに聞きました。
「じゃあ、僕を驚かせてよ」
10年ぶりの再会にしては、ハードル高いリクエストだわー。
驚かせるといったら、やっぱりアレしかありませんよね。
日本が誇る、グレード・ブッダ、大仏です!

ということで「カマクラに行きまーす」と宣言。
「なにがあるの?」とイゾルダ。
「テンプル(お寺)」
「前に行ったよね」
「え、どこだっけ?」
「とっても混んでて、赤い門があって」
「それはアサクサね!そこよりもっと遠いよ」

● 静かだから眠れる

東銀座から新橋経由で鎌倉へ向かいます。
電車に1時間乗っていくと聞いて、「え・・・?」と若干固まる2人。
普段、そんなに電車に乗ることはないんでしょうね。


辺りを見回して「電車の中、静かだね」とひそひそ話してくる二人。
「ベルギーもポーランドも、みんな大声でしゃべってて、すごくうるさいよ」
「目の前の人が寝てる!」
「日本の治安はすごくいいけど、それより先に、眠れるくらい電車の中が静かだってことよね」
そうかあ、その発想はなかったわ。



揺れる電車の中で、さっちゃんが手早く、これから行く鎌倉の地図を描いて、彼らに見せてあげていました。
やっぱり服飾をやった人は、パターン起こしもお手のものなのね?
(「違うよ!」とさっちゃん。いやいやそんなあ~)

● かつお節はマスト

「今回、ベルへの御土産を忘れないようにしないといけないの」
ベルというのは、彼らの飼いネコです。血統書つきのシャム。
「ベルはすぐに外に出たがるから、散歩させてるんだよ」
ん?散歩させてる?
「ほら」
見せてくれた写真には、猫に紐をつけて散歩中のダニエルの姿が。
「えー、なにやってるのー?」
ウサギのお散歩、うさんぽなら見たことがありますが、ねこのおさんぽは見たことありませんよ!

「前にお土産に持ってきてくれた、あの薄いのなに?ベルが見たこともないほど興奮して」
彼らの家に遊びに行った時、ベルのために、かつお節を持っていったのでした。
もともとは(海外の猫もかつお節が好きか?)を確かめたいと思ったからです。
見慣れぬ物体を前に、はじめは警戒していたベルですが、すぐに匂いに反応して、フガフガ言いながら鼻を突っ込んで、そこから離れなくなりました。
猫の好みって、世界共通なんですね~。

ねこまんまがデフォルトだった日本。
今では、かつお節を与えすぎるのは良くないと言われていますが、遠いヨーロッパではそんなにかつお節も出回っていないでしょうから、あげすぎることはないでしょう。

● 言い負かされる

4か月前にバルト三国を旅行した私。
隣国とは全く思わず(そもそもバルト三国がどこにあるのかよくわかってなかった)、フンフンと旅の写真をSNSにアップしたら、普段は静かなダニエルから「なんで?」と反応がありました。
そして今回、面と向かっても、やっぱり物言いがつきました。
「リカ、この前リトアニアまで来ておいて、ポーランドに来なかったよねー」
ああ、責められる…。

「うちの息子、おかんむりよ」とイゾルダも加勢します。
「そうだよ、なんでリトアニアなんだよ」
なぜと言われても~。
「ポーランドの方が絶対にいい国だよ!」
「あ、はい・・・」

そして再び言われました。
「リカ、君だってわかるだろ、たとえば僕が韓国に遊びに行って、日本を素通りして帰るとわかったら、ムッとするだろ?」
むむ、それは確かに、一言言わねばなりますまい!
「そういうことだよ」
ぐうの音も出ません…10年前はあどけない少年だったのに(もういい)

● 日本料理店の思い出

そんなわけで「ポーランド、興味がないわけじゃないのよ」アピールをしようと、東京でポーランド料理が食べられるお店を探してみました。
世界中の味が集まる東京ですから、お茶の子さいさいでしょう。
ところが、いくら探しても、都内にポーランド料理の専門店は見つけられませんでした。
かつて茅場町に「ポルスカ」というお店があったようですが、閉店したそうです。
ポーランド好きをアピールできなかった・・・。

ちなみに、ベルギー滞在中に、イゾルダに日本料理店に連れて行ってもらったことがあります。
これが、外観も内装も食事も、日本らしさ皆無のお店でした。
入店すると、ピカピカのハッピを着るよう渡されます。
私たちは遠慮しましたが、ほかのお客さんは、みんなブリリアントなお祭り姿になっていました。

カウンターの前のアジアンな料理人は、ストイックに包丁を刻んでいるかと思いきや、突然ソルトやペッパーのジャグリングを始めたりする、超謎の展開。
あまりに理解を越えていて、妙なテンションが上がりました。

そして日本語で話しかけてみても、スタッフのだれ一人、私の言葉がわかる人はいませんでした!
地方だから日本人は来ないかと思ったのかしら~。マルサの女になった気分でしたよ!
イゾルダは、本格的な和風料理店に連れて行ってくれたつもりだったようで、がっかりしていましたが、
私はそんなビックリ体験をさせてくれた彼女に、今でもとっても感謝しています!

● BASF

ITの勉強をしたダニエルは、ポーランドの富士通に就職したと聞きました。
就職したての彼に「おめでとう!じゃあ出張で日本に来られるんじゃない?」と伝えたら、
「うーん、出張はなさそう。年に一度、特別業績を上げた社員をご褒美に日本本社へ連れて行く制度はあるけれど、ほんの数名だし年配の人ばかりだから、自分はまずないなあ」
と言っていました。
今回、「最近転職したんだ」と言われました。
「どこに?」「BASF」
「え?」「BASF」
聞き直しても、よくわかりません。
「ビーエーエスエフ、バスフ。」
こ、これは覚えづらいわ・・・!

世界最大の総合化学メーカーだそうです。
ドイツの企業って詳しくないんですよね。
「ごめんね、Bで始まる会社といったらBMWとboschくらいしか知らないわー」



と言っていたら、車窓の建物に、その文字が見えました!!
「あれ、いまの、そう?」
「うわ、日本にも会社があるんだね!」
まさかの偶然にビックリして、大笑い。

● 鎌倉のティーンズ



鎌倉に着きました。
まずは小町通を通って八幡宮へ向かいます。
すごい人です。平日ですが、ティーンズが多いのは、春休みに入っているからでしょう。



なんだかここのところ、レンタル着物姿で街を歩いている女性が多いなあと思います。
インスタグラム映えするからでしょうか。

● トンビの襲撃

小町通には、食べ歩きをしている人もたくさん。
みんなの歩調に合わせてゆっくり歩いて行くと、クレープを食べながら前を歩いている女の子たちめがけて、背後からトンビが急降下してきました。
バサバサッと耳元で大きな羽音がします。



(ええっ?)と思っている瞬間に、とんびはクレープめがけて突進していきます。
驚いた女の子が、手からクレープを落としたため、奪還は失敗に終わり、トンビはそのままのスピードで空に急上昇していきました。
大きな翼。人をさらっていけそうな、ガニュメデースを誘拐したワシかと思いました。

背後から襲われた女性グループは、立ち尽くして呆然としています。
びっくりしたでしょうね。
湘南や、みなとみらいにも、「とんびに注意」表示は出ていますし、「おにぎりを取られた」系の話は友人などから聞いたりしますが、その瞬間を間近で見たのはこれが初めてでした。



「・・・見た?今の」「こわいね~」
間近で見てしまった私たちもビクビク。
グッと小ぶりなカラスを見ただけでも、4人で「うわっ」とおびえてしまいます。

● ジャパニーズ・カップル

そんなこんなで小町通を抜けて、八幡宮へ。
いつ来ても、ここは混んでいます。
鳥居の前に来て、(あっ)と思いました。
「そういえば2人はクリスチャンだった。そしてここって宗教施設だったわ」



「日本では、宗教というよりはもう文化に根差しているもの」と説明します。
抵抗なさそうだったので、おまいりすることに。

神橋の前で「ここは神様だけが通る橋」と説明します。
「じゃあここで」と、その前で記念撮影。
さっちゃんが「前は通れたんだけどね」と言いますが、そこまで説明するとややこしくなるため、日本語が通じる2人だけの話に。

イゾルダが撮った一枚。
私もこのカップルに目を向けたものの、特にカメラを向けようとは思いませんでした。
でもこのショットを見たら、プレシャス感のある、美しいものに仕上がっていました。
すてき。やっぱり外国の人の感性は違うんですね~。



拝殿へと向かうイゾルダ。



神輿の美しさに心奪われた様子で、見入っていました。

● 海老天そば

そろそろランチを取ることに。
「大通りじゃない店がいい」「海老天を食べたい」「蕎麦でもいい」というイゾルダの希望を叶えるべく、さっちゃんと2人でネットサーチをしたり、キョロキョロ探したりします。
なかなか思うような場所がなくて苦戦していたところ、若宮大路にあった看板に目が留まりました。
「あ、海老天そばだ」
美水(みすい)というお店に行ってみると、10人ほどの行列ができていました。
「もうすぐあきますよ」とおかみさんに言われた通り、10分弱で入れました。



自家製麺と無添加本格京風だしを提供しているお店。
ダニエルは安心御膳、イゾルダはもちろん海老天の絶好調御膳。
さっちゃんはイケてる御膳。



絶好調にイケてる御膳って!
みんなの御膳をチェックしていたら、自分は何を頼んだのか、忘れちゃいました。

● ガラスのブタ

おなかいっぱいになって、小町通に戻ります。
「さっき通りがかりに見たガラス細工店で、お土産を買いたいな」

観光地には、かわいいガラス細工のお店がよくあります。
私たちはけっこう馴染みがありますが、ガラス細工って海外にはないのかしら?



2人が選んだのは、この5円玉を持つブタ。
かわいいけど、なぜこのチョイス(笑)?



その2に続きます。



雪国ふれあいウェルネス体験 index

2017-07-09 | 中部(甲信越)
[2017.3.2-3]



◆ 十日町 1-(1) ←旅行記へ
 3月になってもなお雪深い新潟に向かいました。
 長靴姿の人に驚きましたが、雪の上ではマストな履物だと実感。
 裸祭りの準備たけなわのお寺に寄り、角栄さんの銅像を見上げました。
  ● prologue ● 長岡のマンホール ● 長靴にフード
  ● 浦佐駅 ● 毘沙門天は多聞天 ● 雪と藁を踏みしめて
  ● 不動明王の泉 ● 裸じゃないポスター ● 千手院
  ● 浦佐のマンホール ● 角栄さんの銅像



◆ 十日町 1-(2)
 メンバーと合流して、池谷地区の廃校でウェルネス体験開始。
 ぶあつい雪の壁を使って、雪像やかまくらを作りました。
 かんじきをはいて、雪原を歩き回り、動物の足跡を見つけました。
  ● 浦佐から十日町へ ● やまのまなびや ● 沖縄と雪だるま
  ● 自立訓練法 ● かまくらとアンパンマン ● 廃校のヤギ
  ● 二番目においしい蕎麦 ● 火焔型土器 ● かんじき初体験
  ● 足跡クイズ ● シシガミ様 ● ブナと湧き水



◆ 十日町 1-(3)
 全身雪まみれになって次に向かったところは、竪穴式住居。
 縄文人といろりを囲んで、暖かいおもてなしを受けました。
 夜は集落の人々と一緒に、地元ジビエに舌鼓を打ちました。
  ● 立ちはだかる雪壁 ● なぞの縄文人 ● いろり火で焼き魚
  ● 笹山縄文の里 ● 竪穴式住居と古墳マスター ● 五右衛門風呂
  ● こたつのパイプ ● 限界集落の活性化 ● 女性ハンターのジビエ
  ● 埋立島から自然の山へ ● 越後のいちご ● 天神囃子とお囃子
  ● 越冬カメムシ ● 湯たんぽの夜



◆ 十日町 2-(1)
 2日目は、整体を行い、ドローン体験。
 廃校で近未来的な時間を過ごします。
 お昼はみんなで郷土料理を作っていただきました。
  ● 朝の整体 ● ぼたん雪の散歩 ● ドローン教室
  ● 操縦初体験 ● クルミ抜き作業 ● 廃校たんけん
  ● いろは順の卒業記念 ● 魚沼産コシヒカリごはん ● なますを煮る?
  ● 健康郷土料理ランチ ● リラクゼーションタイム ● 地域からのメッセージ



◆ 十日町 2-(2)
 浦佐駅で、ひとり毘沙門堂に行きました。
 年に一度の裸押し合い祭り当日で、辺りは熱気に満ちています。
 越後湯沢駅に寄って、雪のない東京へと戻りました。
  ● 雪のカーブ道 ● 祭りの露店 ● 当日の毘沙門堂
  ● 地元の青年団 ● 本番はパス ● JR上越線
  ● 越後湯沢 ● 温泉銅像 ● 朱鷺の子
  ● 縄文絵はがきとカレンダー ● epilogue




雪国ふれあいウェルネス体験 2-2(last)

2017-07-09 | 中部(甲信越)
その1からの続きです。

● 雪のカーブ道

行きと同じく、ジャンボタクシーはけっこうなスピードで、くねくねカーブの雪道を通っていきます。



(ああ、終わっちゃった)と、センチメンタルな気分になっていたためか、行きのようには車酔いしませんでした。



イナイズミご夫妻とノナカさんは、もう東京行き新幹線のチケットを取っていました。
それから飛行機に乗り換えて沖縄に帰るので、忙しそうです。



3人と浦佐駅でお別れし、私はもう少し町に滞在することにしました。



● 祭りの露店

この日が、年に一度、浦佐毘沙門堂で行われる裸押し合いの日。
当日の様子を見に行ってみることにします。



駅前からお寺に続く道の両側に、ずらりと露店が立ち並び、人が大勢道に出ています。
昨日とは比べものにならないにぎやかさ。
かじか酒やこの辺りのスイーツのしんこ餅もたくさん売られていました。



● 当日の毘沙門堂

雪の階段を上って、山門をくぐります。
昨日、そろそろと登ったところ。みんな長いゴム長靴をはいています。
スニーカーの私は、やっぱりこの日も、抜き足差し足。



境内は、まだブルドーザーとショベルカーで盛大に雪かき中。
きっと開始時間ギリギリまでやっているのでしょう。
それほど、雪の量が多いんでしょうね。



本堂前では、裸押し合いに参加する青年が火の番をしていました。
厚着をしていても寒いのに、肌の見える薄着でいて、凍えそう~。



本堂の周りには、奉納されたろうそくがずらりと並べられていました。



お不動様の泉に行くと、昨日訪れた時には見えていた龍が、藁で被われていました。

あとで知りましたが、参加者たちはここの霊水につかって身を清めてから、押し合いを始めるそうです。
それで、人も竜もケガをしないように、藁で被ったのでしょう。



● お堂の準備

堂内には、祭り衣装姿の若者たちがたくさん。
多聞青年団だそうです。



本堂に下がっている鰐口の紐は、じきにたくし上げられて、参拝者が振れなくなっていました。



少しすると、紐も巨大な鰐口も取り外されて、参拝自体ができなくなりました。
どうやらここの本堂で、裸押し合いが行われるようです。



● 地元の青年団

青年たちの誰もが、雪道仕様のゴム長靴を履いています。
私のスニーカーは、これ以上雪の中を歩くと、水が染みてしまいそうな状態です。



見えるでしょうか。右側がご本尊のある拝殿奥ですが、そこに人が上がっています。
普通だったら「不謹慎な」と怒られますが、このお祭りは、ここに上がりたい人と上がらせない人の押し合いへし合いなのです。



青年たちは、エイサエイサと掛け声をかけながら、拝殿に藁の塊を運び入れました。
広げると、それは藁で編んだじゅうたんでした。
三枚並べて敷き詰め、踏みならしています。
お祭りの時に押されて転んでも怪我しないようにクッション替わりでしょう。



いち早くハッピをぬいで、上半身裸になって、仲間にさらしを巻いてもらっている人もいました。
寒いけれど、辺りは熱気でムンムン。
やる人々も見る人々もみんな、待ちきれないようです。



お堂の中には、コンパクトな木製の炭火のいろり。
番をする人が暖を取るためでしょう。

● 本番はパス



お祭りは夕方、日がかげってから始まります。
私はそろそろお寺を離れて、裸押し合いを見ずに駅へ戻ることにします。

帰りの時間を遅らせることもできましたが、直前の盛り上がりを体感できたので、十分満足。
実際にお祭りになったら、とても熱気の渦の中には入れないでしょうし。
やっぱり見る側だって、恥ずかしいですしね!



駅から臨む、毘沙門堂への道。
露店がびっしり並んでいるのが見えました。

● JR上越線



さようなら、浦佐~。



そして再び、車窓から雪国の風景を眺めます。



● 越後湯沢

浦佐から、JR上越線にゴトゴト30分揺られて、越後湯沢駅に行ってみました。



この辺りは、学生時代にスキー旅行で何度も訪れましたが、電車で来たことはなかったのです。



越後湯沢駅のホームの椅子に座ると、目の前は深い雪。
味わったことのないシチュエーションです。



ほくほく線が出るという0番線ホームに行ってみました。



ちょうど電車が着いたところ。これから1時間半は動きません。



● 温泉銅像

近くに「湯浴み」という銅像があり、張られたお湯からは湯気が立っていました。
「さあ、入りまーす」と言っていそうな女性像。



手を入れてみると、熱めのお湯。
さすがは温泉地、完全な温泉です。入りたいなー。



ここから東京まで、新幹線Maxときで帰りました。


スキー場の灯り


● 朱鷺の子

親へのお土産は「朱鷺の子」にしました。
すると「前にも買ってきたわね」との指摘をもらって、ドキーン。



そうだったかしら。きっと、佐渡ヶ島の帰りの時でしょう。
鳥の玉子系のスイーツが好きで、ついつい選んでしまいます。
福岡の「鶴乃子」とか、大船渡の「かもめの玉子」とか。

● 縄文絵はがきとカレンダー

終了後、NPO笹山縄文の里が制作した「縄文絵はがき」と「縄文カレンダー」が届きました。
どちらもとてもきれいな写真を使っています。
めくってみると、なんと全ての被写体が火焔型土器でした。



景色のどこかに必ずある「いいちこ」のポスターのような撮り方ですが、こちらは必ず正面に、堂々と土器が写されています。
十日町の人々の火焔型土器への愛を、改めてたっぷりと感じました。

● epilogue

自然の多い旅に出ると、リフレッシュできます。
今回は、それをウェルネスプログラムにしたものに参加しました。
自然体験と整体などを取り入れたもので、バランスよく楽しめました。

日本で旅というと、有名な観光地に行くことを意味しており、ともすれば混雑の中で疲れをためてしまいます。
もう少し日本が、観光と湯治を合わせたウェルネスツアーを、健康増進として推進すればいいんですが。



十日町の雪は、聞きしに勝る豪雪でしたが、雪国ならではのさまざまな体験をすることができました。
知り合った人々も優しかったし、また訪れたいです。
・・・次に冬に行く時には、長靴を履いて!




雪国ふれあいウェルネス体験 2-1

2017-07-08 | 中部(甲信越)
1日目からの続きです。

● 朝の整体

十日町池谷集落の朝。夕べは12時前に寝ましたが、5時半の起床はやっぱり眠くて、布団の中でもぞもぞします。
しかも起きあがる前から、筋肉痛が出ていることに気がつきました。
雪山トレッキングをしたからね。
でも痛むのは、脚ではなく肩のあたり。なぜかしら?

眠いまま階下へ。ほかのメンバーも集まっています。
夜更けまで飲みと意見交換を重ねただろう彼らのテンションは、もちろん低いです。
「久しぶりに大賑わいのせいか、この宿、しょっちゅうブレーカーが落ちてたね」と一人の人が言います。
確かに今朝も落ちました。そして夕べは暖房がほとんど効かず、震える思いをしました。

朝の整体の時間になりましたが、講師をしてくれる肝心のモリさんがいません。
まさかの寝坊かと思いましたが、ほどなく登場。雨と雪で道が悪くて遅れたそうです。
夕べは夜遅くまで雪と雨が吹き荒れていましたからね。

部屋にマットレスを敷きつめて、その上で行います。
身体のゆがみのチェックと足指のマッサージ。
身体のパーツを丁寧に動かすことで、次第に頭がスッキリしてきます。

● ぼたん雪の散歩

整体を済ませて、食事を待ちながらみんなで外を眺めていました。
外の天気は、雪から雨になったかと思えば、やみ、再び雪になったりと、ころころ忙しく変わります。

野菜と魚のヘルシーな朝食。身体の中から健康になれそう。
私たちを迎えに早めに来ていたモリさんに、宿のご主人は「朝食食ってけ」とごはんをよそってあげていました。
都会ではなかなか見られない暖かさだわ~。

食べているうちに外は大吹雪になり、いつしかぼたん雪に変わりました。
3月なので、水を含んだ重い感じの雪。
洋服についてはらっても、さらさらと落ちてくれません。

食後の運動がてら「やまのまなびや」まで歩いていきました。
宿からは歩いて5分と聞きましたが、歩いても歩いても見えてきません。
きっと夏なら5分なんでしょう。でもこの時は真冬の豪雪の中なので、歩き慣れていない私たちは、15分はかかったと思います。
ギャビーさんとおしゃべりしながらのんびり歩いていたら、先を歩く人に少しずつ遅れていきました。

● ドローン教室

分校前の雪の壁には、昨日私たちが作ったアンパンマンとかまくらが、まだ残っていました。



やまのまなびやの体育館に、東京からドローンの先生が2名やってきました。
食後は、ドローン教室。
廃校で行うサイバーチックな体験です。
お役所からの見学者もいました。



まず見せてもらったドローンは、大きな「ファントム」。
白くてつやつやしています。
あっという間に上昇し、空中停止しました。
そのスムーズさに、思わずみんなの口から「お~」と声が漏れます。



先生の持つコントローラーには、ファントムが映した私たちの姿が鮮明に映し出されていました。
わあ、すごい。



2つ目は、次に大きな「トライポッド」。
お値段は、これで15万円くらいだそう。
相場がわからないので、高いのか安いのかよくわかりません。



こちらも空中静止し、私たちの写真を撮影します。



3つ目は、手のひらに乗るサイズの「トイドローン」。



かわいらしい小ささで、お値段は8000円くらいとリーズナブル。



ファントムとトイドローンでは、大きさがこんなに違います。
トイドローンを買おうかな、買いたいなと思いますが、軽いために一番コントロールが難しいとわかりました。



● 操縦初体験

ウェルネスには程よい緊張感と集中力も必要だということで、私たちも操縦させてもらいました。
動かし方を教えてもらいましたが、うっかり天井の方まで上げてしまったり、見ているほかの人たちの方へと飛ばしてしまったり。
なかなか思うようにはいきません。
大きさと感覚を、感覚的に覚えることが必要です。

そして、バッテリーがすぐに切れてしまうため、予備がたくさん必要です。
飛ばしている時に突然バッテリーが切れてしまったら、急降下して壊れてしまうかもしれませんね。
なるべくバッテリーが持つものを選びたいものです。



みんな、真剣にコントローラーを動かします。
ひとしきり動かせるようになったら、次は壇上の椅子にうまく乗せられるように操縦してみることになりました。
椅子の座る面積は、結構狭いので、なかなかきちんと着地できません。



私もチャレンジしました。



トライポッドを空中静止させて、2ショット写真を撮ってもらいました。



熱心に操縦していた若社長。
最後には「よし、うちの会社でドローンを買います!」と力強く宣言していました。
会社のPR撮影に使うそうです。
さすが~、上に立つ人は、決定するのが早いのね!

● クルミ抜き作業

みんながワイワイと盛り上がっているその片隅で、私はモリさんがなにかをやっていることに気づきました。
「クルミを剥いているんです。昼食に使うから」
「それ、お手伝いするので、モリさんもドローン、飛ばしてきてください。せっかくですから」

こちらも、始めると集中します。黙々とクルミの中身をくり抜き始めました。
いつしかドローンからクルミにシフトして、静かに格闘を続けます。



こんなにたくさん、どんな料理に使うんでしょうね。

● 廃校たんけん

ここは廃校となった小学校分校の体育館。
ドローン講座終了後に、十日町市地域おこし実行委員会のフクシマさんに、中を案内してもらいました。
この階段、いいですね~。小学校には、大きな日本地図、ありましたね~。



時代がかったカワイピアノがありました。
K.KAWAIの銘は、昭和35年くらいまでに作られたものです。



● いろは順の卒業記念

廃校になった後は地元の荷物置き場になっていましたが、中越地震の時にボランティアの人の寝泊まり場所になったそう。
昭和24年の卒業記念が、きちんと保管されています。
ここに名前が書かれた人が、今では80歳となって、まだ集落にいると教えてもらいました。



あいうえお順じゃなくて、いろは順というのが時代ですね。
しかしよく見ると、曽根さんという名前の人があちこちにいます。
いろは順になってないではありませんかー。謎だわ。

そういえば昨日の懇親会の席で、集落に住む曽根さんというおじいさんが「この辺は曽根さんが多いため、屋号で区別している」と言っていました。
その曽根さんが、ここに名前が書かれている人のようです。

案内してくれたフクシマさんという女性は、笹山の人と結婚して、縄文式結婚式を行ったと教えてくれました。
まあ、あなただったんですね!
写真を見せてもらったら確かに縄文的でした!
花嫁さんはとてもかわいらしかったのですが、花婿さんは縄文人というよりは、ペンティングアーティストみたいになっていました。
「本人がやったから」とフクシマさん。
完成した美しさは花嫁と花婿でかなり違いましたが、どちらも幸せそうでした。
ごちそうさま~!

● 魚沼産コシヒカリごはん

ドローンの先生たちが、タクシーで去っていくのを見送りました。
彼らは日帰りでやってきて、また東京に帰って行くんでしょう。
私たちはてくてく歩いて集会場まで向かいます。
お次は、みんなでヘルシーな料理を作る講座。
一足先に車で向かったタダさんが、集会場の外でお米を炊いていました。

「ここで取れたコシヒカリ」
おお~、天下の魚沼産ですね!楽しみ~!



こうしたかまどを見ると、「はじめちょろちょろ、中ぱっぱ」という言葉が口をついて出ます。
みんなそうらしく、「赤ん坊泣いてもふた取るな」と続ける人もいました。

建物内に上がると、管理栄養士の蕪木先生の指示で、地元のお母さんたちによって地元食材がセッティングされていました。
先生の説明を受けて、自分たちでランチを作りはじめます。
おかずとデザートの班に分かれ、私はおかず班。

まずはくるみを炒ります。
あー、さっきむいたくるみだわー。



● なますを煮る?

お母さんたちに教えてもらって、見よう見まねでクッキング。



なますと大豆を合わせて煮ました!なますは生で食べるものだと思っていたので、カルチャーショック!
煮るってどういうこと?



先生は長岡出身ですが。煮なますは長岡にはなく、この辺りだけで食べるそうです。
こちらにお嫁に来て、感動したそう。
確かに生のなますって、あまずっぱくて、そんなに量を食べれずにすぐ飽きてしまいます。
バリエーションがあり、炒めなますもあるそうです。



クッキングの手を動かしながら、方言の話になります。
こちらの人が使う「なからいい」ってどういう意味?
「だいたい」だそうです。
北海道の「なまら」に似ているというと「あれは方言?」そうですよ。
「"なから"って、群馬でも言いますよ」
「横浜では言いませんよ」

● 健康郷土料理ランチ

昼食が全部そろい、ランチタイム。
献立は、雪見汁、くるみの煮なます、冬菜のお浸し、妻有ポーク。
スイーツチームは、いちご大福。
みんなでおいしくいただきます。



くるみは、魚と同じDHAを含んでいるため、魚が獲れないときにはクルミを採るんだそう。
このくるみは、池谷で採ったものだそうです。手伝いを喜ばれました。



釜炊きした魚沼産コシヒカリのごはんは、みずみずしく味わい深い、文句なしのおいしさです。
これを食べるために生きていると言ってもいいくらい。
もうこれ以上はおなかに入らないっていうくらい、いただきました。
ちなみに農家民宿をする場合には、一反分の水田から米を採ることが条件だそうです。



雪見汁は、大根下ろしを雪に見立てて作られています。
こちらも具だくさんでおいしかったです。

やはり地場地産のものはいいですね。朝も昼もヘルシー。
先生からは「糖質や炭水化物ダイエットはしないでね!」とのアドバイスを受けました。

● リラクゼーションタイム

食後はリラクゼーションタイムで、のんびり過ごします。
みんな、前に習った自律神経の訓練をしていますが、どう見てもお昼寝しているようにしか見えません!
昨夜遅かったし、寝不足でしょうし。
かくいう私も、食後は眠気におそわれてうつらうつら。



部屋を見回すと、米一俵の価格変動表がかけられていました。
場所柄、深刻な大切な情報なのでしょうか。



● 地域からのメッセージ

その後、十日町の町起こしの取り組みについて学びました。
中越地震以降、ここ池谷集落は8世帯が6世態に減り、集落を閉じる時が来たかと住民たちは覚悟したそう。
そこに町起こし協力隊が入り、盛り返しているところだそうです。
若い力の勢いを感じます。



最後に、参加者一人一人が感想を述べて、今回のウェルネスツアーは終了。
どうもお世話になりました!



集会所の隣には、クラウドファンディングで建てたという木造のロッジハウスが建っていました。
現地の人たちとは、ここでお別れ。
若社長も、大きな車で新潟市に帰っていきました。
イナイズミさん、ギャビーさんと私は、ジャンボタクシーで浦佐駅まで送ってもらいました。

その2に続きます。