○ 二か月ぶりの伊勢原
○ 上まで行ってみる?
○ おひとりさま認定
○ 大山登山者だらけ
○ バスもケーブルも大混雑
○ 阿夫利神社下社参拝
○ 本社に続く登拝門
○ まさに山岳修行
○ へろへろ登頂
○ 山の上で参拝
○ ひとり泥だらけの青春
○ 神社の次はお寺
○ 大山豆腐を食べるはずが
○ epilogue
------------------------------------------
○ 二か月ぶりの伊勢原
5月中旬の晴天の日、伊勢原に行きました。
目的地は、大山不動尊です。
目下、関東の不動巡りをしているため、ここをお参りしようということになりました。
そう、お寺が目的だったんです。(ここ大事)
3月にも大山に行ったばかり。
前回の話のタイトルは『そうだ 大山、上ろう』ですが、今にして思えば、前回は(あがる)と読むべきだったようです。(ここ大事)
その時には、不動巡りをするなんて考えておらず、ケーブル途中にある大山寺駅にも降りずじまいでした。
○ 上まで行ってみる?
前は、ケーブル終点の阿夫利神社駅で降りて、下社を参拝して、徒歩下山したのです。
「そういえば・・・」と気がつきました。
「前回は、本社まで登っていないのよね。今回は行かないと!」
pinoは今一つ乗り気ではありませんが、山の上にあるお社に引かれたようなので、行ってみることにしました。
山道を歩いて山ヒルがつかないか、不安でしたが、山ヒルが生息するのは標高500mあたりまでとのこと。
それよりも高い場所なので、心配なさそうです。
○ おひとりさま認定
前回は、新宿経由で延々伊勢原まで行きましたが、今回は登戸から乗り込みます。
前回は、フリーパスがあることに気付きませんでしたが、今回は小田急線の窓口で購入します。
前の反省を生かしているわ。
まあ、それだけ前回がリサーチ不足だったということなんですが。(ぎゃふん)
「丹沢・大山フリーパスを下さい」と言ったら、駅員さんは私の後ろになんとなく目を向けながら、「・・・お一人ですか?」と聞かれました。
確かに、大山に一人で行くって、あんまりないかも?
一気に寂しい気持ちになりながら「・・・はい」と答えました。
おひとりサマ認定されてしまったわ。
でも、電車でpinoと合流できたので、そんな淋しいやり取りはすぐに忘れてしまいました。(その時はね)
○ 大山登山者だらけ
小田急線の車内は、なんだか2か月前とは違います。なんとなく混んでいて、乗客はやけに登山スタイルの人が多いような。
もしや・・・と思っていた通り、ほとんどの人が伊勢原で降りました。
ケーブル駅行きのバス停は長蛇の列。老いも若きもずらりと並んでいて、ビックリしました。
前回は、私たちのほかに一人くらいしか乗客がいなかったのに!
そしてみんな、本格的な登山の格好をしています。
ほぼ全員リュックで、誰も肩掛けカバンの人はいません。
老若男女、年齢を問わず。山ガール姿の人も多く見かけます。
山のシーズン到来なんですね。
○ バスもケーブルも大混雑
バスに乗り込み、ぎゅうぎゅうになって終点まで行きました。
そこから石段の参道を上って、ケーブル駅まで行きますが、ここもまた長蛇の列。
大混雑です。
白い藤の花がとてもきれいでした。
まずは、ケーブル終点の神社下社まで行って、それから上社に上り、次に下って大山寺に行くことにしました。
ケーブルの運転士は年配の男性で、運転中ケーブルや大山のガイドをしてくれます。
阿夫利神社駅が近づいてきた時に「今日はとてもいい天気で、登山日和。こんな日に上まで登らない手は、ないでしょう!」と力を込めたアナウンスをして、乗客をわあっと沸かせました。
○ 阿夫利神社下社参拝
ケーブルを降りて、まずは立派な下社を参拝します。
2か月前にはまだ目覚めていなかった、狛犬を念入りに観察します。
「大山獅子」と銘打たれた獅子山もあったけれど、前は、その周りにある十二支の像の方ばかり見ていたものだわ~。
山岳信仰を調べているpinoは、天狗の絵が描かれた石碑を熱心に撮影しています。
前回、私がその石碑に興味シンシンだった時、「またそんなけったいなものをチェックして、ハァ」と、引き気味だったのに~。
前回と今とで、めいめい変化があったということです。たった2か月でも、人は変わるものですね~。
○ 本社に続く登拝門
下社の湧き水のご神水で喉をうるおします。あ、入り口にも狛犬が。
それから下社の裏側にある、本社への登山口前に行き、登拝門を仰ぎます。
そそり立つような急勾配の石段が、気持ちをひるませますが、今回は登ると決めているので、行かないという選択肢はありません。
ほかの登山スタイルの人たちも、次々に通って行きます。
もちろん、彼らはここが目的でしょうから。
覚悟を決めて、参拝口に入りました。
○ まさに山岳修行
ただこの石段がとてもきつくて、もうこの初めの段階で、ゼイゼイ息切れ。
手すりは古くて壊れかけていたので、使えませんでした。
おしりの裏の普段使わない筋肉がびっくりしているのがわかります。
さっそく「無理だよパトラッシュ」と言いそうになりました。
この石段を抜けたら、楽になるというわけではなく、そこからは荒いハードな自然が待ち構えています。
石段があるにはありますが、石というより大きく不規則な岩段で、脚に負担がかかります。
ほとんど自分の歩幅に合っていないステップを、歩きやすい場所を探しながら、一歩一歩進んでいかなくてはなりません。
暑い日で、本当にきつかったです。
途中、天狗が鼻であけたという穴を見かけたので、手を入れてみました。
私の手よりも大きな穴。天狗って人よりはるかにビッグサイズ?
それぞれのペースで行こうという話になり、一気に馬力をきかせたいというpinoの姿は、見えなくなってしまいました。
初めの段階から相当バテているので、登りきるために少しずつ進もうと、私はじわじわ山道を登ることにします。
登っても登っても石段。これはまさに苦行だわ。
でも、フーフーいいながら、登山スタイルの人たちがたくさん登っています。
「人はなぜ山に登るのだろう?」「そこに山があるから」
・・・これじゃあ答えにならないよ!
平坦ではない道で足場を探さなくてはいけないため、ストックを持っている人たちが、かなりうらやましくなりました。
延々と続くつづら折りの急斜面。誰もが余裕がなく、大変そうですが、中でも背中に赤ちゃんを背負って登っている人がいて、びっくりしました。
あの人よりははるかに楽なんだから、音を上げていられないわ。
ひたすら足を動かして上へ上へと登っていきます。
うっそうとした林の中を歩いていますが、時々見晴らしのいい場所に出ます。
富士山の頂上が一瞬見えましたが、雲に隠れてすぐに見えなくなってしまいました。
さらに進みますが、行けども行けども先は見えません。頑張りも萎えてしまいそう。
これが修行なんでしょうか。
ほとんど登っている間の写真がないのは、別に「霊山だから撮影禁止」とかそういうわけではありません。
単に、登りながらカメラを取り出す余裕がなかったのです。
pinoと別々になり、結局ひとりで登山をすることになりました。
これもまた結構つらいものがあります。
人とおしゃべりしていると、それだけエネルギーは使うものの、気がまぎれるし気分も上がるので、やる気が続くもの。
黙々と孤独に歩を進めていくと、ダイレクトに疲れを感じます。
男性はともかく、ほかに一人で山登りをしているような女性はおらず、結局またここでも、おひとりサマ状態になってしまいました。
目立ってしまったのか、休憩中、何回かほかの登山者に「おひとりで登っているんですか・・・?」と、遠慮がちに聞かれてしまいました!
ちがいますー!身投げとかしないですー。
「はぐれたんですか?」とも聞かれました。迷子扱いー!
(このままでは気持ちも体力も続かない)とくじけそうになったので、取った策は「おしゃべりしている人のそばで登っていくこと」でした。
一人だと、話す相手がいなくて消耗が早まります。
気を紛らわさないと、そろそろ脚を上げる気力がなくなってきています。
今思えば、音楽でも聴いて行けばよかったのかもしれません。
とにかく、黙々と登る以外のなにか外的刺激が欲しかったのです。
みんな基本黙々と歩きますが、会話をしている人のそばにいると、消耗が抑制される気がします。
「この日のために、しばらくエレベーターを使わず、階段で上り下りしていたの。だけど全然効果が出なかったわ」
「俺はマラソンしてみたけど、やりすぎて膝に響いたよ」
なんて会話が聞こえてきます。
みんな、登山慣れしているようだけれど、いろいろ努力しているのね。
頂上近くなってくると、誰もが寡黙になるため、それほどワイワイと会話がはずんだ人たちはいませんが、それでもペースを崩さず歩き続けている青年二人がいたので、その後に続いて行きました。
「休日に一緒に山登りができるなんて、嬉しいです」「いや、こちらこそ」と、仲がよさそうなのにお互い敬語で、爽やかな会話を交わしていました。
○ へろへろ登頂
ようやく頂上の28丁目に辿り着きました~。
標高700mの下社から、1265mの頂上まで登りきったことになります。
上もすごい人。大勢の登山家が休憩している中で、pinoと山頂で再会します。
私より20分も早く到着したそうで、「ビール買っちゃった。てへ」と見せてくれました。
こんな頂上になぜビールがあるの!?と驚いたら、ドリンクのダンボールをいくつもしょいこに背負った人がやってきたので、驚きました。
こんな山頂まで缶やペットボトルを段ボールで運んでいる人がいるなんて。現代のクーリーだわ。
ここまでそんな重い荷物を背負って上がってきたの?
どうやら、荷物を上げる索道があるようです。
缶ビールは500ナリ。頂上値段ですね。
でも、そのくらいのマージンはかかるでしょう!
自分ひとりの体だけでも、頂上まで持ってくるのに死にそうな思いをしたんですから!
下社から本社までの所要時間は、90分とされています。
90分の登山なんてありえないーと思いながら、(そうはいっても、いろんなペースの人がいるんだし、意外と1時間もかからずいけるんじゃないかな)と二人とも思っていましたが、それは甘い考えで、本当にそのくらい(それ以上)かかって、へろへろになって山頂に辿り着きました。
私は90分ちょいくらいかかりましたし。
登山に慣れている人を基準にしているのかもしれません。
pinoは気持ちよさそうにビールを飲み、焼きそばも食べていますが、私はゼイゼイで食欲が出ずじまい。
ただ、汗をかくと消耗するため、なるべく汗をかかないように登ってきました。
なので、動けないほどではありません。
○ 山の上で参拝
石尊大権現を祀る簡素な造りの本社を参拝して、御朱印をいただきました。
お坊さん不在のため、書き置きの紙です。
食事処ので軽食を作っているおばさまに、日付を記入していただきました。
「大山頂上本社」ときちんと書いてあります。ああ、これこそが登山証明だわ。
(奥の院はさらに分け行ったところにあるのかな?もう登れないわー)と思いましたが、本社のすぐ後ろにあったので、ホッとしました。
もはや、本社が奥社みたいなものですからね。
ここの狛犬がヴァン・ヘイレン風で、いい味出してました。
○ ひとり泥だらけの青春
ひと息ついたところで、下り始めます。
別の道もあるようですが、どうやら今は閉鎖中とのこと。
下りは上りほど体力の差が出ないため、pinoと話をしながら。
帰りは楽々かと思いましたが、ところがどっこい、こちらはこちらできつかったです。
私、やけに滑ってしまいました。
ここ数日、雨など降っていませんが、山道は結構湿っているもの。
はじめは指をつくだけでしたが、気をつけているのに何度も何度も転んでしまい、手のひらやお尻に泥がついてしまって、へこみました。
なぜ~?
「体重をしっかりかけていないからじゃない?」とpino。
確かにそうなのです。私、ふわふわ歩くとよく言われます。
さらに、上りですっかり脚力を使い果たしてしまっているため、もう脚がフラフラなのです。
杖が欲しい~。ガンダルフみたいな。いっそ杖に乗って下まで飛んでいきたい~。
山道で、ひとり「泥だらけの青春」をやっちゃいました。
帰りもまた長い時間をかけて、そろそろと下に降りていきます。
カメラを出すどころではありません。
下社の登拝門まで降りてきた時には、ほっとしました。
振り返って、上ってきた道を見上げます。
いやあ、大変だったわ・・・
○ 神社の次はお寺
まさかこんなに本格的な登山になるとは、思っていなかった私たち。
ふたたび下社の湧き水のご神水で生き返ります。
山の上は「ファイトー!いっぱーつ!」の世界でしたが、ここまで降りてくると、登山せず下社だけ参拝に来た人たちもいるため、のんびりしたムードがただよっています。
下社で、こんな旗を見つけました。
『坂東三津五郎 山帰り奉納』
三津五郎もここまできたんですね。
調べてみたら、歌舞伎舞踊『山帰り』は、歴代の坂東三津五郎が演じてきたお家芸で、当代が十代目襲名時に、大山阿夫利神社能楽殿での舞踊奉納を実現させたそうです。
歌舞伎史上、画期的なことだったんですね。説明はこちら→山帰り奉納
かわいらしい双体道祖神もいました。ぼけ封じと知って、念入りにお参りします。
ここで呼吸を整えて、ケーブルカーで帰り・・・
いえ、帰ってはダメです。うっかり忘れそうになっていますが、そもそもの目的は、登山ではなく大山寺参拝。
途中駅でケーブルを降りました。
前回は来なかったこのお寺。
お寺の参拝記はこちら→巡礼ブログ『関東三十六不動霊場一番札所 雨降山 大山寺』
○ 大山豆腐を食べるはずが
大山での登山と参拝を済ませて、おなかが空いてきました。
大山といえば豆腐が有名で、この前食べ損ねた話をしたら「まあ~」と何人もの人に言われたため、「次回は食べるわ」と言っていましたが、「豆腐じゃあおなかにたまらないよね」ということで、伊勢原まで降りることに。
ようやく、人の世に戻って参りました。
駅前でパスタグラタンを食べて、ひとごこち。
食事をして、本厚木まで行って、相模川の河原を散策しました。
河口近いので、すてきな吊り橋・・・は、さすがにありませんでしたが、川に架けられた鉄橋を通る小田急線を眺めてから、自分たちも乗って帰りました。
まだ日は暮れていませんでしたが、お互いの家が遠いため、帰宅するころには夜になっているはず。
くたくたになって解散しました。
○ epilogue
初めの目的はお寺参りだったのに、結局登山がメインになってしまった今回の伊勢原トリップ。
あとで『東京近郊の山ハイク』という本を読んだら、大山あふりは中級者向けと書いてありました。
pinoに話したら、「中級者?ハハン」と、せせら笑われました。
だって上級者コースになると、富士山とかになっちゃうのよー。
あとになって、またもや大山豆腐を食べなかったと話したら、聞いた知人ががっかりしていました。
二度ともなんか、すみません・・・。
画像は、伊勢原駅のツバメの巣。子育て真っ最中です。春ですねー。
私にはその日の晩から筋肉痛がやってきましたが、pinoはまったくこなかったそう。
差がついたわー。筋トレしようかしら。踏み台昇降とか。(筋トレ?)
ちょっとレベルが高い登山でしたが、それでもアウトドアをすっかり満喫できた、楽しい一日でした。
大山登山は、自分を追い詰めたいとき、無心になりたい時に最適ですよ!
○ 上まで行ってみる?
○ おひとりさま認定
○ 大山登山者だらけ
○ バスもケーブルも大混雑
○ 阿夫利神社下社参拝
○ 本社に続く登拝門
○ まさに山岳修行
○ へろへろ登頂
○ 山の上で参拝
○ ひとり泥だらけの青春
○ 神社の次はお寺
○ 大山豆腐を食べるはずが
○ epilogue
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○ 二か月ぶりの伊勢原
5月中旬の晴天の日、伊勢原に行きました。
目的地は、大山不動尊です。
目下、関東の不動巡りをしているため、ここをお参りしようということになりました。
そう、お寺が目的だったんです。(ここ大事)
3月にも大山に行ったばかり。
前回の話のタイトルは『そうだ 大山、上ろう』ですが、今にして思えば、前回は(あがる)と読むべきだったようです。(ここ大事)
その時には、不動巡りをするなんて考えておらず、ケーブル途中にある大山寺駅にも降りずじまいでした。
○ 上まで行ってみる?
前は、ケーブル終点の阿夫利神社駅で降りて、下社を参拝して、徒歩下山したのです。
「そういえば・・・」と気がつきました。
「前回は、本社まで登っていないのよね。今回は行かないと!」
pinoは今一つ乗り気ではありませんが、山の上にあるお社に引かれたようなので、行ってみることにしました。
山道を歩いて山ヒルがつかないか、不安でしたが、山ヒルが生息するのは標高500mあたりまでとのこと。
それよりも高い場所なので、心配なさそうです。
○ おひとりさま認定
前回は、新宿経由で延々伊勢原まで行きましたが、今回は登戸から乗り込みます。
前回は、フリーパスがあることに気付きませんでしたが、今回は小田急線の窓口で購入します。
前の反省を生かしているわ。
まあ、それだけ前回がリサーチ不足だったということなんですが。(ぎゃふん)
「丹沢・大山フリーパスを下さい」と言ったら、駅員さんは私の後ろになんとなく目を向けながら、「・・・お一人ですか?」と聞かれました。
確かに、大山に一人で行くって、あんまりないかも?
一気に寂しい気持ちになりながら「・・・はい」と答えました。
おひとりサマ認定されてしまったわ。
でも、電車でpinoと合流できたので、そんな淋しいやり取りはすぐに忘れてしまいました。(その時はね)
○ 大山登山者だらけ
小田急線の車内は、なんだか2か月前とは違います。なんとなく混んでいて、乗客はやけに登山スタイルの人が多いような。
もしや・・・と思っていた通り、ほとんどの人が伊勢原で降りました。
ケーブル駅行きのバス停は長蛇の列。老いも若きもずらりと並んでいて、ビックリしました。
前回は、私たちのほかに一人くらいしか乗客がいなかったのに!
そしてみんな、本格的な登山の格好をしています。
ほぼ全員リュックで、誰も肩掛けカバンの人はいません。
老若男女、年齢を問わず。山ガール姿の人も多く見かけます。
山のシーズン到来なんですね。
○ バスもケーブルも大混雑
バスに乗り込み、ぎゅうぎゅうになって終点まで行きました。
そこから石段の参道を上って、ケーブル駅まで行きますが、ここもまた長蛇の列。
大混雑です。
白い藤の花がとてもきれいでした。
まずは、ケーブル終点の神社下社まで行って、それから上社に上り、次に下って大山寺に行くことにしました。
ケーブルの運転士は年配の男性で、運転中ケーブルや大山のガイドをしてくれます。
阿夫利神社駅が近づいてきた時に「今日はとてもいい天気で、登山日和。こんな日に上まで登らない手は、ないでしょう!」と力を込めたアナウンスをして、乗客をわあっと沸かせました。
○ 阿夫利神社下社参拝
ケーブルを降りて、まずは立派な下社を参拝します。
2か月前にはまだ目覚めていなかった、狛犬を念入りに観察します。
「大山獅子」と銘打たれた獅子山もあったけれど、前は、その周りにある十二支の像の方ばかり見ていたものだわ~。
山岳信仰を調べているpinoは、天狗の絵が描かれた石碑を熱心に撮影しています。
前回、私がその石碑に興味シンシンだった時、「またそんなけったいなものをチェックして、ハァ」と、引き気味だったのに~。
前回と今とで、めいめい変化があったということです。たった2か月でも、人は変わるものですね~。
○ 本社に続く登拝門
下社の湧き水のご神水で喉をうるおします。あ、入り口にも狛犬が。
それから下社の裏側にある、本社への登山口前に行き、登拝門を仰ぎます。
そそり立つような急勾配の石段が、気持ちをひるませますが、今回は登ると決めているので、行かないという選択肢はありません。
ほかの登山スタイルの人たちも、次々に通って行きます。
もちろん、彼らはここが目的でしょうから。
覚悟を決めて、参拝口に入りました。
○ まさに山岳修行
ただこの石段がとてもきつくて、もうこの初めの段階で、ゼイゼイ息切れ。
手すりは古くて壊れかけていたので、使えませんでした。
おしりの裏の普段使わない筋肉がびっくりしているのがわかります。
さっそく「無理だよパトラッシュ」と言いそうになりました。
この石段を抜けたら、楽になるというわけではなく、そこからは荒いハードな自然が待ち構えています。
石段があるにはありますが、石というより大きく不規則な岩段で、脚に負担がかかります。
ほとんど自分の歩幅に合っていないステップを、歩きやすい場所を探しながら、一歩一歩進んでいかなくてはなりません。
暑い日で、本当にきつかったです。
途中、天狗が鼻であけたという穴を見かけたので、手を入れてみました。
私の手よりも大きな穴。天狗って人よりはるかにビッグサイズ?
それぞれのペースで行こうという話になり、一気に馬力をきかせたいというpinoの姿は、見えなくなってしまいました。
初めの段階から相当バテているので、登りきるために少しずつ進もうと、私はじわじわ山道を登ることにします。
登っても登っても石段。これはまさに苦行だわ。
でも、フーフーいいながら、登山スタイルの人たちがたくさん登っています。
「人はなぜ山に登るのだろう?」「そこに山があるから」
・・・これじゃあ答えにならないよ!
平坦ではない道で足場を探さなくてはいけないため、ストックを持っている人たちが、かなりうらやましくなりました。
延々と続くつづら折りの急斜面。誰もが余裕がなく、大変そうですが、中でも背中に赤ちゃんを背負って登っている人がいて、びっくりしました。
あの人よりははるかに楽なんだから、音を上げていられないわ。
ひたすら足を動かして上へ上へと登っていきます。
うっそうとした林の中を歩いていますが、時々見晴らしのいい場所に出ます。
富士山の頂上が一瞬見えましたが、雲に隠れてすぐに見えなくなってしまいました。
さらに進みますが、行けども行けども先は見えません。頑張りも萎えてしまいそう。
これが修行なんでしょうか。
ほとんど登っている間の写真がないのは、別に「霊山だから撮影禁止」とかそういうわけではありません。
単に、登りながらカメラを取り出す余裕がなかったのです。
pinoと別々になり、結局ひとりで登山をすることになりました。
これもまた結構つらいものがあります。
人とおしゃべりしていると、それだけエネルギーは使うものの、気がまぎれるし気分も上がるので、やる気が続くもの。
黙々と孤独に歩を進めていくと、ダイレクトに疲れを感じます。
男性はともかく、ほかに一人で山登りをしているような女性はおらず、結局またここでも、おひとりサマ状態になってしまいました。
目立ってしまったのか、休憩中、何回かほかの登山者に「おひとりで登っているんですか・・・?」と、遠慮がちに聞かれてしまいました!
ちがいますー!身投げとかしないですー。
「はぐれたんですか?」とも聞かれました。迷子扱いー!
(このままでは気持ちも体力も続かない)とくじけそうになったので、取った策は「おしゃべりしている人のそばで登っていくこと」でした。
一人だと、話す相手がいなくて消耗が早まります。
気を紛らわさないと、そろそろ脚を上げる気力がなくなってきています。
今思えば、音楽でも聴いて行けばよかったのかもしれません。
とにかく、黙々と登る以外のなにか外的刺激が欲しかったのです。
みんな基本黙々と歩きますが、会話をしている人のそばにいると、消耗が抑制される気がします。
「この日のために、しばらくエレベーターを使わず、階段で上り下りしていたの。だけど全然効果が出なかったわ」
「俺はマラソンしてみたけど、やりすぎて膝に響いたよ」
なんて会話が聞こえてきます。
みんな、登山慣れしているようだけれど、いろいろ努力しているのね。
頂上近くなってくると、誰もが寡黙になるため、それほどワイワイと会話がはずんだ人たちはいませんが、それでもペースを崩さず歩き続けている青年二人がいたので、その後に続いて行きました。
「休日に一緒に山登りができるなんて、嬉しいです」「いや、こちらこそ」と、仲がよさそうなのにお互い敬語で、爽やかな会話を交わしていました。
○ へろへろ登頂
ようやく頂上の28丁目に辿り着きました~。
標高700mの下社から、1265mの頂上まで登りきったことになります。
上もすごい人。大勢の登山家が休憩している中で、pinoと山頂で再会します。
私より20分も早く到着したそうで、「ビール買っちゃった。てへ」と見せてくれました。
こんな頂上になぜビールがあるの!?と驚いたら、ドリンクのダンボールをいくつもしょいこに背負った人がやってきたので、驚きました。
こんな山頂まで缶やペットボトルを段ボールで運んでいる人がいるなんて。現代のクーリーだわ。
ここまでそんな重い荷物を背負って上がってきたの?
どうやら、荷物を上げる索道があるようです。
缶ビールは500ナリ。頂上値段ですね。
でも、そのくらいのマージンはかかるでしょう!
自分ひとりの体だけでも、頂上まで持ってくるのに死にそうな思いをしたんですから!
下社から本社までの所要時間は、90分とされています。
90分の登山なんてありえないーと思いながら、(そうはいっても、いろんなペースの人がいるんだし、意外と1時間もかからずいけるんじゃないかな)と二人とも思っていましたが、それは甘い考えで、本当にそのくらい(それ以上)かかって、へろへろになって山頂に辿り着きました。
私は90分ちょいくらいかかりましたし。
登山に慣れている人を基準にしているのかもしれません。
pinoは気持ちよさそうにビールを飲み、焼きそばも食べていますが、私はゼイゼイで食欲が出ずじまい。
ただ、汗をかくと消耗するため、なるべく汗をかかないように登ってきました。
なので、動けないほどではありません。
○ 山の上で参拝
石尊大権現を祀る簡素な造りの本社を参拝して、御朱印をいただきました。
お坊さん不在のため、書き置きの紙です。
食事処ので軽食を作っているおばさまに、日付を記入していただきました。
「大山頂上本社」ときちんと書いてあります。ああ、これこそが登山証明だわ。
(奥の院はさらに分け行ったところにあるのかな?もう登れないわー)と思いましたが、本社のすぐ後ろにあったので、ホッとしました。
もはや、本社が奥社みたいなものですからね。
ここの狛犬がヴァン・ヘイレン風で、いい味出してました。
○ ひとり泥だらけの青春
ひと息ついたところで、下り始めます。
別の道もあるようですが、どうやら今は閉鎖中とのこと。
下りは上りほど体力の差が出ないため、pinoと話をしながら。
帰りは楽々かと思いましたが、ところがどっこい、こちらはこちらできつかったです。
私、やけに滑ってしまいました。
ここ数日、雨など降っていませんが、山道は結構湿っているもの。
はじめは指をつくだけでしたが、気をつけているのに何度も何度も転んでしまい、手のひらやお尻に泥がついてしまって、へこみました。
なぜ~?
「体重をしっかりかけていないからじゃない?」とpino。
確かにそうなのです。私、ふわふわ歩くとよく言われます。
さらに、上りですっかり脚力を使い果たしてしまっているため、もう脚がフラフラなのです。
杖が欲しい~。ガンダルフみたいな。いっそ杖に乗って下まで飛んでいきたい~。
山道で、ひとり「泥だらけの青春」をやっちゃいました。
帰りもまた長い時間をかけて、そろそろと下に降りていきます。
カメラを出すどころではありません。
下社の登拝門まで降りてきた時には、ほっとしました。
振り返って、上ってきた道を見上げます。
いやあ、大変だったわ・・・
○ 神社の次はお寺
まさかこんなに本格的な登山になるとは、思っていなかった私たち。
ふたたび下社の湧き水のご神水で生き返ります。
山の上は「ファイトー!いっぱーつ!」の世界でしたが、ここまで降りてくると、登山せず下社だけ参拝に来た人たちもいるため、のんびりしたムードがただよっています。
下社で、こんな旗を見つけました。
『坂東三津五郎 山帰り奉納』
三津五郎もここまできたんですね。
調べてみたら、歌舞伎舞踊『山帰り』は、歴代の坂東三津五郎が演じてきたお家芸で、当代が十代目襲名時に、大山阿夫利神社能楽殿での舞踊奉納を実現させたそうです。
歌舞伎史上、画期的なことだったんですね。説明はこちら→山帰り奉納
かわいらしい双体道祖神もいました。ぼけ封じと知って、念入りにお参りします。
ここで呼吸を整えて、ケーブルカーで帰り・・・
いえ、帰ってはダメです。うっかり忘れそうになっていますが、そもそもの目的は、登山ではなく大山寺参拝。
途中駅でケーブルを降りました。
前回は来なかったこのお寺。
お寺の参拝記はこちら→巡礼ブログ『関東三十六不動霊場一番札所 雨降山 大山寺』
○ 大山豆腐を食べるはずが
大山での登山と参拝を済ませて、おなかが空いてきました。
大山といえば豆腐が有名で、この前食べ損ねた話をしたら「まあ~」と何人もの人に言われたため、「次回は食べるわ」と言っていましたが、「豆腐じゃあおなかにたまらないよね」ということで、伊勢原まで降りることに。
ようやく、人の世に戻って参りました。
駅前でパスタグラタンを食べて、ひとごこち。
食事をして、本厚木まで行って、相模川の河原を散策しました。
河口近いので、すてきな吊り橋・・・は、さすがにありませんでしたが、川に架けられた鉄橋を通る小田急線を眺めてから、自分たちも乗って帰りました。
まだ日は暮れていませんでしたが、お互いの家が遠いため、帰宅するころには夜になっているはず。
くたくたになって解散しました。
○ epilogue
初めの目的はお寺参りだったのに、結局登山がメインになってしまった今回の伊勢原トリップ。
あとで『東京近郊の山ハイク』という本を読んだら、大山あふりは中級者向けと書いてありました。
pinoに話したら、「中級者?ハハン」と、せせら笑われました。
だって上級者コースになると、富士山とかになっちゃうのよー。
あとになって、またもや大山豆腐を食べなかったと話したら、聞いた知人ががっかりしていました。
二度ともなんか、すみません・・・。
画像は、伊勢原駅のツバメの巣。子育て真っ最中です。春ですねー。
私にはその日の晩から筋肉痛がやってきましたが、pinoはまったくこなかったそう。
差がついたわー。筋トレしようかしら。踏み台昇降とか。(筋トレ?)
ちょっとレベルが高い登山でしたが、それでもアウトドアをすっかり満喫できた、楽しい一日でした。
大山登山は、自分を追い詰めたいとき、無心になりたい時に最適ですよ!