風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

雪の金沢、北の幸 index

2016-04-20 | 中部(甲信越)
[2016.2.14-15]



◆ 金沢 1-(1) ←旅行記へ

 始発を乗り継ぎ、初めての北陸新幹線で金沢に行きました。
 あいにくの雨はアンラッキーでしたが、それはそれでしっとりとした雰囲気。
 城門に上がることができました。
  ○ prologue ○ 強風の始発 ○ 初めての北陸新幹線
  ○ 話題の上田城を探す ○ 初めての富山をスルー ○ 品のある金沢駅
  ○ 雨の中を散歩 ○ ひがし茶屋町 ○ 整いつつある金沢城公園
  ○ 白門の中を歩く ○ 三十間長屋 ○ 庭や石垣



◆ 金沢 1-(2)
 歴代の加賀藩主を祀る神社を詣で、兼六園のマユミ坂を歩き、
 美術館のスイミングプールを見下ろして、旧県庁の建物へ。
 夜は懐石料理をいただき、お城のライトアップを見て宿に入りました。
  ○ クロネコ観光 ○ 神社の唐門 ○ 神社のギヤマンの門
  ○ 脈々続く前田家 ○ 真弓坂 ○ ハートと神社
  ○ 飛び込めないプール ○ ヤヌスな迎賓館 ○ サンダーバード遅れ
  ○ 金澤さくら亭 ○ 石垣ライトアップ




◆ 金沢 2-(1)
 金沢2日目は、白山神社の総本宮へ。
 1日1本のバスに乗り損ね、電車と徒歩で向かいます。
 静かに雪が降る中での参拝は、雰囲気抜群でした。
  ○ この日は荒くれ男川 ○ 1日1本のバスを逃す ○ どちらの神社
  ○ 駅まで歩く ○ 水で雪を解かす ○ 北陸鉄道石川線
  ○ 始発から終点まで ○ ポンポン電車 ○ 能登はパス
  ○ 駅から歩く ○ 参道に一人 ○ 白山神社の総本宮 
  ○ 門前町の面影 ○ 天狗のお肉 ○ 再び北陸鉄道 ○ お客様の中に・・・ 



◆ 金沢 2-(2)
 2日目午後は、雪の降る中金沢の町を散策。
 立派な武家屋敷と、足軽の家が気に入りました。
 念願ののどぐろを食べられてハッピー。何度でも訪れたい場所です。
  ○ ゴジラが打ち砕く ○ 九谷焼の窯元 ○ にし茶屋街
  ○ 室生犀星との共通点 ○ 加賀藩の武家屋敷 ○ 本降りの雪
  ○ 足軽の資料館 ○ 降りしきる雪 ○ 駅にたどりつく
  ○ のどぐろハッピー ○ 幻の加賀料理本店 
  ○ 雪はあとかたもなく ○ epilogue






雪の金沢、北の幸 2-(2)

2016-04-20 | 中部(北陸)
その1からの続きです。

○ ゴジラが打ち砕く

白山比神社からの参拝帰り、またもや北陸鉄道を端から端まで乗って、野町駅に降りました。
朝と同じ場所ですが、数時間の間にずいぶん雪が積もっています。
悪天候のため、もう遠出はせず、辺りを散策しながら金沢駅に向かうことにしました。



交番の前に、バットを構えた地元出身の松井選手のポスターが貼られていました。
「打ち砕け!振り込み詐欺」
いやー、ゴジラだけでも迫力満点なのに、すごいコピーですね。
そうか、詐欺師とは書かれていないから、人を打ち砕くってことじゃないんですね。
雪の中、ポスターの前で足を止めてそんなことを考えます。

○ 九谷焼の窯元

行きは初めての道なので、わかりやすい大通りを歩きましたが、今度は一本それた細道を選びました。
細い水路沿いを歩いていくと、九谷焼の窯元、久谷光仙窯が見えてきました。



ここで、芸術的なお椀の数々が作り出されているんですね。
初心者も絵付け体験ができるそうです。
自分が描いた九谷焼が作れるなんて、すてきです。

○ にし茶屋街

水路のそばにある、にし茶屋街に向かいました。



前日に訪れたひがし茶屋街は有名ですが、(東があるなら西もあるのでは?)と思ったら、やっぱりありました。
京都でも(東寺があるのなら西寺もあるはず)と、同じ理屈で西寺の跡を見に行ったことがあります。
ほかに主計町茶屋街もあり、金沢の町には、茶屋街が3箇所もあるのだそう。



ひがし茶屋街ほど観光客はいませんでしたが、その分静かでいい感じ。
古めかしい建物が並びながらも、きれいで清潔感がある通り。
金沢城で感じた「古そうだけど新しい」感に満ちていました。

○ 室生犀星との共通点

さらに裏道を通り、室生犀星記念館の前に着きました。
金沢の人なんですね。
小学生の頃に、彼の著作『杏っ子』を読みましたが、早すぎたようで、さっぱりわかりませんでした。
今読み返したら、前とは違う感想を持つかもしれませんが。
泉鏡花記念館のような日本家屋かと思いきや、モダンな建物でした。



そんなわけで、作家としてのこの人のことはイマイチなんですが、誕生日が同じなので、親近感があります。
彼のペンネームは犀川から一字もらったことを知りました。
動物のサイが好きなのかと思ってた…。

○ 加賀藩の武家屋敷

予想外のプラン変更。近くには有名な忍者寺がありますが、事前予約をしていないため、行けません。
そこで、武家屋敷の辺りを散策することにしました。

水路沿いを歩いていくと、少しずつ人が増えてきました。
突然の雪の日とあって、どこも人の出足が少ないだろうと思いましたが、ここの辺りは天候にお構いなく、人は大勢います。



加賀藩の武家屋敷があった、風情たっぷりの界隈。
土塀の小道沿いの壁には、樹木の雪対策のように藁がけがされていました。
土がはがれ落ちるのを防ぐもので、冬の金沢の風物詩となっているそうです。



武家屋敷は、一軒二軒だけ、ぽつんとあるのかと思っていましたが、通り全体にずらりと立派なお屋敷が続いていました。
独特の非日常感を醸し出しています。こんなに雰囲気がいい場所だとは思いませんでした。
21世紀美術館の次に人がたくさんいた場所。真逆のテイストですが、どちらも人気の観光スポットなんですね。



中に入ってみようとしたところ、団体客でいっぱいだと入場制限がかかっていたので、驚きました。
そこまで人がいっぱいとは。
あっさりあきらめ、混雑を避けて、人が少なそうな方へと移動することにしました。



○ 本降りの雪

雪はやむ様子もなく、どんどん本格的な本降りになってきてした。
強い風の中、長傘を差していても、顔にまで雪が飛んできます。
写真を撮る余裕さえ、なくなってきました。
手ではらうと落ちる雪は、雨よりもしみにくくていいのですが、ひっきりなしについて、はらってもはらっても追いつきません。
そのうちにコートに染み込んでいって、服が徐々に重くなります。
さらに、足元からかなり冷えてきました。
手足の指がかじかんでいます。転ばないようにしないと。
ああ、つま先用カイロを持ってくるんだったわー。

「北陸の雪は半端なかったよ。溶けずに黙々と積もって行く感じ」と、友が言っていました。
単身赴任をしたら、冬は暗くて引きこもりになりそうです。



○ 足軽の資料館

そんな雪にめげそうになりながら、人気の武家屋敷から少し離れたところにある足軽資料館へと向かいました。
武家屋敷は別の場所でも見たことがありますが、足軽資料館って聞くのも初めて。



地図で見つけて、気になっていたのです。なんたって足軽ですからね!
人を選びそうな場所で、今度誰かと北陸を旅することになっても、同行者が行きたがるとは限らないので、今のうちに行っておこうと決めました。



資料館といっても、現代風の四角いコンクリの建物ではなく、足軽の家を再現した江戸風平屋なので、臨場感があってウキウキします。
足軽をフィーチャーした場所はなかなかないから、レア度高いわー。テンション上がるわー。



土間に入ると、菅笠と蓑がかかっていました。さすがは雪国、笠地蔵の世界です。
無人の建物の中にお邪魔しました。



外はしんしんと降り積もる雪。時代劇の世界に入ったみたい。
入場制限を行っていた武家屋敷とは打って変わって、みごとに誰もいません。
足軽の家をまるごと独り占め。のびのびと満喫できました。



なんと、明治以降の一戸建ての原型になった家のつくりだそうですよ。
私たちは、足軽の家の派生形に住んでいるわけですね。案外身近じゃないですか。



足軽というと、武士の中でも下の階級になり、普通は長屋暮らし。
でも、加賀の足軽は、家付き一戸建ての平屋に住んでいたそうです。
恵まれた、いい暮らしぶりで、快適そう。



しかし足軽の家には暖がありません。
囲炉裏の跡はありますが、今は火はついていません。
雪風はしのげるものの、ますます寒くなるばかり。
外に出ると、私一人だけの足跡がつきました。しかも帰りの分だけ。
家の中に入ったのはほんの10分くらい前のことでしたが、その時の足跡はもう見えません。

東京では、雪が降ってもそんなに積もりませんが、金沢ではみるみるうちに雪が降り積もっていくんだなあと、その違いを実感しました。



○ 降りしきる雪

足軽の家に満足したところで、この辺の観光は切り上げて、そろそろ駅へ向かうことにします。
前日の散策で、おおよその町の距離感はわかったつもりでいましたが、この時はちょっとぬかりました。
前日は雨で、この日は降りしきる雪。
雨から雪に変わったことで、歩く時間に影響が出たのです。

バス通りまで思ったよりも距離があり、そのうちに手足の指先がかじかんで、感覚がなくなってきました。
しも焼けにはなりたくないなあ。



花に雪がかかってきれい。美しさに一瞬寒さを忘れますが、花だってこごえています。



雪は、降りながら風に乗って舞い上がり、まつげにつくほど自由自在に飛び交っています。
そんな雪が踊りまくる中、ひたひたと道を進んでいきます。



途中の大きなお寺の立派な門の下で、一息ついて雪を払いました。
スローモーションのように雪が降るさまがドラマチックで、引き込まれそうでした。
真宗大谷派の専光寺。この辺りのお寺は浄土真宗が多いようです。北陸は主流なのでしょうか。



ライオンズマンションの前には、ライオンがにらみをきかせていますが、親子バージョンを見かけました。
いつも一匹なので、親子でいるのが珍しいなと思います。北陸だから?
寒いから寄り添っているようでした。
考えてみれば、ライオンって普通は雪の降る場所にいないですね。。。



酒店に飾られていた「俺の生きがい」。地元金沢の麦焼酎です。
名前がいいですね(笑)。そう言って壺を抱え込む男性が目に浮かぶようです。

○ 駅にたどりつく

アーケードがある道に入ったときには、ほっとしました。
バス通りに出ましたが、もう駅も見える距離なので、歩き続けることにします。
屋根がある通りですが、それでも雪が四方八方から舞い込んでくるため、傘は差し続けました。



そうしてようよう、駅に着きました。
ふー、まさかここまで本格的に北国の雪を味わうなんて。

雪が枝につもって白い桜のようになった樹木。
絵本でみる絵のようで幻想的でしたが、そばまで行ってみる身体のぬくもりと心の余裕は、もうありませんでした・・・。



前日は雨をバックに見た鼓橋を、この日は雪の向こうに見ます。
ええと、これは巨大なやかんでしょうか?
雪が積もって、なんだか立体的になりつつありました。



時計を見ると、14時半になっていました。
ランチをゆうに過ぎた頃。
それでは行ってみましょうか。

一人旅をする時は、つい食をおろそかにしがちな私。
一人でものを食べても味気ないので。
ただ今回は(北陸に行くなら、のどぐろを食べたいな)と思っていました。
東京のほうでは、普段、なかなか口にする機会がないからです。

○ のどぐろハッピー

前日に仕事で会った人が「ランチにのどぐろを食べたよ」と教えてくれました。
回転寿司店にあるとのこと。
「日曜昼は混んでいて、1時間近く並んだけど、明日は平日だから、帰りの時間を考えながら行ってみたら?」
ほかの北陸出身の友人たちからも、回転寿司を勧められていたので、根性を出すことに。

実は私、ひとり回転寿司をしたことがありません。
そもそも一人外食をしたいタイプではないので、今回のミッションのハードルの高さに、かなり腰が引けていますが、もうこの旅では、ここでしか食べるチャンスがないのどぐろなので、悩んではいられません。
のるかそるか。行くか行かないか。人生は二択の連続です。

緊張しながら店の前まで行くと、並んでいたのは思いがけなく一組のみ。
もうお昼の時間も過ぎている、半端な時間が幸いしたのでしょう。
さほど待たずに、カウンターに通してもらいました。
わあ、ラッキーだわ。

隣にも、おひとりさま女性が座りました。
(おお、仲間ね)とシンパシィを感じましたが、私がメニューを見ている間に、その人はちゃっちゃと3皿ほど頼み、すぐに食べ始めていました。
わあ、頼みなれているわ。
対して何かにつけてぎこちない私。ピノキオのようにぎくしゃくとオーダーします。
カウンターで、目の前に寿司職人がいるのに、声掛けをしてオーダーするのではなく、タッチパネルから注文するシステムだったので、女性一人でも入りやすいお店で、助かりました。
隣の女性はぱくぱく食べ続け、あっという間に7皿あけて、さっと帰って行きました。
男前~!

でも私も、お目当ては決まっているので、そんなに時間はかけません。
さっそくのどぐろ三点盛り(生、炙り、漬け)をオーダー。

手前がお刺身、真ん中は漬けにぎり、奥が炙り塩です。
食べ慣れた首都圏の回転寿司よりも厚切りなのが嬉しいところ。

う~ん、脂がよーくのった、とろけるおいしさ!
本当に柔らかくてやさしい触感。とても魚とは思えないほどです。
のどぐろにつられて、私の口もとろけそう。



たたき三点盛りは、かつお、ぶり、びんちょうまぐろ。
どれもいい味です。このお店では、何を頼んでもおいしそう。



おいしさと感激と初体験のテンションで、2皿で早々と胸一杯になりましたが、せっかくだからと、さらにのどぐろ2巻を頼みました。



とろっとろです。幸せ~!
あの感触は、どう言い表せば良いものかわかりません。。。

教えてもらった通りに、回転寿司屋で食べられて、満足。
緊張しながら単身で料亭に行かずに済みました。幸せをかみしめてきたわ~。

実は、話は聞いていたものの、一人で回転寿司に入るなんて無理だとあきらめていましたが、その店でのどぐろの寿司を食べたと教えてくれた人の話を聞いたことで、やはり行きたいところと、再び予定に入れました。
さらに2日目は雪で、気多大社行きをあきらめたので、時間に余裕ができて(これなら並べる)と思いました。

駅に着いたのが3時近かったので、平日の昼と夜の合間の、一番空いている時間に割とあっさり滑り込めたのもラッキーでした!

料亭はとても一人では無理だったので、本当によかったです。
のどぐろ、めちゃ美味しかった~!我が家で養殖したいくらい(笑)!



駅の外はさらに雪が積もって、氷の世界へと近づいていましたが、もう外は歩きません。
おなかも満ちて身体も温まり、すっかり余裕ができました。

○ おみやげ

冷え切った体が温まって、おいしいものを食べられて、ハッピー!
ひと心地ついたところで、みんなへのお土産を探しましょう。

金沢には、おいしいお土産がたくさんありますね。
駅のお土産コーナーで一番人気の、圓八のあんころ餅を買ってみました。
賞味期限は当日中ということで、自分用にします。

金つば(金つながりで?)や、ひゃくまんさん菓子などを買ってから、はっと思い出します。
(そうそう、母に治部煮と笹饅頭を買わないと!)



加賀麩 不室屋(ふむろや)で、お麩饅頭と治部煮を買いました。
本場の味です。自分用もゲット。幸せ~。
生ものなので、帰宅するまでの時間分の保冷剤を入れてもらいました。

○ 幻の加賀料理本店

みなとみらいに、時々親と行く加賀料理店・大志満があります。
そこで、加賀の麩饅頭と治部煮の味を知りました。
せっかく金沢に来たことですし、本店はどこにあるんだろうと調べてみました。
するとなんと、こちらにお店はなく、店舗は首都圏にあるだけだとわかりました。

加賀料理店なのに加賀にないなんて。そんなことってあるんですねー。
たしかに金沢の友人に話しても「聞いたことない店名なあ」と首をかしげていたのです。
でも歴史はきちんとあり、元々は山中温泉の旅館で出していた料理だとのこと。
その旅館がもうないようですが、味はいいので、これからもお店には行こうと思っています。

○ 雪はあとかたもなく

そうして帰りの北陸新幹線に乗り込みました。
金沢、さようなら。
窓の外を眺めても、雪景色がよくわからないくらい窓に雪が降きつけていましたが、富山を超えて長野に入ると雪は雨に変わりました。
更に関東に入ると雨も止んで、降り立った東京は何事もなかったかのように、からりと乾燥した冬日でした。
日中、雪の中をさ迷い歩いていたのがうそみたい。



帰宅して、圓八のあんころ餅を、お茶と一緒にいただきました。
柔らかいお餅と甘すぎないあんこが癖になる味。
お麩饅頭もいただきました。おいしくってニコニコー。



○ epilogue

あっという間の1泊2日でした。
改めて金沢って、いい場所だなあと思います。
新幹線のおかげで、気分的にこれまでよりもぐんと距離が近くなった感じがします。

暖冬だったのに、突然予想外の大雪に見舞われて旅程変更となりましたが、それはそれ。
難儀をしましたが、古都金沢に降りしきる雪と辺りの雪景色を見られたので、後で考えれば結果オーライです。

巡るによし、食べるによし、やはり古都は味わい深いですね。
次に北陸を訪れる時には、能登半島にも行ってみたいなあと思います。
かなり久しぶりの金沢。町を散策して、改めてファンになりました。

雪の金沢、北の幸 2-(1)

2016-04-13 | 中部(北陸)
その1からの続きです。

○ この日は荒くれ男川

金沢2日目の早朝、起きて窓の外を眺めます。
まだ薄暗く、窓が二重になっているため、どんな天気かよくわかりません。

朝食前に、辺りを少し散策しようとホテルを出ると、雪がしんしんと降っていました。
わあ、前日の雨が雪になっちゃった。



犀川と浅野川という2本の大きな川が、金沢の町を流れています。
その流れ方から、犀川はおとこ川、浅野川はおんな川と呼ばれるそう。
前日に浅野川を渡ったので、今度は宿のそばの犀川に行ってみました。

昨日からの雨を受けた犀川は、流れの早い濁流になっており、見ていて怖いくらいでした。
かなりの荒くれ男です。
前日よりもはるかに冷え込んでおり、寒いので、早々に宿に戻ることに。
この日は宿を出たら、一日ずっと外にいる予定ですが、大丈夫かしら。

○ 1日1本のバスを逃す

午前中には、白山比(ひめ)神社に行こうと思います。
神社まで一本で行けるバスがホテル近くを通るため、それに乗ろうと早目に行って待ちかまえていました。

バス停は、片町のバス発着所事務所の前にあります。
行先方面はわかりますが、何番系統なのか確かめたくて事務所の人に聞くと、親切にバスの路線図を広げて説明してくれました。
ちょっとそわそわしながら聞いていましたが、その間に待っていたバスがやってきました。
はっと気がついてダッシュで事務所から出て、手を振って少し追いかけましたが、気づいてもらえず、バスはスピードを上げて去って行きました。。。

なんということでしょう。
その日一本しかない、直行バス。ワンチャンスだったのに、目の前で失ってしまったんです!
待ちかまえていて、乗れないのがおかしいような状態で、乗れなかったなんて。
ガックリです。肩を落として、事務所の先ほどの人のもとに行き、乗り損ねたと報告すると「あ、雪が降っているのに時間通りにきたんですね~」というのんびりした反応。
まあ、それはすごいですけどね!

「じゃあ、まずは野町駅行きのバスに乗って、それから北陸鉄道石川線に乗り、終点でまたバスに乗り換えて下さい」
こともなげに言われましたが、実際には大変なルートになります。
まさか、こんなことになるなんて。かなり打ちひしがれました。

○ どちらの神社

この日の午前中は白山比神社、午後は能登半島の気多大社に行こうと考えていました。
距離が離れているし、交通の便が悪いため、かなり分刻みの予定を立てていましたが、まるっと見直さなくてはならなくなりました。

気多大社へのアクセスも大変ですが、金沢駅から大社まで一本で行ける一日数本の限定バスがあります。
それにはまだ間に合いそうなので、気分をがらりと変えて、金沢駅に出て気多大社の方に行こうかな、と野町駅とは反対方向の金沢駅の方に行きかけました。

ただ、足が停まります。
予定通り、白山比神社にした方がいいのではないかという心の声が聞こえます。
両方の神社を参拝するのは不可能。どちらかを選ばなくてはなりません。
今いる片町からだと、白山の方が行きやすいのです。

今回は、やはり白山比神社を訪れることにしました。
金沢駅に向かおうとしていましたが、回れ右して、再び野町駅の方を向きました。

さっき乗り損ねたバスだと神社前まで行けましたが、それを逃したとなると、バス→電車→バスと乗り継いでいくルートになります。
時間も手間もかかりますが、これしか道はありません。

○ 駅まで歩く

野町駅までバスで、と教えられましたが、目の前で目当てのバスを逃したショックが強くて、違うバスに乗る気になれません。
能登に行くのをやめたことで、分刻みに急ぐの必要はなくなったため、駅まで歩いて行くことにしました。
徒歩圏内ですが、20分ほどかかります。
しかも風が舞い、雪が降りしきる中を歩くのは、寒いし濡れるし足元はぬかるんでいるしと、全然散歩モードにはなれません。
それでも、予定と違う行先のバスに乗ったらさらに落ち込みそうだったので、やるせない気持ちを抱えて歩いて行きました。

朝の散歩で見に行った犀川の大橋を渡ります。
朝よりも水かさが増し、濁流の流れは激しくなっています。
雪がどんどん降り続けています。
これは、一日降っていそうです。



○ 水で雪を解かす

車道の真ん中の中央線から水が出て、雪が積もらないような仕組みになっていました。
おお、青森で見るシステムと同じ。北国仲間だわ。
金沢出身の人も「北陸には、水を道路に撒いて雪を溶かす消雪パイプがほとんどの道路にあるので、よほどでない限り車道は雪道になりません」と言ってたっけ。



でも、札幌を訪れた時に、向こうの友に話したら「こっちでは見たことがないよ。道路に電熱線が仕込んであって、熱で溶かすんだよ」と言われました。
雪国はどこも、同じ対策を取っていると思っていたので、驚きました。
親に話すと「札幌は海が遠いからじゃない?」という意見。
海水を使っているのかしら。たしかに水道水だと予算がかかるし、金沢も青森も海沿いです。

○ 北陸鉄道石川線

雪の降る中を、ひとりてくてく歩いて行きました。
「今年は暖冬だから、雪は降らなそう。雪道になるほどの天候なら、運が悪いと思って諦めて」
「もし新規に雪が降ったら、完全防水の靴じゃないと水浸しだよ。ゴアテックスとかね」
旅行前、富山の友人がそう教えてくれましたが、まさか雪が降るなんて思わずに普通の靴で来た私。
靴が濡れたら足が冷えて指先が凍ってしまうため、足元に気を付けながら一歩一歩進みます。



北陸鉄道の野町駅に着きました。小さな鉄道で、1時間に1、2本しか電車は来ません。
あせってもどうにもなりません。ここで20分ほど電車が来るのを待ちました。

北陸鉄道に乗り放題の一日乗車券があると知り、これを使ってみようかなと思いましたが、駅員さんに聞くと、使える石川線と浅野川線の接続はないそうです。
つながっていないの?
両線で重なる駅がないのだとか。
乗り換えられると思った駅は、新西金沢駅と北鉄金沢駅。ちょっと違いました。

「2本の線を乗り継ぐ時はどうするんですか?」と駅員さんに聞くと「バスですね」との答え。
うーん。土地勘がない私に一日パスは使いこなせそうになかったので、やめておきました。
加賀百万石らしく、金沢金箔仕様のカードだったんですが。

やってきた電車に乗りこんだのは、私を含めてほんの数名。運営は大丈夫かしら。

車両の中には『わたしのマーガレット展』ポスターが掲示されていました。
東京で前の年に行われた展覧会が、国内5カ所を巡って北陸にやってくるみたい。
オスカルがいます。ベルばらってマーガレットで掲載されていたのね。
会場には、往時の北陸乙女たちが大集合することでしょう。



○ 始発から終点まで

昨日の北陸新幹線と同じように、北陸鉄道石川線に始発から終点まで乗っていきます。
途中停まる駅の名前が、雰囲気があっていい感じ。



「乙丸(おとまる)」・「 四十万(しじま)」 ・「陽羽里(ひばり)」・ 「日御子(ひのみこ)」など。
自分の中の中二病やヅカ要素を刺激されるわ~。



正面から撮れていないものは、看板に近づく前に電車が発車してしまった時。
数名しか乗っていないので、バシバシ写真を撮りまくって、悪目立ちしたくないという気持ちもありました。



終点の「鶴来」も「つるぎ」という響きだと、「剣」に思えます。

○ ポンポン電車

北陸鉄道、おもしろかったです。
なんだかすごく揺れるんです。横じゃなくて縦に。
座っていると、ぶるぶるじゃなくてポンポン、いやというほど跳ね上がります。
時刻表を見ていましたが、とても文字を追えずに(これは無理だわ、読めないわ)とあきらめました。
でも、地元のおばあさまたちは慣れている様子で、全く動じる風もなく、落ち着いて雑誌を読んでいました。

座席もスプリングが効いているため、トランポリン並みの弾みのよさ。
ポンポンがずっと続いても、乗客は誰も動じず、眉一つ動かしません。ひとりで内心笑っちゃっているのは、私くらい。
上下運動によって、ダウンコートの中から首元に空気がパフッパフッと来るほどでした。

うーむ、今まで乗ったうち、酔いそうなほど横揺れがすごかったのは上信電鉄でしたが、私の中での縦揺れ王者はこの鉄道になりそう。

○ 能登はパス

北陸鉄道でポンポン飛び跳ねて気分転換ができ、朝いちのバスを逃したブルーな気持ちはかなり晴れました。
そのバスに予定通りに乗れたら、気多大社にも多少無理して行ったと思いますが、予想外の雪という慣れない天候の中で、時間を気にしてせわしなく移動することもないですね。
チェックしていた羽咋のUFO博物館、コスモアイルも、ちょうど休館日でしたし。
能登半島の方には、いつかじっくり訪れたいなと思います。

○ 駅から歩く



30分ほどで着いた終点、鶴来駅。レトロな駅舎です。
鶴が飛来するんだろうな、と思います。
(横浜には鶴見があるなあ、つるぎとつるみ。)なんて考えていたら、この町に金剣宮という神社があり、そこが地名の元になっているのだそう。
同じ響きですからね。
鶴は関係なかったみたい。

さて、ここからまた歩きます。バスはやはり1時間以上やってきません。
改札口の駅員さんに切符を渡しながら聞くと、詰所から地図を持ってきて詳しく教えてくれました。
こちらの人たちは、みなさん親切です。

行き方を教わり、駅から神社に向けて、歩き出しました。
雪だからか、誰も歩いていません。車もほとんど通りません。
鶴もいません。寂しいわー。



一般家屋にしてはなんだか雰囲気のある建物だと思ったら、それは一ノ宮駅跡でした。
昔はここまで来る電車があったそうです。今でもあったら、こんな苦労はしなかったのにー。
建物の前にはバス停がありました。朝のバスに乗れたのなら、ここで降りたはずでした。
まあ、ハプニングも旅の思い出~。

○ 参道に一人



鶴来駅から30分ほど歩いて、神社の入り口につきました。
鳥居をくぐり、まっすぐ山へと続く表参道を通ります。
雪景色になりつつある、自然たっぷりの道。
雰囲気があって「美しい日本の光景」という感じ。
長い参道には、誰一人いません。
こんな雪の日に、白山を祀る神社に行くもの好きは、私くらいなのでしょうか。



ここは白山信仰の中心となる、全国の白山神社の総本宮。
全国に白山神社は3000以上あるとのこと。
前から来たかった場所です。
きれいな空気が集まっている場所で、心が洗われたようなきもちになりました。

自然と一体化したように、狛犬がいました。



平成29年の白山開山1300年に向けての、イベントが行われるそう。
ここ、加賀の白山比神社のほかに、以前、越前勝山の平泉寺白山神社を訪れたことがあります。
苔が美しい、自然いっぱいの素晴らしい神社でした。
その二社に美濃白鳥の長滝白山神社を加えた三社は白山の三馬場と呼ばれ、いま牛王宝印スタンプラリーが行われているようです。
馬場とは、霊峰白山に向かうそれぞれの出発点のこと。
北陸人だったらやってみたいところです。

○ 白山神社の総本宮



上に上がると、拝殿そばには数名の参拝客がおり、社務所も開いていました。
考えてみれば、雪景色はこちらの人にはさして珍しいことではないのでしょう。



拝殿前にいるのは女性がほとんど。私がいる間、拝殿柱の陰に隠れるように、一心にお祈りをしている女性がいました。
邪魔をしないように、そっと離れました。



境内には奥宮遥拝所もありました。
霊峯白山の御前峯(標高2702m)にある奥宮を拝む場所です。
現世とかけ離れた空間。静かで心洗われる、すばらしい雰囲気です。



大正三、四年戦役戦利兵器と刻まれた陸軍省奉納の石碑がありました。
第一次世界大戦の頃のものですね。



雪が降って幻想的ですが、やむ気配もなく降り続け、見てわかるほどどんどん雪が積もっていったので、(これはいけない)と思いました。
あまりムードにひたってもいられません。
ここはかなり山に近い場所。雪山に長居は無用です。
ほかの参拝の方々は、荷物も少なく、皆さん車で見えているようです。
旅行の全荷物を持って歩いている私は、遭難しないようにしなくては。
参拝をすませたら、すみやかに登ってきた石段を降ります。



白山比神社にいる間、雪が気になりつつも、あまりに美しすぎて、時がたつのを忘れてしまうほどでした。
本当に神が宿っている感じでした。
東京の根津神社の近くに白山という地名があり、そこに白山神社もあるため、本家がずっと気になっていたんです。
山の神社は好きだし、行けて満足だわー。身体の底から冷えましたが!

○ 門前町の面影

電車発車時刻は40分後だと、先ほど確認しておきました。
バスの時間にはうまく合わず、駅まで再び30分強の徒歩。少しだけゆとりがあるので、歩きながら、行きよりも念入りに町を眺めました。



かつては門前町として栄えたのでしょうか。
古い家並みが残されていました。



酒造会社や酒屋などがレトロ。



○ 天狗のお肉

「天狗乃肉」というお店があってびっくり。
人魚の肉を食べたという人は、昔話で聞いたことがありますが、天狗のお肉については、ついぞ聞いたことがないですね。
食べたら空を飛べるのかな?鼻が伸びるのかな?



お寺の一言。うーむ、深い。
寒すぎて頭に血が巡っていないから、あとでじっくり意味を考えようっと。



○ 再び北陸鉄道

ちょうど、というかぎりぎりの時間に駅に着きました。
先ほど道を教えてくれた駅員さんに「行ってこれました」とお礼を言い、電車に乗り込みます。
ああ、中が温かい。行きの電車を降りて以来の暖房です。
降り続ける雪の中を歩いて冷えきった身体が、少しずつ温まってきました。

駅から眺めた白山連峰。
雪は解ける様子もなく少しずつ積もり始めています。
明日には、辺りはすっかり雪景色でしょう。



電車の中で生き返った気分。雪に濡れたダウンコートも乾きましたが、外は相変わらず、雪が舞い踊っています。
電車は2両。乗客は私を含めて2人のみでした。
運営、本当に大丈夫かしら?

でも、途中の駅からちらほらと人が乗ってきて、行きよりはずいぶん人が増えていました。
金沢の町の方へいく人が多いからでしょう。

○ お客様の中に・・・

野々市駅に電車が停まったところで「どなたか、5千円札を両替できませんか~?」と車掌さんが声をあげました。

「どなたかお医者さんは~?」のシーンには、これまで出くわしたことがありません。
あったところで、私は助けになれなませんが、その変化形に遭遇したわけです。

お財布を見ると、ちょうど千円札を5枚持っていたので、「ありまーす」と言うと、車掌さんと一人の女性がやってきました。
その人が5千円札しか持っておらず、車掌さんはおつりを出せなかったのでしょう。二人にお礼を言われました。
私も石川県の役に立ったわね!(広げすぎ)

石川線は、両端と新西金沢の3駅以外の14駅は無人駅。
電車もワンマン。だから駅に停まっても、両替のしようがないんですね。
その間、電車は止まったまま。運行時間は少し遅れたと思いますが、乗客は誰も何もいいません。
のどか~。

JRの駅と接続している新西金沢駅で、大勢の人が降りていきました。
金沢駅と隣駅とはいえ、かなりの距離があるようです。
地方のJRを甘く見てはいけません。駅と駅の間隔は、首都圏とは全然違うのです。
私はがらんとした車内に残り、終点の野町駅まで乗っていきました。

その2に続きます。

雪の金沢、北の幸 1-(2)

2016-04-07 | 中部(北陸)
その1からの続きです。

○ クロネコ観光

お城の人に聞いた道を通って尾山神社へ向かったはずが、どこかで曲がり間違えたらしく、香林坊まで行ってしまってかなり大回りしました。

クロネコヤマトのお店の前に、黒い籠が置いてあります。
猫侍用かしら~?佐川の飛脚とコラボしてもよさそうですね。
全国初のヤマト運輸の観光案内所「クロネコほっとステーション」だそうです。



町にあるマンホールには、兼六園の灯篭が描かれています。
靴と比べると、結構大きいのがおわかりになるでしょう。
雨に濡れて、風情が出ていました。



○ 神社の唐門

この神社の入り口の神門には、ステンドグラスがはめ込まれているということで、変わっているなあと気になっていましたが、普通の神社の門でした。
あれ?ギヤマンじゃないの?
どうやら裏側の東神門から入ったようです。こちらは旧金沢城の二の丸の唐門だったそう。



本殿をお参りします。
利家とまつを祀っている神社ですが、もともとは加賀藩藩祖の前田利家のみを祀ってきたそうです。
まつを合祀したのは1998年と、ごく最近のこと。
平成になってからじゃないですか。天国のまつもびっくりですね。



○ 神社のギヤマンの門

お目当ての神門<重要文化財>がありました。
こんなに独特な神社の門を見たことがありません。南蛮文化っぽいすてきなデザイン。
ステンドグラスといったら教会というイメージがあるため、洋式だと思っていましたが、和漢洋三様式の建築だそうです。
夜には灯が点されるそうです。きれいでしょうね。



雪吊りがされている樹木の間に、ほんのり梅が咲いていました。
絵馬には多数の合格祈願が。受験シーズンですからね。みんな頑張ってー。



趣のある神苑。
ほどよく苔むした、それでいて手入れの行き届いた境内。
苔についての本を読んだばかりなので、つい目がいきます。



○ 脈々続く前田家

そんな苔との調和が美しい、境内の金谷神社も参拝しました。
ここのご祭神は、二代藩主前田利長公からの十七代までの前田家当主とそのご夫人。



神様の名前がずらりと書かれていました。前田家は、徳川家幕府並みに続いたんですね。
金沢の人は、初代から末代まですらすら言えるんですって。うそです。



緑多い境内の中に、ひときわ目立つガラス張りでシースルーの建物。
この中でお守りなどを頂く授与所です。
前の年の秋に完成したばかりだそうです。とっても斬新でした。



○ 真弓坂

お次は兼六園へ向かいました。イトコの真弓ちゃんから「真弓坂に行って来て~」とリクエストを受けたので、そこに向かいます。
本当にある坂でした。



「真弓坂口」と看板に書かれていました。
真弓ちゃんが坂口さんという人と結婚したら、ここで記念撮影しないとね!
このゆるやかな坂を通って、園内へと向かいます。



真弓さんという女性のロマンチックなエピソードでもあるのかしらと思いましたが、真弓の木があるからだそうです。

○ ハートと神社

真弓坂の道路向かいにある石浦神社には、鳥居の柱にハート形がついていました。
ここは恋愛の神様?
そういえば今日はバレンタインデーです。
でもそれって、言ってしまえば異教のお祭りよ…。



ハートいっぱいでポップですが、ここは金沢市最古の神社だそうです。
拝殿前にあるのは雪よけでしょうか?
参道にはなんだかふにゃふにゃした道が描かれています。
これは神様の通る道でしょうか?まっすぐ直進するイメージだったけれど、そうとは限らないのかも~。



拝殿では、赤ちゃんのお初参りの祈祷が行われていました。
稲荷神社の鳥居を入ると、両側には絵馬がずらりと飾られていました。



○ 飛び込めないプール

石浦神社の道路向かいは、21世紀美術館。お城と兼六園のすぐそばの、いい場所にあり、広々とした敷地になっています。
美術館ができる前には、何があったんでしょう。
丸い建物の前に、全面何色かのガラスで作られたオブジェがあり、中を通ってみました。
カラー・アクティヴィティ・ハウスというそうです。
晴れていたら、日光がいろいろな色を見せてくれるんでしょう。



有名な「スイミングプール」の作品は、美術館を入ってすぐのところにありました。
とても人気で、プールをのぞく人も、プールの底から見上げる人もたくさんいます。
でも誰も、飛び込んでみようとする人はいません。(あたりまえか)



人がいるのに、ゆらゆら水面が揺れるため、なんだかはっきりわからない、不思議な感覚です。
『スイミング・プール』という謎めいたフランス映画のことを思い出しました。

○ ヤヌスな迎賓館

それから、すぐそばにあるしいのき迎賓館へ向かいました。
ここは旧県庁舎で、お城側から見ると、下の画像のようなガラス張りのモダンな作りですが、



正面に周ると、重厚でクラシカルな建物。
建物の前に枝を伸ばしているのは、樹齢300年の大きな椎の木。
表と裏でまったく雰囲気が違って、ヤヌスの鏡のようです。
一粒で二度おいしいのね~。



建物の中に入ると、下の階にはポール・ボキューズのレストランとカフェが入った、なかなか高級な雰囲気。
2010年にリノベーションしたそうです。



尾山神社に、21世紀美術館に、しいのき迎賓館と、ガラス張りの建物を続けて見た感じ。金沢はクリスタルの町になっていくんでしょうか。

○ サンダーバード遅れ

今回金沢にやってきたのは、ここで開催される用事のため。
建物内で働く人に「すてきな場所でお仕事ができて、うらやましいです」と言ったら「建物内には自販機がないし、コンビニも近くにないから、ペットボトル一本も買えなくて普段使いには不便なんですよ~」とのこと。
言われてみれば、確かにありません。
私はペットボトルを持っていましたが、ほかの参加者はドリンクを求めて建物の外まで自販機を探しに行っていました。

この日は強風でサンダーバード号が止まったため、大阪や福井からの参加者は大遅刻してやってきました。
そういえば新幹線に乗っている間に、アナウンスされていたなあと思い出します。
東京からの私が間に合って、隣の福井県の人が遅れるなんて、新幹線の威力はすごいものです。
サンダーバードって、乗ったことがありませんが、すごくくねくねしたルートで、分水嶺のそばも走るんだそうですね。酔いそうです。

○ 金澤さくら亭

夕方に用事が終わり、夜は、参加者同士で懇親会になりました。
はじめは「吉田類さんご推薦の金沢おでんの大関」と聞いていたので、帰り道が楽なようにと、繁華街の香林坊そばのホテルを予約しておいたのに、お店に入りきれないとかで、当日には違うお店に変わっていました。
あれ~。お城の反対側になっちゃった。
お店は兼六園傍の金澤さくら亭というお上品なお店。私はこちらの方が好みです。

金沢の懐石料理って聞くだけで、お上品なおいしさが期待できそう。
その期待は、裏切られませんでした。


季節の旬菜盛り合わせ、梅豆腐の小鉢、お造り盛り合わせ



鰤の照り焼き



茶わん蒸し



百合根饅頭



変わり揚げ



うどん



デザート


金沢和食に舌鼓を打ちながら、楽しく会は終了。
ほとんどの人が、駅前のホテルに宿を取ったようで、駅行きのバスに乗り込みます。
地元の人は、めいめいの家のある方角へ。
私は、腹ごなしがてら、お城の横を通って香林坊まで歩くことにしました。

○ 石垣ライトアップ



石垣をライトアップしています。暗闇にぼんやり浮かび上がる土木の粋。
これは石垣好きにはたまりませんね。
しいのき迎賓館も、夜になってさらに雰囲気が増していました。



夜の香林坊付近はとてもにぎやか。渋谷を歩いているような感じです。
駅前よりもこの辺りの方が賑わっています。
ホテルには21時半頃にチェックイン。事前に連絡しておいたので、温かく迎えてもらえました。

夜は冷え込んできたので、あたたまった部屋にほっとします。
日中は雨の中を歩き回ったので、すぐにお風呂に入り、リラックスしました。

TVをつけると、明日は降雪確率90%との予報。
えー、雪が降るの~?
明日は一日自由に動くつもりですが、考えているのは午前も午後もけっこう歩くルート。
雪はすてきだけれど、行動が制限されるので、今日よりは降らないでほしいなあと思いながら、眠りにつきました。

2日目に続きます。

雪の金沢、北の幸 1-(1)

2016-04-05 | 中部(北陸)
[2016.2.14]
○ prologue

2016年2回目の旅行は、金沢。
久しぶりの北陸、楽しみ~。北陸新幹線も通ったし。
前回同様、今回も用事ありきの旅ですが、時間を調整して観光もできそうです。
おいしいものを食べたいな。

前回訪れたのはずいぶん前の話ですが、その時は白川郷と飛騨・高山がメインのツアー旅行でした。
「雪が積もった景色が見たいね」と真冬に行ったのです。
だから、次は夏に訪れたいと思っていましたが、またもや真冬!
しっかり防寒していかなくちゃ。

金沢出身の友人にいろいろと情報を教えてもらいました。いよいよ期待が募ります。

○ 強風の始発

当日は4時台に起床。
この日は強風で、朝から風が窓をガタガタと揺らしています。
始発で東京駅に向かいました。
新幹線は止まらなくても、それに乗るために東京駅へ行く途中の在来線が徐行したり、止まってしまって、新幹線に乗り損ねてしまっては大変です。
こういう、天気が不安な時には、予定より速い電車で向かいたいのですが、そもそも始発電車に乗っていくため、それ以上早い電車はなく、どうにもできませんでした。

この日は日曜日。サタデーナイトに深酒しすぎたのか、派手に眠りこけている人がいます。
でも私は、それどころではありません。(電車が遅れませんように)とハラハラ。



○ 初めての北陸新幹線

JRは少し遅れたものの、それでもまあまあ予定通りに東京駅に到着。
先頭車両を撮影する時間もありました。カッコイイ~!
無事に新幹線に乗ることができて、あーよかった。ほっとひと息です。



初めての北陸新幹線。普通席でも間隔があって、足が楽です。
日曜の始発便なので、かなりガラガラ。横に2+3で5列ある席にいるのは私だけ。



乗客はみんな寝ています。
東京を出た頃は、外はまだ暗かったけれど、大宮を過ぎたあたりから少しずつ明るくなってきました。

○ 話題の上田城を探す

東京は春の気候でしたが、長野に入るとがらりと変わって、窓の外は雪景色。
長野の人に「新幹線から上田城が見えるよ」と教えてもらっていました。
上田は今年の大河ドラマ『真田丸』で、今ホットに盛り上がっている場所。
見つけよう!と意気込んでいましたが、探せずにいるうちに、長野駅に到着。
ということは、通り過ぎてしまったんだわー。



後で聞いたところ、上田城は3列席側(東京からだと通路右側)から見えるそうです。
私は、2列席の方に座っていたので、逆サイドでした。
いくら窓の外を探しても見つからなかったわけです。ぎゃふん。
まあ、一目でパッと上田城がわかるかと言われると、微妙ですしね…。



長野を過ぎると、次第にトンネルが多くなってきました。山岳地帯に入ったということです。
外が暗くなると、比例して眠くなってきます。
朝早かったので、目を閉じてうつらうつら。
北陸も天気が悪いようで、サンダーバードも運行中止だというアナウンスが聞こえてきました。

○ 初めての富山をスルー

富山駅までやってきました。
実は富山は私にとって、47都道府県内で唯一行ったことがない県。
富山県の中に入ったのは、初めてです。
別に北陸を避けていたわけではありません。福井県にももう行っています。
マイ未踏の地ラスト3県は散らばっており、一昨年は鳥取、去年は愛媛を訪れて、いよいよ最後に残ったのがこのお薬の国でした。

なぜ一番最後に富山が残ったのか、自分でもわかりません。
黒部に行きたいなあと、前々から思っているんですけれどね。



「かがやき」は数駅しか停車しません。
初めての北陸新幹線でテンションが上がっているせいかもしれませんが、思ったよりもあっさり富山まで来た感じです。

隣駅は「くろべうなづきおんせん」。ふむふむ。
漢字で書くと、宇奈月温泉でした。頷くんじゃなかったのね。

通ったものの、まだ未踏の地のままなので、今回はカウントに入りません。
富山を訪れるのはいつになるかしらー。
最後の場所は、しばらく残しておきたいなあという気もあったりします。

金沢まではあと20分。もうすぐです。
前に金沢に行った時には空路しかなく、飛行機で小松空港まで飛び、それから金沢市街に移動したので、東京駅から一本で行けるなんて、便利になりました。

それでも最速新幹線で2時間半はかかるので、日本横断にはそれなりの時間がかかるんだなあと、改めて思います。

○ 品のある金沢駅

初めての金沢駅に到着しました。
なんとなく品の良い雰囲気に包まれている、さすがは加賀百万石の城下町。
おヒゲのダルマの、ひゃくまんさんがおでむかえしてくれます。



鼓橋は、繊細なマイクロファイバー的なイメージでしたが。近くで見るとかなり頑丈。
むしろ「ジャックと豆の木」のようです。
新幹線開通と同時にできたオブジェかと思っていましたが、もうできてから10年たつんだそうです。



レンタサイクルで町の中を動き回ろうと思っていましたが、雨が降っていたので、残念ながらアウト。

「金沢駅は遠くから見る繭の形をしているのよ」と母が言っていたので、駅から少し離れた場所まで行って振り返ってみました。
確かにコクーンでした。
一見スタジアムのような大きな白いドームが駅だと考えると、珍しい感じがします。



駅前大通は、ずっと長いアーケードが続いていたので、バスに乗らずにそのまま歩いて行きました。

○ 雨の中を散歩

もともと自転車で気ままに動こうと思っていたため、どこに行こうかはっきり決めていません。
さしあたり、ひがし茶屋町に向かうことにしました。
雨はそんなにザーザー降ってはいませんが、風が強く、アーケードがなくなると、雨風が四方八方から吹き付けてくるため、傘をさしていても全身濡れてしまいます。



バスに乗ったら濡れずにすみますが、金沢の古都散策をしたかったので、やっぱり歩くことに。
我ながら(物好きかも)と思いますが、ふとこうした味のある古い建物に出くわすと、足が停まります。



途中、「市媛(いちひめ)神社」という神社がありました。「市姫神社」とも書くそうです。
京都には、同じ読みの「市比賣神社」があります。
関係があるのかしら?

久保市乙剣宮を参拝。ご祭神は素盞鳴命(スサノオノミコト)。神社の名前は、彼がヤマタノオロチを退治した草薙剣を意味しているのでしょうか。



向かいには泉鏡花記念館がありました。金沢の人なんですね。
子供の頃、彼は乙剣宮の境内で遊んでいたそうです。



女川と呼ばれる浅野川ですが、この日は雨で水かさが増していました。
もうちょっとであふれそうで、ドキドキ。



浅野川のほとりにある川沿いの整備された公園、橋場町緑地。



大正11年(1922年)に架けられた、レトロ感あふれる浅野川大橋。
ここを渡ると、いよいよ茶屋町です。



○ ひがし茶屋町

ひがし茶屋街。前に訪れた頃のぼんやりとした記憶があります。
憶えている辺りに行けるかなと思いながら向かうと、すぐに記憶がよみがえってきました。



以前訪れた時も確か天気が悪くて、この辺りを観光した時にはやっぱり傘をさしていたなあと思い出しました。
それはそれで、しっとりとした趣があっていいものです。



金沢は日本の金箔の99%を作っている、ほぼここだけの産業。
金箔黄金のマスクに目が吸い寄せられます。ギリシアの考古博物館で見た、アガメムノンのお面みたい。



烏骨鶏の卵で作ったアイスに金箔を乗せるのが、金沢流ソフトだとか。
贅沢~~!でも寒い日だったので、眺めるだけにしました。

○ 整いつつある金沢城公園

藩士の家を眺めたりしながら、金沢城へ向かいます。
前に訪れた時のお城の印象はまったく残っていないため、おそらく石垣の中は観光しなかったはず。

以前、ここには金沢大学があり、ドイツのハイデルベルク大学と同様に「城壁の中の大学」と言われていたそうですが、今では大学は移転し、かつてのお城の姿が少しずつ整えられているのだそう。
大手門から入ると、だだっ広い新丸広場があり、その向こうにそびえたつ巨大な復元城郭が見えました。



リニューアルしたての河北門に上ってみました。眺望がよく、遠くまで見渡せます。
広々とした二の門の中にも入れました。出来てから数年経ちますが、丁寧に保存されているのか、まだ木の香りがするような新しさがありました。

○ 白門の中を歩く

国指定重要文化財の石川門が、この日特別公開されていました。
中は暗そうですが、靴を脱ぎ、勇気を出して、おそるおそる入ってみることに。



東大の赤門と比び称されて、白門と呼ばれる優美な門。
枡形門の形式です。



門の中は、長い廊下になっていました。
中には明かりがなく、窓から差し込む外の光のみのうす暗い空間。
とてもすいていて、角を曲がると広々とした空間にほぼ一人。



ここから出してくれぇ~!と、しがみついて叫びたくなるほど、雰囲気たっぷり。



それにしても美しい白い門。
通常非公開の建築物の中に入れて、ほとんど貸し切りで満喫できたので、嬉しくなりました。

○ 三十間長屋

門の中をぐるりと一回りし、ニコニコ顔で戻ってきたせいか、帰りしなに出口の係員に「三十間長屋も特別公開中ですよ」と教えてもらいました。
そこで場所を聞いて行ってみることにします。
三の丸広場と二の丸広場を通り抜けていったところにあった、藩政時代の建造物。
こちらも、国の重要文化財に指定されています。

京都の三十三間堂に名前が似ているなあと思いましたが、もちろん完全に別もの。
こちらは納屋ですからね。でも外側は優美です。



中に入るとやっぱり暗い~。
2階に上がり降りする時に、木の階段がよく見えなくて、かなり自分のバランス力が試されました。
こちらもほぼ貸し切り状態で見学できました。なんだか贅沢だわー。



ここでも、満足してニコニコしていたのか、そもそも女性一人でふらりと訪れるのが珍しい場所だからか、帰りがけに係員の人に「次はどこに行くの?」と話しかけられました。
「尾山神社に行こうと思って」と話すと、行き方を教えてくれましたが、初めて行くにはちょっとわかりにくいルート。
目をパチパチしていたら「数年後には、お城からまっすぐ行けるようになるよ」と教えてくれました。
お城から石川門を通って兼六園にまっすぐ行けるように、神社への新しい道を作るんでしょうか?

通常、雷は夏に起こるものですが「北陸では冬に大きな雷が起きる」とも教えてくれました。
空気が乾燥している時だと、盛大な静電気も起こりそう。関係ないかな?

○ 庭や石垣

三十間長屋の中からも窓越しに見えた、玉泉院丸庭園の横を通って、坂を降りていきます。
去年の3月に、加賀藩時の池泉回遊式の庭園の姿が再現されたばかりだそうです。



天守閣がないのは、作っても作っても雷が落ちてしまうので、作るのがイヤになったため。という説明。
徳川家康に目を付けられないための対策だと聞いていたけれど、どっちかな。どっちもかな。
久しぶりに訪れた金沢城が、かなり整備されていることに驚きました。



いろいろな時代の石垣が残されている金沢城は「石垣の博物館」と呼ばれているとか。
ほとんどの石垣が、藩の頃のままに保存されているそうです。
見とれるほど立派です。丁寧に作られているわ。

城門や納屋の中に入って喜んだり、石垣に見とれたりと、我ながらちょっとマニアックになってきたなと思いながら、その2に続きます。