風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

ぶらり東武東上線あたり index

2016-09-01 | 埼玉
[2016.3.19]



◆ 東武高坂-1
 前日の夜に友と突然決めたプチ旅行。
 お互い慣れない東武線で、乗り間違えてばかり。
 さらにランチ難民になりかけ、目指すお寺を間違えて、もうてんやわんや。
 それでも楽しく過ごせるものです。
  ○ prologue ○ とりあえず出発 ○ 西武も東武もわからない
  ○ 何度も乗り間違え ○ こうさか・たかさか ○ はらぺこカフェイン切れ
  ○ 駅前なのに食べ物難民 ○ しる屋 ○ 珈琲ばか
  ○ 虎穴に入らずんばコーヒー飲めず ○ コーヒーカレー ○ ばかブレ
  ○ 珈琲ファミリーはフリーダム ○ ALSの画家 ○ 古刹へGO
  ○ お寺まちがえちゃった ○ 坂東三十三箇所第十番 巌殿山正法寺
  ○ 山間の秘密都市? 



◆ 東武東松山-2
 仕切り直しで、はじめ行くはずだったお寺に向かいました。
 駅から遠い場所にあり、車がないとアクセス困難。
 それでも参拝を済ませ、歩いて歩いて、再び東武線で帰りました。
  ○ 次の行先を考える ○ 森林公園駅 ○ バスがない
  ○ タクる ○ 坂東三十三箇所11番札所 岩殿山安楽寺(吉見観音)
  ○ 帰り方を尋ねる ○ 墨の地図 ○ 1時間ウォーク
  ○ 車社会のダークサイド ○ コンビニお茶会 ○ 吉見百穴のマンホール
  ○ 「穴」一字 ○ あばれん坊 ○ 東松山駅 ○ ノーベル賞のまち
  ○ epilogue




ぶらり東武東上線あたり-2

2016-09-01 | 埼玉
その1からの続きです。

○ 次の行先を考える

朝は雨がちだった空も、すっかり晴れ上がっていい天気。
東京の方はまだ雨が降っているとのこと。
一日天気が悪いと思っていたので、嬉しくなります。

岩殿観音参拝を終えて、バスで再び高坂駅に戻りました。
ざっくりとした行先を決めていたのはここまで。
「次はどこに行こうか?」

広く関東圏内に坂東三十三箇所の範囲は渡っており、一つ一つのお寺のある場所は大きく離れています。
でも地図を見る限り、十一番のお寺はここから行けないほど遠くはなさそう。
行けるかな。行けたらいいな。
近くまで来ているのなら、もともと行く予定だった方にも訪れたいものです。

アコも賛成してくれて、一緒に行き方を調べました。
ふむふむ、森林公園駅からバスが出ているのね。
東武線で、高坂駅から森林公園駅に移動します。

○ 森林公園駅



本日二度目の森林公園駅。
森林公園という以上は、森林と公園があるんだろうとキョロキョロ。
すると、駅前にそれらしき公園を見つけました。
あった~。でもまず、バスの時間を調べるのが先ね。

○ バスがない

ところが、乗りたいバスは見当たりません。
停まっていた別方面のバスの運転手さんに聞くと「その辺は路線にありませんねー」
あれ?どういうこと?
「ロータリーの反対側の場所から、コミュニティバスが出ていて、それだと行くかもしれません」
教えてもらった所に行ってみました。

確かに通ります。そのコミュニティバスが、私たちが乗りたいバスでした。
「よかった~、これだわ」
ほっとしたのもつかの間、時刻表を見て絶望的な気持ちになる私たち。

バスは1日5本しか来ず、次に来るのは17時でした。
「これは無理ね。着いた頃にはお寺は完全に閉まっているから」

前もって調べていないと、現地でこういうことがあったりするんですね。
バスは無理だと観念し、再びロータリー内を移動して、タクシーに乗りました。

○ タクる

「吉見観音までお願いします」と言うと、運転手さんに「ここから行きたいの?
隣の東松山駅からの方が近いのに」と言われました。
「いえ、お願いします」と私たち。
東上線も、それほど本数が多いわけではないし、お寺によっては16時ごろに閉門するところもあるので、不便な場所こそ、早目に行っておきたいのです。

「岩殿観音には行った?」と運ちゃん。
タクシーで行く人が多いことから、知っているのかもしれません。

話しながら「あ、これ北向地蔵ね」と通りすがりに教えてくれましたが、カメラを出す間もありませんでした。
「ほい、到着。ここは縁結びのパワースポットとして有名らしいよ」

お寺は、駅から歩くのはとても無理なほど、遠くにありました。
運賃は2500円ナリ。
(ここで降りてタクシーを帰しちゃって大丈夫かな?それとも待っててもらった方がいいかな?)
と、2人で無言で問いかけ合ったものの、決められないまま降りて、去っていく車を見送りました。

「まあ、なんとかなるでしょう」
友と一緒だと、なあなあになって、いつもこれで通してしまいます。
それでなんとかなる時も、ならない時もあります!
さあ、今回はどうでしょうか?

○ 坂東三十三箇所11番札所 岩殿山安楽寺(吉見観音)

それはさておき(おいていいのか?)、まずは参拝することに。
ようやくのことでたどり着いたので、感激もひとしおです。
仁王門の古めかしさに心が躍る、古刹ファンの私たち。 



仁王門を守る真っ赤な仁王様は、楳図かずお風!
ギャーッ!いえ、お寺で叫んではいけません。静かな気持ちで通りましょう。



門の先には、きれいに整えられた境内がありました。
ほかの参拝者はちらほら姿が見えるくらいで、あまりいません。
静かでとてもいい雰囲気。
吉見大仏と呼ばれる阿弥陀如来像もあります。



坂東のお寺は、たいていが本格的に古めかしく、先ほどの10番の巌殿観音も、ここ11番の吉見観音も、いくつもの時代を経た伽藍が昔のままに立っています。
ここの始まりは、行基が聖観音像を岩窟に安置した岩窟寺院。
1661年に作られたという観音堂をお参りしました。



きれいな形の三重塔。高さ24m。古い彩色がまだ残っています。
寛永年間に再建されたもので、江戸初期のものは埼玉県内に3つしかないそうです。
形がいい塔だなと思い、ぐるっと一回りしました。



手前には「聖徳皇太子」と刻まれた石碑、奥には太子堂。
聖徳太子が祀られています。
時々、関東に太子堂があることを不思議に思いますが、仏教を広めるために数多くの寺院を建てた太子は、土木事業を促進したということで、大工さんや手工業者に厚く信仰されてきたそうです。



池の真ん中に弁天堂がありました。



苔むした屋根。渋いです。



○ 帰り方を尋ねる

参拝後は、奥にある庫裏で御朱印をいただき、対応してくれた奥様に「ここからバスで帰れるでしょうか」と聞いてみました。
「行きはどうやって来たの?」と聞かれたので「森林公園駅からタクシーで」と答えます。
「それは、タクシー代が結構かかったでしょう。でも土曜日はコミュニティバスが休みで、バスは近くを走っていないのよ。
1時間くらい歩いてバス停に行くことになるわ」

最寄りのバス停まで1時間!ひええ、そんな場所ってあるのね~。
心の中の自分は、ムンクの『叫び』顔になっていますが、お寺の人にそんな様子は見せられません。

「どうやって行けばいいでしょう」と聞くと、「まってて、今書いてあげるから」と言ってもらいました。
確かに、土地勘がないので、メモでももらえると一番助かります。



○ 墨の地図

すると、御朱印を書いた筆を使って、半紙にさらさらと地図を描いてくれました。
宝島の地図みたいで、すてき~!



その地図を使って、行き方を教えてもらいました。
「まだ暗くないから、たどり着けると思うわ。二人で行くのなら安心ね。でも気を付けてね」
「どうもありがとうございます!」
親切にしてもらい、感謝して、まだ乾ききっていない墨の地図を片手に歩き出しました。
無事に参拝できたことですし、帰りの時間を気にする必要はなくなっています。

これはRPGの世界だと、道に迷ったところに土地の賢者か物知り鳥があらわれて、進む道を示してくれたところでしょうか。

ふと気がつくと、境内にあるいくつもの御堂の前には、それぞれに花が活けてあります。
さっきの奥様かしら。



○ 1時間ウォーク

境内にいる参拝客たちも、みんな大変な思いをして長距離を歩いてきたのかと思いきや、参道途中に駐車場があり、私たち以外の人は全員車で去っていきました。
今ではみんな、車でやってくるのね。

私たちは、テクテク歩き続けます。駐車場を超えると、ほかにはもう誰も歩いていません。
途中にどびんやというお店があり、厄除けだんごを売っていました。



お寺からまっすぐ伸びる参道を、結構歩いてきたところに、対の仁王像が立っていました。
ここからが、かつてはお寺の敷地だったんでしょう。
道の奥にあるのが、今しがたまでいたお寺です。



保存状態のいい道祖神もありました。



別の場所にも。西国・坂東・秩父の百観音巡りを果たした石碑もあります。



さらに歩いて行くと、参道は車通りの多い車道に突き当たりました。
今度はその道沿いに歩いていきますが、バス停は全く見あたりません。

○ 車社会のダークサイド

今の車社会の陰の面として、廃棄車が集められた場所がありました。
廃棄車は全て輸入車なので、選り分けて集められたものなのでしょう。
車好きのアコは「こういうのを見ると、心が痛むわ」と声を落としていました。



朝はとても寒かったのに、いい天気の下を歩いていたら、3月でもなんだか暑くなってきました。
私たちが住んでいる辺りは、実は都心なんだなあと改めて思います。
車道でも、少し歩くとなにかしらお店があるものですが、この辺りは、歩いても歩いても、なんにもありません。
一人だと、早々に心が折れそうです。
友と二人なので、おしゃべりをしながら歩いて行けて、ちょっとしたエクササイズ気分。

○ コンビニお茶会

途中にミニストップを発見。久しぶりに見つけたお店で休憩することにします。

「ミニストップのソフトクリーム食べたいな」
ところが、イートインコーナーでは、近所のおばさんたち3人がお茶会を開いていました。
ポテトチップの袋を開いて、珈琲を飲みながら。
見慣れない光景に(はあ~)と驚いていると、もう一つのテーブルに座っていた男性2人が、4人テーブルを2人テーブル二つに分けてくれたので、私たちも着席できました。

どうも隣が気になります。
話をしながら、一人がコーヒーの容器を持って立つと「あ、私のもお願い」と差し出す別の人。
そこにポットからお湯を入れていました。
つまり、コーヒーを薄めて飲んでいるんですね。味が、味が~!
貧血を起こしそうな光景でした。



それでも特に嫌悪感を抱かなかったのは、おそらくお寺を出てからここまで車道を歩いてきた間、あまりに人に会わなすぎて、ちょっと人恋しくなっていたからかもしれません。
「人がいた!」「外でお茶してた!」というだけでも、驚きの発見レベルでした。

私たちは北海道プレミアムキャラメルソフトをいただきまーす。
ひと休みして元気が出て、再び歩き出しました。
おばさん3人は、さらにコーヒーにお湯を足しており、まだまだ長居する様子でした。



これは消防署の建物。何を計るのか、壁にメートルの目盛りが書かれています。
はしごの長さでしょうか。

シチズンマイクロ社の工場がありました。入り口の時計は、もちろんシチズン。



○ 吉見百穴のマンホール

この辺りのマンホールは、吉見百穴をバックにした、はにわのデザイン。
童話の世界のようで、いいですね。



歩いて歩いて、とうとうバス停にたどり着きました。
やったあ~!クララ、バスよ、バスに乗れるわ!
この辺りは、東松山駅と鴻巣駅の両方の駅の真ん中くらいにあるらしく、道路を渡って両方の時刻表を確かめました。
そして、早く来る東松山駅行きの方を待つことにしました。

鴻巣駅行きの方が早く来たら、帰りはJR埼京線になったところですが、東松山駅からだと行きも帰りも東武線になります。
もう、どこか鉄道の駅まで乗せて行ってもらえるのなら、贅沢は言いませんー。



この辺りは吉見百穴に近いので、バスから見えないかなあと思って外を眺めますが、広がるのは田んぼばかり。
時々太陽光パネルもあります。
割烹着姿のおばあちゃんと孫が、道端で立ち話をしていました。のどかー。

○ 「穴」一字

と、突然、赤文字で「穴」と書かれているのを発見。
その横の岩肌には、たしかに穴がありました。
えっ、これが吉見百穴?



それにしても「穴」って、思い切りましたね。
一番わかりやすいですが。
とりあえず吉見百穴を見られた気分になって、2人で喜びました。

○ あばれん坊

バスは、次第に町の中へと入って行き、少しずつお店が増えてきました。
次のバス停をアナウンスする時に「髪問屋あばれん坊 本店」と何度も紹介が入ります。
じわじわとおもしろくなって、顔を見合わせて笑いました。

「美容院で暴れん坊って?居酒屋ならわかるけど」
「ひどいくせっ毛ってことじゃない?」
「そっちかあ~」

本当にあるのかなあと気になって、バス中から探していたら、
「あったー!」



店名の後につい「将軍」って言い足したくなるのは、多分みんな一緒でしょうね。

○ 東松山駅

そうして終点の東松山駅に着きました。駅前の時計は5時半を指していました。
駅舎はシックな感じ。門司駅みたいだなあと、行ったことがないのに勝手に思います。



○ ノーベル賞のまち

駅のロータリーには「ノーベル物理学賞 梶田隆章先生」というのぼりが下がっています。
去年受賞された素粒子ニュートリノの権威の方ですね。
東松山出身だそうで「花とウォーキングとノーベル賞のまち」とも書かれていました。
3つ目だけ毛色がかなり違っていますよ~。



駅の建物に入っても、そこからホームにたどり着くまでに結構かかり、改札に入ってから小走りに急いだのですが、特急を乗り逃してしまいました。
残念~。鈍行だったら、帰るのにどれだけかかってしまうのかしら。
次に来た急行で池袋まで向かいました。
泊まる駅が多いため、乗っているうちに日が暮れて、いつしか夜になりました。
それから副都心線に乗り換えて、東急沿線まで戻ってくると(ああ、土地勘がある辺りだわ)とホッとしました。

帰る途中、西武の小竹向原駅でポイント故障事故が起こり、アコと別れて一人になった私は、自由が丘駅でしばらく足止め。
なんだか一日、電車でスムーズにいかない日でした。

○ epilogue

数年前に東急東横線と東武東上線がつながってから、東横線のホームにときどき「森林公園行き」の電車がやってきますが、実際にそこまで乗って行くことはなく、直通運転になっても、東武も西武も相変わらず遠いままなので、今回、とうとう終点まで乗ってみることになりました。
思ったよりも遠かった~!

それだけに、都心を過ぎると車窓ががらりと変わって、ちょっとした小旅行気分を味わえました。
ほぼノープランで行ったため、細かな落とし穴はいくつもありましたが、一日新鮮な気持ちでいられました。
江戸時代のままの古刹を2つ巡れたこの日の旅は、予想のつかないドタバタの行程になりましたが、青空の下、友と一緒にハプニングを受け入れながら、楽しい時間を過ごしました。
終わりよければ、すべてよし。
外出が減っていた年度末の、いいリフレッシュになりました。

ぶらり東武東上線あたり-1

2016-08-30 | 埼玉
○ prologue

なにかと忙しい年度末。仕事でくたくたでしたが、そういう時こそ気分転換が必要だよね!と友人アコと話をして、プチ旅に出ようと前日の夜に決めました。
場所は、東横線と相互直通運転している東武東上線のあたり。
お互い東横沿線住民ですが、直通になっても都内を超えて乗り続けていく機会はほとんどありません。
「とりあえず降りずに乗っていけば、東武か西武になるんだよね」というアバウトさ。

もう真夜中も過ぎていたため、細かくプランを詰めることはせず、とりあえず翌朝集合することにします。
プランも決めずに漠然と旅立つようなことは、ふだんはめったにしません。
でも、帰れなくなるほど遠くに出かけるわけではないし、友人と一緒だと、何をしても楽しいので、こういう突然の遠出も、新鮮でワクワクします。

○ とりあえず出発

自由が丘で待ち合わせて、登り電車に乗りました。
電車はそのまま東武線の線路を走り、1時間ほど乗って、西武池袋線の練馬駅に着きました。
「あ、練馬。」
すでに、あまり縁のない辺りにさしかかっており、なんとなく遠くまで来た気分です。
さらに乗って行くと、今度は東武東上線になりました。
川越を過ぎて霞が関駅へ。
前に霞が関勤めをしていた時に、この辺りに住んでいた人が「霞が関←→霞が関」と書かれた定期を「すごいだろ~」とみせびらかしていたっけ。(確かにすごい!)



○ 西武も東武もわからない

一応、やみくもに乗っているわけではありません。
でもふと気が付いたら、東横線の飯能行きに乗っていたことに気がつきました。
あれ?私たちが乗りたかったのは、和光市行だったのに。
そのままだと別方向に向かってしまうので、降りて、小竹向原まで戻り、乗り直しました。

お互いに東急沿線にはなじんでいるのに、ここまで来ると右も左もわかりません。
渋谷止まりだった東横線が東武や西武とつながって、どんどん長くなっていったら、すっかり全容がわからなくなりました。

ふいに、ぶるっと震えが来ました。
なんだかとっても肌寒く感じます。東京とは気温が違っているようです。

○ 何度も乗り間違え

電車を乗りなおして安心していたら、今度は森林公園駅まで行ってしまいました。
降りる駅に気付かずに終点駅まで来てしまったので、少し戻らなくてはなりません。



ホームを移動のしようと改札口辺りを通った時、なんだか淋しい感じがするなあと思ったら、駅が工事中で、ブルーシートに覆われていました。
にぎやかなようで、寂しげな構内。しーんと静かです。



「つばめが来ました。頭上注意」という看板があり、つばめはもう巣立ったのか、姿を見せてくれませんでした。

○ こうさか・たかさか

少し電車を待って、やってきた普通車に乗り込みます。
そんなこんなで、何度も乗り間違えながら、ようやく、最初の目的地の、東武東上本線の高坂駅に到着しました。
高坂といったら、武田四天王の高坂弾正のイメージが強いですが、ここは「こうさか」ではなく「たかさか」駅と読みます。

ここはいったいどの辺りなんでしょう?相変わらず、よくわかっていません。
それでも、ようやくなんとか正しい駅で電車を降りられたという謎の安心感から、急におなかがすいてきました。
そういえば、睡眠時間を優先して、今朝は朝食を抜いてきたんだっけ。

○ はらぺこカフェイン切れ

アコが「コーヒーが切れてきた・・・」とつぶやくのを聞いて、ハッとしました。
これまでキャッキャッとお喋りをしながらここまでやってきましたが、そういえば明らかに口数とテンションが下がっています。
毎朝、モーニングコーヒーを飲まないと、調子が狂ってしまうコーヒー党の彼女。
前に一緒に出羽三山を旅した時に、カフェもコンビニも見つからない山奥に泊まった朝は、カフェイン切れで幽体離脱しかけて(?)いました!

いけない、またあの時のようになってしまっては、大変だわ。
おなかペコペコの私と幽体離脱しかけているアコ。お互い残された力を振り絞って、見知らぬ町をカフェ探しに繰り出します。



駅前の椿がきれーい。アイスクリームみたーい。
まずい、なんでも食べ物に見えてくるなんて、症状は悪化する一方。急がねば!



○ 駅前なのに食べ物難民

ネット検索しながら駅前を歩き回り、忙しくグルメリサーチに取りかかります。
ネット上では、駅前にいくつか食べる場所は出てくるのですが、実際に行ってみると、開いていません。
レストランも閉店中だし、ベーカリーも閉まっています。
なぜ~?高坂駅の人たちはおなかが空かないの~?

ランチよりも、彼女のコーヒー切れの方が深刻かつ緊急な様子。
どうして駅前に、スタンドの一つもないのかしら。
コーヒーは、どこにあるの~~?

黙々とネット検索していた彼女が、おもむろに口を開いて「近くに珈琲バカって店があるみたい」と言いました。
は?今、聞き間違えでなければ、コーヒーばかって言いました?

若干の怪しさを感じて、2人で顔を見合わせますが、もはやえり好みしている余裕はありません。
「そこに行ってみよう」と、2人で向かいました。

○ しる屋

途中で「みそ汁専門店:しる屋」というお店を発見。
上のアパートは、大東文化大と東京電機大から委託を受けているという学生組合。
開いているのか、いないのか。
おみそしる~。しるこはないのかな~。



気になって、お店の前に吸い寄せられましたが、脱線してはいけませんね。
目的地を目指さないと。

○ 珈琲ばか

目指すお店に辿り着きました。本当に「珈琲ばか」って書いてある~。
じりじりとお店の前ににじり寄ります。



お店の前には木でできたおじさんがいました。
とても静かです。開いているのか気になって、店の中の様子を伺います。
店内はよく見えませんが、営業中のよう。



視線の合わない木のおじさんを見つめていたら、くじけそうになりました。
「これは、なんか無理そう・・・」
二人ともためらいます。
自由が丘に、周りのの雰囲気とは違う、ちょっとこわい黄泉の国のような喫茶店がありますが、そんなイメージ。
店名からは、京都にある「めん馬鹿3代」を思い出しました。
あそこは大将が個性的すぎて、圧倒されたっけ。

でも腹ペコのおなかをさすりながら、ようやくここを探してきたわけだし、オープンしているようなので、勇気をふるい起こして中に入ってみることに。

○ 虎穴に入らずんばコーヒー飲めず

おそるおそる扉を開けると、店内にはお客さんがいました。
ご年配の御婦人2人に女性と男性の4名のグループ。
俳句の会の打ち上げのような感じ。(勝手な印象)



壁のメニューに「ばかブレ」とあって、思わず笑いました。
一番下に書かれている「珈琲豆入り和風カレーセット」にします。

○ コーヒーカレー



いいにおいと一緒におまちかねのカレーがやってきました。
レギュラーのコーヒー豆をひいたものを混ぜているのだそう。
普通のカレーよりも色が濃いハヤシライスのデミグラスに近寄っているようです。



食べてみると、コクがあってとてもおいしい味でした。
からすぎず苦くもありません。
カレーにコーヒーって、隠し味になるんですね。

タマネギがとても甘くておいしかったので、おかみさんにそう話すと 
「そうなんです。暇さえあればタマネギを炒めています」とのことでした。



○ ばかブレ

食後はコーヒー。普段はコーヒーを飲めない私ですが、どうしても「ばかブレ」の響きが気になります。
はじめアイスにしようとしましたが、コーヒー専門店でアイスを頼むのは邪道かなと思い、無理してホットをオーダー。
飲めないかもしれないと覚悟していましたが、そうしたらアコが飲んでくれるでしょう。
少しミルクと砂糖を入れて、少しずつ飲んでいったら、全部頂けました。
めずらしいこともあるものだわ。アコも私もびっくり。
成長したのかしら。いえ、おそらく苦手な人でも飲みやすい味だったのでしょう。



店内はおかみさん一人が切り盛りしています。
お上品で話しやすい感じ。本当にコーヒー好きだということが伝わってきます。

それにしても店名が気になったので、聞いてみると、
「変な名前でしょう。名前を付けたのは息子なの」と言われました。
「正直、入る時にちょっととまどいました(笑)」
「銀行とかで名前を呼ばれるときに、ちょっとね・・・」
あ、そうですよね(察し)。



アコは、ブレンドに興味津々。
「うちのは、エチオピアとマンデリンと・・・」と気さくに配合を教えてくれるおかみさん。
お店の秘密じゃないの?いいの、教えちゃって? 



○ 珈琲ファミリーはフリーダム

今は奥様一人が切り盛りしていますが、最初は旦那さんがお店をやっていたそうです。
ところが、ある日「飽きた」といって辞めてしまったそう。
お店をやめた旦那さんは、江戸友禅の職人になったのだそう。
フリーダム~!なんというダイナミックな転身でしょう。

お店の名付け親の息子さんはどうしているのかというと、京都でイタリアンのお店を開いているそうです。
お店の情報を教えてもらいました。今度行ってみたいな。
家族が全員とも、違う仕事についていて、おもしろいですね~。

○ ALSの画家

店内には島崎清さんという、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の人の作品が展示販売されていました。
おかみさんが、ボランティアで場所を提供しているとのこと。すばらしいわ。
数年前にアイスバケツチャレンジで知られるようになった病名。



素晴らしく上手です。
丸みを帯びた優しいフォルムを見ていると、幸せな気持ちになります。
辛いことが多いでしょうけれど、どの作品からもご本人の明るさと芯の強さが伝わってきました。



○ 古刹へGO

お店で、思わぬ楽しい時間をすごしてから、駅前に戻り、鳩山ニュータウン行きのバスに乗りました。
向かうのは、阪東三十三箇所のお寺のひとつ。
ほかに高坂ニュータウン行きもあって、まぎらわしいです。
この辺りはニュータウンばっかりなんですね。

大東文化大前で降りて、少し歩くと、看板が見えてきました、
アコ「あ、あったよ。阪東三十三箇所十番ですって」

「うん・・・」と答えながら(あれ・・・?)と引っかかりを感じる私。
気になって、ご朱印帳を取り出して確認してみると・・・。
「十番には、もう来てたーー!行っていないのは十一番だったー!」

○ お寺まちがえちゃった

なんてこと!お寺をいろいろと巡っていたら、ごっちゃになってしまっていました。
昨日の夜更けに突然決めたので、調べる暇がほとんどなく、うろ覚えのままだったせい。

十番のお寺は「巌殿山(いわどのさん)」で、十一番のお寺も「岩殿山(いわどのさん)」。
山の名前の読みが一緒だったので、こんがらかってしまったようです。
さらに前は車で来たので、駅前に来てもピンとこなかったし、お寺には駐車場のある別の口から入りました。
埼玉の詳しくない場所で、頭の中で把握できていなかったのが原因ですが、それにしたってややこしや~。



○ 坂東三十三箇所第十番 巌殿山正法寺

それでも、もちろんここで引き返すことはせず、きちんと参拝します。
「わあ、古くていいお寺ね」と、寺社好きの友。
大イチョウは相変わらず立派。



本殿に近づいて行くと、日光が私たちに向かって射し込みました。
「ワー、まぶしい。」「これは、なにかよいお告げでは・・・?」



渋いですね。まさに古刹という言葉がぴったりです。



躍動感にあふれる、立派な木彫り彫刻に目を奪われます。



お参りをするアコ。ハッピー、カムカム!



修行中の空海先生の像。ちょうど顔が陰になっていたので、二人で下から覗き込みました。



鐘もなかなかの渋さがありました。いい見晴らしを見下ろしながら撞けますね。



始めこそ(うっそ~ん)とガックリしましたが、落ち着いて考えると、前に来た時にとても気に入って、また来たいと思っていたお寺なので、ハプニングとはいえ再訪できてよかったです。
お寺の石段の下にある三門の方を指さします。
私「ここから見える参道がずーっとまっすぐ伸びているの」
アコ「わあすごい」
この光景を、再び見たかったのです。



○ 山間の秘密都市?

参拝を済ませ、再びバス停に戻りました。
道路の両側には、広々とした大東文化大の敷地が広がります。



うっそうとした山間いに突如近代的な建物が出現するのが、なんだかシュール。
秘密都市みたい。



バスの本数が少ないため、ベンチに座ってしばし待ちました。

その2に続きます。

秩父巡礼記外伝 index

2014-10-29 | 埼玉


◆ 秩父巡礼-1回目(4月)
今年は、12年に一度の秩父札所午歳総開帳。
34観音巡りに挑戦した時の、巡礼以外の外伝です。(巡礼話は別ブログ)
連れはアメリカから帰国したての友人。さてどうなることでしょう。
  ○ プロローグ ○ゴッドからブッダへ ○ 不慣れな秩父
  ○ 芝桜シーズン ○ 二種類の聖地 ○ わらじかつ丼
  ○ 「あの花」だらけ ○ 修行ですから ○ 五色幕とレインボーカラー
  ○ 巡礼装束 ○ 旧友との再会 ○ わらじかつ丼

◆ 秩父巡礼-2回目(5月)
2回目は、ひと月後の5月の連休明けに行いました。
強い日差しの下、秩父鉄道ルート沿いに移動します。
お昼には、なかなかお目にかからない他人どんぶりを食べました。
  ○ 巡礼ハイキング ○ 他人どんぶり ○ SL出発
  ○ 鍾乳洞にダム ○ カルガモかあさん ○ ダンジョン気分



◆ 秩父巡礼-3回目-1(10月)
暑い真夏を避けて、後半戦は秋に再開しました。
レンタサイクルに乗って、ママチャリ巡礼者と交流しました。
自転車は快適でしたが、訪れるお寺はどんどんハードな山あいになっていきました。
  ○ 久しぶりの集合 ○ ブレーキがきかない自転車 ○ 収穫祭
  ○ ママチャリ巡礼者 ○ 秩父山菜そば ○ ダブルの聖地巡礼

◆ 秩父巡礼-3回目-2(10月)
自然の中を動き、大きな橋を何度も渡ります。
山がくちびるに、参道がホラー映画の階段に見えるのは、疲れのせいでしょうか。
自転車を返してからは、楽しくいきました。
  ○ きつい秩父公園橋 ○ 山というかくちびる ○ エクソシストの階段
  ○ ピザ食べ放題 ○ 進撃の車掌と巨人 ○ お肉のリヴァイ ○ 酒盛り電車



◆ 4回目-1(11月)
秩父巡礼最終日。期限が迫っているため、この日中に周りきりたいところ。
今回は、ドイツ帰りの友人も加わってにぎやか。
でもまさか私が一日運転する日がくるなんて。無事故を天に祈るばかりです。
  ○ 秩父巡礼最終回 ○ ドイツ帰りの仏教女子 ○ 初めて借りるレンタカー
  ○ ヒヤヒヤドライブ ○ ウキウキドライブ ○ パーキング渋滞
  ○ 31番観音院 ○ すべってころんで ○ クネクネドライブ
  ○ 32番法性寺 ○ こわい般若、こわくない般若 ○ 33番菊水寺

◆ 4回目-2(11月)
思ったよりも広大な秩父。
時間内に周れなくなりそうになってハラハラ。
3人で協力し合って、なんとかコンプリートできました!
  ○ 13番慈眼寺 ○ うさぎおいしかの国 ○ わらじかつ丼
  ○ 見事な連携プレイ ○ 秩父から長瀞方面へ ○ 苔不動の読経レクチャー
  ○ 攻めでいきます ○ 34番水潜寺 ○ コンプリート万歳
  ○ そして5時 ○ かえでサイダー・あの蒸しパン ○ エピローグ


秩父巡礼記外伝 4-2(Nov)

2014-10-29 | 埼玉
4-1からの続きです。

おっかなびっくりのドライブ巡礼日。前半の予定を終えて、山の中から駅へと戻りました。
ほとんどすれ違う車もなかった山あいから次第に車が多くなり、町に戻ってきたなあと実感します。
ここで、町中にある13番札所にも寄りました。

○ 13番慈眼寺

御花畑駅からすぐのところにある、13番慈眼寺。
ショウと私は、最初の巡礼日にすでに参拝済みです。
私は巡礼を始める前もこのお寺に来ているため、これで3回目の参拝となります。
このお寺を見て秩父巡礼をしようと決心した、雰囲気のある好きな古刹です。



線香の束をまとめてあぶる装置があり、さっそくえっこさんとショウがワクワクしながら試していました。
火が付くまでに1分かかるため、自分でマッチの火を近づける方が早そうかな・・・。
でも、チャレンジャーな2人が好きさ!

ここは目のお寺。本堂横にはメグスリの木が生えています。
寺務所でメグスリのお茶をいただきました。

○ うさぎおいしかの国



えっこさんが御朱印をいただいている間、私たちは境内にいたうさぎに癒されていました。
モフモフでかわゆい~。
前にウサギを飼っていたというえっこさん、「ドイツに行って、檻の中で買うのはかわいそうだなあって思ったわ」とのこと。
ドイツの森にいるウサギなんて、絵になりすぎー。グリム兄弟の物語に出てきそう。



○ わらじかつ丼

仲見世通りでお昼にしました。
秩父名物、わらじかつ丼にします。
えっこさんが「花子がCMで食べてるから知ってる」と言います。
(お笑いの花子が?大阪のイメージが強いから、むしろ串カツを食べていそうだけど)と思ったら、『花子とアン』の女優さんのことでした。駅のポスター見たことあったわー。



出されたかつ丼は、どんぶりからはみ出ていて、ボリューム感たっぷり。
薄いので、サクサクした食感です。
えっこさんが「わらじだから、2枚あるのね」と言いました。そうか、気づかなかったわ!



味が付いていておいしいですが、食べ始めるとかなりの量。
さらに味噌ポテトも注文したので、おなかがパンッパンになりました。
ふー、食べた、食べた。

○ 見事な連携プレイ

さて、パワーチャージできたところで、再び出発―!
32番から駅に戻るまでも時間がかかり、気が付けば、もう3時をまわっています。

あと行きたいところは、34番、そして苔不動。
34番はマストですが、苔不動は巡礼寺ではないため、行きたいわけを2人に説明しなくてはいけません。
「私、"関東36不動"巡りもやっていて、そのお寺の一つが近くにあるから、寄れそうなら寄りたいの」

この時間になってくると気になるのは、お寺が閉まる時間です。
秩父札所は基本5時までですが、山中の方は4時に閉まるところもあるのだとか。
前もって確認しないと、さらにもう一度来なくてはならないという悲劇につながりそうです。
そんな話をしながら、私がエンジンをかけている間に、二人ともすばやくケータイを取り出し、ショウが苔不動、えっこさんが34番寺に「今日は何時まで開いてますか?」と聞いてくれました。
わー、なんという鮮やかな連携プレイ!さすがわが友!
どちらも5時まででした。両方まわれそうです。よかった。
まずは、遠い場所にある苔不動から先に行くことにしました。

○ 秩父から長瀞方面へ

近くにあるとはいっても、実際にはなかなかの距離。かなり長瀞の方に北上することになります。
幹線道路をひたすら北に車を走らせます。
途中、「34番水潜寺」の表示がありましたが、そこで曲がらず、進み続けます。

何もないような広々としたところで、お寺の看板を見逃して行きすぎたりしながら、カーナビの到着時間通りに着きました。
4時少し前に到着。秩父駅から1時間ほどかかりました。
でも、ここから34番寺は、そう遠くないはず。
うん、時間内に参拝できそうです。



○ 苔不動の読経レクチャー

ここは秩父七草の萩の寺。
もう季節は終わってしまいましたが、参道には萩が植えられていました。

お堂は締め切っています。これまでずっと御開帳のお寺を巡ってきたため、閉ざされた扉をとりわけ残念に感じます。



呼び鈴を押すと、住職の奥様然とした人が出てこられました。
御朱印をいただき、秩父巡礼の話から、四国遍路の話になりました。
お坊さんの修行の大変さをうかがいます。
ここは弘法大師の真言宗のお寺なので、遍路と縁が深いのでしょう。

お坊さんの苦労話を伺って、さてではそろそろ・・・と言いかけたところに、奥様が
「あなたたち、お参りするときにちゃんと読経してる?」と言いました。
「は、はい・・・。」
今回は、人が多くて団体に譲っていますが、なるべく読むようにしています。
「どんな風に読んでいるの?」
「え、どんな風にって…」
突然の質問の意図がわからず、混乱します。
すぐに答えられずにいると、奥様は
「ここで読んで御覧なさい」とお経の紙をえっこさんに渡しました。
えっこさんが「はんにゃ~はらみた~」と、おそるおそる一節読み終わると、奥様は
「はんーにゃーーはらみーたーー」と、朗々と唱えました。
「抑揚を持たせずに、長ーくのばすと、誰だも上手に聞こえるわよ」と言いました。
「あ、は、はい」
えっこさんが応対しているので、数歩後ろに下がって、ショウのもとへ言って「時間大丈夫かな」とささやくと、奥様に「ちゃんと聞いてー」と言われたので、あわててまた戻りました。
このままだと、延々と謎の読経レクチャーが続いてしまいそう。
でも、刻々とお寺が閉まる時間は近づいてきます。

どうしようと思いましたが、話が一段落したところで、思い切って「すみません、ちょっと急ぐので」とおいとまさせてもらいました。
「さっき、行くって電話したから、気合を入れて待っててくれたのかもね」とショウ。
確かにそうかも。
「お経は、教本を読むのが正式な読み方で、暗記するものではないのよ」にはじまり、知らないお経の話を教えていただけて、ためにはなりましたが・・・。
奥様、済みません。私たちに残された時間は、あとわずかしかないのです!

○ 攻めでいきます

車に戻り、カーナビ登録。
またもや何度か検索に詰まった挙句、今度は電話番号で拾い出せました。
毎回ナビ登録をするたびに悩まされました。

到着予定時刻は、4時45分。ナビ通りに到着すれば、なんとか時間内にたどりつけそうです。
ただ不安なのが、駐車場が離れてやしないかということ。
車から降りて歩いている間に、お寺が閉まったら、三人で号泣するしかありません!
いい大人三人が!でも泣いちゃうもんね!
もはや修行とか精神鍛錬どころではありません。

なので、泣かずに済むよう、道を急ぎます。
幹線道路を通るのかと思いきや、ナビはどんどん山の方へと連れて行きます。
あれよあれよと言う間に、くねくねの坂道に。
峠越えをさせるようです。
急いでいるから、直進道路がいいのにー!
でも、もう別ルートを探している暇などありません。行くしかないのです。
気持ちを入れ替え、山肌をガツガツ攻める運転に切り替えると、二人はすぐに気づきました。
えっこ「グイグイいくね~」
ショウ「イニシャルDだー。ドリフト!豆腐置かなきゃ!」
私「やんちゃな頃を思い出すわ!」(ウソですよ!)

前方に車が見えてきました。車間距離を置こうと思った矢先に、その車は道を開けてくれました。
「わー、車をよけさせたー」
「えー、そんなつもりなかったんだけど!」
と、わいわい言いながら峠越えは終わり、うす暗い山道を抜けてもすでに、あたりは夕暮れとなっていました。

暗すぎて、道路の先が見えづらくなっています。
さっき、目のお寺を参拝したばかりなのに。
ハイビームをつけたりしながら進んでいくと、またもや前方に車を見つけました。

4台ほどつながっています。どうやら、前の車がゆっくりなので、数珠つなぎになっているよう。
明らかに、一番後ろの車が先を急いでいます。
私たちがその後ろにつく前に、前の車2台が道をそれ、空気を読んだ次の車が道を譲ってくれました。
そこを、4台目の車と、それに続く私たちの車が弾丸と化して通り過ぎました。

私たちもなかなかのスピードできましたが、前の車はそれ以上に飛ばしています。
「こんな場所であんなに急いでるなんて、きっと前の車もお寺に向かっているんだね」
そう話していた通り、前の車はまっしぐらに走り続け、その後をきっちりついていった私たちと一緒に、34番寺の駐車場へと滑り込みました。

○ 34番水潜寺



到着したのは、ナビの予想より早い4時35分。なんとか大丈夫そうです。
でも、お寺までの参道は、先の見えない急坂になっていたので、3人で悲鳴をあげました。
「足が疲れたー」
「お尻の後ろが痛いー」
ほかに上って行く人たちも数名おり、もちろんみんな急ぎ足です。
まさに駆け込み参拝。

急坂を上りきったところにある境内には、十数名の参拝者がいました。
ここでは、午前中一緒だったツアーバスの団体にはもう会いませんでした。
きっと私たちが食事をとっている間に訪れたんでしょう。



ここまでくればもう安心。ゆっくりと参拝できる・・・はずながら、おそらくは参拝者全員が御朱印をいただくため、待つ時間も必要です。
手早く参拝をして、御朱印の列に並びました。

自分の番になった時に、お坊さんは、御朱印を書く手を休めずに
「どこから見えたんですか?横浜?おや、ご苦労様です」
「これで結願、おめでとうございます」
などとずっと話しかけてこられました。
2月の大雪の時に、このあたりは43cm雪が積もったとか、この前クマがすぐ近くに出没したとか。
ずっと話を続けながら御朱印をしたためる人は初めてで、驚きました。



○ コンプリート万歳

御朱印をいただき、散華をいただいて。
再び参拝をします。
これで、秩父三十四カ所、結願しました。
コンプリート、バンザーイ!
ショウとハイタッチします。

今回が初めて参加のえっこさんは、御朱印はまだ5つですが、「今回一番大変なところを周ったから、ほかはなんとかなるよ!」
「あとはがんばれば歩いてでも周れるから!」と、2人で励ましました。
彼女は家から近いので、周りやすそうですし。

水潜寺からもう少し奥に行ったところに、華厳の滝もあります。
もう時間を気にすることもないし、レンタカーはまだまだ借りられますが、すっかり暗くなってしまったため、「町に戻ろうか」ということになりました。
すっかり魂が抜けた状態の私たち。
えっこさんが「あ、般若心経読もうと思ってたのに忘れちゃった」と言うまで、読経することさえ忘れていました。
さっき、苔不動の奥様に、スパルタ特訓を受けたばかりなのにー!

○ そして5時

5時になり、どこからか「夕焼け小焼け」の音楽が流れてきたときには、3人とも口をそろえて「あー」と言いました。
これで、この日の巡礼はおしまい。
お寺は閉まり、巡礼者は宿に戻ります。

34番寺からあとは帰るだけ。
お寺のそばには満願の湯がありました。
「巡礼を終えた後にこんな名前の温泉があったら、そりゃ入りたくなっちゃうよね!」
でも、今回は入りません。
だって家に着くまでが遠足のように、レンタカー店に着くまでが真剣勝負。
温泉でリラックスした後、車を運転するなんて高度な技は、私にはできませーん。

先を急がぬ気楽な道のりですが、距離があるため、秩父駅前に戻ってきたときにはもう6時半になっていました。
レンタカーを返して、ドライブもおしまい。
この日は7時間40分、107km走りました!
ひ、百キロ越えー!ビギナーびっくり。
そんなに走ったの?秩父って広いんですね。
考えていたよりもけっこう長い時間、運転をし続けていたんだなあと思います。
でもずっと楽しかったので、つらさはありません。とっても満足です。

○ かえでサイダー・あの蒸しパン

本当は3人で、カンパイしたいところですが、さっき食べたわらじかつ丼が、まだおなかのなかにずっしりと残っているので、食事をしたい気分にはなりません。
電車が来るまで、軽くお茶することにしました。

2人がコーヒーを頼んでいるところで、私はかえでサイダーを頼みました。
秩父産というので!
本当に楓の味がするサイダーで、おいしくいただきました。



隣のお店には「あの蒸しパン」が売られていました。
みんなで「あの蒸しパン」とつぶやきます。
「あのって、どの?」と2人は首をひねっていますが、私だけピンときました。
「あの花」からとっているんですね。



○ エピローグ

2人と別れて、帰宅したら、どっと疲れが出て、ベッドからしばらく動けませんでした。
とても楽しい一日でしたが、ずっと運転手をやっていたのは、初めてのこと。
いい経験になりました!
事故もなく、よかったです。

この日の巡礼のお寺の詳細について、こちらにまとめてあります。
          ■ 秩父札所巡礼4(2014.11.9)

並行して、いくつかの観音巡礼を同時進行していますが、結願したのは、これが初めて。
期限があるので、集中して取り組んだためですが、やっぱり巡礼って、簡単にはいかないもの。
いろいろと大変だったなあと、しみじみ思い返します。
でも、その分、やりがいと達成感がありました。

えっこさん、ドイツから帰りたての忙しい時に、付き合ってくれてありがとう!
またお寺めぐりしましょうね。
そして、多忙な中を縫って秩父に向かい、一緒に巡ってくれたショウ。
なにもわからないアメリカ帰りのあなたを、ディープな巡礼に誘ってしまったけれど、最後まで頑張ってもらえて、感激です。
がんばったショウに、いいことが起こりますように!
私の願いもかないますように!

ところで、ショウは「この巡礼が最後までできますように」と願っていたそうです。
私も「御開帳期間中にすべて周れますように」と祈願していました。
一緒じゃーん!
そして二人とも、すでに願いがかなってるじゃーん(笑)!

     ● 秩父巡礼記外伝 index