2日目からの続きです。
散歩の途中に予定外の山登りと森林浴をしていたら、目的地に辿りつけなかったのが前日のはなし。
一夜明けて、改めてそのルートの続きをたどることにします。
これができるのが、連休の近場めぐりのいいところ。
○ 東急エリアから京急エリアへ
二つ池のほとり(三ツ池公園のそば)に再びやって来ました。
前日は、ここから山の上の獅子ケ谷の森に入って行きましたが、この日は逆方向の、鶴見駅行バスルートに沿って歩いて行きます。
地図ではわかりませんが、この辺りは急こう配の丘がいくつもある、起伏が多い地域。
普段なら、鶴見駅は気分的に遠くて、歩いていく気になりません。
でも今回は、散歩が目的ですからね。歩いて行ってみるのです。
○ まるいねぎ坊主
どんどん歩いていくと、遠くに苔むしたサイロのような塔が見えてきました。
そこだけ北海道のよう。(あれは一体なんだろう?)と思います。
だんだん大きくなって近づいてきたと思ったら、それが目指していた鶴見貯水池でした。
地図にまん丸く描かれているので、どんなものか、前から気になっていたんです。
この前を通る道は水道道というんですね。
たっぷりとたまった水を眺められるものと期待していたのに、門は固く封鎖され「立ち入り禁止」の表示が。
えー、近くに寄れないのー?
道路沿いにぐるっと回ってみましたが、丸い貯水池の側壁しか見られませんでした。
がっかりだわ~。子供の時に、何カ所か貯水池を見に行ったことがあったのに。
その時には、なみなみの水面が見えたのに。
でもよく考えたら、それは浄水場のことでした。
「ねぎ坊主」と言われているこの配水塔は、もう利用されていないんだそうです。
1937(昭和12)年、鶴見の高台に飲料水を送る目的で作られましたが、代わりとなるポンプ場が完成したため、1973(昭和48)年にその役目を終えたんだそう。
ずいぶん前から廃墟になっていました。
それでこんなにレトロな雰囲気たっぷりなんですね。
交差点の道ばたには、馬頭観音の石像がありました。
屋根をかけられて、きれいに整えられており、地元の人たちに大切にされているなあと感じました。
ここは獅子ケ谷から鶴見へと続く道で、その名も鶴見獅子ケ谷通り。
坂を下りていくと、途中に「山神塔」と「見返し坂」と彫られた石碑がありました。
山越え途中の旅人が、ここで振り返って鶴見を通る汽車を眺めた場所だそうです。
この辺りまで来たら、鶴見駅まであともうちょっと。
さらに一つ山越えをして、総持寺の横を通っていきました。
総持寺横の成願寺(じょうがんじ)の入り口の、大きな山門が、リニューアルしていました。
ガラス張りの中の赤い仁王様が印象に残っていましたが、前の山門は黒くてもう少し簡素だったはず。
朱塗りとなって前よりも立派になりました。もうすぐ完成なのでしょう。
○ 恐怖の三角交差点
そうして鶴見駅前に着きました。
線路の向こう側に行きたいため、高架をくぐります。
とたんに交通量が多くなり、車が猛スピードで走り抜けていきます。
「鶴見駅西口入口」交差点の表示が出ていますが、ここ、私が苦手とする「三角交差点」に似ているわ!
通ったことがあるのはずいぶん前の話なのに、瞬時に思い出した名前。
地図を見ると、たしかに三角交差点のすぐそばです。
かつて鶴見にあった屋内プール、ワイルドブルーヨコハマが好きで、何度も行きましたが、車で行くといつも涙目になる恐怖の場所が、三角交差点でした。
だって見て下さい、三角どころじゃないんですよー!
何叉路なんでしょう、ひい、ふう、みぃ、六叉路ー!タサロです、多叉路!
レベル的にとても追いつきませーん!
すっかり忘れていたのに、怖さというものは鮮やかによみがえるものですね。
オドオドしていたため、草むらの黄色いものが動いたように見えて、キャッと飛び上がりました。
ニシキヘビがいるのかと思ったら、よく見たらそれはネクタイでした。
いったい誰がこんなところでネクタイを落としたの?
○ 関神社の神様
ようやく線路をくぐって駅の向こう側に行くと、すぐのところに、次の目的地の鶴見神社がありました。
特に前知識もなく、地図を見て(神社があるから行ってみようかな)と訪れただけでしたが、立派な神社だったので、嬉しくなります。
狛犬は石山の上にいました。カッコイイ、狼王ロボ!(違う)
摂社がいくつもあり、中でも「関神社」が気になりました。
初めて聞くような気がします。和算家の関孝和が祀られているのかな?
後で調べてみたら「咳、風邪の神社」だとわかりました。
風邪の神様とは予想外。ああ、咳とかけているのね!(笑)
境内の一番奥にもお社がありましたが、鍵がかかっていて敷地内に入れません。
富士塚のようだと思ったら、はたして富士浅間社でした。
おそらく、山開きの7月1日に開くのでしょう。
参拝後、元来た道を戻り、また鶴見駅西口入口交差点の横を抜けて、鶴見駅前に行きました。
さらに進んで、総持寺の前を通ります。
せっかく前まで来たので、お参りしていきたいのはやまやまですが、この大きなお寺の参拝には、かなりの時間がかかります。
あちこち寄り道している間に、そろそろ夕暮れ時が近づいてきたので、今回は先を急ぐことにしました。
○ 3両の鶴見線
線路沿いに歩いていると、向こうからJRの電車がやってきました。
何の気なしに目をやると、車両はたったの3両。
えっ、横浜を走るJRなのに、3両だけ?
はたと、鶴見線のことを思い出しました。
そうかあ、ここは発着駅だったわ。
走ってくるところを見られるなんて、レアだったわ。今の電車が今度は反対方向に通らないかしら。
ただ鶴見線は運行間隔が1~2時間に一本なので、そんなにうまい具合には再び通りません。
次はシャッターチャンスを逃さないよう、何度も振り返ってみましたが、通る気配はありませんでした。
○ 開かずの踏切
どんどん歩いて、生麦駅のそばまでやってきました。
この辺りも、かつて車ではまったことがあります。
生麦にあるキリン横浜ビアビレッジに友達を連れて行く時、線路を超えて海側に行く必要がありますが、この辺りの道は、ことごとく開かずの踏切。
長い列になって、通るまでに延々待たされたものです。
問題視されて、最近は少しは緩和されたと聞きますが、今回は踏切向こうには行かずに、眺めるだけでした。
○ マイナーな目的地
そうして、この日の目的地の杉山神社にたどり着きました。
長い参道が続き、長い石段に変わっています。上るのは大変そうですが、上らねばなりません。
目的地とするのは意外なほど、地味な場所。
ほかにも華やかな寺社はあれこれある中で、なぜこの観光色皆無の神社を目指してやってきたかというと、ここには私が好きな石工が作った狛犬があるからなのです。
飯島吉六という石工で、何代にもわたって名が引き継がれており、吉六狛犬ファンの私は、彼が手がけた狛犬のある寺社を訪ね歩いています。
つまり、目指した理由も地味でした!
ほとんどの人には「なんのこっちゃ」な話でしょうけれど、まあファンというのは、えてしてそんなものです(笑)。
○ コレジャナイ狛犬
息を切らしながら長い石段を登って、いよいよ憧れの狛犬にご対面~♪
なんですが、あれ、あれれ?
思わず足が停まります。こんな無骨なぶーちゃん狛犬は想像してなかった、よ・・・?
普段はもっとワイルドロマンチック(なにそれ)な吉六狛犬ですが、知っているものとは全く違うデザイン。
赤鼻のトナカイならぬ、ブタ鼻の狛犬(失礼)。
でも、彫られた文字を見ると、間違いなく吉六作品です。
依頼主が、魔除けになるようにゴツイものを注文したのかもしれませんからね。
(コレジャナイ)感満載で動揺しながらも、四方からしっかりと拝見しました。
神社に参拝すると、横には祖霊社がありました。
この地区から太平洋戦争に出征し、犠牲者となった三百数十名の青年を供養する神社。
そんなに大勢の若者が、この辺りから失われてしまったんですね。
まだまだ、爪痕が褪せることはありません。念入りにお参りしてきました。
違う道から帰ると、もう一体狛犬がいました。
こっちの方が吉六作っぽいデザインですが、別人によるものでした。
うーむ。謎が多いのもまたおもしろいもの。調査は続きます。
○ 一輪車のある学校
これで、この日の目的地は全部訪れました。
少しずつ、空は夕焼け色になってきています。
あとはもう帰るのみ。
かなり足はくたびれていましたが、夕日が落ちると暗くなるため、そのまま歩き続けます。
国道一号を渡って、白幡方面へ向かいました。
白幡神社そばを通ります。この神社にも吉六狛犬がおり、以前訪れています。
ここの狛犬は、ちゃんといつもの吉六らしい、ワイルドロマンチックなもの。
鶴見で活躍した石工なので、彼が手がけた狛犬はこの辺りに多いのです。
白幡公園沿いに、外国の家のような素敵な建物がありました。
道路向かいの学校の校庭には、一輪車が何台も置かれていました。
「学校で一輪車をするなんて、ハイカラ~。今どきの学校って変わったのね~」と思います。
今通っていたら、私も一輪車を簡単に乗りこなせているのかもしれないのにー。
と思ったら、そこはインターナショナルスクールでした。
たしかに、これが日本の学校だったら、あまりにも変わりすぎですものね。
○ せせらぎの道
車道からそれて、小さな流れに沿ったせせらぎの道を歩き始めました。
きれいに整備された遊歩道。大きな車道と平行しており、歩きなら断然こちらの方が楽しい小道です。
茂みの向こうにネコがいて、目が合いました。
流れはきれいで、コイもアヒルもいます。
アヒルに比べてコイが大きい・・・。
そのうちに、日が暮れて暗くなってきました。
しばらく歩いたせせらぎの道をそれて、水道道を通って西に向かいます。
ここは、先程訪れた鶴見貯水池から続く道。
それで水の道というのかもしれません。
帰り道、マンション前にある大きな壺が気になりました。
オーナーの持ち物かしら。
中にアリババの盗賊が潜んでいやしないかしら?
○ epilogue
そうして帰宅しました。
この日は30000歩以上歩きました。
旅先ではたまにあっても、近所でこんなに歩くことはありません。
鶴見への道は、山あり谷ありのロングコースで、地図で見るよりも遠いなあと実感。
それでも、時間がふんだんにある連休中なので、体力をセーブせずに歩きとおすことができました。
身近な場所でも、まだまだ行ったことがない場所は多いもの。
いい気分転換になった3日間でした。