風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

横浜工場夜景アドベンチャークルーズ index

2018-05-25 | 神奈川
[2018.5.9]
◆ 横浜 1 ←旅行記へ
 平日の夜、少し静かな横浜中華街で、飲茶とアヒルを頂きました。
 食後に、大桟橋から小船に乗り、ナイトクルージングに繰り出します。
 ベイブリッジを過ぎると、港の灯りがみるみる遠ざかっていきました。
  ● prologue ● 中華街で飲茶とアヒル ● もうすぐトライアスロン
  ● 大桟橋へ ● 夜の海に出航 ● 沖ではフルスロットル
  ● 本牧シンボルタワー ● 名物船長のガイド ● 本牧工場のキリン 
  ● 根岸のイルミネーション ● 燃え続ける炎



◆ 横浜 2
 根岸や本牧のコンビナートを海から眺めます。
 闇に浮かぶ、赤々と燃えるフレアスタックや立ち並ぶクレーン群の美しさ。
 なじみの港で、別世界に来たような新鮮な感動を満喫しました。
  ● 闇に浮かぶ光の城 ● 宇宙遊泳気分 ● 寒さと船酔い
  ● みなとみらいの光 ● TVに出た船長 ● ピア・象の鼻
  ● 冒険を終えて ● epilogue






横浜工場夜景アドベンチャークルーズ 2

2018-05-25 | 神奈川
その1からの続きです。

● 闇に浮かぶ光の城

クルーズ船に乗り、根岸の工場群を海から見学しています。
中でもひときわ目立つ、不夜城のように大きな建物が、私たちを出迎えてくれました。



それはJXTGエネルギー根岸製油所。
「光の城」という呼び名の通り、闇の中で煌々と輝いています。



隣の埠頭は、もう磯子エリア。
東京電力南横浜火力発電所やJ-POWER磯子火力発電所といった大きな建物が並びます。
石油コンビナートも、静かに佇んでいました。







● 宇宙遊泳気分

日中はかなりノイズに囲まれたイメージの工業地帯。
そんな喧騒は完全になりをひそめた、硬質感あふれる夜の工場プラント群と向き合います。
フレアスタックが、静かに炎を上げて、燃え続けています。





足元はゆらゆら揺れており、宇宙船に乗って、宇宙ステーションに接近しているような気分。
非日常的なのに、臨場感たっぷりでした。









● 寒さと船酔い

この日は日中ずっと雨が降っていて気温が低く、5月なのに冬に戻ったような寒さでした。
そんな日の夜に、岸からずっと離れた海の真ん中にいる、船上の私たち。
寒すぎて、ガタガタ震えます。
顔も手も冷たくて、今にも風邪をひいてしまいそう。
寒さに耐えかねて、帰りルートにはみんな、暖房が効いた船室に入りました。

ただ今度は、激しい揺れで、船酔いしそうになります。
極寒と船酔い、どちらがマシか。
う~ん、極寒ですね。
ほかの乗客は船室から動きませんが、私と友だけ、揺れに耐えながらまた外に出ました。
さっきまで座っていた座席は、すっかり波をかぶっており、スタッフに撤去されていました。
そこで、柱につかまりながら、両足を踏ん張って立っていきます。
もうクルーズ船だとは思っていません。海賊船に乗り込んだ感じです。

「え~、私はこの道50年、さまざまな船を動かしてきました」と、とつぜんアナウンスが語りモードに一変。
えっ?船長、自分の話をはじめちゃうの?
国内外の貨物船に乗り込み、キャリアを積んで、独立したそうです。
マイクを通して、彼の半生が語られましたが、船酔いしていた私は、正直あまり耳を傾ける余裕がありませんでした。

● みなとみらいの光



暖房の部屋から外に出て潮風を受けていたら、少しずつ船酔いが収まってきました。
ほかの人はあいかわらず暖かい船室から出てきませんが、船酔いよりは寒すぎる外の方が全然マシです。

再びベイブリッジの下を通り、湾内に戻ってきました。
みなとみらいの光の都市が近づいてきます。



船長は「行こうかな~、どうしようかな~」と言いながら、汽車道の方にまで入ってくれました。
わあ、屋形船に乗らないと見られないと思っていた、海からのみなとみらい近景だわ~。



甲板に立って橋の下を通ると、上から人々が手を振ってくれます。
「落ちよっかな~」「受け止めるよー」
知らない人と軽い会話を交わしながら。



観覧車やランドマークタワーを海から見上げながら、船は日本丸の方まで行って、また戻りました。





● TVに出た船長

みなとみらいから、今度は象の鼻埠頭の方へと向かいます。
波止場近くなって「え~、わたくしごとではありますが」と話し始めた船長。
「先日NHKに出ました。大岡川の桜の番組を観た人はいませんかー?」と、マイクを通して船長は私たち乗客に尋ねてきました。
「NHKドキュメンタリー:小さな旅"さくら色の水辺で~横浜市 大岡川~"」でした。

「あ、私、その番組観たわ」と友に話します。
ただ、船室の外の船尾辺りにいたので、返事をしても聞こえないと思い、声を上げずにいました。
船室内にいる人たちは誰も反応しなかったようで、
「えー、見てないの?」
「視聴率10%の番組だって聞いたから、10人に一人はいると思ったのに…」
「今日は12人いるのに…」
「休日の朝だったからかな…」
マイクを通した声が、どんどんしょんぼりしてきました。
船長、元気出して!あとで話すから!

● ピア・象の鼻

サンタバルカ号は、ゾウの鼻埠頭に着岸しました。
出航場所とは違う、この場所で下船します。



運転席から離れ、私たちの前に立った船長と対面したときに「番組、見ましたよ!」と話しました。
「えっ、本当に?」
日焼けした浅黒い船長の顔が、ぱあっと明るくなります。
「グランデ号を運転していたやつだよ」と船長。
「特別養護学校の子どもたちを乗せていましたね」



その番組では、子どもたちが満開の桜の花にタッチできるように、岸のそばギリギリまで寄ってあげたりしていました。
船長がボランティアで毎年子どもたちをお花見クルーズに招待していると番組で紹介されて、(立派な方だなあ)と思って観ていたのです。
あの永井船長が、あなただったのね!
うれしくなりました。

● 冒険を終えて

予想をはるかに超える、ハードボイルドな船の冒険。
ムーディさはまるでありませんでしたが、ワイルドでアドベンチャラスなシー・ジャングルクルーズでした。
加えて、いい人オーラがにじみ出ている船長のキャラがよくて、アナウンスを聞きながらずっと笑っていました。



夜の海の上で、こんなに爆笑するとは思わなかったなあ。
ハッピーな気持ちで船を降り、桟橋から手を振って、お別れしました。

● epilogue



キリンのようなガントリークレーンや、聖火のようなフレアスタック、そして輝き立つ光の城。
目を閉じると、今でも瞼の裏に浮かび上がります。
馴染んだ横浜ですが、海から眺めた光景は、想像もしなかった別世界でした。

近場なのに、遥か彼方、宇宙まで旅をしてきたような浮遊感です。
予想外にワイルドだったのも、スリル満点でワクワクできました。
予想以上に楽しかったひと時。
次は、京浜運河のコースにも行ってみたいなあ。


横浜工場夜景アドベンチャークルーズ 1

2018-05-24 | 神奈川
● prologue

GWが明けた水曜日の夜、横浜に向かいました。
この日は友人と工場夜景クルージングの予定。
この辺りだと京浜運河の工場夜景がメジャーですが、今回選んだのはちょっと珍しい、本牧・根岸工場夜景クルーズです。
友人の家がそちらの方にあるので、普段見知った辺りを夜の海から眺めるのもおもしろそうだと思って。

京浜運河コースの方は頻繁に催行されますが、こちらのコースは月に2回しかありません。そんなにマイナーなのかしら。
予約した日は雨予報でしたが、先に延ばすと梅雨になってしまいます。
天気を気にしながら、当日を迎えました。

● 中華街で飲茶とアヒル

食事付きツアーを申し込みましたが、届いた行程表を見る限りでは、添乗員はついていない様子。
現地集合ということで、友と中華街の指定のお店、北京烤鴨(カォヤー)店に行きました。
平日夕方のチャイナタウンは、いつもの殺人的な喧騒とはうってかわって幻想的。



横浜が地元の私たちは、中華街の通りの名前を聞いたらたどり着けますが、土地勘がない人だと、指定されたお店を見つけるまでに迷ってしまいそうです。
お店で添乗員さんやほかのツアー客と合流するものと思ったら、なんとメンバーは私達だけみたい。
あれ?たった2人でも、船は出るのかしら?
まあ、催行することは決まっているので、あまり気にせず、目の前でさばいてもらった北京ダックに舌鼓を打ちました。







この辺りの詳細は日記ブログで⇒ 『お肉もついてよダックちゃん』

● もうすぐトライアスロン

食事を終えて、次の集合場所、大桟橋ふ頭ビルに向かいました。
またもや自力での移動になるので、慣れない人は地図を手放せないでしょう。
私たちは海岸通りを歩いて直線コースで向かいます。

山下公園には、たくさんの白いテントができていました。
「週末に、2018世界トライアスロンシリーズ横浜大会があるんだよ」
「えっ、ここで?横浜港で泳ぐの?(ヒ~!)」
もっと郊外のきれいな海で泳ぐ方が、記録が伸びそうなのに…と思いますが、プロは水質なんて気にしないのかしら。

この週は毎日雨続きで、この日も催行されるか、ずいぶん気をもみました。
日中はずっと激しい雨が降っていましたが、夕方になって雨が上がったばかり。本当にラッキーです。
「日ごろの行いがいいからね!」とうそぶいていたら、急にまた雨がぽつぽつ降ってきました。
「神様が怒っているわ!」あわてて口をつぐみました。

● 大桟橋へ

大桟橋埠頭の乗船場に着くと、ほかにも乗客がいました。
参加者は、私たちを含めて12人。
私たちだけが食事付きコースだったようです。

空は、まだ雲が重く立ち込めていますが、とにかく雨は上がりました。
雲があっても、今回は天体観測じゃないので、問題なし。
雨で大気が洗い流されて、辺りのイルミネーションはとてもきれい。
期待できそうで、ワクワクします。



待っていた船は「聖なる小船」という意味のサンタバルカ号。
このコースが月に2回しか行われないのは、春は東風、夏は南風が強いために、なかなか催行できないのだとか。

● 夜の海に出航

「じゃあ、少し早いけれど出まーす」と船長。
空模様がまだ不安定なため、風向きを見ながらのスタートになりました。



ライフジャケットを着て船に乗り込み、さっそく出航!
海から見る横浜港のきらめく夜景は、とてもゴージャス。



海風を受けながら、横浜港を眺めます。
イルミネーションが、どんどん遠ざかっていきます。



山下埠頭を抜け、ベイブリッジの下を通りました。
マリンルージュとか、マリンシャトルとか、ロイヤルウィングとか、昼のクルージングの時にしか通ったことがない場所です。



● 沖ではフルスロットル

橋を超えた辺りから、船は大爆走!
「この間は何もないから、飛ばしまーす!」
船長はそう言って、ビックリするほどアクセルをかけました。
海なのでぶつかるものは何もありませんが、右に左に激しく船体が揺れるたびにバランスを崩して、私たちはキャーキャー大騒ぎ。

喜んでいるわけじゃありません。
もちろんスピードが出るのは楽しいですが、そのレベルを超えた暴走、いえ爆走ぶりです。
保安船に見つかって必死に逃走中のスパイ船かというくらいのフルスロットル。

● ハイスピードハイ

本牧の辺りになりました。本牧埠頭にあるシンボルタワーを海から眺めます。
絵になる光景ですが、とにかく船のスピードが速くて大揺れしすぎて、カメラを構えるどころか、取り出すこともできません。
根性でカメラを取り出した人も、「揺れて、ブレる~!」と叫んでいます。
みんなで海に放り出されないよう、座席につかまりました。

ザバーン!ザバーン!と波しぶきが立ち、私たちにふりかかってきます。
まさに荒波にもまれる小舟状態。
キャーキャー悲鳴を上げ続けても、おかまいなしに飛ばしまくる船長。
あまりになすすべがなくて、もう笑うしかありません。

ハイスピードすぎてハイになり、みんなでアハハ、ワハハと笑い続けていると、飛び散る波が容赦なく口に入ってきます。
「しょっぱーい!」
「なんてこったいー!」
ライフジャケットを着ているとはいえ、波しぶきが服にかかります。
私はスマホですが、ほかの乗客はスゴイ一眼レフを持っている人ばかりなので、みんな自分が濡れても、とにかくカメラを守ります。
(ちなみに今回は、友がスゴイカメラで撮影した美鮮明な画像を使わせてもらっています)

隣の人は「夜の海は怖いわ」としきりに言いますが、もはや怖いという感覚とは別の「なんか変!」という気持ちでいっぱい。
クルーズって、海の上をすべるように船が動き、「右手をご覧ください」とかいうアナウンスを聞きながら、カクテル片手に楽しむような、優雅なものじゃなかったの?
何の罰ゲームかというくらいに、夜の海の上で右に左に容赦なく揺さぶられ続けて、すでに息切れ状態の私たちです。

ライフジャケットを手渡された時には(波立っているわけじゃないのに、念のためかな)と思いながら着ましたが、十分必要だということがわかりました。

● 名物船長のガイド

船長は、運転しながらガイドもしてくれます。
舵を切るたびに「おーっとっとー」と言いますが、決して爆走モードは緩めません。
湘南爆走族ならぬ横浜爆走族!というレベルでスピードを出しまくっているのに、とぼけたようなのどかな口調。
「・・・のであります」という真面目な口調が、どことなくおかしみを誘います。
「ベイブリッジは、クイーン・エリザベス・ツーが通れる高さに設計されました」
といった、ためになることを教えてくれていますが、超高速にいろいろ麻痺して、変な笑いのツボが押されてしまっている私たち。
どんなアナウンスを聞いても、愉快な気持ちになって「アッハッハ」と笑い飛ばします。

● 本牧工場のキリン

真っ暗な海を進んでいくと、ぼんやり明かりが見えてきました。
近づくとそこは工場地帯の夜景。
この辺りに来て、船は速度を緩めます。
海からの光景を見るのは初めて。思ったよりも照明がしっかりとついています。
別の世界に来たみたい。





波打ち際に立つ、赤と白のキリンさんたち。
暗闇の中に浮き上がる、ガントリークレーン群を下から見上げます。
今にも四つ足歩行で動きだしそうな大迫力。





「あれ?クレーン船がいないなあ?」とつぶやく船長の独り言が、マイクを通してバッチリ聞こえてきます。
「雨だったから、船は沖に出しているんだよね」と友。
船長に教えてあげてー。







● 根岸のイルミネーション

さらに船は進んでいきます。
「あの辺が三渓園」と友がさしてくれた方を見ると、こんもり盛り上がった丘のシルエットが見えました。
この辺りの産業道路は、道路幅が広くて車通りが少ないため、免許を取りたての頃によく運転の練習をしたものです。



根岸の方までやって来ました。作業中のクレーン船があったので、船長はほっとした様子です。
搭状構造物が林立し、イルミネーションが光り輝く、特別な世界。



今は5月ですが、クリスマスシーズンの夜の街のよう。
観光のためにともされているわけではないのに、不思議な美しさがあります。
海から眺めている私たちは、上陸はできません。
陸に憧れて海から眺める人魚姫のような気分になります。



● 燃え続ける炎

大きな煙突から炎を上げて石油が立ち昇っています。
フレアスタック (flare stack) といって、余ってしまうガスを無害化するために、こうやって燃やしているのだそう。
暗闇にあかあかと生えて、オリンピックの聖火台のように荘厳。
感動的でさえあるその明かりから、目を離せませんでした。



ここは工業地帯で、実際には美しさとは無縁の場所ですが、夜になるとこんなにも幻想的でロマンチックになるんですね。



この世のものとは思えないほど非現実的な光景を前に、ただ心打たれる私たち。
切なささえも感じます。
誰もが言葉もなく、しばし見入りました。



その2に続きます。