風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

雪国ふれあいウェルネス体験 1-2

2017-07-05 | 中部(甲信越)
その1からの続きです。

● 浦佐から十日町へ

浦佐駅で今回のウェルネスツアー主催の方々と合流しました。
今回の主催者、十日町のタダさんは、自分の車で移動し、その他のメンバーはジャンボタクシーに乗り込みます。
角栄さんの横を通ると、手を振って見送ってくれるようでした。
車の中で自己紹介。琉球大学のノナカさんと雪を見ながら話が弾みますが、カーブの多い山道を通って行くため、酔いそうになります。



● やまのまなびや

車酔いしかけていたため、目的地に到着した時には、ボーっとしていました。
車道の両脇にできた雪の壁。細い道の奥に、木造の建物がありました。



「ここは旧池谷分校」と教えてもらいます。廃校となった小学校を改築し、"やまのまなびや"として地域で利用しているそうです。
ここで今回の参加者が全員集合し、自己紹介と挨拶をしました。



● 沖縄と雪だるま

その中には、沖縄から見えたご夫婦もおいででした。
ガブリエル(ギャビィ)さんという奥様は、新潟に来るのも、雪を触ること自体初めてだそう。
「雪を見たことは?」「ありますよ~。触ったことはなかったけど」
冬になると、沖縄の小学校には、北海道から発砲スチロールに入った雪だるまが届けられるそうです。
それで雪を見たことはあるそうですが、溶けてしまうから触るのは禁止で、眺めるだけだったとのこと。

1年生から順番に見ていき、6年生が見る頃には、おさわり禁止の雪だるまも、南国の暑さですっかり溶けてしまうんだとか。
うーん、聞くも涙の物語です。

雪が降る箇所は結構多い日本。
全く降らない場所は限られています。
そうか、沖縄の人は、雪合戦をしたことがないのね。

生まれて初めて雪を触ったギャビィさんの感動が、とっても新鮮。
「ふわふわかと思ってたらそうでもないのね」
私も、絵本でしか雪を知らなかった幼稚園時の頃は、そう思っていました。
もうちょっと早ければ、それでもふわふわのパウダースノーだったんでしょうけれど、3月に入ってしまうと、残念ながらシャリシャリのみぞれ雪になっています。



● 自立訓練法

新潟市から参加した男性は、東京と新潟を往復している若社長。
新潟の人なら雪に慣れているでしょう、と思ったら、新潟市は海沿いなので、ここのように豪雪ではないそうです。

まずはカウンセラー兼整体師のモリさんから、自立訓練法のレクチャーを受けました。
身体が温かくなるイメージトレーニングを行います。
普段だとこれで結構ポカポカしてきますが、ここは雪に囲まれた廃校。
石油ストーブはついていますが、床からの底冷えの寒さに足がかじかんでおり、ポカポカにはなりませんでした。
それで温かくなれたら、暖房要らずだったんですが。

● かまくらとアンパンマン

次に、チームビルディングのプログラムを体験します。
「さあ、雪と戯れましょう」ということで、ゴム手袋と長靴という慣れないフル装備姿になりました。
その格好で外に出て、かまくらと雪像を作るのです。
そう言われても、どちらも作ったことがないので、いったいどうすればいいのかわかりません。
雪を前にただ立ちつくすだけの私たちに、「考えるより動くこと!」と号令がかかりました。

現地のタダさんがシャベルを使って雪の壁をどんどん掘っていく様子を、見よう見まね。シャベルの使い方を教えてもらいます。
スコップなら植木の土いじりに使いますが、シャベル自体、これまで持ったことがあったかどうか。

男性陣が、かまくらの穴掘りを始めたので、ギャビィさんと私は石像づくりを担当します。
「何を作ろう?」
決まるまでに長い時間がかかるかと思いきや、ギャビィさんの「アンパンマン!」という鶴の一声で、あっさり決定。



描いたことはありませんでしたが、実際に作り始めると、ナイスなチョイスだったと分かります。
アンパンマンって、どこもかしこも丸いんですね。
だから作りやすいし、パッとわかるんです。
いいわあ、アンパンマン。
絵心が絶望的にない私ですが、今後なにか描かなくてはいけなくなった時には、アンパンマンに頼ろうと思います!



この時期の雪はざらざらと重く、水を含んでいて、氷に近くなっています。
ガリガリ削っていくようでしたが、作り始めると楽しくなって、集中します。
みんなで夢中になってシャベルを使い、かまくらとアンパンマンが完成しました~。
できあがったアンパンマンは、ちょっとしゃくれ顔。
かまくらは、雪のトンネルのようになったので、四つん這いになって通ってみました。



● 廃校のヤギ

やまのまなびやには、ヤギがいました。山小屋にヤギって、ハイジの世界じゃないですか!
角があるのとないのがいたので、オスとメスかと思いましたが、二匹ともメスだそう。
角がないのは、子供の頃に生えないように角のもとを焼いたからだそうです。
見返り美人ポーズをとってくれました。



かまくらづくりを終えて、ほどよくおなかも空いたので、お昼を食べに民宿かくらまで移動。
ウェルネス講座なので、モリさんに歩き方も教わります。
かかとで立たずに、足の指から自然に前に行くように歩くのがよいそうです。
最近は足の指で立っていない人が増えていて、バランスが悪いんだそう。

ただ、民宿までの道は下り坂にで、ちょっと後ろに重心を置かないと前のめってしまう斜面でした。

今回の主催者タダさんは大阪、モリさんは愛知出身。
二人とも土地の人ではなく、ここ十日町の池谷地区に移住してきた人たちです。
町おこしをしようとする若手の力を感じます。

● 二番目においしい蕎麦

雪道は、すべらないように小さな歩幅で歩くため、移動に結構時間がかかります。
ようやく民宿かくらの入り口に着きました。
今晩泊まる宿でもあります。



民宿の中はほかほかと暖かく、かじかんで棒のようになっていた手足がようやく動き出します。
見事なヒョウタン。そして、昔話に出てくるような、蓑や藁長靴。
「かさこ地蔵」の世界だわ。

全て、宿のご主人の手作りだそうです。



「ここの蕎麦は、十日町で二番目においしいよ」とタダさん。
一番じゃないんですね!
町で一番おいしいお蕎麦屋さんは、ほかにあるそうです。
でも一番より二番の方が、おもしろいですからね。


ギャビィさん撮影


次々に出てくるお皿にびっくり。こんなにたくさん?
どれもおいしくって、一番も二番も関係なくなります。
手作りのおいしさ。いいわ~。箸がスイスイすすみます。
たっぷりすぎるほどの天ぷらと手打ち蕎麦をいただいて、おなかいっぱいになりました。



部屋には薪ストーブがあかあかと燃えています。
最近では見かけは一緒の電気式をよく見かけますが、これは本物。
薪ストーブは身体の芯から温まります。
ふと見ると、火炎型土器がありました。いくつもいくつも。
ご主人が作ったレプリカだそうです。
ここのご主人は何でも作れるんですね。
シャベルを持ったら、きっとアンパンマンの全身像も作れちゃうことでしょう。

● 火焔型土器

昼食後には、笹山遺跡へと向かいました。
笹山縄文館という大きな建物の中に入ります。
一階部分がコンクリートなのは、雪対策仕様です。



ここは、火焔型土器が発掘された場所です。
縄文土器での国宝指定第1号となったことを、この地域の人たちは誇りにしています。
先ほど宿でたくさん観たのと同じ形のものが、ガラスケースに入っていました。
「これ、本物?」



違いました。本物は博物館に展示されているそうです。
同じ部屋には、ケースに入っていない大きな火焔型土器もありました。
この分だと、十日町市内には、火焔型土器のレプリカが数えきれないほどありそうです。
熊本のくまモン並みの数が出るかもしれません。
これだけ美しく、保存状態もいいのですから、人々が自慢に思うのもよくわかります。



● かんじき初体験

ここでガイドのコヤマさんと合流して、初めてかんじきを掃いてみました。
見るのも初めてのかんじき。忍者の「水蜘蛛」に似ているのかと思いましたが、別モノのようです。
結び方にこつが必要な様子。教えてもらって、みんな見よう見まねで、ぎこちない手つきで結わいて履きます。



履けました!やったあ!下を向いて必死に結んでいたら、頭に血が登ってフラフラになりました。
これから雪林の中に入っていくため、服の上から撥水性のズボンもはいています。
雪が降ったり止んだりしているので、菅笠も借りました。
どれも初めて。コスプレ気分でワクワクします。



準備が整ったところで、かんじきトレッキングに出かけます。
一度体験してみたかった雪上歩行。
でもまず、かんじきをつけると、普段のような歩き方ができなくなります。
幅があるため、足をピタッとつける「気を付け!」ができないのです。
これは自衛隊では使われないでしょうね~。そんなことないかな。

さて、かんじき姿で、分厚く積もった雪の上に立ってみることにします。
そろそろと、体重をかけみてても、ぐらつきません。
立てました!わー、すごいわ。雪の上に立ってるわ。
これがないと、ずぶずぶ体重の重みで下に沈んでしまうところです。

うふうふ、キャッキャと、ひとしきり大喜びした後で、ガイドさんのあとに一列になって続きます。
ガイドさん、けっこう速度が速いので、ビギナーの私たちは、カルガモの雛のように必死にあとをついて行きます。
それでも時々足を滑らせたりしながら。



川の中、雪が積もっているので、橋の上だと思ったら、違う場合があるそうです。
そうなると、人の重みで急に下に落ちてしまいます。
下の画像のように、です。
そうなると川に落ちてしまう。
橋があるか、渡る前に確認することが大切だそうです。



今いる場所の雪の下は、すでに道ではありません。
田んぼか何かでしょうか。道なき雪原が広がっています。
目の前をキツネが走っていきました。



どんどん山の斜面を登って行き、森に入りました。
木の周りは雪が浅いため、うっかり踏み込むと中に沈んでしまうと教えられます。



雪の上に残る獣の足跡をたどっていくと、足を踏み外すことはないけれど、体重の違いで人間は雪に埋もれちゃったりもするのだそう。

● 足跡クイズ

獣の足跡を発見しました。「これはなんでしょう?」とガイドさん。


キツネですって。


「ではこっちは?」


ウサギです。


前の方にいた私たちは、白ウサギがすぐ近くから飛び出して、一目散に走って行くのを見ました。
ラッキー!
「ついさっきまでこのうろの中にいて、人が近づいてくるからどうしよう、どうしようと考えて、いよいよ近づいてきたから、エイッと逃げ出したんですね」

「さらに質問です。これは前足と後ろ足、どっちでしょう?」
前にあるのが後ろ足、後ろにあるのが前脚でした。
ダッシュしていると、そうなるんです。

ウサギはマラソン距離を走っても、まったく疲れない脚力を持っているそうです。
ウサギとカメの話って、もしかして私たちの想像以上にすごく長い距離を競っていたのかもしれませんね。

● シシガミ様

お次に見つけたのは、ニホンカモシカの足跡。
天然記念物!貴重な動物じゃない!と思いますが、「この山にいますよ」とガイドさん。
ちなみにニホンカモシカはカモシカではなく、ウシ科なんだそう。
え~、シカ科ですらないの?まぎらわしいわ!
こんな雪原は、普通の鹿だとズブズブ沈んでしまうそうです。


ニホンカモシカ


この山に住むニホンカモシカは、人間が自分を捕まえないことを分かっていて、いつも悠々とこの辺りを歩き回っているそうです。
シシガミ様~!
「この辺りが縄張りなので、待っていたらいつかは会える」とのこと。
ただその前に、吹雪が来るかもしれませんが。



● ブナと湧き水

この辺りはブナ林。元々このあたりに多いのはブナの木で、明治時代に植林してから杉が増えたそう。
伐採せず、そのままのため、杉が我先に伸びようと花粉を出すようになります。
そうした杉が多すぎて、花粉飛散の症状はこの辺りでも深刻だそうです。

春になるとくしゃみが止まらなくなるというガイドさんですが、東京に行くと花粉症の症状がさらに悪化するとのこと。
都会だと、アスファルトの地面に落ちた花粉がPM2.5や排気ガスと混ざってまた舞い上がるため、なお体調に悪いそう。
土がないコンクリートジャングル、いやだわ~。



ブナは水分を保つ木で、近くには湧き水がこんこんと出ていました。
標高が高い場所に生える木で、十日町は標高はそう高くないものの、寒いから育つのだそう。


かんじきが途中で外れてしまった若社長。雪上で結び直していました。


十日町には美人林として名高いブナ林があります。
名前に惹かれて、前に訪れました。たしかにべっぴんさん揃いでした。
「美人林が美人なのは、きちんと剪定しているから?」と聞いてみます。
違いました。もともと細めで、植えた時期が一緒だから、揃ってきれいに見えるのだそう。
宝塚のラインダンスを思い浮かべました。

「ここのブナは樹齢250年くらい」とガイドさん。「江戸時代ですね!」と私。
「え、ええ...」即答すぎて、ちょっと引かれたような(笑)。



50mほど雪山を上りました。新雪を一歩一歩踏み進んでいくのは、けっこうきつくて、明日筋肉痛になりそう。
それでも登り道は、何も考えずにガイドさんのつけた足跡をたどっていけばいいのですが、帰り道は人の後ではなく、新雪を歩く方がいいと言われます。
そこでみんな、思い思いに新雪を踏みしめて、降りていきました。
かんじきをはいているからといって、常に雪の上にいられるわけではありません。
新雪だと、体重の重み分、かんじきごと少し雪に埋まります。

下り道が楽しくなってきて、うっかり先ほどの忠告を忘れて、木のそばに足を踏み込み、落ちていきそうになりました。
あぶないあぶない。



その3に続きます。



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