1日目からの続きです。
○ 鎌倉最古のお寺 ○ 巡礼古道をうろうろ ○ ハイランドの親切なおじいさん
○ 岩殿寺のお坊さんとハマ話 ○ 安養院のお地蔵さん ○ しらすづくし
○ 長谷寺のカッパドキア ○ 鎌倉最古の神社 ○ エピローグ
翌日は、ヒナと鎌倉で待ち合わせ。
昨日はのんびり散策デーでしたが、この日は違います。
坂東三十三観音巡礼という、観音様のお寺を訪ねるのです。
○ 鎌倉最古のお寺
まずは鎌倉最古のお寺、杉本寺に向かいました。
ここのお寺の雰囲気がとっても好きです。
古めかしい茅葺き屋根のお寺がなんとも風情があって・・・ん?
お寺は、すっぽりと幌に覆われていました。
さらに、用具運搬のためにスロープが組まれており、美しい苔むした階段まで見えなくなっていました。
去年の年末に訪れたときにももう足場は組まれていましたが、今回は完全に見えません。
参拝するたびに、どんどん隠れていっているわ・・・
私は何度も見ているので、妄想、いえ心眼で思い浮かべられますが、初めて訪れるヒナがかわいそう。
このお寺から、関東全土に渡る長い巡礼が始まるというのに。
おびんずるさまを撫で、木魚を叩き、ご本尊前で読経して、ご朱印を頂きました。
これでヒナも巡礼者の仲間入り。
私は、前回訪れたときにすでにご朱印をいただいていたので、今回はヒナに付き合ってきた形になります。
今年は午年、観音巡礼の年。
特別に、お寺ごとの散華もいただけます。
でも去年ご朱印を頂いた私は、いただけませんでした~、残念。
○ 巡礼古道をうろうろ
ここから、岩殿寺へと向かいます。
行ったことがないお寺。逗子寄りの場所にあるようです。
電車で行く方法もありますが、せっかくなので、古来より巡礼者が通ったという巡礼古道を通っていくことにしました。
源頼朝と政子も通ったんだとか。衣張山を越えていくルートのようです。
ただこの巡礼古道は、開発の波に押されて、すでに道が途切れがちになっているんだとか。
古道は山の中に入ったと思うと、すぐに細い一本道になり、うっそうとした杉の木立が立ち並ぶ自然の中に入ります。
標識や地図もなく「この道はどこに続いているの?」と不安になりますが、たまにすれ違う人がぽつぽついるため、「どこかには続いているんだね」とわかります。
延々と続く斜面を黙々と登っていくと、息が切れて会話も途絶えがち。
日光もさえぎられ、晴天続きなのに足元は山の水でぬかるんだ状態。
ハーハーいいながら一歩一歩山道を登っていくと、明るく開けた場所に出ました。
衣張山の頂上のようで、見晴らしがきれいです。
でも、そこからの道は正反対に2本、伸びていました。
標識がないから、どっちか分からないー!
少しでも通った人が多そうなほうを選んで、降りていきました。
ちらりほらりとすれ違う人は、さっきからご年配の男性一人ばかり。
登山でしょうか、巡礼でしょうか。
○ ハイランドの親切なおじいさん
閑静な町並みの住宅街に出ました。
高台になっている、その名もハイランド。
大きな公園らしき場所に出ましたが、またもや道が分からなくなったので、向こうからやってきたiPodを持った男性に聞いてみました。
すると「しばらく行ったところにある墓地を突っ切っていくんです。うまく道を見つけられればいいけれど、そこに出れなければ、かなり大回りになります」と、少し不安な情報。
「少し行ったらまた聞いてみて」といわれたので、今度は公園のベンチに座ってポケットラジオを聴いていた男性に尋ねてみました。
「あ~~、うーーん」と、かなり考え込んでいる風だったので(ご存じないのかな)と思ったら、道が複雑でどう説明しようかと悩んでいた様子。
「説明できないので、少し一緒に行きましょう」と、立ち上がってガイドをしてくれました。大恐縮です。
そのおじいさんは、坂の下の大町に住んでいて、いつもここまで上ってくるのだそう。
足腰が鍛えられていますね。
途中、いろいろな細道を通っていきました。
たしかにこれはわかりません。
「土日は、駅のほうには出ないよ。人も道路も混んでいるからね」
ゆとりある鎌倉人は、そうやって観光客の来ない場所でくつろいでいるんでしょう。
墓地のところまで案内してくれました。
「あとはここをどんどん降りていけば分かるから」
結局、1キロくらい案内してもらった感じ。
おじいさん、どうもありがとう!ああ、お名前を聞いておきたかったわ。
人に親切にしてもらうと、自分もだれかに親切にしよう、と思えてきます。
やさしさって伝わるものですね。
いちおう巡礼中なので、ふさわしい表現をして感謝を表しましょう。
合掌。(-人-)
さてさて、本当に墓地の中を通っています。
ここは日蓮が安国論を書いて捉えられそうになったときに逃げこんだ岩窟のあるお寺だとか。
「この辺りには、日蓮宗のお寺が多いよ」
本人がいた場所は、そうなりますね。
お寺の名前は、猿畠山法性寺。
3匹の白猿が、焼き討ちに遭った日蓮を助けて、この寺にある岩窟に案内したといわれているそうです。
山門には、見事な猿の扁額がかかっていました。
○ 岩殿寺のお坊さんとハマ話
それからも人に道を聞きながら、ようやくたどり着いた岩殿寺。
判りづらい場所にあり、車道にはいくつも表示がありました。
道すがら、水準点マンホールを見つけました。
社務所でご朱印をお願いして「その間に参拝してきます」と去りかけると、「ちょっとまって」とお坊さん。
「今ここで書いちゃうから。じゃないとお互いまた来ることになって、二度手間でしょう」
なるほど、合理的です。
さらさらと二人分のご朱印を書いている間、僧侶と会話を交わします。
横浜から来たと話すと「20数年前にね、横浜の本覚寺に9年間お勤めしていましたよ」とのこと。
「お寺の坂の下にバイク屋があって、よく利用していました。今ではもうないようだけれど、その時のバイクは今でもよく動いてね」
ヒナは(このお坊さん、ハマでブイブイ言わせてたんだ。ファンキーな!)と思ったそうですが、私は別の事を考えていました。
「私、本覚寺を参拝したことがあります。山門にアメリカ軍が塗った白いペンキのあとが残っていて」
ヒナが(えっ)と驚いた顔をしてこちらを見ました。
「そこの如意輪観音さんが、好きです」
そう言うと、お坊さんは「ほう、よくご存知ですね」と驚いた顔をされ、ヒナはさらに(ええっ)と、腰が引けていました。
「子年小机33観音巡礼で訪れたんです!」
ヒナの顔にははっきり(マニアック!)と書かれていましたが、違うんですよ~。
そこのお寺の如意輪観音は、とても小さくて、でも豪華で、とにかく印象的だったんです。
そんなお話をしてから、参拝しました。
長い石段が凄くて、またもやハーハー。静かなお堂でした。
将軍家とゆかりの深いお寺。拝殿横には、泉鏡花が寄進した池があります。
お堂の奥には岩でできた祠がありましたが、ロープが張ってあり、そばに寄れませんでした。
慈母観音は、よく目にしますが、慈父観音もおいでなんですね~。
お父さんとお母さんが、仲良く一緒に立っていました。
爪掘地蔵がありました。「弘法大師が爪で彫ったって?爪で?えー!?」と、ヒナのテンションが見るからにグングン上がっていきます。
ほかでも聞いたことがあるので、私は特に驚きませんが、たぶんヒナは初めて目にしたのでしょう。
リアクションが新鮮でおもしろかったです。
帰りに山門を出るところで、ヒナが「あ、大山のぶ代」と言いました。
目を向けると、確かに彼女の名前の千社札が!
同姓同名?いえ、きっとご本人でしょう。私たちのように、坂東観音巡礼をしたのでしょうか。
○ 安養院のお地蔵さん
この日の最難関、岩殿寺までの古道を、なんとかクリアできたので、あとはもう心配要りません。
あとは道も簡単。車道ぞいにまっすぐ歩いていきます。
トンネルを3つくぐってテクテク歩いていくと、次なる目的地、安養院がありました。
杉本寺もそうですが、ここは鎌倉33観音巡礼でも訪れた場所。
午年ご開帳期間のため、前は閉まっていた観音扉が開いており、ご本尊を拝観できました。
読経を済ませ、参拝後に本殿裏に回ります。
北条政子のお墓のそばに、私お気に入りの身代わり地蔵がいます。
前と変わらず、すやすやと眠っているそのお姿に、癒されるわ~。
ヒナはここでも、テンションMAXになりました。
ひどく気に入ったらしく「まさに寝てばかりいる自分みたい」と写真に収めていました。
「ちょ、お地蔵さんはみんなのつらい流行病を肩代わりしてくれているんですから!」
「でもおふとん、フカフカで気持ちよさそう。」
「ほんと、私もお昼寝したーい!」
まるで巡礼者の感想じゃありません・・・
それにしてもヒナは、さっきからお地蔵さんにばかり大きく反応しています。
変わったお地蔵さんが好きなのかも。
鎌倉二十四地蔵尊巡礼を勧めてみようかしら?
さっきハイランドで道案内してくれたおじいさんのおうちも、この辺りにあるようです。
「安養院はつつじがきれいなんだよね。まだちょっと早いなあ。」
黒澤明の墓もあると教えてもらいましたが、墓地には入りませんでした。
○ しらすづくし
ぐるっと大回りをして、また鎌倉駅に近づいてきました。
そろそろおなかも空いてきています。
生しらすの話をしたら「食べたーい」とヒナがネット検索をし、駅の近くの割烹料理屋に行ってみましたが、長~い列ができていたので、あきらめました。
割烹店なのに、若者に大人気!?
漁が解禁したからか、小町通り沿いでも「生しらすあります」の表示をちらほら見かけます。
そのうちの一つ、
「季節料理 魚河岸家」に入りました。
このお店も、客層は20代風の友達グループやカップルばかり。
みんな畳に正座をして、静かに和食を食べています。
渋いわ。いまどきの若者には、しらすが旬なのかしら?
私たちが頼んだのは「しらす三昧セット」。
運ばれてきた御膳には、「生しらす」「釜揚げしらす」「しらすの天ぷら」のしらす三昧に加えて、卵焼き・ごはん・お吸い物・お漬物・みかん。
どの料理にもしらすが使われていました。
かきあげにも、しらすの卵焼きにも、あの黒い目が見られます。
い、いただきま~す。
こんなにさまざまなしらす料理を食べたのは、初めて。
前の日、江ノ島で食べ損ねたので、この日食べられて、満足しました。
○ 長谷寺のカッパドキア
エネルギーを取り入れて元気になった私たち。
長谷寺まで歩いていくことにしました。
これまで、長谷寺までは江ノ電やバスなどを使い、歩いたことがありませんでしたが、安養院から道沿いにまっすぐ行った突き当りにあるお寺で、巡礼者は歩く人が多いとのこと。
天気もいいし、問題なさそうです。
おしゃべりをしながらてくてく歩いていきました。
長谷寺は、外国人姿の多さが印象的。
このお寺は、どの時期に行ってもきれいな花が咲いているし、全てがきれいに整えられていて、たしかに外国人には人気がありそう。
今はミツバツツジの季節でした。
サリーやターバン姿のインド人一家もいました。宗教関係なしね・・・
でも、着物姿の女性もいました。『細雪』みたいだわ~
坂東午年観音御開帳期ということで、お手綱が用意されていました。
高台になっているため、七里ガ浜と由比ガ浜が見渡せます。
「その向こうの、あの山を越えて、またこっちに戻ってきたんだねー」と言いながら見ると、あらためてよく歩いたなあという気持ちになります。
長谷寺は、いい雰囲気でのんびり。
お気に入りの日本一の木魚を眺めてから(撮影不可)、アジサイの頃には激混みで入れなかった弁天窟に入ってみました。
洞窟の中を、身をかがめながら進みます。
「トルコのカッパドキアみたい」というのが二人の共通意見。
小さな弁天様が数え切れないくらい奉納されていて見がいがあったし、楽しかったです。
絵馬も、さまざまな言葉で願いが書かれていました。
見るともなく見ていたら、
「かんけんにうかりますように」というものを見つけました。
かんけんって、漢字検定のことですよね?
漢検受けるのに全部ひらがなって・・・それで神頼みね、納得・・・
○ 甘縄神明宮
長谷寺のそばにある甘縄神明宮にもよりました。
ここは、鎌倉最古の神社といわれています。
初めに、最古のお寺、杉本寺を訪れたので、終わりは最古の神社で締めたいと思いました。
古都ですからね!(ちょっと意味不明)
写真に入りきりませんでしたがここの狛犬は、護国寺系でした。
神社の奥にもさらに石段がありましたが、この日、さんざん長い石段を上ったため、本殿までにしておきました。
これでこの日の巡礼はおしまい。
また鎌倉駅まで歩いていきました。
帰りの鎌倉駅のホームは、前日とはがらりと違って、ハイキング風の人でいっぱいでした。
○ エピローグ
ひたすら鎌倉を歩いた一日。起伏の多い道を10キロ以上は歩いたでしょう。
普段は江ノ電やバスについ乗ってしまいますが、結構歩いて周れるものなんですね。
今回は、たまたま2日間、行き先が近くになったために、ダブル日帰りの小旅行気分を味わえました。
2日あると、取りこぼしをフォローできるのがいいですね。
今回は、1日目に食べ損ねた生しらすを2日目に食べられて、満足しました。
海が近く三方を山に囲まれた鎌倉の地は、なかなか気候が厳しいところ。
いい季節に風光明媚な土地を散策するのは、本当に気持ちがいいものです。
花粉症が辛いと言って、初めはマスク姿だったのがいつのまにか取っていたヒナ。
海に近いから、さほど感じないそうです。
鎌倉の春を、存分に満喫しました。