風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

2019京都の初春 5-1(嵐山、東山)

2019-05-29 | 近畿(京都・滋賀)
4日目からの続きです。

● 嵐山へ

京都最終日は一日フリー。
前日までのような快晴ではありませんが、天気はどうにもなりません。



まずは嵐山へ出かけます。
バスと並行して走る嵐電。乗客同士で握手できそうなほど、近いです。



去年9月の台風21号に、嵐山も甚大な被害を被りました。
渡月橋の欄干が倒れたと聞いて気になっていましたが、今では復活して、人も車も渡っていました。



桜にはまだ早く、山の景色はさびしげ。

● 外国人だらけ

それでも観光客はたくさんいます。
特に外国の方々が、観光バスに乗ってワンサカやってきます。
以前は個人で動く外国人がメインでしたが、今ではガイド付きツアーに参加した団体行動の人が多い気がします。



この画像に移っている人は、全員外国の方。



静けさの漂う、美しい竹林。
人力車が駆け抜けていく様子は、とても絵になります。



野々宮神社の苔芝の変わらぬ美しさを見るたびに、いつもほっとします。



でも今では、竹林の道は、とってもワールドワイド。
画像の見えない下の方には、世界の観光客が大勢ひしめいています。
いろいろな国の言葉や歓声が飛び交って、アメリカのディズニーランドに行ったような感じです。



そんなインターナショナルな空間を抜け出して小高い公園に上がり、見晴らし台から保津峡を見下ろしました。
ああいい眺め。喧騒から逃れて一息つきます。

● 御髪神社

大河内山荘前を通って、二尊院の方へと向かうと、御髪神社の横に長い階段ができていました。
数年前まではこの斜面には道がありませんでした。
左側に残っている溝のようなけもの道を、上からおっかなびっくり、滑り落ちないように気を付けて、足を踏ん張りながら降りたものですが、いつの間にか階段ができたんですね~。
毎年京都を訪れていると、少しずつマイナーチェンジしていることに気づきます。



御髪神社は、日本で唯一の髪の神社。
髪に悩む人々だけでなく、美容の道に進みたい人たちもお参りします。
私が行った時にも、髪は問題なさそうな外国人の若者2人が参拝しており、女性2人がお守りを選んでいました。



その前にある小倉池は、水がほとんどなく、底が見えるような状態でした。
こんな小倉池を見るのは初めて。
『池の水全部抜く』のように、かいぼり中でしょうか?

● 落柿舎



どんどん道を歩いて行きます。
二尊院の「紅葉の馬場」と呼ばれる長い参道を眺めます。
今は春なので、紅葉もなく静か。



細道を曲がると、落柿舎が見えます。
おや、前よりもよく見えるようになった気がします。
ここ、以前は畑だったはず。ならしたのかしら?



道の周りも木が伐採されて、全体的に見通しが良くなっています。
観光用にでしょうか?
嵐山の自然が少なくなるのはあまりよろしくないような気がしますが・・・。

● 厭離庵



秋の紅葉の時期にしか公開しない、小さな庵は今日も静か。
中から、人の声が聞こえました。来客訪問中でしょうか。
どの季節にカメラを向けても、ちゃんと絵になる、いつもきちんと手が入ったところです。

● 嵯峨釈迦堂

どんどん進んで、お気に入りのお寺、嵯峨釈迦堂こと清凉寺に着きました。
豊国神社前にある耳塚はかなりの迫力で、おびえてしまいますが、ここには豊臣秀頼の首塚があります。
昭和55年に大坂城跡地から出土された豊臣秀頼の首を、昭和58年にここに埋葬したのだそう。
つまり、本当にここに埋められています。

ここには大坂夏の陣で命を落とした人々の供養塔もあります。
手を合わさずにはいられません。



境内には、八角形の変わった建物もあります。聖徳太子殿だそう。
法隆寺夢殿になぞらえた建築のようですが、特に何の説明もなく、いつも不思議に思って眺めています。



境内の塔頭。きれいに手入れが行き届いた庭です。

●「ほぁんほぁん」

京都の動物園にパンダはいませんが、前に向日町の辺りを歩いていた時に、パンダの絵が描かれた中華料理店があったことを覚えています。
かなりのインパクトで(わあ、パンダ!)と思いましたが、店の名前を思い出せず、その後検索しても見つけられずにいました。
それを偶然、嵐山で発見!



その名も「ほぁんほぁん」。皿うどんのお店だそう。
顔を入れて食べているパンダちゃん。かなり夢中ですね。
お店は向日町と嵐山の2店舗のみだそうです。
旅先で両方見られてラッキ-!いつか入ってみたいなあ。

● たこ焼きリベンジ

嵐山はみんなを引き付ける場所。
時間がたつにつれて、どんどん観光客が増えてくるため、この辺りで嵐山を離れることにします。
バスに乗って、一路四条大宮へ。
降りるとまっすぐ、錦市場に向かいます。

向かったのは、2日前に、あと一歩のところで食べられなかったカリカリ博士のスタンド。
まだお昼時間なので、生地はなくなっておらず、今度はちゃんと食べられました~。
お客さんたちで身を寄せ合ってベンチに座り、焼き立てをはふはふと冷ましながらいただきます。


満足~!


錦市場には、たこ焼きリベンジのためだけに訪れたので、目的を達成した後はサクサク移動します。



なんとなく京都風ののれんがかかった、大丸百貨店の入り口。

● 法然院

バスに乗り、法然院に向かいました。
ここもとても好きなお寺。少しご無沙汰していたため、久しぶりにお墓詣でをしたくなりました。
川沿いの哲学の道は、桜の木が両技師に飢えられていますが、まだ咲いていません。
春になったらさぞきれいなことでしょう。



フランス人旅行者が、道端の標識を見ながら「キンカクジィ、ギンカクジィ」と一生懸命発音している横を通って、法然院坂を上り、山の中腹にあるお寺へ。



山門を入ると、両側に白い盛り砂の白砂壇(びゃくさだん) があります。
あまりの美しさに、目を奪われます。別世界に来たみたい。



水を表わす砂壇の間を通ることは、心身を清めて浄域に入ることを意味しています。
そばで見ると大迫力!



境内には、江戸初期の再興以来「善気水」がこんこんと湧き出ています。



いつ訪れても緑豊かな、みずみずしい雰囲気のお寺です。



● お寺の墓地へ

お参り後に墓地の敷地へと向かいました。
お彼岸期間のため、お花を持ってお墓参りに来ている方々の姿をちらほら見かけます。



文豪・谷崎潤一郎のお墓参りをし、さて次は九鬼周造のお墓にご挨拶しよう、と思いましたが、探せません。
ずいぶん前に来たきりなので、わからなくなってしまったようです。

そこで墓地の清掃をしていた墓守のおじさんに聞いてみました。
すると「こちらですよ」と先導してくれます。

● R.I.P.

墓守のおじさんはとても親切で、途中の道々「これは京大の〇〇先生のお墓」といろいろなお墓を教えてくれました。
例えばこんな方々。場所柄、京大の学者さんが多いそうです。

・三味線の人間国宝、竹本越路大夫四世

・中国人に愛された戦前の東洋学者、内藤湖南

・京都帝国大学教授、同大学の総長になった考古学者の浜田青陵(せいりょう)、1881年2月22日 - 1938年7月25日)

・ノーベル化学賞を受賞した福井謙一の墓

・経済学者で共産主義者の河上肇

・日本画家の福田平八郎

さらに「田宮二郎のお墓もあるよ」と教えてもらいました。
お墓にはもちろん本名が書かれてあり、コカ・コーラのペットボトルがお供えされていました。
 
墓地にはキリスト教のお墓もあります。
「えー?」とびっくり。ここはお寺なのに。
「住職さんが大阪外大の人だから、オープンなんです」と墓守さん。
それ、理由になるのかしら~?

「フランク・ミュラーにお嫁入した人のお墓もあるよ」
フランク・ミュラー!あの高級腕時計のブランドオーナーですね。
奥様は日本の人だったとは。

「だから、スイスから時々TVクルーがやってくるよ」
説明を聞いて、(まさかとは思うけれど...)となぜか少し緊張しながら墓石を見ると、杉山さんの名前が書かれていました。
フランク三浦に訴訟を起こし、敗北したフランク・ミュラー。
三浦さんじゃなくてよかった!

● 九鬼周造

探す九鬼周造のお墓の前まで連れてきてもらいました。
自分一人では探し出せなかったかもしれません。
墓石の揮毫は彼の同僚の西田幾多郎によるもので、側面には西田が翻訳を行ったゲーテの「さすらい人の夜の歌」。
(Wandrers Nachtlied)の一節が刻まれています。
「よ、読めませんね…」「ですよね」

案内していただき「九鬼周造さんの本に感銘を受けて、お墓参りしようと思って」と伝えます。
墓守さんは「そうですか。ちょうどお隣のお墓がよそに移って、今は空いとるので、どうですか?」と勧められました。
いえいえ、とてもじゃありませんが、その辺りは超おハイソなエリア。畏れ多いわ!

● 台風の爪痕

前よりも木が伐採されて、ずいぶん見通しが良くなりました。
「台風21号の影響で、この山の木がかなりなぎたおされてしまったんです」
「えっ、京都市内でもですか」
「大木が折れるくらいだから、卒塔婆はもうめちゃくちゃ。
墓石も倒れてその辺ゴロゴロ。歩けないくらいになりました」
「でも、ここは重機が入れない場所なので、ボランティア30人がかりでひと月かけて、ようやくなんとか人が入れるようなところまで直しました」
大変です。おそらく嵐山でも思った「木がかなり伐採された」というのは、台風の影響でやむを得ずというところだったんでしょう。



「秋に鞍馬山に行ってきましたが」
「ああ、あそこもひどく大変なことになってるでしょう」
「本堂は平気でしたか?」
「それが、奇跡的になんとか無事だったんですよ。安心しました」

山門も無事で、よかったです。
関東の方には、そこまで大変な状況とは伝わっていませんでした。

● 新しい墓地

墓守のおじさんに墓地内をいろいろ案内してもらい、説明もしてもらい、本当に親切にしてもらいました。
たくさん説明を聞いたので、もはや誰のことかもわからないくらいになりました。

もっと下の方にも、新しい墓地が広がっています。
「広いんですね」
「そう、かつて住友(?ちょっと曖昧)があったけれど、返してもらったから」

稲垣足穂のお墓参りまでできるなんて。
奥様と一緒に眠っておいででした。

● さんしゅうの花

「あと1週間たったら、桜がきれいなんだけどね」
そのセリフ、いろんな場所で聞いています。
「でも、あの隅っこのところに早咲きの桜が咲いているよ」



「あと、さんしゅうってわかる?」
「?いえ、わかりません」
「庭のさんしゅうの木って歌あるでしょ」
「ああ、なんか聞いたことある」
「その花が、今ちょうど咲いているから、見ていってね」

宮崎県の民謡で、『稗(ひえ)つき節』山茱萸(さんしゅゆ)
庭の山椒(さんしゅう)の木 鳴る鈴かけてヨーホイ?



黄色い花でした。梅のそばに咲いていました。
墓守のおじさん、親切にいろいろどうもありがとう。
別れ際に「じゃあ、サンショウを見て帰ります」と言ったら、いったん歩きかけたおじさんが振り向いて、「サンシュウ!」と叫びました。
たしかにサンショウだと違う木になっちゃいます。
墓守のおじさんは、木々や花々に詳しいので、聞き逃せなかったんでしょう。



● ハイパーぶぶ漬けモード

京都人は冷たくて、よそモンには「ハイパーぶぶ漬けモード」を発動すると聞いて(なにそれコワイ!)と内心おびえていましたが、こんな風に親切な人も多くて、ありがたいものです。
商売と関係ないところでは、きっとみんな優しいんでしょうね。

その2に続きます。



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