風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

りんご王国おためし暮らし 5-2

2016-10-11 | 東北

その1からの続きです。

○ リンゴ園見学

yumさんとガイド付きの園内見学を申し込みました。
受付で「所要時間はどのくらいですか?」と聞くと、
「どのくらいでもいいですよ。好きな時間を言ってください」と言われました。
なんて太っ腹なんでしょう。
「え、えーと、じゃあ2,30分で」
「はい。じゃあ行きましょう」
すぐにガイドが始まりました。


落とさないでね~


○ 2度目の眺望  

リンゴ園を巡りながら、マンツーマンで解説してもらうという贅沢な機会。
まずは先ほどの展望台に再び上りました。
今度はyumさんとガイドさんも一緒。さっきよりは岩木山がきれいに見えていました。



整腸、ストレス解消、美容などに効果があるリンゴ。
日本一のリンゴ王国である弘前市では、6000戸のリンゴ農家が312万本のリンゴの木を育てており、年間16万tの収穫量があるそうです。
この公園には80品種のリンゴが1500本あるのだそう。
見下ろすと、リンゴ畑ははるか岩木山のふもとの方まで広がっていました・・・
「そう見えるでしょう。実際はそこまで広くなくて、そこの道から先は、ほかの個人の畑なんですよ」



縦に伸びるおもしろい形。一見リンゴの木とは思わなさそうです。

昔からリンゴ畑に柵はないそうです。
お隣さんの畑との境界には、ブルーベリーやスグリなど、違う植物を植えて目印にしていたとか。



『アメリカン・ビューティー』って映画にもありましたね。
映画の方は、薔薇の名前からとったものでした。
つまり、リンゴにもバラにもある名前なんですね。



「マンチュリカ」ってかわいい響きだな、と思います。ポカホンタスみたいな。
スミレのことをマンジュリカっていうんですって。
もっと詳しく言うと、日本種スミレのことをそういうそうです。
減産が満州だから、マンチュとかマンジュとか?
リンゴの品種名の説明にはなっていないんですけどね~。



印度リンゴはインド産ではありませんでした。
確かに、冷静に考えてみたら、そんなに暑い国ではリンゴは育ちませんね。
アメリカのインディアナ産なんだそうです。うーん、そっちだとは思わないなあ。

ニュートンのリンゴがありました。
「ケントの花」というそうです。「花」まで品種名になっているなんて、当時は実よりも花がメインだったんでしょうね。



気候が温かいからか、うっかり季節をかん違して咲いている花もありました。
今は秋ですよー。実がなる頃には冬になっちゃうよー。



リンゴの収穫期は、8月上旬から11月中旬までと長期に渡ります。
品種によって熟する季節が違い、まずは8月1日から「夏緑」のもぎ取りが始まります。
「わあ、夏緑なんて、きれいな名前」「聞いたことないでしょう」
「星の金貨」や「恋空」という名前もありました。
作った人が名付け親になるので、統一感はあまりないんだとか。



甘さも大きさも「世界一」だと名付けたら、今はもっと大きなものが出ているそう。
「大きさがわかるものないかな」とバッグの中を探しかけたら、ガイドのおばさまがスッと自分のスマホを出してくれました。
すばやい!キティちゃんかわいい!



ガイドさんは、園内の80品種すべてを食べたことがあるそう。
私もここで働かせてください!

いろいろな品種の解説をしながら「これはまずい」と結構言います。
どれも見た目は美味しそうなんですが。古い品種は仕方がないですね。

○ リンゴもぎ

見学しながら、リンゴもぎの収穫体験も行いました。
今、旬なのは「彩香(さいか)」。あかねと王林のかけあわせです。



楽しかった園内見学。歯に衣着せぬ解説がおもしろく、あっという間の時間でした。
わきあいあいと、ちょっぴり時間長めに、説明してもらいました。



終了後、yumさんに「どうしてそんなにリンゴの品種に詳しいんですか?」と聞かれました。
「えー、わからないのも結構ありましたよ」
「私、ぜんぜんわからなかった…」
毎年冬が近づくと、親戚からリンゴが箱で届き、親に「これはゴールデンデリシャス、これは黄王」などと教えられながら食べています。
知らぬ間に覚えていたんですね。ほかのフルーツは全くわかりませんが。



ヒヤマさんから連絡が入りました。駅の方での用を済ませて、これからリンゴ公園にやって来るとのこと。
合流できるかな?

○ シードル工房kimori

次はシードル工房kimoriへ。
数日前、代表にここの高橋社長のお話を聞くように、勧められたので、伺ってみたいところ。



リンゴ園の中にある、真っ白な三角屋根の建物。とってもステキ。
リンゴ箱が重ねられています。



アポなしだったので、ダメモトで係の女性に聞いてみると、やはり今は留守で、いつ帰るのかわからないとのこと。
ご多忙な方なんですね。



○ リンゴ園で飲むシードル

ガラス越しに、シードル工房の大きなタンクが見られました。
ここでkimoriのシードルが無ろ過製法で作られています。
お酒大好きのyumさんの食いつきたるや、半端ありません。

ここで醸造したてのシードルが飲めるということで、彼女が試してみることに。
「甘口と辛口がありますが」
「どちらもいただきます!」
さすがキャプテン!



私もひと口いただきました。どちらもおいしい。
両方から告白されたら、悩んじゃうわ~。(なに言っとる



「ウッドデッキへどうぞ」と勧められました。
リンゴ園の中のオープンデッキ。絵になるわ~。
かわいらしいテーブルと椅子は、リンゴ箱を使っており、椅子の高さはちょうどリンゴ箱一つ分、テーブルはリンゴ箱二つ分になるように作られているそうです。
細かなこだわりですね。



○ チルアウトタイム

醸造所をぐるりと囲むリンゴ園には、ハンモックがかかっています。 
ゆったりのんびりくつろげる空間。
揺られながら、枝越しに空を見上げます。
とても心地いいチルアウトタイム。ここで真っ赤なリンゴが色づくときに、シードルパーティをしたら最高だろうなあ。



リンゴ園を眺めて試飲をしながら女性と話しているところに、ヒヤマさんが合流。
これでハウスの3人が揃いました。

○ 木守りのお話

そうこうしているうちに、代表の車がやってきました。
すぐに会っていただけることになりました。
アポなしでお会いすることができるなんて、とってもラッキー。

シードル造りの全工程を自分たちで丁寧に行っているという高橋社長。
熱くリンゴ栽培について語ってもらいました。
「実は、リンゴの木は自然に伸びているわけではないんですよ」
なんと!
ほおっておくと、てんでバラバラに枝が高く伸びてしまうため、剪定が必要なんだそうです。
リンゴの木一本一本を。大変ですね。



「枝も、場所によって伸びるところと伸びないところがあり、栄養のいきわたり方が違います」
リンゴの土の下にはいろいろな植物がいて、様々な栄養を作り出しています。
加えて剪定の仕方によって、味まで変わってしまうんだとか。
木が育っていく場所、いい実がなる場所は、もうあらかた決まっていて、リンゴ農家はそこをうまく伸ばして育てていくのだそうです。

「さっきもいだ彩香の種を、植えて育ててみて下さい。
きちんと手間をかければ、きちんとリンゴがなりますよ。20年後くらいにね」
種を植えて、苗が育って幹となり、実を付けるまで、リンゴの木は20年かかるそうです。
長い付き合いです。



高橋さんのお話はどれも括目することばかりでしたが、一番驚いたのが「もともと青森はリンゴ栽培に向いていません」ということでした。
えーっ?青森といえばリンゴ、リンゴといえば青森。
なのに、向いていなかったって、どういうことですか?

「青森は寒すぎて農業に適さず、リンゴも始めは育ちませんでした。
でも、他の作物が全部失敗してしまったので、もう後がなくなってしまい、これでやっていくしかないという土壇場の状況から始めたんです」
もう後がなくなった・・・。
当時の追い詰められた北の民の、悲愴な決心がしのばれます。
そんな大変な歴史があったとは、知りませんでした。
北の大地は、リンゴにピッタリの土壌かと思っていましたが、寒すぎたなんて。

その大きなデメリットを克服すべく、人々は研究と改良を重ね、今に至ります。
機械化の進んだ今でも、手間をかけて人の手で一本一本、面倒を見ているんだそう。

「人間に接するのと変わりませんね。毎日木と対話しながら向き合っていると、恋をしているような気になってきます」
少年のように目を輝かせる彼。
恋する木守りとリンゴの木のおはなし。そうしてできるリンゴが、おいしくないわけがありません。



欧米のリンゴは小さいので、手でもがずに木ごと揺らして地面に落とすそう。
結構乱暴ですね。だから海外からの視察団が日本の収穫方法を見ると、とても驚くそうです。
一つ一つ手でもいでいくわけですからね。

また、後継者問題の話にもなりました。
kimori醸造所はリンゴ畑に囲まれていますが、その隣には広大な空き地が広がっています。
そこも、以前はリンゴ畑だったのですが、後継者問題で続けられなくなり、農家が手放したのだそう。

リンゴは接ぎ木なので、実質的には永遠に育つそうです。
それなのに、すっかりさら地になってしまった土地。
昔を知る人々は、切ない思いで眺めていることでしょう。

弘前は日本一リンゴ農家が多い町ですが、そのうち跡継ぎが決まっているのは2割、決まっていないのは5割、はっきりしないのが3割。
このままだと、数十年後には多くても今の半分に減ってしまいます。
そこに危機感を感じ、未来のためにもリンゴ栽培の魅力を伝えようと、高橋さんは日々飛び回っているそうです。



建物の横には、薪が積んでありました。
リンゴの薪です。
とても香りがよくて、アメリカでは大統領の客人がきたときなどにリンゴの薪で暖炉に灯をつけるんだそう。 
落ち着きそうですね。
次の週末には、このリンゴ園にテントを張り、薪ストーブをたくそうです。

ブランド名kimoriとは、豊作を願って数個の果実を木に残す風習から。
「木を守る人」の意味にも思えます。
高橋さんの熱いお話を聞いて、大感激した私たち。
彼のソウルが、まっすぐ伝わりました。

○ リンゴの惑星

「未来の代の子供たちに伝えることも、大きな役割だと思いますよ」
「リンゴの惑星、大阪でやらはりますね」とヒヤマさん。
そのポスター、事務所に貼られていて、三度見くらいしました。
だって『PLANET OF THE APPLES』ですよ。
『PLANET OF THE APES(猿の惑星)』に似せるなんて、おもしろいこと考えつきますね!



「僕も子供に混ざって聞きに行こうかな。年齢制限、あります?」とヒヤマさん。
「大丈夫。じゃあ"大きいお兄ちゃん"に当てるから、今日話したことちゃんと答えてね」と高橋さん。

私の祖母の実家は、青森市内にあるリンゴ園。
毎年そこのリンゴが送られてくるため、ついぞスーパーでリンゴを買ったことがありません。
送られてくるものの方が、ずっとおいしいですから。

遠い親戚もまた木を守っている人なんだなあと、改めて思います。
子供の頃に遊びに行ったきりですが、久しぶりに今度訪ねに行こうかな。

○ 3度目の眺望

お話を聞かせていただいたお礼を言い、2人に手を振って工房を出た時には、もう閉園の5時近くになっていました。
まだヒヤマさんが上っていないので、yumさんと3人でまたまた展望台へ。
私はこの日3回目。展望台への階段はけっこうきついし、私の場合は上りすぎですね。
毎回、一緒に上る人が増えているから、いっか。



岩木山がさっきよりもくっきり見えました。
反対側の景色もきれい。



ここを訪れた時には、それほど長居はせず、ひとしきりまわったら他の場所へ移動するつもりでしたが、お昼にyumさん、午後にヒヤマさんと合流し、園内見学をして高橋代表の話を聞いていたら、もう夕方。
二人に「途中で移動するから、すれ違いになって公園では会えないかも〜」と事前に言っておきながら、閉園までいたので「結局今日はどこにも動かず、ずーっとここにいましたね」と、笑いながら「主」扱いされました。
だって予想以上におもしろい場所だったから〜。
いろいろとリンゴのことを知った、実り多い一日でした。



リンゴ畑でチルアウトするのは、人間だけではありません。
ネコたちものんびりー。



帰り道で、収穫している方を見かけました。
一つ一つ手作業で育つリンゴ。
愛情が無ければやっていけません。
おじさんに感謝の気持ちをささげたくなる気分。
三人とも黙って足を止めて、彼の作業に見入りました。



下にアルミを敷いたリンゴ。なぜ敷いているのかは、青池ドライブのときに代表に教えてもらいました。
食べごろになって、収穫の時を待っています。



真っ赤っかでおいしそう。手にとる人を喜ばせてあげてね。



その3に続きます。


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2 Comments

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Unknown (アネッティワールド)
2016-10-12 15:06:00
りんご大国に釘づけ。
高い時も安い時も
毎日リンゴを食べる習慣がついてます。

それぐらい好きだし身体にいいので
いただいています。

だから憧れる場所なんですよ。
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アネッティワールドさん (リカ)
2016-10-12 16:48:09
今回は普段以上に細かく書いているので、読んでいただく方も大変だろうと思います。
リンゴ、毎日食べているんですか!すばらしい!
健康にいいですもんね~。
大阪出身・在住のメンバーも数名いて、とてもよくしてもらいましたよ(#^.^#)
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