風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

新緑の津軽ひとり旅 1-1(青森)

2019-07-23 | 東北

● prologue

十連休のGWが過ぎて落ち着いた頃、帰省する母について、青森に行くことにしました。
久しぶりに帰る母は、人と会う予定がてんこもり。
行き帰りのみ一緒で、青森滞在中は別行動を取ります。

「はやぶさに乗るのは初めてで、ワクワクするわ」と母。
「どれだけ里帰りしてなかったの?」
東北新幹線・はやぶさの登場で、青森までのルートはずいぶん快適になりました。

● 新幹線のエンジェル

朝5時半に起床し、6時過ぎの電車で東京へ。
家を出たのは早かったのですが、平日の電車はすでにそこそこ混んでいて、座れません。
通勤戦争は朝から始まっているのね。
なんとか東京にたどり着き、東北新幹線のホームへ。
新幹線エンジェルの方々がてきぱきと清掃をするのを眺めていました。



『新幹線お掃除の天使たち』(遠藤功)という本に、東京駅の東北・上越新幹線の折り返し時間は12分と書かれていました。
乗客の降車に2分、乗車に3分かかり、残りの7分間でエンジェルたちは車両清掃、ゴミ出し、座席カバーの交換、忘れ物チェックなどを行います。
限られた時間なので無駄な動作はなく、みんなキビキビとしています。

● はやぶさ3号

7:36発の「はやぶさ3号」に乗車。
大宮を出ると、仙台までノンストップ。

以前住んだことがある仙台。
その後私は何度も訪れていますが、それきり一度も降りていないという母。
駅前の七十七銀行を見て、懐かしがります。
銀行口座を持っていなかった私は(ななじゅうなな、フーン)とボーッと眺めているだけです。



● こまち分離

盛岡に着くと、通路を挟んで同じ列の男性が、いそいそと外に出ていきました。
荷物がそのままなので(キオスクで買い物かな?)と思いましたが、思ったよりも長く停車しています。

ここで、秋田に向かうこまちと連結切り離し作業が行われ、男性はその様子を見に行ったのだと気づきました。
私も見に行くんだったなあ。

盛岡辺りから、ぐっと家が少なくなりました。
車窓から雄大な奥羽山脈が、裾野まで広がって見えています。

● ヌマクナイ

「いわてぬまくない」という知らない駅名もありました。
いわて沼宮内と書きます。
不思議な響きだと思ったら、ヌマクナイとは「町の後ろから湧き出る川」を意味するアイヌ語だとのこと。
新幹線の停車本数が一番少ない駅だそうです。

盛岡から先は、結構細かく停まっていきます。
盛岡→いわて沼宮内→二戸→八戸→七戸十和田→新青森。
なかなか終点にたどり着かず、この期に及んで焦らしてくれる、イケズなハヤブサ君です。

停車するごとに、周りの乗客は、何回か交代していきます。
私達のように、最初から最後まで乗っていく人は、それほどいません。
一人で乗っていると、もう寝るしかないくらい時間を持て余しますが、連れがいるとそうでもありません。
この日は朝が早かったので、駅弁を食べたあとは、二人ともうつらうつら眠っていきました。

● 新青森着

7時半すぎに東京を出て、11時に新青森に到着。
新幹線に乗ってさえ、こんなにかかるなんて、やっぱり青森は遠い…。
というより、東北が広いんですね。

母にとって初めて降り立つ駅ですが、感動している風もなく「さあ降りるわよ」とテキパキ動いています。
母の姉妹たちがみんなで集まって、到着を待ち構えているらしく、母はタクシーで飛んでいくと、急いでいます。
青森まで電車で行く私とは、ここでお別れです。


手前が在来線のホーム。その背後が新幹線ホーム。



● タクシー来ない

電話でタクシーを呼んだら「5分後に行きます」と言われたものの、全く来る気配がありません。
15分後にようやくやってきたので、荷物を引いて近寄ったら、「違います」と言って、ブーッと去っていきました。

「おかしいわね」と母が電話をかけ直していると、休憩していた個人タクシーの運ちゃん2人が「待ってるのに来ないの?」と声をかけてくれました。
「はい」
「南口って言った?」
「え?」

今いる場所は、正面口だと思っていたら、南口でした。
あわてて電話中の母に伝えます。
正面口でおそらく待っているであろうタクシーを、南口に移動してもらうことに。

「来ない来ない」と待ち構えていましたが、タクシーに罪はなく、間違えていたのは私達でした。
正面口と南口は、それほど距離はありません。

個人タクシーの運ちゃん2人は「あ、急いでやってくるタクシーがいるよ。きっとあれだよ、良かったね」と言ってくれました。
ライバル会社のことなのに、親切にしてくれて、どうもありがとう!
予約してなければ、乗せてもらいたかったです!

タクシーに乗り込んだ母は、「じゃあね!」と言ったきり、後ろも振り返らずにあっという間に去っていきました。
見送っている娘のことなどもう忘れたに違いありません。
クールな母です。


青森市のマンホールはねぶた柄。これはイラスト埋め込み版でしょうか。



さて、私は青森駅へ向かいましょう。
北に来たというのに、夏のように暑い日です。まだ5月なのに!

● 歓迎モノいろいろ

新青森駅構内に戻ると、のどかな顔ハメパネルがありました。


逃がせばまいねよ~



(ゆるいわ~)とほのぼのしていたら、なんだかクワッと怒っている鳥のねぶたもいました。
ワー、つつかれそう!
さすがはねぶた、鳥さえも迫力満点でこわい~。



高さ5mの巨大な「梅沢富美男かかし」もいましたが、こちらは全くこわくありません。
ちなみに去年は「ピコ太郎かかし」でした。
どちらも青森ゆかりの人です。

● 今見られる花

在来線に乗って、青森に到着。
駅前ロッカーに荷物を入れて、まずは情報収集のため観光案内所に行きます。

今回の旅は、あまり予定を立てていません。
青森には夏か冬に来ることが多く、今回のような春のいい季節に来る機会はなかなかないので、お勧めを教えてもらおうと思います。
青森の桜はGWあたりに咲きますが、5月下旬にもなるとさすがに終わっています。
その後に咲くのは林檎の花。白いきれいな花が一面に咲く様子が見られるかしら。

そう聞くと「あー、もうほぼ終わっちゃってますね」と言われました。
「先週までなら見られたんですが」
なんと!一足遅かった!

白神山地に行きたいとも考えましたが「6月にならないとバスが出ないんですよ」と言われて、これも断念。
シーズンオフの間は、自家用車かタクシーでいくしかないんだそう。
うーん、無理だわ~。

青森の交通の便の悪さには、これまでも散々悩まされてきました。
レンタカーかレンタバイクにしたらどれだけ楽かと毎回思いますが、普段運転していないので、恐ろしすぎます。
自分の運転レベルを知っているだけに、慣れない土地で一人運転をする気になれず、いつも不便さを耐えながらの移動になっています。

たとえ林檎の花が見られなくても、りんご公園には行きたいなあ。
翌日は一日中雨の予報。
晴れの日に岩木山を見ておきたいので、まずは弘前に行くことにしました。

● りんごジュース販売機

駅には、りんごジュースオンリーの自動販売機があります。
さすがはリンゴの国!



しかもよく見ると、いろいろな品種のジュースになっています。
左から、ブレンド、きおう(黄王)、つがる、王林、ふじ。
ちなみにほかに、トキとジョナゴールドもあるそう。

これは他県では見ないでしょうね~。
全部飲み比べしてみたーい!



● さみしい時刻表

みどりの窓口で「津軽フリーきっぷ」を購入。
2日間で弘前周辺の電車やバスに乗れる周遊券です。
今の時間は12:10。弘前行きの電車はというと、13:36までありません。
1時間半もあとになっちゃう~!



ご覧ください、これが県庁所在地、青森駅の時刻表でございます。
1日で、たったこれだけなんです!
1時間に1本、いえ0本の時間帯もあります。
中でも津軽線は危険ですね。

地方で頼りの公共交通機関ですが、本数の少なさが泣かせどころ。
周遊券を持っているからといって、行きたい場所にスイスイ行けるわけではありません。
ちゃんと時刻表を見てプランを立てないと、あまり動き回れないのです。

● しかへる君

みどりの窓口には、案内ロボット「しかへる君」がいました。
小さくてかわいい!
おさわり禁止で、おしゃべりのみです。



ヘラジカみたいな名前ですが、鹿でもないしヘルメットもかぶっていません。
「しかへる」とは、津軽弁で「案内する」という意味なんだそう。
うーん、見当がつかない~!

トークは、至ってスラスラと滑らかな標準語のしかへる君。
津軽弁バージョンのロボットがいたら、お目にかかりたいものです。

● 八甲田丸

しかへる君はキュートですが、ずっと相手をしてもらっているのも悪いし、イタイ人すぎます。
駅前周辺を散策することにしました。



ポールの上の飾りがいかり型。上から見下ろさないと、なかなか気づきません。

停泊している八甲田丸。船体の黄色が緑によく映えています。
雪景色の中で見ることが多いので、緑深い5月に見ると、また雰囲気が違います。



かつて、青函連絡船は車両ごと入れて、津軽海峡を越える「車両航送」をしていました。
人は電車から客船に自力で移動してくれますが、貨物を移動させるのは大変なので、貨車ごと運び込んだというわけです。
その名残で、線路が海上の八甲田丸のところまで伸びています。

● 切れたラブリッジ

海沿いの展望台に登ると、人の気配がしました。
床を見ると、人が転がっていたので、ビックリ。
なにかの事案!?


隣は八甲田丸



いいえ、上半身真っ黒な男性が、気持ちよさそうに寝転んでいるところでした。
おじさーん!そんなところで昼寝しちゃって。
目下、絶賛日焼け中。事件のにおいはありませんでした。

おじさんの安眠を邪魔しないよう、少し離れた場所から、ウォーターフロントを眺めました。
真横からのアスパム、青森ベイブリッジ、そしてラブリッジが見えます。



・・・ん?
ラブリッジが途中でパックリと切れていました。
えー、どうしたの?これじゃあ歩いてたら落ちちゃう!
今は、通行止めになっていました。
人工干潟工事を行うためだそうです。

● ワ・ラッセ

それから「ねぶたの家 ワ・ラッセ」の方へ。
リンゴの赤色は、青空によく映えますね。



ワ・ラッセのモダンな入り口。
ネオ・伏見大社の鳥居のようでした。



● 品種ごとのりんご味

朝から日差しが眩しい日ですが、昼時間になるとさらに気温が上がって真夏の暑さ。
29.2度です。東京よりも暑いんじゃないかしら。
気候のいい5月なのに、夏休みのような気分になります。
今度はワ・ラッセの向かって左、ギザギザ屋根の「A-FACTORY」へ。



いろいろな品種のりんごジェラートが売られていました。
青森では、ジュースにしろアイスにしろ、りんごの品種ごとの味が出ているんですね。

たしかに、味の好みは人それぞれ。
母は多少酸味のある「ふじ」、私は甘~い「王林」を好みます。
でも、この中だと「あかね」が気になるわ~。味がよくわからないから。



● 弘前行きの電車

弘前行きの電車の時間が近づいてきたので、駅に戻りました。

JR奥羽本線、いえ、青森県内を走る電車の中でも、青森-弘前間は一番利用客が多い路線だろうと思います。
なのに、電車が改札から一番遠いホームに着くのはなぜでしょう。
日本一の短命県に住む県民たちを強制的に運動させるという、隠れた目的があるのでしょうか。

ホームを移動中、かすかに流れている歌に耳を澄ませると「青森駅で~♪」と歌っています。
青森駅から都会に上京する彼女を見送る、なかなか切ない歌で「なごり雪」に青春っぽさを入れて"ゆず"風にした感じ。
誰が歌っているのかな?今度駅の人に聞いてみようっと。

● 静かな発車

始発だからか、電車は発車時間の15分ほど前からホームに着いていました。
青森では、電車は時間が来ると静かに発車します。
発車ベルがジリジリ鳴り、音がやむとドアが閉まって動き出すシステムではありません。

電車の本数が少ないので、長らくホームを占領していられるからかもしれません。
また、ギリギリの時間に必死に駆け込んでくる人もいません。
そのあたりの感覚が、東京近辺とは違います。

再び新青森に着いた時には、11時に新幹線を降りてから、すでに1時間半以上が経っていました。
新青森駅のロッカーに荷物を入れればもっと時間を短縮できたのですが、よもやここまで電車が少ないとは思っていなかったのです。
まあ、急ぐ旅でもないので、別にいいですが。



弘前駅を過ぎると、車窓には水田風景が広がります。
ああ、のどか。

● 浪岡のりんご園

浪岡地区は、りんごの生産日本一の町。青森市内全体の約95%を生産しています。
(ちなみに、りんごの生産日本一の市は、弘前市です)

浪岡駅の辺り一帯にリンゴ畑が広がっているため、レンタサイクルしてリンゴ畑をめぐろうと思っていました。
ただ、電車の両側に広がるリンゴの樹々は一面緑で、白い花はもう咲いていません。
もう咲き終わっちゃったのね。うーん、残念。



祖父の妹は、浪岡のりんご園に嫁ぎましたが、どのりんご園か、母にももうわからないそうです。
祖母の実家もりんご園で、小さい頃に何度か避暑に行ったことがあります。
リンゴの木陰を、イトコと追いかけっこして遊んだ思い出。
なので、青森の人はみんな、りんご園にルーツがあるような感覚でいます。
たぶん、違うんでしょうけれど。

リンゴかわいや、かわいやリンゴ。
たとえお米に困っても、おそらくリンゴに困ることはないだろう、青森ルーツの我が家。
幸せです🍎

その2に続きます。



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6 Comments

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Unknown (アネッティワールド)
2019-07-24 14:48:01
読んでる途中でコメントせずにはいられなくなって・・・

なんと親切な個人タクシーの運ちゃんなんでしょう。
別な会社なのに
青森全体のことを考えているのか
県民性が出てていいですね。

新幹線で3時間半とはやはり本州最北端は遠いですね。
新大阪より遠いんだ!
ペットを飼ってると新幹線での移動が少なくなりました。
電車の旅もいいもんだなぁと思います。
では続き読みます(笑)
応援P
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Unknown (リカ)
2019-07-24 16:52:11
アネッティさん

途中でのコメント、ありがとうございます☺
青森の人は親切ですね~。それは感じます。
北国だから?でも関西の人も親切ですね。

そう、青森は大阪よりも全然遠いんですよ。心の距離もなんか違います💦
ワンちゃんが乗っても、疲れて寝ちゃうでしょうね!
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Unknown (アネッティワールド)
2019-07-25 14:24:16
昔に比べ果物の種類も増えてきました。
それに品種改良で味も良くなりましたね。

でもやっぱりりんごが好きなんですよ。
スーパーで買うと当たりハズレが大きくて
ジュースになっちゃう場合も多いですが
硬くてジューシーで真ん中が蜜になってる
リンゴがたまりません。
毎年故郷から送ってくるリンゴが楽しみです。
りんごジュースの自販機、片っ端から飲みたいです(笑)
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Unknown (リカ)
2019-07-26 09:06:57
アネッティさん、🍎お好きなんですね。
故郷はどちらなんですか?
林檎が送られてくるといったら…長野か青森??
まさかアメリカ…!?

あのリンゴの自販機があったら、夏バテにもかからずに済みそうですね😉
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Unknown (アネッティワールド)
2019-07-28 06:07:10
私の生まれは大阪ですが
母は東京で生まれたあと疎開で山形に行き
親戚が東北一円にいるんです。
だからサクランボ・りんご・柿・桃が
送られてくるんです。
楽しみで楽しみで。
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アネッティさん (リカ)
2019-07-29 19:37:00
わあ、そうなんですね。山形はフルーツ天国ですからね~。バリエーション豊かで、何を食べてもおいしい😉

疎開されたとは、お母様都会っ子だったんですね。「窓際のトットちゃん」を思い出しました☺
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