MAC3A and MAC3B mediate degradation of the transcription factor ERF13 and thus promote lateral root emergence
Yu et al. Plant Cell (2024) 36:3162–3176.
doi:10.1093/plcell/koae047
In Brief
UnERFing auxin-mediated degradation in the emerging lateral root
Rory Osborne Plant Cell (2024) 36:2978–2979.
doi:10.1093/plcell/koae079
側根形成は植物ホルモンのオーキシンによって厳密に制御されている。シロイヌナズナでは、転写因子ETHYLENE-RESPONSIVE ELEMENT BINDING FACTOR13(ERF13)が側根の出現を抑制しているが、オーキシンがMITOGEN-ACTIVATED PROTEIN KINASE14(MPK14)を活性化してERF13の分解を引き起こし、側根の出現を促進している。しかしながら、側根形成過程でERF13の分解に関与している因子は明らかとなっていない。中国 山東大学のDingらは、オーキシンがERF13の分解を引き起こす機構を解明するために、ERF13と相互作用するタンパク質を、特にユビキチンリガーゼに重点を置いて探索した。その結果、U-box型E3ユビキチンリガーゼのMOS4-ASSOCIATED COMPLEX 3A(MAC3A)とそのホモログのMAC3BがERF13と相互作用を示すことが判った。MAC3A とMAC3B は、若葉、主根の先端、中心柱といった様々な組織で発現しており、側根原基では発生過程全体にわたって発現していた。MAC3A、MAC3Bの側根発達における役割を解析するために変異体の表現型を観察したところ、単独変異体では変化は見られなかったが、mac3a mac3b 二重変異体では、野生型植物と比較して主根が短くなり、全側根と出現した側根の密度が有意に減少していた。これらの結果から、MAC3A、MAC3Bは側根と主根の発達を冗長的に正に制御していることが示唆される。mac3a mac3b 二重変異体ではオーキシン処理による側根形成促進が弱くなっており、MAC3A、MAC3Bはオーキシンが制御する側根形成に関与していると考えられる。mac3a mac3b 二重変異体では、側根原基の発達がステージⅣの内皮での発達過程までで阻害され、その結果、ステージⅣの側根原基の頻度が増加し、ステージⅤからⅧの表皮から側根原基が出現する過程の頻度が減少した。これはERF13 を過剰発現させた形質転換体の表現型と類似していることから、MAC3A、MAC3Bは、側根原基のステージⅣからⅤへの移行を促進する上で、ERF13とは逆の役割を果たしていることが示唆される。重力刺激による側根形成誘導試験を行なったところ、mac3a mac3b 二重変異体の側根原基の70 %以上がステージⅣの段階で止まっており、ERF13 過剰発現系統の表現型と類似していた。興味深いことに、mac3a mac3b 二重変異体では、野生型植物やERF13 過剰発現系統と比較して、ステージⅠの側根原基の頻度が増加し、ステージⅡおよびステージⅢの側根原基頻度が減少していることが観察された。よって、MAC3A、MAC3Bは側根誘導過程にも関与している可能性が示唆される。ERF13は、3-KETOACYL-COA SYNTHASE(KCS)の発現を抑制することにより側根出現を阻害している。側根出現におけるERF13とMAC3A、MAC3Bの拮抗的な役割と一致して、mac3a mac3b 二重変異体ではKCS8、KCS16、KCS18 の発現量が有意に低下していた。MAC3A、MAC3B を過剰発現させた系統では側根出現の促進は見られなかったが、ERF13 過剰発現系統でMAC3A、MAC3B を過剰発現させると出現側根の密度とKCS 発現量が回復した。これらの結果は、MAC3AとMAC3BがERF13の側根出現抑制効果を打ち消していることを示している。さらに、mac3a mac3b 二重変異体にerf13 変異を導入すると、出現側根と全側根の密度が野生型植物と同程度に回復した。このことから、ERF13は側根出現においてMAC3A、MAC3Bの下流で作用していることが示唆される。ERF13 とMAC3A、MAC3B は側根原基の発達過程を通じで発現しているが、MAC3Aタンパク質量は徐々に増加し、ERF13タンパク質量は徐々に減少していった。解析の結果、MAC3A、MAC3BはERF13のユビキチン化と分解を促進していることが確認された。オーキシン処理はERF13の分解を促進しており、この分解はMAC3B の過剰発現によって促進され、mac3a mac3b 二重変異体では抑制された。したがって、ERF13の分解はMAC3A、MAC3Bに依存していることが示唆される。オーキシン処理はERF13とMAC3Aとの相互作用を促進することから、オーキシンはMAC3A、MAC3Bを介したERF13の分解を両者の相互作用を高めることで促進していると考えられる。オーキシンが誘導するERF13の分解は、MPK14を介したERF13のThr66、Ser67、Thr124のリン酸化に依存していることが知られている。このERF13のリン酸化がMAC3A、MAC3Bとの相互作用に影響しているかを見るために、ERF13のリン酸化されるアミノ酸残基をAspに置換したERF13DDD(リン酸化模倣)とAlaに置換したERF13AAA(非リン酸化)を用いてMAC3A、MAC3Bとの相互作用を検証した。その結果、MAC3A、MAC3BはERF13AAAとの相互作用が弱く、ERF13DDDとは強い相互作用を示すことが判った。この結果かから、MPK14を介したERF13のリン酸化は、MAC3A、MAC3Bとの相互作用を促進することが示唆される。ERF13DDDは、野生型植物の抽出液中で急速に分解されたが、ERF13AAAは安定なままであった。さらに、オーキシンによるERF13の分解は、mac3a mac3b 二重変異体で大幅に抑制された。ERF13DDD、ERF13AAAの分解はオーキシン処理をしても変化は見られず、オーキシン処理にかかわらずmac3a mac3b 二重変異体では安定していた。これらの結果から、オーキシンはMPK14を介したERF13のリン酸化を介してMAC3A、MAC3Bとの相互作用を促進し、ERF13を分解に導いていると考えられる。さらに、オーキシン処理はMAC3A、MAC3B の発現を促進しており、この促進はAUXIN RESPONSE FACTOR(ARF)転写因子が機能喪失したarf7-1 変異体、arf19-1 変異体で低下し、arf7-1 arf19-1 二重変異体では完全に消失した。このことから、MAC3A、MAC3B のオーキシンによる転写誘導は、ARF7およびARF19に依存していることが示唆される。、MAC3A 遺伝子、MAC3B 遺伝子のプロモーター領域にはARFが結合するAuxREがなく、酵母one-hybridアッセイにおいてもMAC3A、MAC3B 遺伝子プロモーター領域へのARF7、ARF19の結合は確認できなかった。よって、ARF7、ARF19は間接的にMAC3A、MAC3B の転写を促進していることが示唆される。また、オーキシン処理はMAC3A、MAC3Bタンパク質の安定性に対しても促進的に作用した。したがって、オーキシンは、MAC3A、MAC3B の転写とタンパク質の安定性を相乗的に制御することにより、側根原基におけるMAC3A、MAC3Bの蓄積を誘導していることが示唆される。以上の結果から、MAC3AとMAC3BはERF13のユビキチン化と分解を仲介するE3リガーゼとして働き、オーキシンによる側根発達を制御していることが判った。オーキシンは、1) MPK14を介したERF13のリン酸化を活性化することでERF13とMAC3A、MAC3Bとの結合親和性を高める、2) 側根原基でのMAC3A、MAC3Bの蓄積を促進することで、MAC3A、MAC3BとERF13との相互作用を強化、ERF13の分解を促進しており、この機構により側根発達における抑制効果が解除され、側根の出現が促進されると考えられる。
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