A Role for APETALA1/FRUITFULL Transcription Factors in Tomato Leaf Development
Burko et al. The Plant Cell (2013) 25:2070-2083.
doi:10.1105/tpc.113.113035
トマトの葉は、葉縁部の器官形成活性が持続することによって複葉となる。CINCINNATA-like TEOSINE BRANCHED1, CYCLOIDEA, PCF(CIN-TCP)型転写因子のLANCEOLATE(LA)は、この器官形成活性を抑制し、葉の成熟を誘導する。LA 遺伝子およびCIN-TCPファミリーに属するLA-like 遺伝子はマイクロRNAのmiR319によって発現抑制されている。イスラエル ヘブライ大学のOri らは、LA 遺伝子のmiR319の認識部位に変異が生じて複葉の複雑さが低下した機能獲得La-2 変異体や、miR319 を過剰発現させることで複葉の複雑さが増した形質転換体を用いて、これらの茎頂部分での遺伝子発現をマイクロアレイ解析することでLA 遺伝子と複葉形成の関係を調査した。その結果、花や果実の発達に関与しているAPETALA1 (AP1 )/FRUITFULL (FUL )サブファミリーに属する4つのMADS box遺伝子、MBP7 (FUL2 )、MBP20 (AGL79 )、TM4 (FUL1 )、MACROCALYX (MC )の発現と葉縁部の器官形成活性との間に正の相関が見られ、これらの遺伝子の発現はLA活性との間で負の相関があることがわかった。また、定量PCRによる解析から、これら4遺伝子に加えて、同じ遺伝子ファミリーに属しマイクアレイに乗っていないMBP10 (AGL79L )も同じ挙動を示すことがわかった。これらの遺伝子は葉の器官形成に関与しており、LAによって発現が負に制御されていると考えられる。miR319 を過剰発現させた個体は、野生型よりも少ない葉数で開花し、La-2 変異体は開花までに形成された葉数が野生型よりもわずかに多くなった。これは、La-2 変異体の葉の形成が野生型よりも速く、miR319 過剰発現個体は遅いことによるもので、移植から開花までの日数はLa-2 変異体は野生型よりも短く、miR319 過剰発現個体は長かった。トマトのFLOWERING LOCUS T(FT)オーソログであるSINGLE FLOWER TRUSS(SFT)の変異体sft は花成が遅延して小葉が多くなる表現型を示し、SFT 過剰発現個体は花成が早くなり葉の成熟が早いために葉が単純化する。miR319 を過剰発現させたsft 変異体は、sft 単独変異体と同数の葉を形成した後に開花したが、葉の形態はmiR319 過剰発現個体に類似していた。SFT 過剰発現個体でmiR319 を過剰発現させた個体の葉の形態も、miR319 過剰発現個体に類似していたが、花成はSFT 過剰発現個体と同様に早くなった。したがって、sft 変異やSFT 過剰発現は植物の成熟に関してはmiR319 過剰発現よりも上位に位置しているが、葉の形成に関してはmiR319 過剰発現がsft 変異やSFT 過剰発現よりも上位にあると考えられる。よって、花成に対するmiR319の効果はSFTを介在しており、miR319とそのターゲット遺伝子は葉の形成と花成で異なる経路に影響を及ぼしていることが示唆される。miR319 の過剰発現によるTM4 やMC の発現量の増加は、sft 変異体では野生型よりも弱くなっており、MBP20 、MBP7 、MBP10 の発現量はsft 単独変異体とmiR319 を過剰発現させたsft 変異体との間で差は見られなかった。よって、AP1 /FUL 遺伝子の発現はSFTによって正に、LAによって負に制御されており、LAの効果は部分的にSFTの機能に依存していると考えられる。AP1 /FUL 遺伝子の葉の形成過程での発現を見たところ、MBP20 の転写産物量は葉原基の成長ステージP3からP4において高く、P5では転写産物量が大きく減少した。そしてLA の発現量はP5から大きく増加していた。また、La-2 変異体のP2、P3葉原基ではMBP20 の発現は低くなっていた。したがって、MBP20 の発現はLA の発現と負の相関がある。MBP20にSRDX抑制モチーフを付加した融合タンパク質を発現させた個体は、小葉数が減少して葉縁が滑らかになった。したがって、MBP20 や他のAP1 /FUL 遺伝子は複葉形成に関与していることが示唆される。MBP20 遺伝子やTM4 遺伝子のプロモーター領域にはTCP結合部位と推測されるモチーフが含まれている。ゲルシフトアッセイやクロマチン免疫沈降アッセイから、LAがMBP20 やTM4 のプロモーター領域に結合することが確認された。以上の結果から、トマトAP1 /FUL 遺伝子は、複葉形成をもたらす器官成長を促進し、これらの遺伝子の発現はLAによって負に制御されていることが明らかとなった。
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