Long-distance translocation of CLAVATA3/ESR-related 2 peptide and its positive effect on roots sucrose status
Okamoto et al. Plant Physiology (2022) 189:2357-2367.
doi:10.1093/plphys/kiac227
新潟大学の岡本らは、以前の研究で、ダイズの道管滲出液に含まれるペプチドについて調査し、根で発現しているxylem sap-associated peptide 4 (XAP4 、GmCLE32 )は、シュートや葉の切除、暗処理といった低炭素条件で発現量が増加することを見出した。このペプチドの機能を解析するために、シロイヌナズナのXAP4/GmCLE32ホモログについて解析を行なった。XAP4/GmCLE32ペプチドは、CLE1-7と類似性が高く、道管滲出液からCLE2ペプチドが検出された。CLE2 は主に根で発現しており、光合成の阻害や暗処理によって転写産物量が増加した。また、CLE3 も同様の挙動を示した。変異体の解析を行なったところ、cle1-7 七重変異体の根は野生型と比較してショ糖含量が低下しており、cle1-7 変異体、cle2cle3 二重変異体では成熟葉のショ糖含量が低下していた。よって、CLEペプチドは根や葉のショ糖含量に影響していると考えられる。CLE2 もしくはCLE3 をCommelina Yellow Mottle Virus(CoYMV)プロモーター制御下で維管束組織特異的に発現させた形質転換体は、根のショ糖含量が野生型よりも高くなっていた。また、野生型植物のロゼット葉にCLE2ペプチドを添加すると根のショ糖含量が増加し、cle1-7 変異体に添加すると根のショ糖含量が回復した。よって、CLEペプチドは根のショ糖含量を正に制御していると考えられる。cle1-7 変異体は野生型よりも根量が少なく、培地にショ糖を添加すると根量が回復した。ショ糖の輸送、生合成、分解に関与する遺伝子の発現量を見たところ、cle1-7 変異体の葉ではショ糖トランスポーターをコードするSUCROSE-PROTON SYMPORTER 2 (SUC2 )の転写産物量が減少していた。この減少は、cle1-7 変異体の葉にCLE2ペプチドを添加することで回復した。CLE1-7 は主に根で発現していることから、葉でのSUC2 発現量変化は根由来のCLEペプチドによると考えられる。そこで野生型植物とcle1-7 変異体との接ぎ木試験を行なったところ、野生型の接ぎ穂にcle1-7 変異体の根を接ぐことで葉のSUC2 発現量がcle1-7 変異体同士を接いだ場合と同程度に減少することが確認された。このことから、根のCLE 遺伝子の遺伝子型が葉でのSUC2 の発現を制御していると考えられる。以上の結果から、CLEペプチドは根および葉のショ糖含量を制御する根由来の長距離移行シグナルとして機能していると考えられる。
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