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論文)ABI4による花成制御

2016-03-01 05:58:13 | 読んだ論文備忘録

ABSCISIC ACID-INSENSITIVE 4 negatively regulates flowering through directly promoting Arabidopsis FLOWERING LOCUS C transcription
Shu et al. Journal of Experimental Botany (2016) 67:195-205.
doi:10.1093/jxb/erv459

アブシジン酸(ABA)は花成抑制因子として機能しており、bZIP型転写因子ABSCISIC ACIDーINSENSITIVE 5(ABI5)がFLOWERING LOCUS CFLC )の転写を直接活性化していることによって引き起こされていると考えられている。最近になって、ABAシグナル伝達に関与しているAP2/ERF型転写因子ABI4の機能喪失変異体が花成促進することが報告され、ABI4も花成制御に関与していることが示唆されてきている。中国科学院遺伝与発育生物学研究所Xie らは、abi4 変異体ではFLC 転写産物量が野生型よりも少なく、ABI4 過剰発現個体(OE-ABI4 )では多くなっていることを見出した。また、abi4 変異体ではFLOWERING LOCUS TFT )の発現量が野生型よりも多く、OE-ABI4 個体では発現量の変化は見られなかった。ジベレリン(GA)による花成促進において発現量が増加するLEAFYLFY )は、abi4 変異体において発現量が増加していた。これらの結果から、abi4OE-ABI4 における花成時期の変化はFLCFTLFY の転写産物量変化によって引き起こされていると考えられる。ABI4はCCACモチーフに結合してターゲット遺伝子の転写制御を行なっている。FLC プロモーター領域には7つのCCACエレメントが存在し、ABI4はFLC 遺伝子プロモーター領域の幾つかのCCACエレメントに結合することが確認された。FT 遺伝子プロモーター領域にはCCACエレメントが4つ、LFY 遺伝子プロモーター領域にはCCACエレメントが5つあるが、ABI4はこれらの遺伝子のCCACエレメントとは相互作用を示さなかった。一過的発現系による試験から、ABI4はFLC の転写を活性化することが確認された。flc-3 変異体は早期花成に表現型を示すが、この変異体でABI4 を過剰発現させても早期花成の表現型に変化は見られなかった。また、abi4 変異体でFLC を過剰発現させると花成遅延を起こした。これらの結果から、ABI4FLC と同じ花成制御経路の上位に位置してしていると考えられる。以上の結果から、ABI4はABI5と同様にFLC の発現を直接制御することで花成制御を行なっていると考えられる。ABI4とABI5では相互作用をするDNAモチーフか異なることから、花成において両者は重複もしくは別個の機能があるものと思われる。

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