DIARY yuutu

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暴走死亡(母子2人)事故で逮捕されない「上級国民」(元高級官僚)について:(1)「大卒・非大卒」の分断、(2) 「中流」幻想・「改革」幻想、(3) 東京と地方の差!

2020-02-26 01:01:53 | 日記
※《参考》「上級国民」流行する国『朝日新聞』2020/01/25

(1)
平成の30年間(1989-2018)で分断社会となる。①分断線は「大卒・非大卒」(現役世代で半々)にある。②学歴再生産:若者の3人に2人は親と同じ学歴。③非大卒層は、「エリート(高級官僚・政治家・経営者層)は頑張って」とお任せ状態で委任している。無関心や諦念。④今回、非大卒層が「ルール破りをしても守られる」ことには「上級国民」と怒る。《参考》社会学者・吉川徹(キッカワトオル)(1966生)『学歴分断社会』(大卒/非大卒という分断!)
(2)
⑤「われわれ」意識が消滅した。「国民」の消滅。⑥「頑張れば、やがてみんなが中流になれる」という物語の崩壊。「失われた30年」(平成30年間)の結末。自分は一生「上級」になれないと思う。⑦「改革」の物語も崩壊した。Ex. 民主党政権2009(H21)-2012(H24) の「改革」の物語失敗。⑧「下級」に連帯意識もない。寒々とした「個人化」。《参考》歴史学者・与那覇(ヨナハ)潤(1979生)『歴史が終わる前に』(安倍長期政権やトランプ登場をもたらした「もう歴史に学ばない社会」の形成をたどる!)
(3)
⑨「門地や職業に依て限られた範囲」の「上級国民」と佐々木惣一(大正デモクラシー期)が言った。⑩様々な制度にコミット(参加)やアクセスできる「権利」を持つ上級国民。⑪この意味で、「東京と地方の差」は、貧富の差や男女のジェンダー差以上に大きい。《参考》歌人・山田航(ワタル)(1983生)『さよならバグ・チルドレン』(Ex. 走ろうとすれば地球が回りだしスタートラインが逃げてゆくんだ/昨晩のその場しのぎの言い訳にサランラップがかけられてゐる/冷蔵庫それは内側だけをただ照らし続けて立つ発光体/貴意に沿ひかねる結果となりますがわたしはこの世で生きてゆきます)ある書評に「寂しさや痛さや辛さを常態として生きているしかない感じ」とある。また別の書評に「怖ろしく寺山修司っぽい」とある。
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映画『セブン・シスターズ』(2016):「兄弟は他人の始まり」の極限形態だ!

2020-02-25 12:14:26 | 日記
※映画『セブン・シスターズ』What Happened to Monday?(2016、米英仏ベルギー)

(1)
2073年、戦争や難民問題で主要国が滅び、「ヨーロッパ連邦」政府が成立。人口過多と食糧不足から政府は児童分配法を制定、一人っ子政策を実施した。児童分配局が2人目以降の子どもを親元から取り上げ冷凍保存する。そんな世界に7人姉妹が生まれた。
(2)
「彼女らを週に1日ずつ外出させ、共通の一人の女の子カレン・セットマンを演じる」ことで監視の目を逃れようと父親が、計画した。7人姉妹は「月曜」(長女)、「火曜」、「水曜」、「木曜」、「金曜」、「土曜」、「日曜」と名付けられた。それぞれが、それぞれの曜日に外出する。
(3)
そして30年後、7人姉妹は、優等生、反抗者、天才エンジニア、格闘家、パーティーガールなど様々な個性を持つ女性となった。彼女らは、家の外では1人の優秀な銀行員カレン・セットマンを演じる。
(4)
ところが、やがて彼女らに試練が訪れる。児童分配局が7人姉妹の存在に気付いたのだ。児童分配局長ケイマンは、7人姉妹存在の「見落とし」の責任が問われることを恐れ、暗殺部隊を送るなどして姉妹を秘かに殺そうとした。
(4)
ある日、7人のうちの1人、「マンデー」(「月曜」)が帰宅しなかった。姉妹は、従来通りに行動できなくなった。火曜日に「火曜」が外出するが、カレン・セットマンがこの日、2人いることになった。かくて「火曜」は児童分配局に捕まり、眼をえぐり取られる。(網膜認証の開錠のため。)
(5)
そして暗殺部隊による7人姉妹の部屋の急襲、追跡。「日曜」、「水曜」、「金曜」、「土曜」が、次々と殺される。だが「火曜」は児童分配局から救出された。生き残った「木曜」と「火曜」が、「月曜」の裏切りを知る。「月曜」は自分一人がカレン・セットマンとして生き残ることを計画し、他の6人の存在を児童分配局長ケイマンに密告したのだ。
(6)
「木曜」と「火曜」は、児童分配局長ケイマンが、親元から取り上げた2人目以降の子どもを冷凍保存するのでなく焼却処分することを、知り驚愕する。彼女らが、子どもらの焼却処分の動画を暴露した。ケイマンは逮捕される。そこに現れた「マンデー」(「月曜」)が「木曜」と闘う。この6人を裏切った「月曜」は死ぬ。
(7)
児童分配法は、かくて廃止された。生き残った「木曜」が銀行員カレン・セットマンとなり、「火曜」は別の人間テリーとして生きることとなった。

《感想》7人姉妹が、曜日ごとに、家の外で1人のカレン・セットマンを演じる設定が、スリリングだ。つまりヒロインが7人いる。その内の5人が死ぬストーリーはすさまじい。自分一人がカレン・セットマンとして生き残り、他の6人を殺そうと計画した「月曜」の怨念が恐ろしい。「兄弟は他人の始まり」の極限形態だ。



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安部悦生『文化と営利』「第Ⅱ部」「第8章 イギリスの経営文化」(後半):イギリスの企業風土はアングリカン的身分主義(階級的団結)からアメリカ流の成果主義(サッチャー主義)へ一足飛びに変化した!

2020-02-24 12:14:58 | 日記
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅱ部 経営文化の国際比較」「第8章 イギリスの経営文化」(後半)

(7)「新しい潮流――サッチャー革命」1980年代:「英国病」の克服すなわち「棲み分けから競争へ」①「ビッグバン」(規制緩和)、②「民営化」、③スト=争議の減少、④教育改革!
I  第2次大戦以降の「英国病」(イギリス社会の閉塞感):①植民地喪失、②ジェントルマン資本主義(アマチュア経営者による経営&地主・金融利害による支配)の衰退、③国際競争における劣位(※アメリカの台頭)、④国有化による救済も行き詰まる、⑤度重なる労使紛争。Cf. ⑥世界的にはスタグフレーション。
I-2 サッチャー首相(在任:1979年 – 1990):従来の福祉国家路線から、小さな政府、自由な取引(規制緩和)、民営化を打ち出す。「新自由主義」。
I-3  ①1986年、「ビッグバン」(規制緩和):「ジョバーとディーラー」のような「棲み分け」文化を解体。市場の「競争原理」にもとづく仕組みへ。イギリスは再び世界の金融センターに返り咲く。
I-4 ②不振の国有企業の「民営化」。市場経済の活用。「平和的な棲み分け」(身分制の固定化)=「甘え」の破壊。「競争は善」・「従来の態勢に安住することは悪」とのメッセージ。「サッチャー革命」だ。サッチャーは出自が地主・貴族でなかったので、製造業の振興に積極的だった。日本企業(Ex. 日産)など外国企業を誘致。
I-5 ③サッチャーは労使関係の領域でも大ナタ。スト権の確立に際し「秘密投票」を義務付ける。「公開投票」だと組合幹部のプレッシャーがかかる。かくて(ア)スト=争議の減少、(イ)組合組織率低下、(ウ)労働党の地盤沈下。
I-6 ④サッチャーの教育改革。(ア)公立校で学区外地域の学校を選べる「オプトアウト」を認める。(イ)大学教員に研究成果提出制度(RAE、research assesment exercise)を導入。4年間に4本の論文の学会誌掲載、義務付け、そして評価。(ウ)大学教員のテニュア―制度(定年まで勤められる権利)も廃止。
I-7 サッチャーのメッセージ:(a)「棲み分けから競争へ」、さらに(b)「社会などというものはない。あるのは個々の男と女と家族だけだ」と述べた。これは「悪評高い」言葉だが、競争と自己責任だけを主張するものでない。サッチャーは「社会を個人に還元する」個人主義でない。「家族」を重視する。
《感想》「競争」こそが経済(財サービスの質と量)を発展させる。「競争」を肯定することは、人間の経済的価値の優劣を受け入れることだ。敗者は自分の経済的無能を受け入れなければならない。「基本的には」(=経済的には)カネのあるなしで人を評価する。もちろん人の価値評価には、色々な観点がある。経済的観点だけでない。

(8)「競争力のある産業、企業、そこにおける経営文化」:1990年代「イギリスの繁栄」!
J サッチャー改革の後、イギリスは上昇気流に乗る。改革進行中の1980年代が過ぎ、1990年代になると人々は「イギリス病」でなく「イギリスの繁栄」を語るようになった。
J-2 サッチャーの政策「競争原理」・「民営化」は、後継の保守党メージャー首相(在任1990-1997)、労働党ブレア首相(在任1997-2007)によっても揺らぐことがなかった。Ex. (ア)ソーシャルインパクトボンド(社会問題の解決を民間企業や非営利団体に任せる)、(イ)ビジネスセンター(企業支援を行う)、(ウ)政府機関からNGO・NPOへの業務移転。
J-3 ①イギリスの自動車産業全体は堅調。Ex. 日産、ドイツのBGMの進出。②国際競争力を持つ製薬産業:GSK(グラクソ・スミスクライン、Ex. ポリデント)。③ハイテク分野では、1980年代にベンチャー振興で「ケンブリッジ現象」等々

(9)「小括」:イギリスの企業風土はアングリカン的身分主義(階級的団結)からアメリカ流の成果主義(サッチャー主義)へ一足飛びに変化した!
K 1980年代以降、イギリスの経営風土は大きく変わり、「ウェット・ビジネスマン」から「ドライ・ビジネスマン」が誕生した。サッチャーは「ドライ・トーリー」と言われた。
K-2 それまでのイギリスはプロテスタント的個人主義でありながらも、アングリカン的身分主義(階級的団結)によって社会の絆はそれなりに強かった。しかしサッチャー革命によってイギリスは社会的絆を基礎とした企業風土から、アメリカ流の成果主義に一足飛びに変化した。
K-3 アメリカは、(a)ピューリタニズム的個人主義、したがって成果主義と、(b)ピューリタン的教派心による団体好きの性質の結合が存在していた。だがアメリカは団体主義が弱まり、社会全体で成果主義的傾向が強まる。1980年代が変革期(※減税・財政支出削減・規制撤廃のレーガノミックス)。
L 新自由主義(民営化、規制緩和、自由選択、競争原理導入等々)のゆくえ。
L-2 アダムスミス時代および19世紀のレッセフェール時代の自由主義→19世紀末のニューリベラリズムの勃興(個人の自由と社会改革を両立させる、完全雇用・普通選挙・公教育・福祉制度を主張)→第2次大戦後の福祉国家時代→スタグフレーション(福祉国家の矛盾の表現)→新自由主義。
L-3 新自由主義で「結果としての不平等」(所得格差、資産格差)が生まれた。しかしコミュニティ、アソーシエーションなどの自発的な団体(中間組織)がすでに弱まっている。この意味で社会が衰弱している。
L-4 新自由主義の勃興から40年余、行き過ぎに対する再調整が必要だ。
《感想1》日本の場合は、新自由主義の猛威は、世界のグローバル化(ソ連崩壊)とともにやって来た。1990年代以降の「失われた10年・20年」、リストラ、非正規雇用の増大、日本的経営の崩壊。
《感想2》何よりも、格差の下で生まれ、本人の責任なく不利とされている子供たちに、「公正な競争」のチャンスを与えなければならない。
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五百旗頭真(イオキベマコト)・元防衛大学校長「日本は秩序再編へ誘導を」:基本は「日米同盟プラス日中協商」!米中の戦争は選択肢たり得ない!

2020-02-22 20:14:18 | 日記
《参考》五百旗頭真(イオキベマコト)・元防衛大学校長「日本は秩序再編へ誘導を」『朝日新聞』2020/01/13

(1)米国:「孤立主義」は高くつく!
米国は2つの世界大戦で「孤立主義」が高くつくことを学んだ。だが第2次世界大戦後の秩序を担う時代となり、
重い負担がのしかかった。今や、「なぜ米国だけが世界の検察官を担わなければならないのか」とトランプ大統領のうめき声!
(2)米国の「秩序疲れ」:①ベトナム戦争とイラク戦争、②格差拡大と中間層の崩落!
転機は2つあった。①米国はベトナム戦争とイラク戦争の誤りで、自ら疲弊し、「秩序疲れ」を加速。もう一つは、②格差拡大。1980年代の繁栄をもたらした新自由主義は格差を容認。2008年のリーマンショックで一層、格差拡大し、中間層が崩落。国内経済がもたなくなり、トランプ氏にゆだねた。
(3)日米安保は、戦後秩序のインフラとして米国にメリットがあった!
日米安保は、「攻守同盟」でないが、太平洋の向う側で基地を自由に利用できる点で戦後秩序のインフラとして米国にメリットがあった。アジア太平洋における地域秩序の安定装置として、ソ連崩壊後も引き続き機能。
(3)-2 日本の基地は、米国の利害が世界に広がる中、世界への関与と秩序の最重要インフラの一つだ!
「全部カネを出さないと米軍は引き揚げる」と言わんばかりのトランプ大統領だが、米国の利害が世界に広がる中、米国は世界への関与と秩序が必要。(Ex. 米国は、中ロが好きにするのを達観できるのか?)日本の基地はその最重要インフラの一つだ。日本が、駐留経費の3/4を負担する現状は妥当だ。
(4)日本は平和志向であるとともに、「あなどれない拒否力」を持つべきだ!
日本は戦争で利益を得ない「平和志向」の国であるべきだ。軍拡の引き金をひくべきでない。だがその範囲であなどりがたい能力(「あなどれない拒否力」)があると思わせることは必要だ。
(5)改革開放で経済発展した中国は2008年以後、「自信過剰」となった!
中国は改革開放で経済力をつけ、国防費は1975年(「農業・工業・国防・科学技術の四つの現代化」)以来、25年間で爆発的に膨らんだ。2008年リーマンショック後、中国の巨大財政投資が世界経済を支えたことから中国は「もう米国の時代でない我々が主導する」と「自信過剰」となった。
(5)-2 中国は「日清戦争後の屈辱の100年」から、「宗主国」としてふるまった時代にもどった!
中国には2つの時代がある。(ア)2000年間、「宗主国」としてふるまった時代、そして(イ)「日清戦争後の屈辱の100年」。今は前者に回帰した。「尖閣諸島も南シナ海も『すべて中国のものだ』」と中国は主張する。
(5)-3 ①米国が対中強硬に転じた、②国際仲裁裁判所の判決で中国は惨敗(南シナ海)!
中国のアプローチは、まだ成功していない。①中国の成長を見守っていた米国が対中強硬に転じた。②南シナ海をめぐる国際仲裁裁判所の判決で中国は惨敗した。
(6)中国に対する日本の立場:(ア)南シナ海・尖閣諸島、(イ)香港問題!
日本は、米中対立の中でどうふるまうか?中国に対しては(ア)南シナ海や尖閣諸島の強硬姿勢は国際社会に通用しないと中国に伝える、(イ)香港問題では大国の度量が試されると説得する。
(6)-2 米国に対する日本の立場:(ウ)孤立主義、(エ)対中国、(オ)他国と一緒に秩序再編!
日本は、米国を説得する必要もある。米国は(ウ)孤立主義に回帰してはいけない、(エ)中国に露骨に牙をむくのも間違いだ、要するに(オ)米国は他国と一緒に秩序の再編に取り組まなければならない。
(7)基本は「日米同盟プラス日中協商」!
「日米同盟プラス日中協商」という基本が大事だ。①米中の戦争は選択肢たり得ない。日本も確実に火の粉を被る。②米中両国だけで世界秩序再編の合意ができない。米中双方の間に日欧が入らねばならない。
(7)-2 中国と友好関係を維持する:(ア) 地域秩序の構想、(イ) 言うべきことは言う、(ウ)中国を含む新秩序!
今後の日中関係:(ア)日本は、軍事的に「あなどれない拒否力」を持ち、友好関係を維持しつつ、地域秩序の構想を共に考えて行こうと中国に呼びかける。(イ)日本は、日中関係を大事にしつつ、言うべきことは言う。また(ウ)中国が孤立せず、現在の姿勢を修正しながら、世界で敬意を払われる存在になる道、(ウ)-2 また中国を含む新秩序を共に考えて行こうと中国を誘導する。
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安部悦生『文化と営利』「第Ⅱ部」「第8章 イギリスの経営文化」(前半):土地所有に基づく貴族・地主的価値体系の優越!しかし1980年代以降、ジェントルマン資本主義は死滅した!

2020-02-22 13:16:15 | 日記
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅱ部 経営文化の国際比較」「第8章 イギリスの経営文化」(前半)

(1)「イギリスは階級社会か――地主・貴族的価値体系」:イギリスでは土地所有が価値序列の最上位だ!
A 土地所有が価値の最上位、これが地主・貴族的価値体系だ。19世紀末、貴族400家族が全所有地の17%を占め、これに大地主(3000エーカー以上)1688家族、大規模ジェントリー(300エーカー以上)1万2000家族を合わせると、彼ら1万4000家族でイギリスの土地の70%を占めた。
B 貴族・地主的価値体系の中心は土地所有だが、19世紀末以降は証券(特に高配当の海外証券)保有も重視された。
B-2 20世紀に入ると所得税・相続税の重税化で、地主が土地を耕作農民に売却。借地面積は1880年代85%、1960年50%となった。
B-3 すでに19世紀末の農業不況で地主が農業経営に関心を示さなくなり、20世紀はまた独立自営農民の時代となった。
《感想》イギリスで、土地所有は価値序列の最上位だ。貴族・大地主・ジェントリー・独立自営農民は、土地所有ゆえに社会的序列が高い。

(2)「宗教――イギリスと日本の親和性」:イギリス人は「非宗教的」だ!
C イングランドは国教を持ち、それがイギリス国教会(Angrican Church)だ。スコットランドは長老派(プレスビテリアン)が国の宗教だ。現在、イギリスの平均的な人々は、信仰心が篤くなく、日曜に教会に行く人も少ない。日本人と同じように非宗教的だ。
C-2 森嶋『イギリスと日本』によれば、日本人の3大特徴は「(イ)都会好き、(ロ)非宗教的、(ハ)死後の生活を信じない」である。イギリス人は「非宗教的」だが、日本人より「神を信じる」。

(3)「イギリスの企業――その構造」:イギリスの経営者は階級的ジェネラリスト!日本の経営者は社内的ジェネラリスト!
D 企業構造は、株式会社である限り、イギリスも日本・アメリカと異ならない。
E イギリスでは、①職長レベル(ネクタイをする)と工員レベルが、経営と労働つまり「奴らと俺たち(them and us)」の対立感情の先鋭化の場だ。
E-2 ②大規模な労働組合組織における組合幹部と平組合員(工員)の対立もある。②-2「shop stewward(ショップスチュワード、職場委員)」による山猫ストが頻発。
E-3 さらに③ホワイトカラー(月給)とブルーカラー(週給)の対立・差別、④技師(engineer、大卒)と技手(technician)の対立・差別もある。
E-4 ⑤イギリスの経営者は、パブリックスクール(学費の高い私立校)・大学卒のアマチュア的ジェネラリストだ。(ジェントルマン資本主義!)かくて「アマチュア経営者対職員(プレイヤー)」の対立。⑤-2 イギリスの経営者は、階級的バックグラウンドに基づくジェネラリスト(Ex. ラグビーの決断力など全人的知識の養成。)(Cf. サッカーは労働者階級のスポーツ。)
E-5 日本では、意識的ジョブローテーションで社内的にジェネラリストが養成される。
《感想》イギリスは諸種の階級(経済的地位)・身分(出自的地位)対立からなる社会だ。

(4)「工業対商業・金融(サービス産業)」:国家の政策決定において、地主・金融業者による支配力は強靭だったが、第2次大戦後、政治的にも経済的にもジェントルマン資本主義は解体した(1980年代以降、死滅)!
C イギリスでは、ハイファ―ミング(農業生産性を上げる根菜類の導入)により18世紀後半から19世紀前半にかけ、農業生産性が高まり、地主・借地農(農業経営者)・農業労働者の3階級制(3分割性)が登場した。農業の隆盛による地代・地価の上昇、さらにエンクロージャーも実行し、地主階級は政治的支配力が増大した。
C-2 産業革命で富を拡大した産業資本家は、貴族・地主的価値体系の下では、土地を購入し地主・さらに貴族とならない限り、社会の上層にたどり着けなかった。また煤煙を嫌い・農村を好む「反工業精神」(anti-industrial spirit)の社会風土に、工業は攻撃された。
D  16世紀の「マーチャント・アドヴェンチャラーズ」の時代から「大商人」には一定の社会的敬意が払われた。
D-2 17世紀末に国債が大量に販売され出すと、「大金融業者」(マーチャントバンカー)が国家に貢献するものとされた。
D-3 かくて「大商人」と「大金融業者」は、「大地主」に次ぐ社会的地位を持つものとして、「上流階級」に組み入れられた。
D-4 ただし「土地」と異なり、商業・金融をふくむ「ビジネス」をいかがわしいとする「反ビジネス精神」(anti-business spirit)が多かれ少なかれ存在した。これは、キリスト教が「富者が天国に入るのは至難」としていることに由来する。(カルヴィニズムが支配的な地域を除く。)
E ケインズの3階級論:①資産家階級(地代を得る地主、利子を得る証券保有者)、②企業家階級(商業利潤を得る商人、工業利潤を得る工業家)、③労働者階級(賃金を得る)。そして①資産家階級を徐々に衰滅(「安楽死」)させるのが賢明だとケインズは述べた。
E-2 ケインズの構想は実現せず、イギリスの政策は産業資本家(②企業家階級)でなく、土地利害(土地所有者)と金融利害の複合体(①資産家階級)によって決定された。ジェントルマン資本主義!
E-3 国家の政策決定で、地主・金融業者(ロンドンのシティ)による支配力が強靭だったが、第2次大戦後は、政治的にも経済的にもジェントルマン資本主義は解体した。(1980年代以降、死滅した。)
《感想》地主・金融業者(ロンドンのシティ)の支配力は低下し、②企業家階級(商業利潤を得る商人、工業利潤を得る工業家)が、イギリスでは政治的にも経済的にも主力となった。

(5)「企業の発展――個人的資本主義から経営者資本主義へ」:イギリスも経営者資本主義、機関投資家資本主義となった!
F イギリス企業では、血縁を重視した家族資本主義(個人的資本主義)が強固だったが、戦間期に、「私会社」(private limited company)から「公募会社」(public limited company)への転換が起きた。経営者資本主義への転換だ。
F-2 1960年代以降は大企業比率(国民純所得における巨大企業100社の比率)について、イギリスがアメリカを超えた。また個人投資家の比率が下がり、機関投資家(とりわけ海外)の比率が40%を超えた。
F-3 イギリスも経営者資本主義、機関投資家資本主義となった。
《感想》1980年代(Cf. ジェントルマン資本主義も死滅)以降、イギリスは経営者資本主義、機関投資家資本主義の点で、米国と変わらない。

(6)「教育制度の問題」:昔と異なり、イギリスの大学進学率は高い!2010年、日本の大学進学率51%、イギリス63%だ!
G 「初等・中等・高等教育」:イギリスの階級制を温存する仕組み!
G-2 公立教育:まず小学校6年間(5-11歳)。ついで中学校5年間(11-16歳)は、モダンスクール(基礎教育校)、テクニカルスクール(専門教育校)、グラマースクール(総合ハイレベル教育校)(約15%)に分かれる。全2者から「古典教育」の大学(高等教育機関)にはまず進めない。グラマースクールに入った者の一部が高校(6 th Form)(2年間)、さらに大学(3年間)に進む。(1950年代の大学進学率は5%。)大学ではラテン語など古典教育を学ぶ。
G-3 貴族や富裕な家庭は、パブリックスクール(インデペンデントスクール)に通う。ここがアマチュア経営者、ジェントルマン経営者を輩出した。全人的教育、リーダーシップを養う実践的教育(寮・スポーツ)。教育格差の再生産だ。
G-4 「古典教育」の大学(高等教育機関)に関し、オックスブリッジの卒業生はMA(Master of Arts)、他大学の卒業生はM.Phil.(Master of Philosophy)だ。
《感想》ここの話は「古典教育」の大学のことだ。「実学教育」の大学が今は多くあり、イギリスの大学進学率は日本より10%以上高い。文科省資料(OECD 調査)によると2010年、日本の大学進学率は51%。これに対しイギリス63%だ。Cf. アメリカ74%。

H 「実学教育」「ビジネス教育」:「古典教育」でなく「実学教育」「ビジネス教育」の大学が今は多数ある!
H-2 ラテン語などを学ぶ「古典教育」と異なり、工学士、商学士、経済学士等を生み出す「実学教育」の大学が今は多数ある。1990年代のイギリスの大学進学率は40%に達した。(Cf. 2010年には63%!)
H-3 例えば、「ポリ」と呼ばれ軽んじられていた工業専門学校(ポリテクニーク)が1980年代には、大学に昇格した。
H-4 なおイギリスの保守党のメージャー首相(職1990-97)は中学卒で、父はサーカスの座長だった。もちろん保守党には、いまだオックスブリッジ(オックスフォード&ケンブリッジ)出身者が多数いる。
《感想》「古典教育」のジェネラリストだけでは、今の企業は発展できない。多くの「実学教育」の大卒者が企業に必須だ。若者には『学問のすすめ』だ!
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