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五百旗頭真(イオキベマコト)・元防衛大学校長「日本は秩序再編へ誘導を」:基本は「日米同盟プラス日中協商」!米中の戦争は選択肢たり得ない!

2020-02-22 20:14:18 | 日記
《参考》五百旗頭真(イオキベマコト)・元防衛大学校長「日本は秩序再編へ誘導を」『朝日新聞』2020/01/13

(1)米国:「孤立主義」は高くつく!
米国は2つの世界大戦で「孤立主義」が高くつくことを学んだ。だが第2次世界大戦後の秩序を担う時代となり、
重い負担がのしかかった。今や、「なぜ米国だけが世界の検察官を担わなければならないのか」とトランプ大統領のうめき声!
(2)米国の「秩序疲れ」:①ベトナム戦争とイラク戦争、②格差拡大と中間層の崩落!
転機は2つあった。①米国はベトナム戦争とイラク戦争の誤りで、自ら疲弊し、「秩序疲れ」を加速。もう一つは、②格差拡大。1980年代の繁栄をもたらした新自由主義は格差を容認。2008年のリーマンショックで一層、格差拡大し、中間層が崩落。国内経済がもたなくなり、トランプ氏にゆだねた。
(3)日米安保は、戦後秩序のインフラとして米国にメリットがあった!
日米安保は、「攻守同盟」でないが、太平洋の向う側で基地を自由に利用できる点で戦後秩序のインフラとして米国にメリットがあった。アジア太平洋における地域秩序の安定装置として、ソ連崩壊後も引き続き機能。
(3)-2 日本の基地は、米国の利害が世界に広がる中、世界への関与と秩序の最重要インフラの一つだ!
「全部カネを出さないと米軍は引き揚げる」と言わんばかりのトランプ大統領だが、米国の利害が世界に広がる中、米国は世界への関与と秩序が必要。(Ex. 米国は、中ロが好きにするのを達観できるのか?)日本の基地はその最重要インフラの一つだ。日本が、駐留経費の3/4を負担する現状は妥当だ。
(4)日本は平和志向であるとともに、「あなどれない拒否力」を持つべきだ!
日本は戦争で利益を得ない「平和志向」の国であるべきだ。軍拡の引き金をひくべきでない。だがその範囲であなどりがたい能力(「あなどれない拒否力」)があると思わせることは必要だ。
(5)改革開放で経済発展した中国は2008年以後、「自信過剰」となった!
中国は改革開放で経済力をつけ、国防費は1975年(「農業・工業・国防・科学技術の四つの現代化」)以来、25年間で爆発的に膨らんだ。2008年リーマンショック後、中国の巨大財政投資が世界経済を支えたことから中国は「もう米国の時代でない我々が主導する」と「自信過剰」となった。
(5)-2 中国は「日清戦争後の屈辱の100年」から、「宗主国」としてふるまった時代にもどった!
中国には2つの時代がある。(ア)2000年間、「宗主国」としてふるまった時代、そして(イ)「日清戦争後の屈辱の100年」。今は前者に回帰した。「尖閣諸島も南シナ海も『すべて中国のものだ』」と中国は主張する。
(5)-3 ①米国が対中強硬に転じた、②国際仲裁裁判所の判決で中国は惨敗(南シナ海)!
中国のアプローチは、まだ成功していない。①中国の成長を見守っていた米国が対中強硬に転じた。②南シナ海をめぐる国際仲裁裁判所の判決で中国は惨敗した。
(6)中国に対する日本の立場:(ア)南シナ海・尖閣諸島、(イ)香港問題!
日本は、米中対立の中でどうふるまうか?中国に対しては(ア)南シナ海や尖閣諸島の強硬姿勢は国際社会に通用しないと中国に伝える、(イ)香港問題では大国の度量が試されると説得する。
(6)-2 米国に対する日本の立場:(ウ)孤立主義、(エ)対中国、(オ)他国と一緒に秩序再編!
日本は、米国を説得する必要もある。米国は(ウ)孤立主義に回帰してはいけない、(エ)中国に露骨に牙をむくのも間違いだ、要するに(オ)米国は他国と一緒に秩序の再編に取り組まなければならない。
(7)基本は「日米同盟プラス日中協商」!
「日米同盟プラス日中協商」という基本が大事だ。①米中の戦争は選択肢たり得ない。日本も確実に火の粉を被る。②米中両国だけで世界秩序再編の合意ができない。米中双方の間に日欧が入らねばならない。
(7)-2 中国と友好関係を維持する:(ア) 地域秩序の構想、(イ) 言うべきことは言う、(ウ)中国を含む新秩序!
今後の日中関係:(ア)日本は、軍事的に「あなどれない拒否力」を持ち、友好関係を維持しつつ、地域秩序の構想を共に考えて行こうと中国に呼びかける。(イ)日本は、日中関係を大事にしつつ、言うべきことは言う。また(ウ)中国が孤立せず、現在の姿勢を修正しながら、世界で敬意を払われる存在になる道、(ウ)-2 また中国を含む新秩序を共に考えて行こうと中国を誘導する。
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安部悦生『文化と営利』「第Ⅱ部」「第8章 イギリスの経営文化」(前半):土地所有に基づく貴族・地主的価値体系の優越!しかし1980年代以降、ジェントルマン資本主義は死滅した!

2020-02-22 13:16:15 | 日記
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019「第Ⅱ部 経営文化の国際比較」「第8章 イギリスの経営文化」(前半)

(1)「イギリスは階級社会か――地主・貴族的価値体系」:イギリスでは土地所有が価値序列の最上位だ!
A 土地所有が価値の最上位、これが地主・貴族的価値体系だ。19世紀末、貴族400家族が全所有地の17%を占め、これに大地主(3000エーカー以上)1688家族、大規模ジェントリー(300エーカー以上)1万2000家族を合わせると、彼ら1万4000家族でイギリスの土地の70%を占めた。
B 貴族・地主的価値体系の中心は土地所有だが、19世紀末以降は証券(特に高配当の海外証券)保有も重視された。
B-2 20世紀に入ると所得税・相続税の重税化で、地主が土地を耕作農民に売却。借地面積は1880年代85%、1960年50%となった。
B-3 すでに19世紀末の農業不況で地主が農業経営に関心を示さなくなり、20世紀はまた独立自営農民の時代となった。
《感想》イギリスで、土地所有は価値序列の最上位だ。貴族・大地主・ジェントリー・独立自営農民は、土地所有ゆえに社会的序列が高い。

(2)「宗教――イギリスと日本の親和性」:イギリス人は「非宗教的」だ!
C イングランドは国教を持ち、それがイギリス国教会(Angrican Church)だ。スコットランドは長老派(プレスビテリアン)が国の宗教だ。現在、イギリスの平均的な人々は、信仰心が篤くなく、日曜に教会に行く人も少ない。日本人と同じように非宗教的だ。
C-2 森嶋『イギリスと日本』によれば、日本人の3大特徴は「(イ)都会好き、(ロ)非宗教的、(ハ)死後の生活を信じない」である。イギリス人は「非宗教的」だが、日本人より「神を信じる」。

(3)「イギリスの企業――その構造」:イギリスの経営者は階級的ジェネラリスト!日本の経営者は社内的ジェネラリスト!
D 企業構造は、株式会社である限り、イギリスも日本・アメリカと異ならない。
E イギリスでは、①職長レベル(ネクタイをする)と工員レベルが、経営と労働つまり「奴らと俺たち(them and us)」の対立感情の先鋭化の場だ。
E-2 ②大規模な労働組合組織における組合幹部と平組合員(工員)の対立もある。②-2「shop stewward(ショップスチュワード、職場委員)」による山猫ストが頻発。
E-3 さらに③ホワイトカラー(月給)とブルーカラー(週給)の対立・差別、④技師(engineer、大卒)と技手(technician)の対立・差別もある。
E-4 ⑤イギリスの経営者は、パブリックスクール(学費の高い私立校)・大学卒のアマチュア的ジェネラリストだ。(ジェントルマン資本主義!)かくて「アマチュア経営者対職員(プレイヤー)」の対立。⑤-2 イギリスの経営者は、階級的バックグラウンドに基づくジェネラリスト(Ex. ラグビーの決断力など全人的知識の養成。)(Cf. サッカーは労働者階級のスポーツ。)
E-5 日本では、意識的ジョブローテーションで社内的にジェネラリストが養成される。
《感想》イギリスは諸種の階級(経済的地位)・身分(出自的地位)対立からなる社会だ。

(4)「工業対商業・金融(サービス産業)」:国家の政策決定において、地主・金融業者による支配力は強靭だったが、第2次大戦後、政治的にも経済的にもジェントルマン資本主義は解体した(1980年代以降、死滅)!
C イギリスでは、ハイファ―ミング(農業生産性を上げる根菜類の導入)により18世紀後半から19世紀前半にかけ、農業生産性が高まり、地主・借地農(農業経営者)・農業労働者の3階級制(3分割性)が登場した。農業の隆盛による地代・地価の上昇、さらにエンクロージャーも実行し、地主階級は政治的支配力が増大した。
C-2 産業革命で富を拡大した産業資本家は、貴族・地主的価値体系の下では、土地を購入し地主・さらに貴族とならない限り、社会の上層にたどり着けなかった。また煤煙を嫌い・農村を好む「反工業精神」(anti-industrial spirit)の社会風土に、工業は攻撃された。
D  16世紀の「マーチャント・アドヴェンチャラーズ」の時代から「大商人」には一定の社会的敬意が払われた。
D-2 17世紀末に国債が大量に販売され出すと、「大金融業者」(マーチャントバンカー)が国家に貢献するものとされた。
D-3 かくて「大商人」と「大金融業者」は、「大地主」に次ぐ社会的地位を持つものとして、「上流階級」に組み入れられた。
D-4 ただし「土地」と異なり、商業・金融をふくむ「ビジネス」をいかがわしいとする「反ビジネス精神」(anti-business spirit)が多かれ少なかれ存在した。これは、キリスト教が「富者が天国に入るのは至難」としていることに由来する。(カルヴィニズムが支配的な地域を除く。)
E ケインズの3階級論:①資産家階級(地代を得る地主、利子を得る証券保有者)、②企業家階級(商業利潤を得る商人、工業利潤を得る工業家)、③労働者階級(賃金を得る)。そして①資産家階級を徐々に衰滅(「安楽死」)させるのが賢明だとケインズは述べた。
E-2 ケインズの構想は実現せず、イギリスの政策は産業資本家(②企業家階級)でなく、土地利害(土地所有者)と金融利害の複合体(①資産家階級)によって決定された。ジェントルマン資本主義!
E-3 国家の政策決定で、地主・金融業者(ロンドンのシティ)による支配力が強靭だったが、第2次大戦後は、政治的にも経済的にもジェントルマン資本主義は解体した。(1980年代以降、死滅した。)
《感想》地主・金融業者(ロンドンのシティ)の支配力は低下し、②企業家階級(商業利潤を得る商人、工業利潤を得る工業家)が、イギリスでは政治的にも経済的にも主力となった。

(5)「企業の発展――個人的資本主義から経営者資本主義へ」:イギリスも経営者資本主義、機関投資家資本主義となった!
F イギリス企業では、血縁を重視した家族資本主義(個人的資本主義)が強固だったが、戦間期に、「私会社」(private limited company)から「公募会社」(public limited company)への転換が起きた。経営者資本主義への転換だ。
F-2 1960年代以降は大企業比率(国民純所得における巨大企業100社の比率)について、イギリスがアメリカを超えた。また個人投資家の比率が下がり、機関投資家(とりわけ海外)の比率が40%を超えた。
F-3 イギリスも経営者資本主義、機関投資家資本主義となった。
《感想》1980年代(Cf. ジェントルマン資本主義も死滅)以降、イギリスは経営者資本主義、機関投資家資本主義の点で、米国と変わらない。

(6)「教育制度の問題」:昔と異なり、イギリスの大学進学率は高い!2010年、日本の大学進学率51%、イギリス63%だ!
G 「初等・中等・高等教育」:イギリスの階級制を温存する仕組み!
G-2 公立教育:まず小学校6年間(5-11歳)。ついで中学校5年間(11-16歳)は、モダンスクール(基礎教育校)、テクニカルスクール(専門教育校)、グラマースクール(総合ハイレベル教育校)(約15%)に分かれる。全2者から「古典教育」の大学(高等教育機関)にはまず進めない。グラマースクールに入った者の一部が高校(6 th Form)(2年間)、さらに大学(3年間)に進む。(1950年代の大学進学率は5%。)大学ではラテン語など古典教育を学ぶ。
G-3 貴族や富裕な家庭は、パブリックスクール(インデペンデントスクール)に通う。ここがアマチュア経営者、ジェントルマン経営者を輩出した。全人的教育、リーダーシップを養う実践的教育(寮・スポーツ)。教育格差の再生産だ。
G-4 「古典教育」の大学(高等教育機関)に関し、オックスブリッジの卒業生はMA(Master of Arts)、他大学の卒業生はM.Phil.(Master of Philosophy)だ。
《感想》ここの話は「古典教育」の大学のことだ。「実学教育」の大学が今は多くあり、イギリスの大学進学率は日本より10%以上高い。文科省資料(OECD 調査)によると2010年、日本の大学進学率は51%。これに対しイギリス63%だ。Cf. アメリカ74%。

H 「実学教育」「ビジネス教育」:「古典教育」でなく「実学教育」「ビジネス教育」の大学が今は多数ある!
H-2 ラテン語などを学ぶ「古典教育」と異なり、工学士、商学士、経済学士等を生み出す「実学教育」の大学が今は多数ある。1990年代のイギリスの大学進学率は40%に達した。(Cf. 2010年には63%!)
H-3 例えば、「ポリ」と呼ばれ軽んじられていた工業専門学校(ポリテクニーク)が1980年代には、大学に昇格した。
H-4 なおイギリスの保守党のメージャー首相(職1990-97)は中学卒で、父はサーカスの座長だった。もちろん保守党には、いまだオックスブリッジ(オックスフォード&ケンブリッジ)出身者が多数いる。
《感想》「古典教育」のジェネラリストだけでは、今の企業は発展できない。多くの「実学教育」の大卒者が企業に必須だ。若者には『学問のすすめ』だ!
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安部悦生『文化と営利』「まえがき」:「営利」=「資本主義」の肯定、その上で、「まっとうな利益」「ウィンウィンの利益」の追求をめざす!「営利」と「文化」の共進化!

2020-02-22 08:55:23 | 日記
※安部悦生『文化と営利 ―― 比較経営文化論』有斐閣、2019

「まえがき」
(1)ウィンウィンの利益!
著者は「まっとうな利益」がこの社会にあると前提する。「ウィンウィンの利益」だ。
《感想》企業間、企業と労働者(従業員)に「ウィンウィンの利益」がありうるのかどうか、様々な状況が考えうる。
(1)-2 「人」と「企業」の「共進化」!
著者は、「ウィンウィンの利益」を、一般に「人」と「企業」の間の持ちつ持たれつの発展(live and let live)、つまり「共進化」と名付ける。「人」と「企業」の「共進化」が可能かどうかが問われる。
(1)-3 「営利」と「文化」の共進化を明らかにする
この場合、「人」は「文化」と読み替えられ、本書は「営利と文化の共進化を明らかにする」ことが目標とされる。とりわけ「宗教」が文化の重要な一翼として注目される。
(2)「営利」=「資本主義」以外ありえない!
なお経済体制としては、今や「計画経済」や「封建制」はありえず、「営利」=「資本主義」以外ありえないと著者は考える。
(2)-2 何が「まっとう」で何が「ウィンウィン」か、定義するのは「文化」=「人」だ!
経済の発展は付加価値(給与と利益)の増大だ。「ただし実際の経済活動としては、付加価値の最大化を直接目指すことは困難であり、利益が経済発展の原動力となっている。利益は、努力を傾注する経済活動の指標として分かりやすいのである。」
《感想》著者の立場は「まっとう」だ。(現実的で多数派的、また日常生活の常識に沿う!)「営利」=「資本主義」の肯定、その上で、「まっとうな利益」「ウィンウィンの利益」の追求をめざす。この場合、何が「まっとう」で何が「ウィンウィン」か、定義するのは「文化」=「人」だ。かくて「文化(人)と営利」の関係が問われる。
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