《参考》五百旗頭真(イオキベマコト)・元防衛大学校長「日本は秩序再編へ誘導を」『朝日新聞』2020/01/13
(1)米国:「孤立主義」は高くつく!
米国は2つの世界大戦で「孤立主義」が高くつくことを学んだ。だが第2次世界大戦後の秩序を担う時代となり、
重い負担がのしかかった。今や、「なぜ米国だけが世界の検察官を担わなければならないのか」とトランプ大統領のうめき声!
(2)米国の「秩序疲れ」:①ベトナム戦争とイラク戦争、②格差拡大と中間層の崩落!
転機は2つあった。①米国はベトナム戦争とイラク戦争の誤りで、自ら疲弊し、「秩序疲れ」を加速。もう一つは、②格差拡大。1980年代の繁栄をもたらした新自由主義は格差を容認。2008年のリーマンショックで一層、格差拡大し、中間層が崩落。国内経済がもたなくなり、トランプ氏にゆだねた。
(3)日米安保は、戦後秩序のインフラとして米国にメリットがあった!
日米安保は、「攻守同盟」でないが、太平洋の向う側で基地を自由に利用できる点で戦後秩序のインフラとして米国にメリットがあった。アジア太平洋における地域秩序の安定装置として、ソ連崩壊後も引き続き機能。
(3)-2 日本の基地は、米国の利害が世界に広がる中、世界への関与と秩序の最重要インフラの一つだ!
「全部カネを出さないと米軍は引き揚げる」と言わんばかりのトランプ大統領だが、米国の利害が世界に広がる中、米国は世界への関与と秩序が必要。(Ex. 米国は、中ロが好きにするのを達観できるのか?)日本の基地はその最重要インフラの一つだ。日本が、駐留経費の3/4を負担する現状は妥当だ。
(4)日本は平和志向であるとともに、「あなどれない拒否力」を持つべきだ!
日本は戦争で利益を得ない「平和志向」の国であるべきだ。軍拡の引き金をひくべきでない。だがその範囲であなどりがたい能力(「あなどれない拒否力」)があると思わせることは必要だ。
(5)改革開放で経済発展した中国は2008年以後、「自信過剰」となった!
中国は改革開放で経済力をつけ、国防費は1975年(「農業・工業・国防・科学技術の四つの現代化」)以来、25年間で爆発的に膨らんだ。2008年リーマンショック後、中国の巨大財政投資が世界経済を支えたことから中国は「もう米国の時代でない我々が主導する」と「自信過剰」となった。
(5)-2 中国は「日清戦争後の屈辱の100年」から、「宗主国」としてふるまった時代にもどった!
中国には2つの時代がある。(ア)2000年間、「宗主国」としてふるまった時代、そして(イ)「日清戦争後の屈辱の100年」。今は前者に回帰した。「尖閣諸島も南シナ海も『すべて中国のものだ』」と中国は主張する。
(5)-3 ①米国が対中強硬に転じた、②国際仲裁裁判所の判決で中国は惨敗(南シナ海)!
中国のアプローチは、まだ成功していない。①中国の成長を見守っていた米国が対中強硬に転じた。②南シナ海をめぐる国際仲裁裁判所の判決で中国は惨敗した。
(6)中国に対する日本の立場:(ア)南シナ海・尖閣諸島、(イ)香港問題!
日本は、米中対立の中でどうふるまうか?中国に対しては(ア)南シナ海や尖閣諸島の強硬姿勢は国際社会に通用しないと中国に伝える、(イ)香港問題では大国の度量が試されると説得する。
(6)-2 米国に対する日本の立場:(ウ)孤立主義、(エ)対中国、(オ)他国と一緒に秩序再編!
日本は、米国を説得する必要もある。米国は(ウ)孤立主義に回帰してはいけない、(エ)中国に露骨に牙をむくのも間違いだ、要するに(オ)米国は他国と一緒に秩序の再編に取り組まなければならない。
(7)基本は「日米同盟プラス日中協商」!
「日米同盟プラス日中協商」という基本が大事だ。①米中の戦争は選択肢たり得ない。日本も確実に火の粉を被る。②米中両国だけで世界秩序再編の合意ができない。米中双方の間に日欧が入らねばならない。
(7)-2 中国と友好関係を維持する:(ア) 地域秩序の構想、(イ) 言うべきことは言う、(ウ)中国を含む新秩序!
今後の日中関係:(ア)日本は、軍事的に「あなどれない拒否力」を持ち、友好関係を維持しつつ、地域秩序の構想を共に考えて行こうと中国に呼びかける。(イ)日本は、日中関係を大事にしつつ、言うべきことは言う。また(ウ)中国が孤立せず、現在の姿勢を修正しながら、世界で敬意を払われる存在になる道、(ウ)-2 また中国を含む新秩序を共に考えて行こうと中国を誘導する。
(1)米国:「孤立主義」は高くつく!
米国は2つの世界大戦で「孤立主義」が高くつくことを学んだ。だが第2次世界大戦後の秩序を担う時代となり、
重い負担がのしかかった。今や、「なぜ米国だけが世界の検察官を担わなければならないのか」とトランプ大統領のうめき声!
(2)米国の「秩序疲れ」:①ベトナム戦争とイラク戦争、②格差拡大と中間層の崩落!
転機は2つあった。①米国はベトナム戦争とイラク戦争の誤りで、自ら疲弊し、「秩序疲れ」を加速。もう一つは、②格差拡大。1980年代の繁栄をもたらした新自由主義は格差を容認。2008年のリーマンショックで一層、格差拡大し、中間層が崩落。国内経済がもたなくなり、トランプ氏にゆだねた。
(3)日米安保は、戦後秩序のインフラとして米国にメリットがあった!
日米安保は、「攻守同盟」でないが、太平洋の向う側で基地を自由に利用できる点で戦後秩序のインフラとして米国にメリットがあった。アジア太平洋における地域秩序の安定装置として、ソ連崩壊後も引き続き機能。
(3)-2 日本の基地は、米国の利害が世界に広がる中、世界への関与と秩序の最重要インフラの一つだ!
「全部カネを出さないと米軍は引き揚げる」と言わんばかりのトランプ大統領だが、米国の利害が世界に広がる中、米国は世界への関与と秩序が必要。(Ex. 米国は、中ロが好きにするのを達観できるのか?)日本の基地はその最重要インフラの一つだ。日本が、駐留経費の3/4を負担する現状は妥当だ。
(4)日本は平和志向であるとともに、「あなどれない拒否力」を持つべきだ!
日本は戦争で利益を得ない「平和志向」の国であるべきだ。軍拡の引き金をひくべきでない。だがその範囲であなどりがたい能力(「あなどれない拒否力」)があると思わせることは必要だ。
(5)改革開放で経済発展した中国は2008年以後、「自信過剰」となった!
中国は改革開放で経済力をつけ、国防費は1975年(「農業・工業・国防・科学技術の四つの現代化」)以来、25年間で爆発的に膨らんだ。2008年リーマンショック後、中国の巨大財政投資が世界経済を支えたことから中国は「もう米国の時代でない我々が主導する」と「自信過剰」となった。
(5)-2 中国は「日清戦争後の屈辱の100年」から、「宗主国」としてふるまった時代にもどった!
中国には2つの時代がある。(ア)2000年間、「宗主国」としてふるまった時代、そして(イ)「日清戦争後の屈辱の100年」。今は前者に回帰した。「尖閣諸島も南シナ海も『すべて中国のものだ』」と中国は主張する。
(5)-3 ①米国が対中強硬に転じた、②国際仲裁裁判所の判決で中国は惨敗(南シナ海)!
中国のアプローチは、まだ成功していない。①中国の成長を見守っていた米国が対中強硬に転じた。②南シナ海をめぐる国際仲裁裁判所の判決で中国は惨敗した。
(6)中国に対する日本の立場:(ア)南シナ海・尖閣諸島、(イ)香港問題!
日本は、米中対立の中でどうふるまうか?中国に対しては(ア)南シナ海や尖閣諸島の強硬姿勢は国際社会に通用しないと中国に伝える、(イ)香港問題では大国の度量が試されると説得する。
(6)-2 米国に対する日本の立場:(ウ)孤立主義、(エ)対中国、(オ)他国と一緒に秩序再編!
日本は、米国を説得する必要もある。米国は(ウ)孤立主義に回帰してはいけない、(エ)中国に露骨に牙をむくのも間違いだ、要するに(オ)米国は他国と一緒に秩序の再編に取り組まなければならない。
(7)基本は「日米同盟プラス日中協商」!
「日米同盟プラス日中協商」という基本が大事だ。①米中の戦争は選択肢たり得ない。日本も確実に火の粉を被る。②米中両国だけで世界秩序再編の合意ができない。米中双方の間に日欧が入らねばならない。
(7)-2 中国と友好関係を維持する:(ア) 地域秩序の構想、(イ) 言うべきことは言う、(ウ)中国を含む新秩序!
今後の日中関係:(ア)日本は、軍事的に「あなどれない拒否力」を持ち、友好関係を維持しつつ、地域秩序の構想を共に考えて行こうと中国に呼びかける。(イ)日本は、日中関係を大事にしつつ、言うべきことは言う。また(ウ)中国が孤立せず、現在の姿勢を修正しながら、世界で敬意を払われる存在になる道、(ウ)-2 また中国を含む新秩序を共に考えて行こうと中国を誘導する。