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兼好法師『徒然草』第142段「心なしと見ゆる者も」:愛しい親のため妻子のためには、恥を忘れるし盗みもする!衣食に事欠かないのに悪事を働く者こそ、疑いなく盗人だ!

2020-07-03 20:03:30 | 日記
※兼好法師(1283?-1352?)『徒然草』(1330-31頃)

(1)
情趣を解さないと思える」(「心なしと見ゆる」)荒武者で恐ろしそうなのが、側にいた者に「お子さんはおいでか(※いらっしゃるのか)」と尋ねた。その者が「一人もおりません」と答えると、「それでは人間らしい情感はお分かりになるまい。・・・・子のおかげで、あらゆる情感は自然と分かってくる」と言った。肉親間の愛情(「恩愛の道」)でなくして、このような恐ろしそうな荒武者の心に慈悲が湧くであろうか。
《感想1》肉親間の愛情(「恩愛の道」)は人の情感の基本だ。
《感想1-2》Cf. 今、親の自己中心的な《シツケ》と称する子どもへの虐待は、子どもの情感(人への信頼)を破壊する。まして子どもへの「性的虐待」は人間らしい情感に反する悪魔の行為だ。
(2)
世を捨て天涯孤独で無一物の者は、世間の内に住むしがらみの多い人が、他人に媚びへつらい欲望の深いさまを見て、ひどく軽蔑する。だがそれは間違っている。(「僻事(ヒガゴト)なり。」)人は、愛しい親のため妻子のためには、恥を忘れるし盗みもするであろう。
《感想2》(a)「媚びへつらい」、(b)「欲望の深い」こと、(c)「恥」を忍ぶこと、また(d)権力ある者への《忖度》、時には(d)「盗み」さえ、愛しい親のため妻子のためにならするというのは、本当だ。
《感想2-2》だが親や妻子のためでなく、自分の快楽追求・傲慢・虚飾・強欲・権力維持等だけのために、出世・昇進・カネ・権力を求め、謀殺・盗み・恐喝・横領・詐欺等の犯罪をすることもある。
(3)
盗人(ヌスビト)を捕らえてこらしめ、悪事を罰しようとするだけではだめだ。人は追いつめられて盗みを働く。世間の人々が飢えたり凍えたりしないように、この世を治めてほしいものである。上に立つ者は奢侈浪費を止め、民衆を慈しみ、農業を勧奨し、下の者に利益があるようにすべきだ。
《感想3》兼好法師の立場は、「厳罰を与えれば凶悪犯罪も減り良い社会になる」という厳罰化論と異なる。
《感想3-2》Cf. 刑罰には、①一般予防(一般公衆の犯罪の予防)、②特別予防(犯罪者の再犯の予防、教育刑)③被害者および一般公衆の報復感情を満.足させる(応報刑)などの目的がある。
《感想3-3》兼好法師は、刑罰を否定するわけでない。ただし彼は犯罪が起きる原因について、(a)「刑罰が軽いから」という観点でなく、(b)「人は追いつめられて盗みを働く」という観点に立つ。かくて兼好法師は、「世間の人々が飢えたり凍えたりしないように、この世を治めてほしいものだ」と言う。
《感想3-4》この場合、彼は、特に「愛しい親のため妻子のためには、恥を忘れるし盗みもする」という点を強調する。
(4)
衣食に事欠くことがないのに悪事を働く者こそ、真実の盗人(ヌスビト)と言える。(「衣食尋常(※事足りている)(ヨノツネ)なる上に僻事(※悪事)せん人をぞ、まことの盗人とは言ふべき。」)
《感想4》「衣食に事欠くことがないのに悪事を働く」とは、権力者・大金持ち・勝ち組が、快楽追求・傲慢・虚飾・強欲・権力維持等のために犯罪を犯すことだ。
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