DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

山本沖子(1924-)「駅へ行く道」『花の木の椅子』(1947年、23歳)所収

2017-03-15 20:36:56 | 日記
 駅へ行く道

駅へ行く一本道が私は大好きだ

春はアカシアの花がこぼれる

秋になると白い風が吹く

明るい夜に
私は毎夜この道を歩いてゆく

写生したい小さい女の子の家の二階から
気の狂った人が石を投げます

いく日も雪が降って
夜は方角が分からない
駅へ行く道は私の家から一本道

駅へ行く一本道が私は大好きだ

《感想1》
「駅へ行く一本道が私は大好きだ」と、詩人が言う。彼女は23歳。若い。
春、「アカシアの花」が咲くので、この道が好きなのだ。
また秋、「白い風が吹く」ので好きなのだ。
さわやかさへの憧憬。
《感想2》
詩人は「明るい夜」が好きだ。暗い夜は嫌いだ。詩人は、明るさにあこがれる点で、心が健康だ。
《感想3》
詩人は「小さい女の子」が好きだ。子供の可愛さを、受け入れる。詩人の心は素直だ。
ところが彼女は驚く。「気の狂った人」が、この小さい女の子の家に同居する。
世の中に不幸があると、若い詩人はあらためて確認する。
《感想4》
さわやかさ、明るさにあこがれる素直な詩人の心が、不幸な事態の出現に、とまどう。
「方角が分からない」。
だが、彼女はあきらめない。生を肯定する立場を、失わない。「駅へ行く道は私の家から一本道」。
《感想5》
「駅へ行く一本道」は、詩人の心における“生を明るく希望的に捉える傾向”を、比喩的に示す。
彼女は若く、生を肯定し、“希望をもって生きる”と断言的に宣言する。
かくて彼女は言う、「駅へ行く一本道が私は大好きだ」と。

 THE ROAD TO THE STATION

I like the straight road to the station.
In spring, acacias are in full bloom.
White wind blows in autumn.
In the bright night, I walk along this road every night.

From the house where a little girl whom I want to make a sketch of lives, a lunatic man throws a stone.
When snow falls for many days, I can’t find directions at night.
The road along which I walk to the station is a straight one.

I like the straight road to the station.
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