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「加藤 楸邨(シュウソン)」『日本詩人全集31』(新潮社、1969年):後年、草田男、波郷とともに人間探求派と呼ばれた!

2021-06-04 21:58:08 | 日記
加藤楸邨(シュウソン)(1905-1993)はS4(24歳)粕壁中学教師となる。S6より秋桜子に俳句を学ぶ。(この年、秋桜子『ホトトギス』離脱。清新な抒情句による昭和俳句革新。)S8楸邨、第2回馬酔木賞を受賞。北方型の孤独寂寥がある。後年、草田男、波郷とともに人間探求派と呼ばれた。

(1)『春寒』(S14、34歳):S12上京、東京文理大国文科に入学、3人の子女を抱えた老学生(32歳)となる!馬酔木発行所につとめる!S12日中戦争勃発!
★「武蔵野はもの枯れ冬に入るひかり」:冬、木々が枯れ、光が林に満ちる。
★教え子「黍(キビ)負へば百姓となりぬその手足」:粕壁中学教師の時の句。
★「天の川路地を夜明の風ながる」:上京し都会の路地に住む。
★毛越寺(モウツウジ)「亡びにしものに浮葉の秋いたり」:毛越寺の大きな池。奥州藤原氏の時代、多くの伽藍が造営された。
★我は「外套を脱がずどこまでも考へみる」:東京文理大国文科に通う。
★「その冬木誰も瞶(ミツ)めては去りぬ」:その木に誰もが注目するが、しかし去る。

(2)『颱風眼』(S15、35歳):戦争の時代!&「難解派」とも呼ばれる!
★「兜虫視野をよこぎる戦死報」:日中戦争が拡大。
★「汗の子のつひに詫びざりし眉太く」:子どもは自分が悪いと思っていない。
★「枯るる音葭(ヨシ)をはなれず鰯雲」:かさかさと葭が鳴る。
(3)『穂高』(S15、35歳):楸邨、S15府立8中に就職!
★「金魚売路地深く来て汗拭う」:路地の奥まで金魚売が来る。
★「吾子(アコ)のためあげしわが手も秋の風」:小どもが悪いことをした。秋。
★「軍隊のみな踏み過ぐる寒夜の鋲」:夜、町中を軍隊が移動する。
(4)『雪後の天』(S18、38歳):S16太平洋戦争勃発!楸邨は、S17府立8高女に転任!芭蕉研究に打ち込む!「真実感合」・「ひとりごころ」!
★崖下の家「午(ヒル)過ぎて枯木の色となりにけり」:冬の午後。
★十六年抄・十二月八日以後二句「十二月八日の霜の屋根幾万」、「わが死後も寒夜この青き天あらむ」:対米戦争による幾万の運命への危惧。わが死後も「青き天」は残る。
★十七年抄・断片二句「幾人をこの火鉢より送りけむ」、「生きてあれ冬の北斗の柄の下に」:楸邨は、多くの教え子を戦場に送った。
★「蟇(ヒキ)歩く大きくゆるく爆音下」:Cf. S17年4月ドーリットル爆撃隊が日本本土空襲。
★十八年抄・病床二句「どこやらに硝子が割れぬ桐の花」、「さえざえと水密桃の夜明かな」:不安と救い。
★十九年抄「わすれんや繁縷(ハコベラ)を食ひあまさぬ日」:食べるものがなく、野に生えるハコベラを食べる。

(5)『砂漠の鶴』(S23、43歳):大陸俳句紀行(改造社および大本営報道部嘱託)!(Cf. S21年、中村草田男が楸邨を「戦争協力者」として批難!)
★北京城「水のごとき雲ながれをり西瓜売」:西瓜は水分が多い。
★「燐寸(マッチ)摺(ス)りてゴビの砂漠の虫を見き」:夜、ゴビの砂漠の虫を見た。
(6)『火の記憶』(S23、43歳):米軍の空襲下!
★二十年元旦「霜柱この土をわが墳墓とす」:S20年になって空襲が本格化する。
★一月二十七日「火の中に入りゆく冬の雲一朶(ダ)」:雲の一片が空襲の火の中に入っていく。
★三月十日「火の色の風がうがうと木の芽だつ」:S20年3月10日「東京大空襲」、死者数10万人以上。
★四月四日「髪焦げし教へ子と逢ふ桃は咲き」:空襲で逃げた「教へ子」!
★五月二十三日、わが家罹災「火の奥に牡丹崩るるさまを見つ」:S20年5月、わが家が空襲で燃える。
★五月二十四日、病臥中の弟を負ひ、妻と共に一夜道子と明雄を求めて火中彷徨「雲の峯八方焦土とはなりぬ」:必死で逃げた。
(7)『野哭』(S23、43歳):戦後混乱期!家宅焼亡!
★「飢せまる日もかぎりなき帰燕かな」:戦後の食糧難、S20秋。
★サイパンに果てし義弟の遺骨還る「草蓬(クサヨモギ)あまりにかろく骨置かる」:S21年春、義弟の遺骨が届く。
★「蜘蛛夜々に肥えゆき月にまたがりぬ」:食糧難の人間、肥る蜘蛛。見えない糸に乗り、蜘蛛が月にまたがる。
★「凩(コガラシ)や焦土の金庫吹き鳴らす」:焼け跡の金庫。(Cf. その後、敗戦から10年経ち、S56には「もはや戦後ではない」と言われる。)
★「死にたしと言ひたりし手が葱刻む」:人は生きる。死なない。
★「死や霜の六尺の土あれば足る」:人は死んで土にかえる。
★「丁花は咲きあふれをり米は来ず」:配給の米は来ない。沈丁花(ジンチョウゲ)が咲き溢れている。
★「パン種の生きてふくらむ夜の霜」:冬の夜。パン種は生きている。

(8)『起伏』(S24、44歳):S23から病臥!
★「鮟鱇(アンコウ)の骨まで凍ててぶちきらる」:死後も、踏んだり蹴ったりされる。
★「野の起伏ただ春寒き四十代」:人生の起伏。まだ大変な四十代。
★「あきらめて鰤(ブリ)のごとくに横たはる」:鰤は死んで横たわっている。楸邨は病気だが生きている。
★「口あけて寒鮒に似しかと思ふ」:寒鮒は口をあけている。
(9)『山脈』(S30、50歳):病気からの回復期の作品集!S30青山女子短大教授となる!
★「一燈を消せば雪ふる夜の国」:室内の一燈を消せば、ガラス窓の外の夜の景色が見える。
★「路地の奥の海を過ぎたる冬の夜よ」:海沿いの町。路地の奥に海が見える。

(10)『まぼろしの鹿』(S42、62歳):S43第2回蛇笏賞受賞!人間存在のかなしみ、おかしみ!
★「啄木鳥(キツツキ)や人は世にゐて声も褪(ア)せ」:山の元気な啄木鳥、この世の疲れた人。
★「餅焼くやはるかな時がかへり来ぬ」:餅焼く昔の場面を思い出した。
★「恋猫の皿舐(ナ)めてすぐ鳴きにゆく」:猫は季節によって発情期を迎える。
★「寒卵(カンタマゴ)の無限同型がふとさびし」:寒卵は栄養豊富と昔、珍重された。自分は他人と同じでない!
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