百の目を持つアルゴスが、メルクリウスに「葦の笛が発明されたいきさつ」について尋ねた。メルクリウスがアルゴスに説明した。(43頁)
かつてシュリンクスという名の妖精(ニンフ)がいた。牧神パンが彼女を見つけ口説いた。シュリンクスは逃げ、ラドンの流れまでやって来た。パンにつかまりそうになったシュリンクスは、水の精たちにわが身の変身を頼んだ。パンは妖精シュリンクスをつかまえた。しかし彼がつかまえたのは沼地の葦だった。シュリンクスは葦に変わっていた。牧神パンは溜息をついた。すると葦の茎の中で空気が揺れ動き、音を出した。音色の甘美さにパンは言った。「お前(シュリンクス)と私の語らいは、いついつまでも続くだろう。」こうして長短さまざまの葦を蠟(ロウ)でつなぎ合わせて出来上がった葦笛は、乙女の名にちなんでシュリンクスと呼ばれるようになった。これがパンの笛(パンフルート;シュリンクス)の起源だ。(44-45頁)
ヤーコブ・ヨルダーンス『パンとシュリンクス』(1620年頃)
かつてシュリンクスという名の妖精(ニンフ)がいた。牧神パンが彼女を見つけ口説いた。シュリンクスは逃げ、ラドンの流れまでやって来た。パンにつかまりそうになったシュリンクスは、水の精たちにわが身の変身を頼んだ。パンは妖精シュリンクスをつかまえた。しかし彼がつかまえたのは沼地の葦だった。シュリンクスは葦に変わっていた。牧神パンは溜息をついた。すると葦の茎の中で空気が揺れ動き、音を出した。音色の甘美さにパンは言った。「お前(シュリンクス)と私の語らいは、いついつまでも続くだろう。」こうして長短さまざまの葦を蠟(ロウ)でつなぎ合わせて出来上がった葦笛は、乙女の名にちなんでシュリンクスと呼ばれるようになった。これがパンの笛(パンフルート;シュリンクス)の起源だ。(44-45頁)
ヤーコブ・ヨルダーンス『パンとシュリンクス』(1620年頃)