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土屋賢二「高齢者の読書離れ」:①功名心でなく「好奇心」だ、②「不満足」な老後の問題、③「一目置かれたい」、④老後の新たな「目標」は疲れる、⑤「見るべきほどのものは見つ」!

2020-08-14 12:25:53 | 日記
※土屋賢二(1944-)(哲学者)「高齢者の読書離れ」(『週刊文春』2020/08/13,20号)

土屋賢二氏がある調査について報告する。「1か月に1冊も本を読まない人が一番多い年齢層は七十代だ」という。
《感想》たぶん調査の上限が70代で、私見では「本を読まない」のは、「視力が衰えた」せいが大きいだろう。だが土屋氏はそうでなく、「高齢者が向上心を失っている」ためだと言う。「向上心を失った理由」を、彼は5つ挙げる。

(1)宇宙・この世への「好奇心」でなく、「功名心」のため、成功の手段として読書してきたので、「成功」後、高齢になって本を読まなくなる!
理由①「自分はすでに頂点に達している」と高齢者は思うので「向上心」がなく、本を読まない。
《感想1》これは成功者・勝ち組の場合だ。宇宙・この世への「好奇心」でなく、「功名心」のため、成功の手段として読書してきたので、「成功」後、高齢になって本を読まなくなる。燃え尽きたのだ。
《感想1-2》宇宙・この世への「好奇心」があれば、何歳になっても、読書するだろう。

(2)高齢になっても「人並み以下」or「不満足」に生きて行くしかない場合は、「向上心」が生まれる!
②「何をもって『向上する』と言えるのか分からなくなった」と高齢者は思うので「向上心」がなく、本を読まない。
《感想2》つまり意欲がわかないのだ。これも成功者・勝ち組の場合だ。成功の手段としてのみ読書してきたので、「成功」後、高齢になってからは本を読まない。
《感想2-2》読書がなぜよい事か?①他者より物知りになる。他者と比較しての優位・自尊心を満たす。②エンターテインメントとして読書は楽しい。③実践に役立つ。Ex. 実務書、語学書、学習参考書。④宇宙・この世の謎を解き、真理に近づける。つまり「好奇心」を読書によって満たすことができる。
《感想2-3》「向上する」とは今より良い生き方をすることだ。高齢になって「人並み」にor「満足」して生きていければ、今のままでよいから、特に「向上する」必要がない。こういう場合は「何をもって『向上する』と言えるのか分からなくなる」。
《感想2-4》だが高齢になっても「人並み以下」or「不満足」に生きて行くしかない場合は、「向上心」が生まれる。競争・苦難を克服するため「向上」しなければならない。「読書」も必要だ。

(3)高齢者になっても、ライバル、友人を持てば、彼らに「一目置かれたい」ので「向上心」を持つ!
③「向上してもホメてくれる親など年長者がいない」と高齢者は思うので「向上心」がなく、本を読まない。
《感想3》小さい頃は、「親など年長者がほめてくれるので、《向上》しようとする」というのは本当だ。だが青年・大人に成ってからは、(ア)人より「物知り」になって「一目置かれたい」がため、あるいは(イ)「功名心」に基づき競争に勝ち抜くいため、読書する。これらが「向上心」だ。
《感想3-2》高齢者になっても、ライバル、友人を持てば、彼らに「一目置かれたい」ので「向上心」を持つ。

(4)新たな「目標」を発見してしまい、その「目標」の実現のため、高齢者になっても、つらい努力を再びする!
④「下手に向上すると、老後をのびのび過ごせなくなる」と高齢者は思うので「向上心」がなく、本を読まない。
《感想4》人は「のんびり過ごしたい」、「怠惰でいたい」と思うものだ。
《感想4-2》だが弱肉強食、優勝劣敗の熾烈な「競争」の世の中、少しでも「向上」して人に勝たねばならない。《感想4-3》競争がなくなれば、老後、「のんびり過ごしたい」と思うのは当然だ。
《感想4-4》「下手に向上する」とは、新たな「目標」を発見してしまい、その「目標」の実現のため、高齢者になっても、つらい努力を、(高齢になってのんびりできるはずなのに)再びするようになることだ。

(5)「この世」or「この世の人」に背を向けた高齢者は、寂しい!
⑤「これまで本を読んでも何かが改善したためしがない」と高齢者は思うので「向上心」がなく、本を読まない。
《感想5》「本は人が書いたものだ。だが人などたかが知れている」と高齢者は、「この世」or「この世の人」に背を向ける。かくて「改善」という概念がそもそも成立しない。この世が無存在だから、この世の「改善」も無存在だ。かくて「何かが改善したためしがない」。
《感想5-2》「見るべきほどのものは見つ」と言って碇(イカリ)を背負い壇ノ浦に沈んだ平知盛(トモモリ)を思い出す。
《感想5-3》「この世」or「この世の人」に背を向けた高齢者は、寂しい。
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