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真理の存在様相:「現存在が永遠にわたって存在していたし存在するであろう」ということが立証されて、初めて「永遠な真理」が「証明」される! ハイデガー『存在と時間』「第44節」(c)(その1)

2019-11-01 14:08:32 | 日記
※「第1部 現存在を時間性へむかって解釈し、存在への問いの超越的地平として時間を究明する」「第1編 現存在の準備的な基礎分析」「第6章 現存在の存在としての関心(Sorge、気遣い)」「第44節 現存在、開示態および真理性」(c)「真理の存在様相と真理の前提」(その1)

(c)「真理の存在様相と真理の前提」(226頁-)(その1、真理の存在様相)
(8)「真理」は「開示態、発見、被発見態」として、「現存在が存在している間だけ真である」!
A 「真理は、現存在が存在しているかぎり、かつその間だけ、《与えられている》(《es gibt》)。」(226頁)
A-2 「真理」は「開示態、発見、被発見態」として、「現存在が存在している間だけ真である」。(226頁)
A-3 「このような『限定』をつけたからといって、『真理』が真であることを格下げするわけでもない。」(227頁)
《感想8》現存在はモナドであり、宇宙だ。宇宙の真理は、宇宙のうちにのみ発見される。ある現存在が死ねば、真理は姿を現す、つまり《es gibt》=《与えられている》ことができない。
《感想8-2》だがモナドは他モナドと間モナド的な宇宙を構成しうる。この場合、宇宙は感覚=《物の出現》においてのみ間モナド的だ。真理は間モナド的真理として、各現存在(モナド、宇宙)において出現する。

(8)-2 「発見するということが、『真理』というもののありかたである」!
B 例えば「ニュートンの法則はニュートン以前には真でも偽でもなかった。」法則は特定の「存在者を発見的に挙示する。」「ニュートンの法則はニュートンによって真となった。」(227頁)
B-2 つまり「ニュートンの法則によって、現存在にとっては、存在者がそれ自体においてあるありさまで接しえられるようになった。」(227頁)
B-3 「存在者のこの被発見態とともに、この存在者はまさしく、前々からすでに存在していた存在者として現れ出てくる。このように発見するということが、『真理』というもののありかたである。」(227頁)

(8)-3 《モナド共同体》の永遠性が立証されて、初めて「永遠な真理」が「証明」される!
C 「永遠な真理」が与えられているかどうかは、「現存在が永遠にわたって存在していたし存在するであろう」ということが首尾よく立証されて、初めて「証明」されたことになる。(227頁)
C-2 「この証明がない間は、この命題(※「永遠な真理」が与えられているという命題)は空想的な主張にすぎない」。(227頁)
《感想8-3》ここでは現存在の《間モナド的》永遠性が語られている。《モナド共同体》の永遠性が立証されて、初めて「永遠な真理」が「証明」される。

(8)-4 「発見すること(※真理性)は・・・・言明を『主観的恣意』のとどかないところへおき、発見する現存在を存在者そのものに直面させる」!
D 「あらゆる真理は・・・・現存在の存在に相関的である。」(227頁)
D-2 これはあらゆる真理が「主観の恣意にゆだねられている」ということではない。(227頁)
D-3 「発見すること(※真理性)は・・・・言明を『主観的恣意』のとどかないところへおき、発見する現存在を存在者そのものに直面させる。」(227頁)
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ポルガー(1875ー1955)『すみれの君』:ナチスドイツによる併合前のオーストリアが舞台!古き良き貴族の物語だ!大人の愛の物語でもある!

2019-11-01 08:26:11 | 日記
※“ウィーン世紀末文学選”岩波文庫(1989)所収

(1)
1914年早春、ウィーン。ルドルフ伯爵はトランプ勝負に大負けし、とんでもない借金を負った。彼はフランツ・ヨーゼフ皇帝麾下の中尉にして、骨の髄まで騎士だった。ワルツの名手、トランプ好きで膨大な借金、また色事、決闘は数知れず。湯水のように金を使い、目をむくような高価な品を女友達への贈り物にした。その時、決まってパリ特選の香水「パルムのすみれ」を添えたので、伯爵は劇場筋の女たちから「すみれの君」と呼ばれた。
(2)
ルドルフ伯爵は女たちによく持てた。また彼は口髭の似合う美男子だった。連隊仲間でも人気があり、将校集会室での軽口に、彼ほど笑い転げる男もいなかった。ルドルフは愛すべき人物だった。だが彼は借金に借金を重ね、ついに身動きならず、誰一人、びた一文貸さなくなる。彼は軍を退役するしかなかった。
(3)
間もなく第1次大戦(1914-18)がはじまり、ルドルフ伯爵は一介の兵士として従軍した。従軍中は、金ぐりの心配がなかった。大戦後は不況となり、ルドルフは食つなぐため何でもした。競馬の予想屋、遊興クラブの客引き、借金の口利き役など。彼はお気に入りの華やかな世界の末端にしがみついていた。
(3)-2
だがルドルフは、白手袋とガラス玉の入った片メガネは離さなかった。彼は食堂での食事は貧しかったが、給仕には気前よくチップをはずんだ。「すみれの君」は信条を守りとおし、高貴さ、気高さを厳しく守った。
(4)
ルドルフは今や、見る影もない貧困の谷間に落ち込んでいた。昔なじみの女たちも、通りで往き合せたりすると、機転をきかして目をそらした。そんな彼に驚きの出来事が起きた。尾羽打ち枯らしたルドルフの部屋を、ベッティ―ナが訪れたのだ。いささか年は取ったが、彼女は、ウィーン・オペレッタの舞台の星だ。ルドルフの「しょぼたれたみじめな姿」に彼女は驚く。彼は詫びるかのように、禿げあがった額を撫でた。
(5)
「お願いがあるの」とベッティーナが言った。「わたくしと結婚してくださいな!」ルドルフはあまりの驚きに、間抜けな顔をした。それを見て、彼女が声を立てて笑った。途端にルドルフも、人気者だった昔のように大笑いした。彼女が言った。「私は身ごもってる。ところが夫になるべき人が事故で突然死んでしまった。このままでは生まれてくる子が私生児になってしまう!」
(6)
「もしあなたが、昔なじみの好意で結婚してくだされば、子供は私生児の烙印を免れるだけでなく、麗しい伯爵の称号さえ受け継ぐことができる。」ルドルフが悲しそうに首を振った。「このたびの共和政は貴族を廃止しましたよ。」ベッティーナが「尊い身分に変わりはないわ!」と言った。
(7)
「いつ結婚すればよろしいのです?」とルドルフ。「早ければ早いほどいいの――おわかりでしょう」とベッティーナ。「この身がひとの夫になるなんて――思ってもみなかった」とルドルフ。
(8)
続けてベッティーナが言った。「だけど、夫になるわけじゃないの。結婚してすぐに別れる、すぐにね、その場で離婚。」「なるほど」と半ば悲し気に、なかばほっとしたように伯爵が言った。
(9)
ベッティーナの弁護士が、このような結婚の法的根拠、また経費を担当。ルドルフは婚姻を知らせる手紙の文章、印刷、封筒などを細かく指示。だがルドルフには大問題が残っていた。婚姻の指輪だ。それはとりわけ美しく、高価でなければならない。名誉にかかわることだが、まるであてがない。だが彼は即座に血路を開く。
(10)
結婚式の少し前、伯爵がベッティーナを訪れた。彼女は化粧中で、宝石をちりばめたブローチを宝石箱から取り出し服につけた。「どう、これは?」「派手すぎます」とルドルフ。ベッティーナはブローチを取り替えた。常々、化粧のことに関して彼女は伯爵の見解を尊んだ。「指輪の事ですが、どのような意匠がよかろうか?」とルドルフが尋ねた。「およしなさい。もったいないわ!」とベッティーナが言った。
(11)
結婚式の当日、伯爵は上機嫌で現れた。戸籍役場に婚姻届けを出すや否や、両名は別れの握手をした。「離婚のことは弁護士にすべて任せてくださいな。」「お骨折りいただいて、本当にありがとう」とベッティーナが言う。伯爵がポケットからケースを取り出した。「――ほんのおしるし。では、ごきげんよう!」と立ち去った。
(12)
ケースの中には、指輪が入っていた。プラチナで裏打ちした斬新な意匠仕立てに、ベッティーナは感動の吐息を漏らした。あの手の付けられぬ洒落男はどれほどの借金をしたことか!
(13)
しばらくのち、彼女は宝石箱にあるはずのブローチが紛失していることに気付いた。警察が宝石商に廻状を回す。すると一人の宝石商人が届け出た。「数週間前、片メガネと白手袋の紳士が、店にやってきてブローチを指輪に加工するよう注文し、形や意匠をこまごま指示した。」
(14)
ルドルフ伯爵は悪びれることなく一切を認めた。「晴れの結婚式だというのに贈るべき指輪を持たず、どのつら下げて花嫁の前に出られようか。」伯爵はおごそかに言った。「貴族には果たすべき義務があるのです。」
(15)
ベッティーナが保証人となり、老伯爵は養老院に入った。そこで彼は間もなく人気者になった。とりわけ老女たちに愛された。彼は、トランプするたびに相手に花を持たせ、フランス語で丁重に「奥様、お相手いただいて光栄です」と言った。
(16)
離婚後しばらくしてベッティーナに子供が生まれた。女の子だった。母親はその子を「すみれ」と名付けた。

《感想1》ナチスドイツによる併合前のオーストリアが舞台。古き良き貴族の物語だ。Cf. 貴族の放蕩はバイロン(1788-1824)を思い出させる。
《感想2》「ルドルフは愛すべき人物だった!」これが物語のメインストーリーだ。ベッティーナはトランプ伯爵を愛していた。大人の愛の物語でもある。
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