(1)20日の出来事
中央マッチ工場書記のコロトコフは、1921/12/20、「給料出ません」と経理課から知らされる。
(2)現物支給
マッチ箱が現物支給される。コロトコフは「不良品でないか」と、家に帰り受け取った大量のマッチ擦ってみる。燃えがらが左目に飛び込み、彼は火傷し左目を包帯で包む。
(3)禿頭の出現
工場長室に行くと入り口に禿頭の新しい工場長、髯を剃ったカリソネルがいた。彼は怒鳴り散らし続ける。彼が「兵士用ズボン下を女子従業員に支給する」と指令を出す。
(4)第一節 コロトコフを解雇する
翌日、コロトコフは市電の事故で遅刻する。工場長カリソネルが、コロトコフを解雇する指令書をだす。コロトコフは遅刻の理由説明をし、解雇を取りやめてもらおうとカリソネルを訪ねる。
(5)悪魔の策略
カリソネルは出かけ、コロトコフが後を追う。ここで髭を伸ばしたカリソネルが現れる。コロトコフは、カリソネルを見失う。工場にもどると、老人が「工場長カリソネルは、コロブコフを名簿から削除・更迭した」と言う。「自分はコロブコフでなく、コロトコフだ」とコロトコフは主張。しかし身分証明書をコロトコフは盗まれてしまい、自分が誰か証明できない。
(6)最初の夜
コロトコフは、髯を剃ったカリソネルと、髭を伸ばしたカリソネルが居たことを、思い出す。
(7)オルガンと猫
次の日、コロトコフが工場に行くと、全員が更迭され入れ替わっていた。しかも書記の席でカリソネルが仕事していた。彼は工場長から書記に降格された。カリソネルが「お前は私の補佐だ」と言った。ところが、「コロトコフはすでに馘(クビ)で、お前はコロブコフだ」とカリソネルが証明書を出した。コロトコフが髯のカリソネルにとびかかる。工場のホールにオルガンが鳴り響く。ここで髯のないカリソネルは馬車を走らせ絶叫し逃げる。コロトコフが、ビルまでカリソネルを追いかける。途中、耳も鼻もなく左腕が骨折した男と会う。髭のカリソネルが、ビルから転落し黒猫に変身して逃げ去る。
(8)第二の夜
その日の夜12時に、時計が40回も打った。
(9)タイプライターの恐怖
コロトコフが市民相談室に、身分証明書をとりに行く。ブルネットの女が「私はあなたのものよ」と言った。老人が、彼をコロブコフと呼び、「お前は若い女を4人誘惑したので告発書を提出する」と言いマントを翻し、宙を飛んだ。コロトコフが「コロブコフじゃない」と叫ぶ。男が引き出しの中から出てきた。「身分証と神聖な名前を返してくれ」とコロトコフが言う。タイプライターが曲を演奏する。
(10)恐ろしいドゥイルキン
二人のコロトコフのうち、第二のコロトコフ(コロブコフ)はエレベータ内の鏡の中に置き去りにされる。「コロトコフを逮捕する」とシルクハットの太った男が言う。コロトコフが「身分証明書がないから、私は誰でもなく逮捕されない」と言う。恐ろしいドゥイルキンが、魔法の力で善良なドゥイルキンに変身する。青年がドゥイルキンを鞄でひっぱたく。コロトコフは燭台でドゥイルキンを殴る。またコロトコフが、カッコウの時計をたたき壊す。時計から出生地証明書のついた白い雄鶏が飛び出し逃げる。
(11)追跡映画と深淵
白い雄鶏を多くの者が、また色々な物が追いかける。コロトコフに銃弾が降り注ぐ。エレベーターにコロトコフが乗る。コロトコフが「カリソネルに反撃された」と少年に言う。ビリヤード室でコロトコフが敵たちに反撃する。「降伏せよ!」と叫ぶ声。「消防士たちに包囲された」とコロトコフ。カリソネルが銃を構え迫ってきた。「屈辱を受けるくらいなら死んだ方がましだ!」とコロトコフは最上階のビリヤード室から飛び降りる。(「分身が一人の事務員を破滅させた」!)
《感想1》ブルガーコフは、ロシア革命前、1891年キエフで神学大教授の家に生まれた。1916年、キエフ大医学部を卒業し医師となる。1917年ロシア革命。1921年モスクワに出て文筆活動で生きると決意。1923年、最初の長編『白衛軍』を書く。しかし共産党の文芸政策と対立し一部しか発表できなかった。1925年『悪魔物語』も発禁処分。その後の多くの戯曲も、すべて1929年、上演禁止となる。ブルガーコフは発表の当てのないまま、いつの日か必ず勝利するであろう「文学」の力を信じ、書き続ける。重病と失明の中、1940年死去。(《参考》「解説」水野忠夫)
《感想2》「ソヴィエト官僚主義の風刺というテーマにおいては全く陳腐なものである」との批評がある。(1924年『ズヴェズダ』誌)「生活に根をおろした幻想、映画のような急速な場面転換」とエヴゲーニイ・ザミャーチンが評価。(1924年『ロシアの現代人』誌)
《感想3》ソ連は強権主義の国家で民主主義を認めない。特に共産党を通したスターリン独裁が、多くの人間を殺した。これまでの人類史は残虐の歴史だ。(ただしどんな殺戮の時代であれ、殺戮が行われない人々の間には、しばしば繁栄と文明・文化が生まれた。)
《感想3-2》安倍首相は「自由・民主主義・法の支配・人権」という普遍的価値を守る「価値観」外交を提唱する。ソ連が認めなかった価値観だ。ただし安倍首相が「言行一致」しているかどうか、議論が分かれる。
中央マッチ工場書記のコロトコフは、1921/12/20、「給料出ません」と経理課から知らされる。
(2)現物支給
マッチ箱が現物支給される。コロトコフは「不良品でないか」と、家に帰り受け取った大量のマッチ擦ってみる。燃えがらが左目に飛び込み、彼は火傷し左目を包帯で包む。
(3)禿頭の出現
工場長室に行くと入り口に禿頭の新しい工場長、髯を剃ったカリソネルがいた。彼は怒鳴り散らし続ける。彼が「兵士用ズボン下を女子従業員に支給する」と指令を出す。
(4)第一節 コロトコフを解雇する
翌日、コロトコフは市電の事故で遅刻する。工場長カリソネルが、コロトコフを解雇する指令書をだす。コロトコフは遅刻の理由説明をし、解雇を取りやめてもらおうとカリソネルを訪ねる。
(5)悪魔の策略
カリソネルは出かけ、コロトコフが後を追う。ここで髭を伸ばしたカリソネルが現れる。コロトコフは、カリソネルを見失う。工場にもどると、老人が「工場長カリソネルは、コロブコフを名簿から削除・更迭した」と言う。「自分はコロブコフでなく、コロトコフだ」とコロトコフは主張。しかし身分証明書をコロトコフは盗まれてしまい、自分が誰か証明できない。
(6)最初の夜
コロトコフは、髯を剃ったカリソネルと、髭を伸ばしたカリソネルが居たことを、思い出す。
(7)オルガンと猫
次の日、コロトコフが工場に行くと、全員が更迭され入れ替わっていた。しかも書記の席でカリソネルが仕事していた。彼は工場長から書記に降格された。カリソネルが「お前は私の補佐だ」と言った。ところが、「コロトコフはすでに馘(クビ)で、お前はコロブコフだ」とカリソネルが証明書を出した。コロトコフが髯のカリソネルにとびかかる。工場のホールにオルガンが鳴り響く。ここで髯のないカリソネルは馬車を走らせ絶叫し逃げる。コロトコフが、ビルまでカリソネルを追いかける。途中、耳も鼻もなく左腕が骨折した男と会う。髭のカリソネルが、ビルから転落し黒猫に変身して逃げ去る。
(8)第二の夜
その日の夜12時に、時計が40回も打った。
(9)タイプライターの恐怖
コロトコフが市民相談室に、身分証明書をとりに行く。ブルネットの女が「私はあなたのものよ」と言った。老人が、彼をコロブコフと呼び、「お前は若い女を4人誘惑したので告発書を提出する」と言いマントを翻し、宙を飛んだ。コロトコフが「コロブコフじゃない」と叫ぶ。男が引き出しの中から出てきた。「身分証と神聖な名前を返してくれ」とコロトコフが言う。タイプライターが曲を演奏する。
(10)恐ろしいドゥイルキン
二人のコロトコフのうち、第二のコロトコフ(コロブコフ)はエレベータ内の鏡の中に置き去りにされる。「コロトコフを逮捕する」とシルクハットの太った男が言う。コロトコフが「身分証明書がないから、私は誰でもなく逮捕されない」と言う。恐ろしいドゥイルキンが、魔法の力で善良なドゥイルキンに変身する。青年がドゥイルキンを鞄でひっぱたく。コロトコフは燭台でドゥイルキンを殴る。またコロトコフが、カッコウの時計をたたき壊す。時計から出生地証明書のついた白い雄鶏が飛び出し逃げる。
(11)追跡映画と深淵
白い雄鶏を多くの者が、また色々な物が追いかける。コロトコフに銃弾が降り注ぐ。エレベーターにコロトコフが乗る。コロトコフが「カリソネルに反撃された」と少年に言う。ビリヤード室でコロトコフが敵たちに反撃する。「降伏せよ!」と叫ぶ声。「消防士たちに包囲された」とコロトコフ。カリソネルが銃を構え迫ってきた。「屈辱を受けるくらいなら死んだ方がましだ!」とコロトコフは最上階のビリヤード室から飛び降りる。(「分身が一人の事務員を破滅させた」!)
《感想1》ブルガーコフは、ロシア革命前、1891年キエフで神学大教授の家に生まれた。1916年、キエフ大医学部を卒業し医師となる。1917年ロシア革命。1921年モスクワに出て文筆活動で生きると決意。1923年、最初の長編『白衛軍』を書く。しかし共産党の文芸政策と対立し一部しか発表できなかった。1925年『悪魔物語』も発禁処分。その後の多くの戯曲も、すべて1929年、上演禁止となる。ブルガーコフは発表の当てのないまま、いつの日か必ず勝利するであろう「文学」の力を信じ、書き続ける。重病と失明の中、1940年死去。(《参考》「解説」水野忠夫)
《感想2》「ソヴィエト官僚主義の風刺というテーマにおいては全く陳腐なものである」との批評がある。(1924年『ズヴェズダ』誌)「生活に根をおろした幻想、映画のような急速な場面転換」とエヴゲーニイ・ザミャーチンが評価。(1924年『ロシアの現代人』誌)
《感想3》ソ連は強権主義の国家で民主主義を認めない。特に共産党を通したスターリン独裁が、多くの人間を殺した。これまでの人類史は残虐の歴史だ。(ただしどんな殺戮の時代であれ、殺戮が行われない人々の間には、しばしば繁栄と文明・文化が生まれた。)
《感想3-2》安倍首相は「自由・民主主義・法の支配・人権」という普遍的価値を守る「価値観」外交を提唱する。ソ連が認めなかった価値観だ。ただし安倍首相が「言行一致」しているかどうか、議論が分かれる。