DIARY yuutu

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ブルガーコフ(1891-1940)『悪魔物語:分身が一人の事務員を破滅させた物語』(1925):「生活に根をおろした幻想、映画のような急速な場面転換」!

2019-11-03 21:11:38 | 日記
(1)20日の出来事
中央マッチ工場書記のコロトコフは、1921/12/20、「給料出ません」と経理課から知らされる。
(2)現物支給
マッチ箱が現物支給される。コロトコフは「不良品でないか」と、家に帰り受け取った大量のマッチ擦ってみる。燃えがらが左目に飛び込み、彼は火傷し左目を包帯で包む。
(3)禿頭の出現
工場長室に行くと入り口に禿頭の新しい工場長、髯を剃ったカリソネルがいた。彼は怒鳴り散らし続ける。彼が「兵士用ズボン下を女子従業員に支給する」と指令を出す。
(4)第一節 コロトコフを解雇する
翌日、コロトコフは市電の事故で遅刻する。工場長カリソネルが、コロトコフを解雇する指令書をだす。コロトコフは遅刻の理由説明をし、解雇を取りやめてもらおうとカリソネルを訪ねる。
(5)悪魔の策略
カリソネルは出かけ、コロトコフが後を追う。ここで髭を伸ばしたカリソネルが現れる。コロトコフは、カリソネルを見失う。工場にもどると、老人が「工場長カリソネルは、コロブコフを名簿から削除・更迭した」と言う。「自分はコロブコフでなく、コロトコフだ」とコロトコフは主張。しかし身分証明書をコロトコフは盗まれてしまい、自分が誰か証明できない。
(6)最初の夜
コロトコフは、髯を剃ったカリソネルと、髭を伸ばしたカリソネルが居たことを、思い出す。
(7)オルガンと猫
次の日、コロトコフが工場に行くと、全員が更迭され入れ替わっていた。しかも書記の席でカリソネルが仕事していた。彼は工場長から書記に降格された。カリソネルが「お前は私の補佐だ」と言った。ところが、「コロトコフはすでに馘(クビ)で、お前はコロブコフだ」とカリソネルが証明書を出した。コロトコフが髯のカリソネルにとびかかる。工場のホールにオルガンが鳴り響く。ここで髯のないカリソネルは馬車を走らせ絶叫し逃げる。コロトコフが、ビルまでカリソネルを追いかける。途中、耳も鼻もなく左腕が骨折した男と会う。髭のカリソネルが、ビルから転落し黒猫に変身して逃げ去る。
(8)第二の夜
その日の夜12時に、時計が40回も打った。
(9)タイプライターの恐怖
コロトコフが市民相談室に、身分証明書をとりに行く。ブルネットの女が「私はあなたのものよ」と言った。老人が、彼をコロブコフと呼び、「お前は若い女を4人誘惑したので告発書を提出する」と言いマントを翻し、宙を飛んだ。コロトコフが「コロブコフじゃない」と叫ぶ。男が引き出しの中から出てきた。「身分証と神聖な名前を返してくれ」とコロトコフが言う。タイプライターが曲を演奏する。
(10)恐ろしいドゥイルキン
二人のコロトコフのうち、第二のコロトコフ(コロブコフ)はエレベータ内の鏡の中に置き去りにされる。「コロトコフを逮捕する」とシルクハットの太った男が言う。コロトコフが「身分証明書がないから、私は誰でもなく逮捕されない」と言う。恐ろしいドゥイルキンが、魔法の力で善良なドゥイルキンに変身する。青年がドゥイルキンを鞄でひっぱたく。コロトコフは燭台でドゥイルキンを殴る。またコロトコフが、カッコウの時計をたたき壊す。時計から出生地証明書のついた白い雄鶏が飛び出し逃げる。
(11)追跡映画と深淵
白い雄鶏を多くの者が、また色々な物が追いかける。コロトコフに銃弾が降り注ぐ。エレベーターにコロトコフが乗る。コロトコフが「カリソネルに反撃された」と少年に言う。ビリヤード室でコロトコフが敵たちに反撃する。「降伏せよ!」と叫ぶ声。「消防士たちに包囲された」とコロトコフ。カリソネルが銃を構え迫ってきた。「屈辱を受けるくらいなら死んだ方がましだ!」とコロトコフは最上階のビリヤード室から飛び降りる。(「分身が一人の事務員を破滅させた」!)

《感想1》ブルガーコフは、ロシア革命前、1891年キエフで神学大教授の家に生まれた。1916年、キエフ大医学部を卒業し医師となる。1917年ロシア革命。1921年モスクワに出て文筆活動で生きると決意。1923年、最初の長編『白衛軍』を書く。しかし共産党の文芸政策と対立し一部しか発表できなかった。1925年『悪魔物語』も発禁処分。その後の多くの戯曲も、すべて1929年、上演禁止となる。ブルガーコフは発表の当てのないまま、いつの日か必ず勝利するであろう「文学」の力を信じ、書き続ける。重病と失明の中、1940年死去。(《参考》「解説」水野忠夫)
《感想2》「ソヴィエト官僚主義の風刺というテーマにおいては全く陳腐なものである」との批評がある。(1924年『ズヴェズダ』誌)「生活に根をおろした幻想、映画のような急速な場面転換」とエヴゲーニイ・ザミャーチンが評価。(1924年『ロシアの現代人』誌)
《感想3》ソ連は強権主義の国家で民主主義を認めない。特に共産党を通したスターリン独裁が、多くの人間を殺した。これまでの人類史は残虐の歴史だ。(ただしどんな殺戮の時代であれ、殺戮が行われない人々の間には、しばしば繁栄と文明・文化が生まれた。)
《感想3-2》安倍首相は「自由・民主主義・法の支配・人権」という普遍的価値を守る「価値観」外交を提唱する。ソ連が認めなかった価値観だ。ただし安倍首相が「言行一致」しているかどうか、議論が分かれる。
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われわれは真理を前提せざるをえない!真理は現存在の開示態として存在せざるをえない! ハイデガー『存在と時間』(1927)「第44節」(c)(その2、真理の前提)

2019-11-03 13:56:42 | 日記
※「第1部 現存在を時間性へむかって解釈し、存在への問いの超越的地平として時間を究明する」「第1編 現存在の準備的な基礎分析」「第6章 現存在の存在としての関心(Sorge、気遣い)」「第44節 現存在、開示態および真理性」(c)「真理の存在様相と真理の前提」(その2)

(c)「真理の存在様相と真理の前提」(226頁-)(その2、真理の前提)
(9)われわれは真理を前提せざるをえない!真理は現存在の開示態として存在せざるをえない!
E 「われわれは何故に、真理が与えられていると前提しなくてはならないのであろうか」。(227頁)
E-2 「現存在は・・・・内世界的存在者(※事物)の配視的発見的配慮に関わらせられている」。(228頁)
《感想9》日常的なプラグマティックな生活、つまりハイデガーの配視的生活においては、「真理」つまり事実である因果連関のみが、配視的なプラグマティックな計算上、有用だ。嘘(虚偽)では困る。「橋がある」と言われ、行ってみて橋がなかったら(「偽」の言明)君は困る。言明の「真理」が配視的なプラグマティックな計算上、日常生活で不可欠だ。

E-3 「われわれは真理を前提せざるをえない。真理は現存在の開示態として存在せざるをえない。」(228頁)
E-4 「このことは、現存在が世界の内へ投げられているという本質的被投性に属している。」(228頁)
E-5 「たとえ何びとも判断(※認識、言明)しない場合にも、そもそも現存在が存在しているかぎり、真理がすでに前提されている」。(229頁)

(9)-2「純粋自我」とか「意識一般」とかいう理念は、現存在のアプリオリな原理を逸する!
F 「空想的に理想化された主観」によって、「『事実的な』主観(すなわち現存在)のアプリオリな原理が・・・・逸せられる」。(229頁)
F-2 「『純粋自我』とか『意識一般』とかいう理念は・・・・現存在の事実性と存在構成の存在論的諸性格を・・・・眼に入れてさえいない」。(229頁)
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