「最高のごちそう」
食欲の秋に一番のごちそうの新米は、炊き上がりふっくらで真っ白でご 飯が光っていて、かめばかむほど甘さ
が増す。
「最後のひと粒まで残さず食べない とバチが当たるよ」。小さい頃、円い ちゃぶ台から片付けようとする茶碗に ご飯粒が残っていると、祖母にひどく しかられたものです。
20歳で結婚した私は最初はまともに ご飯も炊けなかった。新米は水加減を 少し少なくしなければならないのを知 らずに、普通の水加減で炊いて柔らか すぎた。夫は「お腹に優しくていいん じゃないの」となかばあきれ顔。
母からは「お米だけは少し値段が高 くてもおいしいものを買いなさい」 今でもその教えを守り、味のよいお米 を選んで買うようにしている。
母から譲り受けたぬか床を何度もダ メにして、その度に電話をしていた。 「手間ひま惜しまず子育てと同じよう に手をかけること」 子供の頃、3世代の大家族で食べた 母のぬか漬けがおいしく今でも忘れら れない。失敗を繰り返しながら「うち の漬物が一番だよ」の家族の一言がう れしい 。
新米とぬか漬けでいただく質素な食 事は、どんな高級レストランのメニュ よりも最高のごちそうだ。
( 埼玉県草加市 永野意見子 68)