英語クイズ:「英語」の問題に見えて、実は、日本語の問題...?
以前、「恥ずかしい」という日本語を英訳する問題を出して、英語と日本語を一対一で対応させる態度から一歩踏み出すことを促しましたが、今回は文法的要素を扱ってみます。(言葉は正確に: 「恥ずかしい」を英訳すると…)
今回は、習う立場から見た場合、英語の問題と思いがちな問題が、実は「論理」の問題ではないか、ということを考えてみます。
とはいえ、堅苦しい問題ではありません。高校1年生ぐらいで習うことです。(続編)
① without と except 、② besidesとexcept、③ withoutとinstead ofという3組の前置詞の選択の問題を用意してみました。
ネットには、これらの「違いが分かりませんが」という問いかけがたくさんあります。それに対して、「英語では実はこうなんです」、と英語の知識の問題としてのお答えもまたたくさんあります。
しかし、「この区別で悩むのは英語の問題というより、日本語の問題ではないの?」、と生徒さんに言うことが、かつてよくありました。(英語の前置詞ですから、問題の発端は英語に違いありませんが。)
結論から言いますと、正確には、日本語の問題ではなく、「論理」という何語にも当てはまること、つまり、日本語にも英語にもまたがる判断力の問題だと言うべきでしょう。そのため、今回の問題は、英語学習者以外の方も、関心を持っていただきたいと思います。
次回のコラムでは、習う側から、この種の疑問を提示されたら、先生はどう答えるべきか、という問題について触れることにしますが、まあ、ここでは、まず、上の青字の三題の前に、次の空所に、instead ofと、in spite ofを入れてみてください。
答えと訳は一番下にあります。
問題A:
acupuncture:針療法
(1) [ ] taking this new medicine, she has tried acupuncture.
(2) [ ] taking this new medicine, she has not recovered yet.
簡単じゃないか、と言われるかもしれません。しかし、かつて、英語が不得意な中等教育段階の生徒のめんどうをいていた頃、訊き方によっては、instead ofとin spite ofを混同する人が少しいたのです。いや、それほど深刻な問題ではありませんでした。しかし、どうして間違えるのだろうか、と思っていました。結局、これは、英語の問題というより、国語を用いる際、論理が甘いからではないかと思い至りました。あまりちゃんとした本や新聞などを読んでいないから、こういう違いに鈍感になるのではないかと、思ったのです。
この点から、英語教育と国語教育が手を携えるべし、という私の議論につながるのですが、今回は、そちらへは行かず、冒頭に掲げた練習問題を解いてみることにしましょう。
問題B:
① except / besides
α:彼女は、魚以外は、何でも食べられる。
She can eat anything [ ] fish.
β:彼女は、魚以外に、肉も注文した。
She ordered meat [ ] fish.
問題C:
② without / instead of
α:「彼はワインを注文しないで、ステーキを食べた。」
He ate a steak [ ] ordering wine.
β:「彼は赤ワインの瓶を注文しないで、白ワインを一杯頼んだ。」
He ordered a glass of white wine [ ] ordering a bottle of red wine.
問題D:
③ without / except
We need you to do this job with us.
No one can do this job [ ] you.
You are the only one that can do this job.
No one can do this job [ ] you.
いかがですか。二者択一で、英語自体にはひかっけもないし、簡単だったのではないですか。しかし、日本語は少しトリッキーでしたね。
日本では、区別しなくても、英語では区別するのだな、という認識に至った方もいると思います。そこから、日本語より英語の方が論理的だという推論を導くこともありえるでしょう。しかし、Bのβの「以外に」は、「~に加えて」と変えれば日本語でも表わせるのですから、必ずしも「日本語=非論理」論が成り立つとは言えません。
むしろ、日本語にも英語にも共通する論理に眼を向けることの方が意味があると思います。Bのβは、「~に加えて」 = in addition to = besidesという等号で示すことができる、「付加」が意味の骨。「付加」ですから、こんな表現だって可能です。She ordered not only fish but also meat.日本語で「彼女は、魚だけでなく、肉も頼んだ」と訳すことが多い文です。細かい違いはあるかもしれませんが(でなければ、こんなに同義表現がないはず...)、日、英に共通する点に注目することに意味があります。
さらに、二つの認識に導かれます。一つは、日、英以外の言語にも同じ表現があるのではないかという推測。宇宙人も含めてね。
二つめは、翻訳が可能なのはこうした共通した認識があるからだということ。逆にこういう普遍的な論理以外は、なかなか翻訳が難しいということを意味します。
実際、日本人に限らず、いくつかの言語を習得している人、(そのうち、「語学屋」や、語学お宅は除きます)は、普遍的論理に敏感であるように思います。
さて、あとの問題の解説ですが、論理の要点のみに触れますから、ご自身で確認してください。またあとのブログで詳説するかもしれませんが。
Bのαのexceptは、個数や回数(集合)が二つにはっきり分けられる場合です。
B except Aとという状況では、Bのときは100%Aでない、Aの時は100% Bでないという状況です。
以下の文で確かめてください。「日曜以外は働いているよ。」 = I work everyday except Sunday. = I work except for Sunday. 左の「ベン図」で表わすことができる状況です。
Cのαは、「伴うか、伴わないか」。He ate a steak, but didn't order wine.と同じ意味です。 βは、「交換」です。これだけの説明でよいでしょうか。
Dは、英語だけで難しいですが、BとCを前提して考えてください。withoutは「伴うか、伴わないか」、exceptは、except~の状況の外では、あることが100%だめということ。
ご自分で解いてみた上で、習う側にとって、これらの問題の本質は「英語の問題でも、日本語の問題でもない」という、私の意見は正しいと思われますか。
答:
A:
(1) [ Intead of ] taking this new medicine, she has tried acupuncture. 交換 = exchange
「この新薬を飲まないで、彼女は針療法を試みた。
(2) [ In spite of ] this new medicine, she has not recovered yet. 対立 = opposition
「この新薬を飲んだも拘わらず、彼女はまだ回復していない。」
問題B:
① except / besides
α:彼女は、魚以外は、何でも食べられる。
She can eat anything [ except ] fish. 集合 = set
β:彼女は、魚以外に、肉も注文した。
She ordered meat [ besides ] fish. 付加 = addition
問題C:
② without / instead of
α:「彼はワインを注文しないで、ステーキを食べた。」
He ate a steak [ without ] ordering wine. 「伴わない」 = not accompanied with
β:「彼は赤ワインを注文しないで、白ワインを一杯頼んだ。」
He asked a glass of white wne [ instead of ] ordering a bottle of red wine. 交換 = exchange
問題D:
③ without / except
α:We need you to do this job with us.
No one can do this job [ without ] you. 「伴わない」 = not accompanied with
我々は君に我々とこの仕事を一緒にしてもらう必要がある。君なしではだれもこの仕事はできないよ。
β:You are the only one that can do this job.
No one can do this job [ except ] you. 集合 = set
君はこの仕事ができる唯一に人間だ。君以外にはだれもこの仕事はできないよ。
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