外国語学習の意味、そして母国語について考えましょう

社内公用語の英語化、小学校での英語の義務化など最近「英語」に振り回され気味ですが、何故、どの程度英語を学ぶか考えます。

英会話第一号、福澤諭吉と少女の写真

2014年04月29日 | シリーズ:日本人の英語

英会話第一号、福澤諭吉と少女の写真

福沢と米国少女岩波文庫の『福翁自伝』の扉にもある、有名な「福澤と米国少女の写真」を、英語スクールにホームページに拝借しています(もう著作権はなかろうと思います。)

この写真がどういう経緯で取られたか、『福翁自伝』(岩波文庫 p.145)から引用しましょう。ジョン万次郎のような特殊な運命で英語を習得したのではなく、自分で学習した英語で、少女とコミュニケーションを取れた のですから、福澤さんは「英会話」を学ぶ私たちの鑑のようなものです。気後れせずにどしどしアメリカ人と交流を深める福澤さんは、あっぱれです。

2008-2009に開催された『福澤展』にはこの写真の修復についての話が載っています。(最終閲覧:140429)

http://keio150.jp/fukuzawa2009/blog_t/2008/12/post-c10c.html

少女の写真

 それからハワイで石炭を積み込んで出帆した。その時に、一寸したことだが奇談遣欧使節がある。私はかねて申す通り一体の性質が花柳に戯れるなどということには仮 初めにも身に犯したことないのみならず、口でもそんな如何わしい話をしたこともない。ソレゆえ、同行の人は妙な男だというくらいには思うていたろう。それ からハワイを出航したその日に船中の人に写真を出して見せた。これはどうだ(その写真はここにありとて、福沢先生が筆記者に示されたるものを見るに、四十 年前の福沢先生のかたわらに立ち居るは十五、六の少女なり。)――その写真というのはこの通りの写真だろう。ソコで、この少女が芸者か女郎か娘かは、勿論 その時に見さかいのある訳けはない。――「お前たちはサンフランシスコに長く逗留していたが、婦人と親しく相並んで写真を撮るなぞということは出来なかっ たろう、サアどうだ、朝夕口でばかり下らないことを言っているが、実行しなければ話にならないじゃないか」と、大いに冷かしてやった。これは写真屋の娘 で、歳は十五とかいった。その写真屋には前にも行ったことがあるが、丁度雨福沢髷姿の降る日だ、そのとき独りで行ったところが娘が居たから「お前さん一緒に取ろう ではないか」と言うと、アメリカの娘だから何とも思いはしない。「取りましょう」と言うて一緒に取っ たのである。この写真を見せたところが、船中の若い 士官たちは大いに驚いたけれども、口惜しくしくも出来なかろう、と言うのは、サンフランシスコでこのことを言い出すと、直に真似をする者があるから、黙っ て隠して置いて、いよ/\ハワイを離れてもうアメリカにもどこにも縁のないという時に見せてやって、一時の戯れに人を冷かしたことがある。咸臨丸


とても優れたNHKの英語番組<<旧>>プレキソ

2014年04月25日 | 言葉について:英語から国語へ

 

とても優れたNHKの英語番組、『<<旧>>プレキソ』

プレキソ AZ






2011年に一年間放送され、その後は、再放送とネットで見ることができるNHKの小学生向け英語番組『プレキソ』は、とても優れた番組です。ときどき、NHKは、本当に「世界に出しても恥ずかしくない」、いや、世界の水準をリードするような番組を作ることがあります。

音楽番組の『夕方クインテット』もそうでした。『プレキソ』も『夕方クインテット』も、子供夕方クインテット向け、10分の番組です。しかし、「子供だましでない」という点、「並みの大人向け番組より大人にとっても面白い」という特徴があります。『夕方クインテット』は海外で賞をとったと聞きます。

ところが、この『プレキソ』が再開されるというので見たら、その水準があまりに……なので驚いてしまいました。ネット上で「批判」ということははばかれるのでいたしませんが、以下の如何に『<<旧>>プレキソ』が優れているか、その一端を示しますので、「新」にはそれが欠けている、いや、はっきり申し上げて、その「逆」と

お考えになれば、「新」のことをどう私が見ているか分かると思います。

まず、多少抽象的ですが、プレキソの優れた点を箇条書きで述べます。

(1) 人が学ぶ際の心理を把握している。

(2) 言語学的に、第二外国語学習がどういうものか洞察している。

(3) 映像的に美しい。

(4)ユーモアのセンスがあふれている。

(5) 子供だけでなく、大人も、そして、日本人以外の関心も呼ぶ。


いかがでしょう。まだプレキソを見ていない方は、ぜひ見て確かめてください。冒頭の可愛いキャラクター、"A"と"Z"というのが番組をリードします。実写とアニメーションの組み合わせは、美術的にも、タイミングの面でも一流です。

プレキソプラネット冒頭には『プレキソ・プラネット』という地球が現われます。このプレキソプレネット地球のどこかをクリックすると音がしたり、ゲームに導かれたりします。人間の好奇心のよい面を狙っています。

右上の『ムービー・日英対訳』という部分をクリックすると、2011年の毎週の番組が4月から一年分見ることができます。最初は、「What color is this?
これは何色?」、二回目は、「How do you make purple? むらさきはどう作る?」です。色という普遍的なものに注意を向けながら、国によって「違う」という面にも気づかせます。

何も考えていない教師だと、「私は日本人です」、「私は10歳です」という、知的動機に結びつかない例文を暗記させたりします。「ぼく、何歳?」に答えられるようにしておくのは大人の都合であって、子供は言いたくて答えているわけではありません。「私は日本人です」を言う必要を感じるのはもっと先です。ちなみに、4月1ヶ月の「さまざまな色」は、それだけでも楽しいものです。

プレキソ ポスト以前、私は欧州の子は「近所に全く違う言葉を使いながら、しかし、同じような生活をする人を身近に見ているのに、日本人の子はそういう経験が少ないのではないか」という言ったことがありますが、この視点と同じものを感じます。

さらに言うと、「何」、「どうして」という因果関係の展開が、人の心の発展をよく取らえていると思います。そのことは、5月のEpisode 8「How do you make it? これ、どうやって作る?」にとてもよく現われています。

このEpisodeでは、正三角形(equilateral triangle)をどのように作るかとい正三角形う課題が与えられます。赤い折り紙が中心に展開します。ああでもないこうでもないという過程に習う側を参加させることで、テレビの一方性の危険を減じようとしているかのようです。前半に正三角形が完成します。

その直後、番組の中間に、この記事の最後に触れる、抜群に優れた2分のアニメーションがあります。『マイクロ。ストーリー』と名づけられています。世界的アニメーター、山村浩の作品です(アニメーション直前の寸劇も卓越!)。これを挟んで、後半の、「カウ童子」が教室を訪問する場面に移ります。

そこでは、サッカーボーカウ童子ル形を作るという課題が生徒に与えられます。美術作品のように、直観的にそれを作ることはできません。まず、正三角形を作るという課題を解決します。その後で、正六角形(hexagone)、そして、最後にサッカーボールを全員で完成します。その過程には、あることを達成するためには①分析をし、段取りを粘り強く踏んでいく②みんなの協力が必要だ、というメッセージがあるように思います。

さて、最後に、番組中ごろの『マイクロストーリー』というアニメーションに触れないマイクロストーリー4月わけにはまいりません。作者は山村浩さん。ジブリとは違う、もう一つの日本の優れた伝統、短編アニメーションの世界的大家です。言葉書きはアーサー・ビナードさんという日本語で詩を書くアメリカ人。一見、英語を始めたての人には難しい表現もあります。5月には仮定法も登場しました。しかし、習う側が、映像から、こういう表現も必要なのだなという方向へ心が動けばよいのです。作者はそう考えていると思います。そういう言語学習の機微をNHKの人は理解していないのでないかと邪推したくなります。

プレキソ くま今、日本の番組の世界への発信などということが言われていますが、日本語を用いていない、この『<<旧>>プレキソ』など、アジア各国に受け入れられる可能性は大いにあるでしょう。英語を学びながら、アジアの子供たちが日本の繊細な文化に触れることができたらとてもすばらしいことだと思います。マイクロストーリー ロンドン

 


英語クイズ:「英語」の問題に見えて、実は、日本語の問題...?

2014年04月23日 | 言葉について:英語から国語へ

   英語クイズ:「英語」の問題に見えて、実は、日本語の問題...?

ハロー以前、「恥ずかしい」という日本語を英訳する問題を出して、英語と日本語を一対一で対応させる態度から一歩踏み出すことを促しましたが、今回は文法的要素を扱ってみます。(言葉は正確に: 「恥ずかしい」を英訳すると…)

今回は、習う立場から見た場合、英語の問題と思いがちな問題が、実は「論理」の問題ではないか、ということを考えてみます。

とはいえ、堅苦しい問題ではありません。高校1年生ぐらいで習うことです。(続編

 

① without と except 、② besidesとexcept、③ withoutとinstead ofという3組の前置詞の選択の問題を用意してみました。

ネットには、これらの「違いが分かりませんが」という問いかけがたくさんあります。それに対して、「英語では実はこうなんです」、と英語の知識の問題としてのお答えもまたたくさんあります。

しかし、「この区別で悩むのは英語の問題というより、日本語の問題ではないの?」、と生徒さんに言うことが、かつてよくありました。(英語の前置詞ですから、問題の発端は英語に違いありませんが。)

結論から言いますと、正確には、日本語の問題ではなく、「論理」という何語にも当外国語 ?てはまること、つまり、日本語にも英語にもまたがる判断力の問題だと言うべきでしょう。そのため、今回の問題は、英語学習者以外の方も、関心を持っていただきたいと思います。

次回のコラムでは、習う側から、この種の疑問を提示されたら、先生はどう答えるべきか、という問題について触れることにしますが、まあ、ここでは、まず、上の青字の三題の前に、次の空所に、instead ofと、in spite ofを入れてみてください。

答えと訳は一番下にあります。

問題A:

acupuncture:針療法

(1) [                                 ] taking this new medicine, she has tried acupuncture.


(2) [                                 ] taking this new medicine, she has not recovered yet.


簡単じゃないか、と言われるかもしれません。しかし、かつて、英語が不得意な中等教育段階の生徒のめんどうをいていた頃、訊き方によっては、instead ofとin spite ofを混同する人が少しいたのです。いや、それほど深刻な問題ではありませんでした。しかし、どうして間違えるのだろうか、と思っていました。結局、これは、英語の問題というより、国語を用いる際、論理が甘いからではないかと思い至りました。あまりちゃんとした本や新聞などを読んでいないから、こういう違いに鈍感になるのではないかと、思ったのです。

この点から、英語教育と国語教育が手を携えるべし、という私の議論につながるのですが、今回は、そちらへは行かず、冒頭に掲げた練習問題を解いてみることにしましょう。


問題B:

①  except / besides
α:彼女は、魚以外は、何でも食べられる。

She can eat anything [                    ] fish.


β:彼女は、魚以外に、肉も注文した。

She ordered meat [                     ] fish.


問題C:
②  without / instead of

α:「彼はワインを注文しないで、ステーキを食べた。」

He ate a steak [                       ] ordering wine.

β:「彼は赤ワインの瓶を注文しないで、白ワインを一杯頼んだ。」

He ordered a glass of white wine [                  ] ordering a bottle of red wine.


問題D:
③ without / except

We need you to do this job with us.
No one can do this job [                    ] you.

You are the only one that can do this job.
No one can do this job [                      ] you.


ビジネスいかがですか。二者択一で、英語自体にはひかっけもないし、簡単だったのではないですか。しかし、日本語は少しトリッキーでしたね。

日本では、区別しなくても、英語では区別するのだな、という認識に至った方もいると思います。そこから、日本語より英語の方が論理的だという推論を導くこともありえるでしょう。しかし、Bのβの「以外に」は、「~に加えて」と変えれば日本語でも表わせるのですから、必ずしも「日本語=非論理」論が成り立つとは言えません。


むしろ、日本語にも英語にも共通する論理に眼を向けることの方が意味があると思います。Bのβは、「~に加えて」 = in addition to = besidesという等号で示すことができる、「付加」が意味の骨。「付加」ですから、こんな表現だって可能です。She ordered not only fish but also meat.日本語で「彼女は、魚だけでなく、肉も頼んだ」と訳すことが多い文です。細かい違いはあるかもしれませんが(でなければ、こんなに同義表現がないはず...)、日、英に共通する点に注目することに意味があります。いどばた

さらに、二つの認識に導かれます。一つは、日、英以外の言語にも同じ表現があるのではないかという推測。宇宙人も含めてね。

二つめは、翻訳が可能なのはこうした共通した認識があるからだということ。逆にこういう普遍的な論理以外は、なかなか翻訳が難しいということを意味します。

実際、日本人に限らず、いくつかの言語を習得している人、(そのうち、「語学屋」や、語学お宅は除きます)は、普遍的論理に敏感であるように思います。


さて、あとの問題の解説ですが、論理の要点のみに触れますから、ご自身で確認してください。またあとのブログで詳説するかもしれませんが。

ベン図 not ABのαのexceptは、個数や回数(集合)が二つにはっきり分けられる場合です。

B except Aとという状況では、Bのときは100%Aでない、Aの時は100% Bでないという状況です。

以下の文で確かめてください。「日曜以外は働いているよ。」 = I work everyday except Sunday. = I work except for Sunday. 左の「ベン図」で表わすことができる状況です。

Cのαは、「伴うか、伴わないか」。He ate a steak, but didn't order wine.と同じ意味です。 βは、「交換」です。これだけの説明でよいでしょうか。

Dは、英語だけで難しいですが、BとCを前提して考えてください。withoutは「伴うか、伴わないか」、exceptは、except~の状況の外では、あることが100%だめということ。

ご自分で解いてみた上で、習う側にとって、これらの問題の本質は「英語の問題でも、日本語の問題でもない」という、私の意見は正しいと思われますか。


答:

A:

(1) [     Intead of     ] taking this new medicine, she has tried acupuncture.  交換 = exchange

「この新薬を飲まないで、彼女は針療法を試みた。


(2) [   In spite of      ] this new medicine, she has not recovered yet. 対立 = opposition

「この新薬を飲んだも拘わらず、彼女はまだ回復していない。」

問題B:

①  except / besides
α:彼女は、魚以外は、何でも食べられる。 

She can eat anything [    except                ] fish. 集合 = set


β:彼女は、魚以外に、肉も注文した。

She ordered meat [   besides        ] fish.  付加 = addition

 

問題C:
②  without / instead of

α:「彼はワインを注文しないで、ステーキを食べた。」

He ate a steak [    without      ] ordering wine. 「伴わない」 = not accompanied with

β:「彼は赤ワインを注文しないで、白ワインを一杯頼んだ。」

He asked a glass of white wne [   instead of    ] ordering a bottle of red wine. 交換 = exchange


問題D:
③ without / except

α:We need you to do this job with us.
No one can do this job [     without       ] you. 「伴わない」 = not accompanied with

我々は君に我々とこの仕事を一緒にしてもらう必要がある。君なしではだれもこの仕事はできないよ。

β:You are the only one that can do this job.
No one can do this job [     except         ] you. 集合 = set

君はこの仕事ができる唯一に人間だ。君以外にはだれもこの仕事はできないよ。

続編



 

 

 

 

 

 


日本人にとって外国語、英語はどういうイメージなんだろうか

2014年04月21日 | 言葉について:英語から国語へ

日本人にとって外国語、英語はどういうイメージなんだろうか

福沢 米国少女以前、『英語学習の4つの意味』というエッセイで、次のように書きました。以下の「長いエッセイの倉庫」に入っています。

「欧州であればたいていの子は、幼い頃から身近に外国語を話す人と接する機会がある。それがどういう意味を持つか。身近に全く理解できない言葉を話す人たちがいる、ということと、それにも拘わらず、彼等が自分たちと同じような生活をしているという二重の経験である。」

日本人は子供のころからこのような、「二重の経験」を持ちません。では、日本人の眼には、外国語、とりわけ、英語はどのように映ってきたのでしょう。このことを理解すると、なぜ、日本人が外国語下手と言われるのか、詐欺のような広告にひっかかり続けるのかを理解するヒントが得られるかもしれません。

私どもの世代は、翻訳文学、翻訳思想書で、知的生活(と言えるのかな?)をスタートしました。そのとき、翻訳書の日本語を原著者が書いたものだという錯覚に陥らないで済むでしょうか。まさか、吹き替え映画で、アメリカ人の俳優が日本語を話しているとは信じられませんが、本の場合は、顔が分からないので、なんとなくそう思ってしまうのです。たしかに理屈では翻訳ということは分かっているのですが、翻訳された日本語の向こう側に別の言語が存在するという感覚が養われにくいことは確かでしょう。(先日、『ミッドウエイ』という映画で、三船敏郎などの日本の軍人が英語を話しているので、不思議な感じがしました。米国人の外国語感覚については、別に語りたいと思います。)

たしかに、私どもの世代でも、大学入試で英語を学習するのですが、その程度では、とうてい、西欧の文学作品などは読めません(入試の後が一番英語ができた、と、自嘲気味に語る人が多くいました)。そんなわけで、アルファベットで書かれた洋書をすらすら読むということが、何か秘術のように思われていなかったでしょうか。我々の世代だけはなく、福沢諭吉の時代から、今に至るまで、何かそんな気分が残っているように思います。

ですから、「こうすれば英語が読める、速く読める」などと言われると、それを可能にしくれる「魔法の薬」につい手がでてしまうのでしょう。

ましてや、会話能力ともなると、最近では日常的に必要な、きわめて実際的な技術であるにも拘わらず、神秘の能力という感じがまだあるように思います。いわゆる「英会話」熱というものの背景には、その能力を身について優越したいと気持ちが隠れているように思います。

たしかに、学習の動機が憧れであれなんであれ構わないかもしれませんが、もっとクールに外国語学習をしてもらいたいと思わないわけにはいきません。というのは、「英会話」が目的化すると、相手に伝える、相手のことを理解するという言葉の第一の目的へ集中することが少なくなるように思えるからです。

やはり、冒頭に述べたように、身近に「違う言語を話す人がいる」、ということ、「それでも同じように暮らしているという驚き」、この二つがないからなのでしょうか。外国語が、神秘的でなく、当たり前のこと、しかし、そうでありながら、それはコミュニケーションの壁であって、一つ一つ越えていこうという気持ちを持つべきものだ、という感覚を子供のころから育てたいと思います。

 最近の教室の風景から。前には、TOEICの点数を上げようとがんばっている生徒さんと、近々アイルランドに英会話の修行に行く予定の生徒さんがいます。

*冒頭の写真は、咸臨丸で米国を訪問した際の、福沢諭吉と米国人少女。福沢が直接少女に頼んで写真館で撮ってもらったそうです。

 


ユーモアについて:「何が面白いの、これ。」 モンティ・パイソン 『議論』

2014年04月17日 | 言葉について:英語から国語へ

  ユーモアについて:「何が面白いの、これ?。」 モンティ・パイソン 『議論』

 

4月の最初には、傑作「スイスのスパゲッティ」(1957)を取り上げましたが、今回は、60年代の英国で流行ったBBCの番組、『モンティ・パイソンとフライイング・サーカス』から。

語学学習にも役に立ちますので(この件については、あまりユーモアはありません...)、下で二点、軽く触れましょう。

長いもの、短いもの、いろいろネットにあります.

2021年11月に発見した動画。下の分表示と違うかもしれませんが。

https://www.youtube.com/watch?v=ohDB5gbtaEQ
トランスクリプト:
https://montycasinos.com/montypython/scripts/argument.php.html

 

議論 受付「議論教室」の受付場面から始まります。このへんも学習には適しているのですが、01:15へ飛んでください。

その前に間違って「罵倒」の部屋に入ってしまってしまうのですが、そのあと、、改めて「議論」の部屋に入ります。

この記事は、たてに長いですが、寸劇は、01:15からは、2分15秒ほどです。

以下で、簡単な語彙の説明と、それに、長いせりふにだけ訳をつけました。かなり速いですよ。

<<The Argument Sketch>>

(The man goes into room 12A. Another man is sitting behind a desk.)

(Come in.)

Man: Is this the right room for an argument?
Argument ①口論 ②議論、論拠

Other Man:(John Cleese) I've told you once.

Man: No you haven't!

Other Man: Yes I have.議論 最初

M: When?

O: Just now.

M: No you didn't!

O: Yes I did!

M: You didn't!

O: I did!

M: You didn't!

O: I'm telling you, I did!

M: You did not!

O: Oh I'm sorry, is this a five minute argument, or the full half hour?
The full half hour:正規の30分版
「あ、申し訳ありません。これは5分の議論ですか、それとも正規の30分版ですか。」

M: Ah! (taking out his wallet and paying) Just the five minutes.
just theちょうど~
「あ、(財布と取り出し、払いながら)、5分だけです。」

O: Just the five minutes. Thank you.

O: Anyway, I did.
anywayとにかく、すくなとも言えることは = at least

M: You most certainly did not!
most certainlyたしかに、 米国ではmost likely

O: Now let's get one thing quite clear: I most definitely told you!
get ---- clear:SVOC明らかにする   quite①かなり ②まったく most definitelyたしかに
「では、一つのことをはっきりとさせましょう。確かに私は申し上げました。」

M: Oh no you didn't!モンティ 議論 5分ですか

O: Oh yes I did!

M: Oh no you didn't!

O: Oh yes I did!

M: Oh no you didn't!

O: Oh yes I did!

M: Oh no you didn't!

O: Oh yes I did!

M: Oh no you didn't!

O: Oh yes I did!

M: Oh no you didn't!

O: Oh yes I did!

M: No you DIDN'T!

O: Oh yes I did!
モンティ 議論
M: No you DIDN'T!

O: Oh yes I did!

M: No you DIDN'T!

O: Oh yes I did!

M: Oh look, this isn't an argument!
look:注意を促す表現

(pause)
休息

O: Yes it is!

M: No it isn't!

(pause)

M: It's just contradiction!
contradiction矛盾、反論

O: No it isn't!

M: It IS!

O: It is NOT!

M: You just contradicted me!
「私に「反論」していだけではないですか。」

O: No I didn't!モンティ 議論 客

M: You DID!

O: No no no!

M: You did just then!

O: Nonsense!

M: (exasperated) Oh, this is futile!!
exasperated激昂して   futileむなしい

(pause)

O: No it isn't!

M: Yes it is!

(pause)

M: I came here for a good argument!
「私はよい議論をするためにここに来たのです。」

O: AH, no you didn't, you came here for an argument!
「ほう。いいえ、違いますよ。あなたは議論をするためにここにきたのです。」

M: An argument isn't just contradiction.
「議論は反論ではありmせん。」

O: Well! it CAN be!
CAN:ありえる (可能性のcan)

M: No it can't!
「ありえない。」

M: An argument is a connected series of statements intended to establish a proposition.
intended to~を意図する   proposition命題
「議論は、命題を確立することを意図した、一連の結び付けられた言説です。」

O: No it isn't!

M: Yes it is! 'tisn't just contradiction.

O: Look, if I *argue* with you, I must take up a contrary position!
「ええとですね。もし私があなたと議論するなら、私は逆の立場をとらなければなりません。」

M: Yes but it isn't just saying 'no it isn't'.

O: Yes it is!モンティ 議論 2

M: No it isn't!

O: Yes it is!

M: No it isn't!

O: Yes it is!


M: No it ISN'T! Argument is an intellectual process. Contradiction is just the automatic gainsaying of anything the other person says.
intellectual知的な  gainsay反論する   the other personもう一人の人
「いえ、そうではありません。議論は知的な過程です。反論は単に、相手方が言っていることをなんでも自動的に反論することです。」

O: It is NOT!

M: It is!

O: Not at all!

M: It is!

(The Arguer hits a bell on his desk and stops.)
arguer議論を仕掛けている人

O: Thank you, that's it.
That’s it.:はい、それまで。

M: (stunned) What?
stunned仰天する

O: That's it. Good morning.議論 ジョン クリース

M: But I was just getting interested!

O: I'm sorry, the five minutes is up.
is up = is over

M: That was never five minutes just now!!

O: I'm afraid it was.
「そうだと思いますよ。」

M: (leading on) No it wasn't.....

O: I'm sorry, I'm not allowed to argue any more.
「すみません。これ以上議論することは許されていないのです。」

M: WHAT??

O: If you want me to go on arguing, you'll have to pay for another five minutes.
「もし私に議論を続けてもらいたいなら、あと5分ぶん、払わなくてはなりません。」

M: But that was never five minutes just now!
Oh Come on!
Oh this is...
This is ridiculous!
ridiculousばかばかしい

O: I told you... I told you, I'm not allowed to argue unless you PAY!
「申し上げましたよ。あなたが払わない限り議論をすることを許されていません。」

M: Oh all right. (takes out his wallet and pays again.) There you are.
There you are.:どうぞ(ものを差し出すときの表現)

O: Thank you.

M: (clears throat) Well...
clear throat:咳払いする

O: Well WHAT?

M: That was never five minutes just now.

O: I told you, I'm not allowed to argue unless you've paid!
6行前とちがい、unlessの後は現在完了形。「し終わったら」という意味がでる。
「申し上げましたんですれどね。払い終わらなければ議論をすることは許されていません。」

M: Well I just paid! モンティ 議論④

O: No you didn't!

M: I DID!!!

O: YOU didn't!

M: I DID!!!

O: YOU didn't!

M: I DID!!!

O: YOU didn't!

M: I DID!!!

O: YOU didn't!

M: I don't want to argue about it!

O: Well I'm very sorry but you didn't pay!

M: Ah hah! Well if I didn't pay, why are you arguing??? Ah HAAAAAAHHH! Gotcha!
gotcha:ひっかかったな。
「払わなかったのなら、どうしてあなたは議論をしているのですか。ひっかかったな!。」

O: No you haven't!

M: Yes I have! If you're arguing, I must have paid.
must have paid払ったに違いない
「いや、払いましたよ。あなたが議論してるなら、私は払ったに違いない。」

O: Not necessarily. I *could* be arguing in my spare time.
Not necessarily必ずしもそうでない。  couldということもありえる
spare time余分な時間
「必ずしもそうではない。休み時間に議論しているということもありえるではないですか。」

M: I've had enough of this!モンティ 議論 gotcha
「もうたくさんだ。」

O: No you haven't.

M: Oh shut up!

(Man leaves the office)

 

いかがでしたか。「何が面白いの」と言われると、う~ん。

はい、ここで英語の学習。

その1

冒頭、下のやりとりがあります。


Man: Is this the right room for an argument?

Other Man: I've told you once.

Man: No you haven't!

Other Man: Yes I have.

M: When?

O: Just now.

M: No you didn't!

O: Yes I did!


モンティパイソンメンバー日本語だと、「はい」、「いいえ」でいいのですが、英語では、前の人の使った動詞に合わせるのですね。もちろん中学校で「りくつ」は習いますが、なかなか身につきません。このスケッチでまず耳を慣らし、そのあとで、実際、友人と真似してみたらどうでしょう。

最初は、I've told you once.ですから、No, you haven'tです。

おっと、内容的には、「ですから~、です」なんて話にはなりませんね。最初から、唖然。

つぎに、when?、こう訊かれたら、過去形です。英語の「時制」はなかなか深いのです。

下には、日本語では「いえ」というところを、「Yes」と言っているところもあります。自分で見つけてください。


その2:

中、上級者向け。

たとえば、
 I'm not allowed to argue unless you PAY!は聞き取れますか。講師役を勤めるジョン・クリースは、早口な上、口を動かしていません。allowedとか、unlessは、きっと耳に残らなかったのではないでしょうか。

しかし、母国語として英語を使っている限り、状況から無意識に頭が推測して、自然に意味が分かるのですね。こういうことは日本語を用いている私たちも常にしていることです。ためしに、日本語ができる外国人で、ふだんあなたが話している調子で話しかけてみてください。よっぽどの人でないかぎり、きょとんとした顔を見せますよ。

 

では、どうして、こういうのを聴き取れるようになるのか、といえば、こういう短い会表現を覚えてしまうことです。そして、何度もこのスケッチを聴いていると、聞いているのか、記憶で分かった気になっているのか、分からなくなります。この状態、これが大切です。この感覚を大事にして、しばらくして、また聴いてみます。そのとき、「聴こえたら」、一歩前進。そうでなかったら、忘れたなと自分に厳しく覚えなおしてください。モンティ タイトル

ああ、だいぶ、ユーモアのない話になりました。