『ローズのにわ』ピーター・レイノルズ作絵 かとうりつこ訳 主婦の友社
今日の一冊はこちらの絵本。これ、いい!!でも、絶版なのかな?ぜひ図書館で。
■ 寂しい場所に出会ったらどう思う?どうする?
ローズは、いろんな国、いろんな場所に表紙絵のティーポットに乗って旅をしていたんですね。このティーポットに乗って、というところが絵本ならではで、とおっても素敵。空想の翼が広がります。で、訪れた記念に花の種を集めていたんです。
ある日、そろそろその記念の種たちを用いて、自分の庭をつくってみようかな、と思い立ったローズはたどりついた島の町を探険。
町は、コンクリートだらけのとても忙しい町で、中でも寂しい場所に出たんですね。そこだけ、ぽつんとそこだけ土がむきだしに。いろんな国を見てまわってきたローズ、そのときどんなことを思ったでしょう?
「あ~、だから都会は嫌なのよね!」
「この町の人はコンクリートだらけで心が麻痺してるのかしら!?(ぷんぷん)」
いやいやいやいや。
そんな批判めいたことは思いません。旅人にありがちな批評家にはローズはなりません。彼女は、ただこう思ったんです。
「ここに いろが あったら どんなに すてきだろう。」
そして、集めた記念品の種でそれを実現しようと思ったんです。
■ 待つ、待つ、ひたすら待つ
ところが、ところが!
探険からティーポットにもどると、なーんと鳥たちにほとんどの種が食べられてたんです!
でも、ローズは責めない、悲しまない。正直、「あ~あ」くらいは思ったかもしれないけれど、絵本には、
「おなかいっぱいで幸せそうな鳥たち」
としか、書かれてません。そう、集めた種は、鳥たちを幸せにしたんだなあ。
そこで、ローズは残りの種をかきあつめ、じっと待つ。天候に左右されながらも、ひたすら待つ。待つ、待つ、待つ。
これ!!!
現代人の私たち(って一緒にしちゃってるけれど、はい、私です)に欠けがちな姿勢。自然に左右されながらも淡々と待つという姿勢。
そして、あきらめないで、まちつづけるローズのうわさは、町の人たちにも伝わっていくんですね。見てる人はいるんだなあ。自分で「私こんなにがんばってるんです!見て見て」と言わなくても。ハッとさせられます。
さあ、ここからが、スゴイ。ある日女の子が紙で作った花をお庭にうえてくださいと持ってくるんです。それから、毎日子どもたちはやってくるように。
「みんな、かみで つくった はなを もって。
みんな、ローズに かける ことばを もって。」
いいなあ。持ってきているのは、気持ち。じん、としちゃいます。
■ 旅(人生)の終わりにしたいこと・・・分かち合い
そんな旅好きな人なローズでしたが、ついに終の棲家を見つけるんですね。それが、みんなで作ったこの花いっぱいの空間。最後はこんな言葉で締めくくられています
旅をするのも、もうおしまい。ローズは家にたどりついたのです。
「ここが、ローズのにわ。みんなのにわです。」
「みんなの」。なんだか、ぐわっと来てしまいました。名作『ルピナスさん』みたい。↓
結局、人生の終わりにしたいことって、誰かを幸せにすることだったり、それを分かち合うことだったり。世の中を美しくすることなんだな。
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