『弟の戦争』ロバート・ウェストール著 原田勝訳 徳間書店
なぜかアクセス数があがる人気シリーズ、我が家の長男(笑)。
ほーんと話題提供にこと欠かないというか、いろんな学びをさせてくださる長男さま。
昨日は学校側からすすめられて、教育センターの相談員の方と2時間近くしゃべりまくってきました♪
「先生の悪口言いやすいように先生抜きで女子会しましょ」って茶目っ気たっぷりの相談員の方は、自分の親と同じくらいの年齢。とても包容力のある方たちだったので、私も思わず涙腺崩壊泣きっぱなしでございましたよ。ここ数日の長男の荒れっぷりがはんぱなくてホーント疲れていたので・・・(立ち直りも早いんですけどね)。周りにこうやって力になりたいと思ってくれる人たちがいるって本当にありがたいことです。先生たちも学年超えて、み~ないい人ばかり。
さて、そんな長男。新学期が始まって、他の子もみんな不安を抱えているのですが、どうやら自分以外の子たちの不安も、まるで自分の感情かのように全部背負ってしまっているようです。自分の感情と他人の感情の区別がつかず、混乱。共感力が強すぎるというか・・・。暴れている姿からは想像できない優しさが実は根底にあるんですね。そんな長男を見ていていつもかぶるのが『弟の戦争』です。
≪『弟の戦争』あらすじ≫
他人の感情をそのまま感じてしまう心優しいフィギスは、ある日自分はイラクのラティーフという少年兵だと言い始める。湾岸戦争が始まった年のことだった。その弟の秘密に一人気づく兄。どうすれば弟は助かるのか。やがてこの世には科学では説明のつかないものもあると理解してくれる精神科医のラシード先生に出会い、少しずつフィギスはラティーフから解放されていく。
各種の賞を受賞しているこの作品、とっても考えさせられるし、読んだときは長男と重なったこともあり、背筋が凍りそうになりました。
直接戦争の現場の悲惨さを描くのではなく、舞台は平和なイギリスです。フィギスにラティーフという少年兵を憑依させることによって、一気に戦争を自分の問題として考えられるようにしてくれる物語。
まるでゲームのようにテレビ中継される湾岸戦争、私もその小ぎれいさ違和感を覚えたこと、思い出しました。フィギスの父は尊敬できる善良な市民なのに、テレビを見ながらまるで観客のように多国籍軍を応援する・・・ああ、マインドコントロールってこうやってされていくんだな、と。とても現実的で自分もともするとそちら側になるんじゃないかとぞっとします。
そして、希望も何もないラティーフの世界をフィギスを通して見ると、とたんに見え方が変わってくる。
こんな世界に誰がした?本当にフセインが悪くてアメリカが英雄なのか?
戦争に限らず、立場が違えば違った現実が見えてくる、それをこの物語は教えてくれます。
戦争は良くない!戦争反対!・・・なんて書いていない。ただ淡々と向こう側の人を見せてくれる。無意識下にせよ、自分もアメリカ人の命のほうがイラクの人々の命よりも尊い、とどこか感じていた部分がないと本当に言えるのだろうか?と考えさせられます。
後味はあまりよくないけれど、これは大人こそ一度は読んでおきたい名作です。
ウェストールはテンポよくぐいぐい読ませてくれるので本が苦手な子にも。小学校中学年から。