『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

岸辺のヤービ

2016-02-27 23:00:57 | ファンタジー・日本

『岸辺のヤービ』梨木香歩作 小沢さかえ絵 福音館書店

梨木香歩さんの最新作。動物もののファンタジーは実は個人的には苦手な部類に入るのだけれど、さすが梨木さん。すーっと読めました
この本を読んだ人たちは声をそろえて言います。「日本人が書いたとは思えない!」
ナルホド、なるほど。確かにイギリスの翻訳文学を読んでいるかのような。だけど、真似っこでもなく、梨木さんは海外翻訳文学を読み込んで読み込んで育ってきて自分のものにしたのだなあ。世界観の作りこみがさすがです。そして、ムーミンを彷彿させるなあと思ってたら検索でも「岸辺のヤービ」と入れれば一番に「岸辺のヤービ ムーミン」という検索語が出てきますあはっ。
この本の語り手はフリースクールの先生で、この先生と二本足で歩くハリネズミのような生き物ヤービが出会うのですが、ん?デジャビュー!?ああ、コロボックル物語みたい

とても穏やかなな空気が流れている物語です。でも、穏やかとはいってもヤービのいとこのセジロは誰かにあこがれるあまりに自分まで食事をとらなくなってしまったり、その友だちのトリカは家業について悩んでいたり、それぞれが精いっぱい悩んで生きています。それでも、そこにドロドロとしたものがなくて、なんだかとっても清々しい!なんだろう・・・?人間の影響での生態系の変化なども描かれているのに、「それでも」世界はなんて美しいんでしょう!と思える。

個人的には色んな言葉の響きをヤービが密かにかっこいいと思っていたりするところがツボでした。ああ、子どものときこうだったよなあって。そしてドキドキしながらその言葉を使ってみるんですよね。
ママ・ヤービも素敵

大きな冒険もあると同時に日常の中にも小さなキラキラがいっぱい散りばめられた物語
これを読んだ後は岸辺を見つけたらヤービに出会えるんじゃないかと思ってドキドキしてしまう。私もミルクキャンディーをポケットにしのばせようかしら。『床下の小人』を読んで以来、クリップや洗濯バサミがなくなるとアリエッティたちがいるに違いないと信じ切ったのと同じように、もはや岸辺にはヤービたちがいるとしか思えなくなりました

文体は平易ですが、これはかつて翻訳児童文学に夢中になった大人に向けた物語かも。この穏やかなテンポを今の子どもたちはどう受け止めるのか興味津々です。読み聞かせるなら小学校低学年からでもいけそう。何よりも現代っこたちが読む読み物の日本語が雑なことが多いので、この丁寧で(でも、丁寧過ぎない)美しい日本語に触れてほしいなあ

毛糸で何を編む?

2016-02-26 21:00:53 | 絵本
昨日は図書館友の会の絵本好きの集まりに参戦。みなさまベテランの方ばかりなので、アラフォーでもヤング(←響きが既に古い)の部類に入り気おくれしてしまうので、同じくヤング仲間のMちゃんを隣の市から引きずり込んでみました(笑)。
でもね~、一冊紹介されるごとに、みなさんきゃっきゃきゃっきゃ、少女のよう。絵本や児童文学って世代の垣根がないなあってしみじみ思います

さて、今回のテーマは『毛糸で何を編む?』だったのですが、素敵な絵本が続々と出てきましたよ。それぞれがテーマに合うおすすめの絵本や児童書を持ち寄るのですが、さて、一番多くかぶった本はなんだったでしょう?
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じゃん!それは、コチラ↓

『セーターになりたかった毛糸玉』津田直美作・絵 ブロンズ新社

大人が読んでも面白い絵本です。毛糸玉ならだれでも一度は憧れるのがセーターになること。でも、この毛糸玉はセーターにはなれないんです。セーターになることへの思いをあきらめきれない自分が情けなくなったりなんかして、こういう気持ちは大人のほうが自分と重なるんじゃないかしら?ネタばれしちゃうと、最後にはついに憧れのセーターになることができるのですが、これがもうね、ナイスアイディア!一度は手袋として編まれ、ポイと捨てられてしまうのだけれど、それを拾った猫のお母さんがリメイクするんです、5本指全部を活かして。そう!中指の部分はシッポを入れる部分になるんですよ~。ね、いいでしょう?ホッコリします。

同じ作者のこちらもおすすめ↓

『6つのセーターのおはなし』津田直美 作・絵 日本ヴォーグ社

これは絶版かな。編み物できないのに編み物をしたくなります。こちらは実践的で編み図や編みあがった写真も出ていて、それぞれのセーターに短い物語がついていて楽しいんです。子どもに読んだら「お母さん編んで!」と言われること間違いなし・・・なので我が家ではこの本は私がひそかに眺めるだけです(笑)


その他にもいーーーっぱい素敵な毛糸関連の絵本が出てきたのだけれど、自分では手に取らなかっただろうなあと思うものでやられた!と思ったのがコチラ↓

『中田くん、うちゅうまで行こ!』佐藤繁絵・さえぐさひろこ作 童心社

まず関西弁であることが素敵。手袋を交換する場面があることから紹介されました。
声が小さいことが悩みの小学3年生主人公の高橋さんとお調子者だけれど、実は複雑な家庭の中田くんが学校の外(公園)で出会って芽生える淡い初恋にも似た友情。悲しみでいっぱいの小さい胸。大人にとっては大したことではなくても、その小さい胸はいろんな思いがいっぱいで、はりさけそうになっている。大人が知らないところで、がんばって生きてる子どもたち。息子のクラスにも中田くんのような子がいるのでだぶってしまい、うるっとしちゃった。もうもう、ブランコとかそれだけで泣いちゃいそう。ブランコは色んな思いを乗せて一人の時間と空間を作ってくれるよね。そして空とつなげてくれるよね。
ちょっと切なさもありながら、さすがの関西で明るさもあります。絵本なのにひとつの児童文学を読み終えたような読み応え・・・と言ったら大げさかな。大人におすすめです。子どもはどういう風にこの絵本を受け止めるのかなあ。この心情が分かるのは高学年以上かなあ。今度読み聞かせしてみようっと。  

冬から春へ

2016-02-25 23:36:01 | 絵本

今朝は雪がちらついて、まだまだ寒いなあと思っていたのだけれど、やっぱり春はそこまで来ている。
雪と春・・・!ということで、本日の一年生の読み聞かせの一冊にはこちらを選びました↓

 
 『はなをくんくん』ルース・クラウス文 マーク・シーモント絵

地味ぃ~な絵本です。だから、読み聞かせをするには勇気が・・・。けれど、こういう静かな本にも触れてほしい!と思って持っていきました。
冬眠していた動物たちが次々と目をさまし、何かに向かってかけていくお話。「はなをくんくん」というフレーズがリピートされるのですが、「はなを~」とためて読むと「くんくん!」と一年生児童の大合唱
もうね、心の中でガッツポーズですよ。思ったよりも手ごたえあり、でした。

が!!!帰宅した次男、
「お母さん、今日の『はなをくんくん』あれじゃないほうがよかった」
と一言。だって、色少ないし、面白くないし、とのこと。まあ、それも分かるけど。でもね、潜在意識の中でこのお話どこかで残るんじゃないかな、って思います。だって、学校からの帰り道、野花を摘んできてくれるんですもの(↑の写真)。やんちゃ坊主と花・・・このギャップにやられる母。どの花も切り花としては持つタイプではなく、一日しか持たないけれどお母さんにお土産と思ってくれたその心を大切にしたい。ついつい、採らないほうが長持ちするよ、と言いたくはなるのですが

先日の講演会へ行くときに乗った電車のJAL CARDのポスターにね、こんなことが書かれていました。

    本当の旅の発見は
      新しい景色を
        見ることではなく、
          新しい視点を
            持つことにある


フランス人作家マルセル・プルーストの言葉です。これ、まさに初めて子育てしたときに感じたこと。周りに子育てしている人もいなくて、いままで子育てにあまりいいイメージ抱いてなかったんです。やりたいことできなくなるな~、世界が狭くなるな~、子どもに縛られるんだろうな~etc.etc. ところがどっこい、事実は逆で。子どもがいると世界が広がる。新しい景色が開ける。赤ちゃんを連れていると知らない人からもよく話しかけられたり、ん?この感覚どこかで覚えがあるぞ、と・・・。そう、バックパックで旅してるときのあの感じ。見知らぬ人と一期一会を楽しみ、新しい視点が持てて世界が広がる。ああ、子育てって旅と同じなんだ!って思ったことを思い出しました。もう、こんなに楽しいなら早く教えてほしかった~って思います。そしたらもっと産んでたのに!?!?

子どもがいると旅する機会はガクンと減ったけれど、日常生活が旅みたい
子どもたちも子どもの本も新しい世界をい~っぱい見せてくれます。子どもがいないもよし、いるもまたよし、です

エミリー・グラヴェット講演会

2016-02-24 19:41:28 | 講演会・勉強
イギリスの絵本作家 エミリー・グラヴェット講演会@国際子ども図書館

に行ってまいりました~。以前なら気おくれしていけなかった。だって、無職だし、ただの主婦だし
それは、今も何ら変わってないのだけれど、なんとなく「司書課程勉強中です♪」という事実があるだけで、顔を出す権利を得たような!?自分の気持ちの問題だけなのだけれど 司書勉強仲間三人で参戦したのですが、講演会の前に谷根千散歩~。←な~んて書いてますが、谷根千って言葉知らなかったくらい情報に疎い私でした
ビルの谷間に点在するレトロなお店。めったに上京することのないおのぼりさんの私は、日本に旅行に来ているガイジンさん気分。子連れで遠のいていた雑貨屋さんをたくさんのぞけて楽しかったあ
さすが芸大生の町です。で、昔の東ドイツの絵本というこの子を連れて帰ることにしました↓



言葉はドイツ語で読めないけれど、鳥に優しい子といじわるな子のとても分かりやすいお話(笑)。どうもうちの子とかぶっちゃってね、いじわるな方が

司書勉強仲間と子どもと本について語りあい、あっという間に講演会の時間。

  

ケイト・グリーナウェイ賞を受賞しているエミリー・グラヴェットさんは本国ではたくさん出版しているけれど、日本ではまだ三冊ほど。冊子という構造を最大限に活かし、仕掛け絵本のような楽しい工夫のある本をたくさん出版されています。

でもね、何よりも面白かったのは彼女の人生。本気で魔女になろうとしていた幼少期。絵を描くのは好きだけれど、壁にかかったアート(抽象画)はどうも理解できない。だから美大に行かないことを決めただけでなく、ついでに学校もやめちゃえ~(笑)、家も出ちゃえ~(笑)、と16歳でニューエイジグループへ。それから子どもが生まれるまでの8年間バスに住んで移動しながら農場や果樹園で働いていたそうです。想像しうる限りの悪いことは全部やったとか

いやあ、こういう話を聞くと毎回安心します。うちの荒れまくっていた(←希望的過去形)長男も将来どんな大物になってくれるのかと。エミリーさんね、いまではとっても普通のチャーミングな43歳。アースデイ系の恰好をしているわけでもなく、ふつうの白黒ボーダーシャツにふつうのロングフレアスカート。髪型だって、昔のドレッドではなくふつうのショートカット。「ふつう」を強調しましたが、今のエミリーさん見る限りそんな過去は想像できない。

そんないまやふつうの彼女、バスで回ってる間も絵だけはずーっと描き続けていたそうです。転機は出産。自分が汚れるのは気にしないけれど、赤ちゃんはちゃんとした家の中で育てたい、そう思った自分の心に忠実に生活スタイルをいっぺんさせるのです。そう、エミリーさんってすごく自分の直感や心に忠実だなあって感じました。だから流れに身を任せる。「こうであるべき」ではなく、「こうしたい」で生きてきた人。だからね、やりたいことが見つかったらちゃあんと軌道修正できるの、たとえ道を外れる時期があったとしても。
夫が配管工の仕事につくために大学に行きなおすにあたり、そこに一年間のアートコースがあることを知って受けるエミリーさん。一年では物足りず、29歳で改めて美大へ。「好き」が見つかれば人は強い!!!「好き」が見つかればいくらでも努力できる。逆にいえば、好きでなければ力が入らないのも当たり前というわけですな

さて、このデジタル時代において、彼女は絵本はとても重要な役割を果たしているといいます。読み手である大人、聞き手である子ども、そして絵本のこの三角形がデジタルではない、リアルなつながり、リアルな所有感覚を持たせることができる、と。そして、絵本はストーリーを読み手が付けくわえることができる、とも言います。書かれている文と挿絵が全く違うことがある、この絵と文の関係をどう結ぶか、どう共感するか、その解釈は読み手次第、読み手にゆだねられているんですね。視覚から何かを読み取る重要性を強調していました。絵本には想像の余地があるんです。

絵本を読むと「こんなの現実でありえない!」という感想がエミリーさんのところにも来るそうです。でもね、ゲームの世界だって遊んでいるうちに飛んでる気分になったりするでしょう?絵本だって同じで“遊び心”が大事だ、ってエミリーさんは言います。
   「空想の世界は現実よりも広いのよ」
と。わ~、私の中で何かが羽ばたいた。どう、いつもの感覚から飛び立つことができるか、それが絵本なんだ、って
早く文字だけの本に移行するようにと強調されがちだけれど、絵本はもっともっと長く読まれてもいい、そうおっしゃってました。同感です

一家にぜひ一冊!

2016-02-23 21:54:08 | 絵本
小人といえば、最近の子どもたちはすぐに『小人図鑑』を思い浮かべるのかもしれませんが、私にとっての小人図鑑は断然コチラ↓

 

読み物としても面白いし、ただ眺めていても面白いです。図鑑というよりもノームの専門書
ノームの暮らしぶりが描かれているのですが、田舎暮らしに憧れてる人にとっては、これが実に実践的!ケガをしたときどうすればよいのか、役に立つ薬草、染色の仕方、カゴ編み、木工、住宅の作り方まで実に事細かに書かれていて、男の子も女の子も大満足な一冊。小学生のころから家にあって、ノームは当たり前に存在すると信じ切っていました。この本見て信じない子どものほうがどうかしてるんじゃないかと思えるほどの出来栄えところが、ところが、ですよ!!!あとがきにその夢を壊すようなことが書かれてたんですねえ。翻訳の山崎さん、頼みますよおもうね、小学生のころ泣きました大人ひどいっっっ!!!って。信じさせてほしかったのです。ウソって書かないでー。

こんな話を聞きました。「本当はサンタさんはお父さんとお母さんなんだよ」って言ったら当然知ってるはずの中学生のお兄ちゃんが、「聞きたくなかった」と言って泣いた、と。事実はどうであれ信じさせてほしいのです、だから言わないでほしいんです、事実なんて。
事実より真実。ノームは真実なんだ、って思ってます
というわけで、ぜひ一家に一冊おすすめですが、同時にあとがきを切り取ることも強くおすすめします

先日遊びに来てくれたお友達2名にこの本について熱を入れて語ってしまったら、即日購入してくれたとか。なんか嬉しい
この本を知ってしまうと、森を歩いていても、足元にいるんじゃないか、根っこの下にはノームの家があるんじゃないかってワクワクします。森歩きもノームを知って歩くのと知らずに歩くのでは楽しさが違う!

この本のすべてにワクワクしましたが、一番ワクワクしたのは地下に作られた彼らの家。玄関に置かれた花嫁衣装箱の中には、お客さまが帰るときにもらえる贈り物が入ってるんですって。贈り物は便利な道具だったり、自然なものだったり、ときにはかなり高級な文章(たとえば詩、格言、なぞなぞ)だったりするそうで、小さいころは自分も大きくなったら玄関にこの花嫁衣装箱を置くんだ、って思ってました。

そして、惜しみない労力と費用がそそぎこまれた王座の美しさをたたえたトイレ(笑)。憧れましたね~憧れのあまり、色画用紙に宝石を描いて立体的なノームトイレを作ったりしたものです

読書嫌いの我が家の長男もこの本だけは、小さいころから眺め続けてます。ええ、読まずにひたすら眺めてます(笑)。絵から色々と吸収してるんだなあと思うと嬉しい。
こんな素敵な本が絶版だなんてなあ。高いからかしら!?でもね、小学生のころから今に至るまでワクワクさせてくれてることを思うと決して高くないなあ、と。ベースにノームがいる子ども時代が過ごせたこと、幸せです