
『ジャングル・ブック』(2015年)ラドヤード・キプリング著 三辺律子訳 五十嵐大介絵 岩波少年文庫
11月の児童文学ピクニックのテーマは、『秋の夜長に読みたい名作 映像化された物語たち』でした。その中で紹介したうちの一つが、今日の一冊『ジャングル・ブック』。
昨年の夏休みには実写化もされて、うちの子たちもじいじと見に行っていましたが、その前のディズニーのアニメ版も有名。イラストだけは見たことがある人多いのでは?どちらも映像化のほうは、私はまだ見ていないのですが、あのジャングルの風景を映像で見てみたい!という気はして、予告編探しちゃいました

そして、今回は2015年に新訳で出た原作を読んでみました。読みやすい!冒険ものがあまり得意ではない私は、テーマ本だし、仕方ない読むか~、くらいだったのですが、面白い!
ジャングル・ブックって、もともとは二冊15編の短編からなっていたんですってね、シラナカッタ


■武士道・騎士道・野生道!?
今回、読んでみて一番感銘を受けたのは、これ野生道とでも言ったらいいのかな?ジャングルの掟。武士道、騎士道に通ずる気高さがあるのですよ、これが

訳者の三辺律子さんは、あとがきのなかでこう述べられています。
「映画の印象のまま本を開くと、いい意味で裏切られることになります。・・・中略・・・キプリングの描く動物たちは、決して単なるゆかいな楽しい仲間などではありません。豊かな恵みと同時に危険に満ちたジャングルで、動物たちはそれぞれのおきてを守り、必要以上に相手の領域にふみこむことなく、おのおの誇りを持って暮らしています。」(P.372-373)
ジャングルの生活は自由で楽しい。でも、自由って自由奔放で好きなことをすること?
いいえ!
掟を守り、弱肉強食の世界ではあるものの、好き勝手に狩りをしていいわけではない。‟必要以上に相手の領域にふみこむことなく”ってところが、たまらなくいいな~。
違う種のものが均衡を保って、共存するということは、ゆかいな仲間で仲良くやっていくことではないんです。仲良くなる必要はない。ただ、厳しい自然の中で生きていくためには、それぞれがルールを守らなければいけない。
こういう物語を読んだ子は、ジャングルへの憧れが芽生えると同時に、異質なものと均衡を保って共存していくには掟が必要なこと、潜在意識の中に残るんじゃないかな。
■やっぱり西欧の価値観、だけど感動
さて、一度は人間の元に行ったものの、やはりジャングルの暮らしがいい、と言って戻ってくるモウグリ。人間の元に行ったときに、母親代わりになってかわいがってくれたメスワたちが村人たち火あぶりにあいそうになっていることを聞きだし、助けに行きます。火あぶりの理由は、悪魔の子(モウグリ)の両親であるから。
さあ、そこからがすごい復讐劇なのです!だって、ジャングル呼び寄せて、村ごとつぶしちゃうんだもの。子どもが読むと気分爽快なのかな?でも、今の私は“罰する”という行為に善悪の二項対立を見てしまって、なんだかモヤっとするのです。闘いはつきものだし、やるかやられるかの世界ならやっぱりやるんだけれど・・・上橋菜穂子さんの物語のように、闘ってもそこに善悪はなくて、ただ立場の違いがあるだけ、という物語が好きなんだな。
また、モウグリがジャングルの中で威張っているのも、子どもらしいといえば子どもらしいのだけれど・・・、自分を「ジャングルの主」と呼び、動物の頂点に人間を置くところが、ああ西欧の価値観だな、と

とはいえ、面白くて一気読みだし、最後は感動

