『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

人生の終わりにしたいこと

2018-01-12 13:01:05 | 絵本


『ローズのにわ』ピーター・レイノルズ作絵 かとうりつこ訳 主婦の友社

今日の一冊はこちらの絵本。これ、いい!!でも、絶版なのかな?ぜひ図書館で。


■ 寂しい場所に出会ったらどう思う?どうする?


ローズは、いろんな国、いろんな場所に表紙絵のティーポットに乗って旅をしていたんですね。このティーポットに乗って、というところが絵本ならではで、とおっても素敵。空想の翼が広がります。で、訪れた記念に花の種を集めていたんです。

ある日、そろそろその記念の種たちを用いて、自分の庭をつくってみようかな、と思い立ったローズはたどりついた島の町を探険。
町は、コンクリートだらけのとても忙しい町で、中でも寂しい場所に出たんですね。そこだけ、ぽつんとそこだけ土がむきだしに。いろんな国を見てまわってきたローズ、そのときどんなことを思ったでしょう?


「あ~、だから都会は嫌なのよね!」
「この町の人はコンクリートだらけで心が麻痺してるのかしら!?(ぷんぷん)」


いやいやいやいや。
そんな批判めいたことは思いません。旅人にありがちな批評家にはローズはなりません。彼女は、ただこう思ったんです。

「ここに いろが あったら どんなに すてきだろう。」


そして、集めた記念品の種でそれを実現しようと思ったんです。


■ 待つ、待つ、ひたすら待つ


ところが、ところが!
探険からティーポットにもどると、なーんと鳥たちにほとんどの種が食べられてたんです!
でも、ローズは責めない、悲しまない。正直、「あ~あ」くらいは思ったかもしれないけれど、絵本には、

「おなかいっぱいで幸せそうな鳥たち」


としか、書かれてません。そう、集めた種は、鳥たちを幸せにしたんだなあ。

そこで、ローズは残りの種をかきあつめ、じっと待つ。天候に左右されながらも、ひたすら待つ。待つ、待つ、待つ。

これ!!!

現代人の私たち(って一緒にしちゃってるけれど、はい、私です)に欠けがちな姿勢。自然に左右されながらも淡々と待つという姿勢。
そして、あきらめないで、まちつづけるローズのうわさは、町の人たちにも伝わっていくんですね。見てる人はいるんだなあ。自分で「私こんなにがんばってるんです!見て見て」と言わなくても。ハッとさせられます。

さあ、ここからが、スゴイ。ある日女の子が紙で作った花をお庭にうえてくださいと持ってくるんです。それから、毎日子どもたちはやってくるように。

「みんな、かみで つくった はなを もって。
みんな、ローズに かける ことばを もって。」

いいなあ。持ってきているのは、気持ち。じん、としちゃいます。


■ 旅(人生)の終わりにしたいこと・・・分かち合い


そんな旅好きな人なローズでしたが、ついに終の棲家を見つけるんですね。それが、みんなで作ったこの花いっぱいの空間。最後はこんな言葉で締めくくられています

旅をするのも、もうおしまい。ローズは家にたどりついたのです。
「ここが、ローズのにわ。みんなのにわです。」




「みんなの」。なんだか、ぐわっと来てしまいました。名作『ルピナスさん』みたい。↓



結局、人生の終わりにしたいことって、誰かを幸せにすることだったり、それを分かち合うことだったり。世の中を美しくすることなんだな。




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サンタセレクトの本たち

2017-12-26 12:50:34 | 絵本


クリスマスはいかがでしたか?
我が家は、子どもたちが順番に体調を崩し、それでも治ればすぐにクリスマス会に出かけたりで、てんやわんや

サンタさんへの期待が大きすぎて(特に小6長男)、サンタさんにも相当のプレッシャーが!ネタ切れで誰か助けて~、って感じの毎年この時期。
なんせ、純粋すぎてどうなの?っていう長男のサンタさんへのリクエストは、超能力、動植物と話せる能力、瞬間移動能力、ですからね。どうやって、プレゼントするの、コレ・・・。

今年は、宝探しは勘弁と思ってたら、ご丁寧にお手紙にも「今年も宝探ししたいです」と書かれているから、サンタさんもやらないわけにはいかない
普通にツリーの下へのプレゼントに加え、鉱物類は、ヒントのお手紙メモ×6通に沿って探していく形式。そりゃ、楽しいよね。

ちなみに、長男は興奮しすぎて寝れなくて、2階でお父さんとお母さんがガサゴソしてたと言っておりましたが、それでもサンタさんを頑なに信じております。
なぜなら・・・お父さんとお母さんはケチでこんなに買ってくれるハズないから(笑)。


そんなたくさんのプレゼントの中から、それぞれに贈られた本は次の通り。まずは長男↓



『13歳までにやっておくべき、50の冒険』ピエルドメニコ・バッカラリオ著 トンマーゾ・ペルチヴァーレ著 太郎次郎社エディタス

文字読むのが苦手な長男にドンピシャ!
書きこんだり、メモ貼ったり、ミッションコンプリート表も書きこみ式で、自分のオリジナルの冒険書が出来上がります
野外活動中心ですが、ブログを書こうとか、難しいゲームを攻略しよう、とかそんなものもあったり、偉人になりきってみようなんてものまでも。そして、ミッションの最後には、参考になりそうな物語本も書かれていて、ブックガイドにもなるという仕掛け。

裏表紙に書かれてる言葉がいいんだな~↓

『走れ とべ よじ登れ かくれろ 発見しろ つくれ 考えろ 書け 夢を見ろ』

夢中になって、やっていました。


同じく本苦手、現実派だけれど工作創作大好きな次男にはコチラ↓



『マイクロシェルター』Derek Diedricksen著 金井哲夫訳 オライリージャパン


大人向けかもしれないけれど、もうもう眺めているだけで楽しい!
自分で作れる快適な小屋、ツリーハウス、トレーラーハウスが、オールカラー写真で掲載され、後ろには作り方まで載っているんです!なにコレ最高!ワックワク
次男は、ずーっと欲しかった‟ずぐり”という雪の中でまわすコマに夢中なので、しばらくこの本は母が借りようっと


そして、三男にはツリーハウスつながりで、コチラ↓



『きのおうちへようこそ』ドロシア・ウォーレン・フォックス作 おびかゆうこ訳 偕成社


長男も次男も「これ、楽しい!」と一緒に聞いていました。


さて、全員1月生まれの我が家の子どもたち。次は、誕生日がやってくる・・・何あげればいいの~!?

現実派の親御さんにはコレだ!!!

2017-12-21 18:17:15 | 絵本


『サンタクロースっているんでしょうか?』中村妙子訳 東逸子絵 偕成社

今日の一冊はコチラ。
有名すぎるこちらの本。サンタクロースって本当にいるのか?という8歳の少女の質問に、ニューヨーク・サン新聞が社説で答えたという実際のお話です。
社説が書かれたのはナント1897年!この社説がなかなかいいんです

で、この本を、先日むりやりママ友に押し付けました(笑)。

普段押し付けるということは、しないのですが、今回は押し付けました!

だってね・・・クリスマスの意味を見直したとき、そのうちはキリスト教じゃないから、お祝いするのやめることにした~、って言うんです。それはいいのですが、続けて「で、サンタもいないって言うことにした!」って言うではないですか

待って待って待って~
そのうち、一番上がまだ小3で、その下にまだぞろぞろといる。
子どもの夢を壊さないで~。事実はそうかもしれないけれど、真実は違うんです。

あるご家庭で、中学生のお兄ちゃんがとっくに気づいてそうだったから「知ってるよね?」って告げたらそのお兄ちゃん、泣き出しちゃったそうなんです。知ってたけど、言ってほしくなかった、って。黙っていられたら、もしかしたら、っていう可能性も残ってたのにそれすら消えちゃったから。友だちから聞かされるのと、親から宣告されるのでは全然違う。

え~、って顔で受け取ったママ友でしたが、その場でパラパラとめくって読み、しばし無言。
そして・・・

「旦那にも読ませたいから、借りていっていい?」

って。ぜひぜひ!!!

以下本より引用↓
サンタクロースがいなければ、人生のくるしみをやわらげてくれる、子どもらしい信頼も、詩も、ロマンスも、なくなってしまうでしょうし、わたしたち人間のあじわうよろこびは、ただ目にみえるもの、手でさわるもの、かんじるものだけになってしまうでしょう。
・・・
この世界でいちばんたしかなこと、それは、子どもの目にも、おとなの目にも、みえないものなのですから。



まだ間に合う!現実派の家庭の親御さんにこそ、送りたい一冊です。




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子どもじゃなく、大人に必要な絵本

2017-12-09 07:04:44 | 絵本



『白い池 黒い池』リタ・ジャハーン・フォルーズ作 ヴァン・ミンツィ絵 もたいなつう訳 光村教育図書


今日の一冊はコチラ。というのも、昨晩久々に、ゲームめぐって長男とやりあってしまったので。あ~、やっちゃった

ああ、長男の心の声聞くことできなかったなあ、って。こちらは大人に読んでもらいたい絵本です!ちょっと教訓めいているのでね、個人的には逆に子どもにはどうかな?っていう思いも

イランの昔話なのかな?よくある心優しい妹と意地悪な腹違いの姉のパターンです。

ある日心優しいシラーズは、毛糸玉が風に飛ばされ、不気味な家の中へと落ちてしまいます。その家を訪ねると、ボサボサ頭の老婆が色んなこと言いつけて、それやってくれたら毛糸玉を返すと。例えば、ごちゃごちゃの台所の食器を全部割ってくれとか、庭の草木を根こそぎ取ってくれとか、老婆のボサボサ髪を切れとか。

ところが、シラーズは言われたことと反対のことするんです。台所ではお皿を洗って、元の位置に戻してきれいにし、庭は手入れをして美しくし、老婆の髪は洗って美しく結い上げる。そして、老婆の言いつけ通りに池に入ると、シラーズは別人のように美しくなって帰っていくんですね。

それを聞いた姉も継母から、わざと毛糸玉を飛ばして老婆のもとへと派遣されます。もう、想像つきますよね?
姉は、老婆の言う通りに全部してから池に入ります。強欲なので、池に入る回数だけは言いつけを上回る回数入る・・・そしたら、やはり別人に。ええ、別人のようにみすぼらしくなるのです。

そして、最後にこう締めくくるのです。

みんなはシラーズのことを、いつまでも忘れなかった。
人は、思ったことを素直にいうとは限らない。人の心に寄り添って、心の声に耳をすまし、その人がほんとうに望んでいることができた、やさしい少女がいたことを。


ハッとさせられます!と同時に、子どもに対しては、この最後の文はなく、昔話と同様の形式で、ただ姉はみすぼらしくなって帰って来たところで終わってもいいのかな、と思いました。
というのはね、子どものほうがそれ分かるから。心の声に耳すませるのは、子どものほうが得意だから。特に、言葉をまだ自由に操れないくらいの。

以前、当時3年生だった長男が荒れていたとき、道路で突然キレ始めて、悪態をつき始めたんです。

‟こっち来んなーーーーーー!ク○ババ○!!!!”

って、暴れて、そりゃまあすごくて。途方にくれる私に対して、当時年長さんだった次男が、こう通訳してくれたんです。

‟お母さん、行ってあげて。あれは、お母さんこっち来て、さみしいって言ってるんだよ”

って。年長さん、すごい!次男には長男の心の声聞くことができたんですね
だから、この絵本の最後の教訓は、大人に対してのものだなー、って思うんです。
必要なのは、大人!

人は思ってることを口に出すとは限らない。

表面の言動にとらわれず、心の声に耳をすませなくては、と昨晩も反省しました。



秋冬に出会いたい名作絵本

2017-11-22 18:23:05 | 絵本


秋・冬にかけて読みたい絵本2冊。こちらはぜひ大人に読んでもらいたいな~。

まずは、コチラ↓



『カラス笛を吹いた日』ロイス・ローリー著 バグラム・イバトゥーリン絵 島式子・島玲子訳 BL出版

まず、丁寧に描かれた絵に心奪われます。作者の自伝だそうです。地味な絵本かもしれません、でも、じわじわきます。
主人公の女の子のお父さんは戦争帰り。娘と一緒にカラス狩りにでかけます。長く家を留守にしていたので、親子なのに二人の間にはある種の壁というか、微妙な距離があるのです。どこかよそよそしい。

私の好きな食べ物(チェリー・パイ)も覚えてないなんて、長く家を留守にしてたせいよ、女の子は心の中で小さく不満をつぶやきます。寂しかった、そんな言葉じゃ説明のつかない、複雑な思い。お父さんも寡黙なところがいいです。

戦争のことは、直接的には描かれてはいないけれど、女の子が質問し、それに対するお父さんの回答が心にしみる。ああ、戦争なんて嫌だって思わされます。全く押しつけがましくなく。寒空と空をカアカア飛び交うカラス・・・凛と張りつめた空気を感じる、大切にしたくなる絵本。


そして、カラスといえばコチラ↓



『からすたろう』八島太郎作・絵 偕成社

これはね、もう名作中の名作!
実は、ちょっと表紙が不気味?で、知ってはいたけれど、なんとなく手にとっていなかった時期がありました。でも、子どもが「借りて」と選んできたので、読んでみたら・・・読めない。涙で読めない。嗚咽しちゃって読めない。ブログ書いている今も、思い出して涙ぐんじゃう。だから、学校の読み聞かせでは、読みたくても読めないんです。

きっと日本人の原風景を描いているのだろうな。こういう田舎に暮らしたことはないのに、郷愁にかられる。
見守るってどういうことなのか、受け入れるってどういうことなのか、大人は考えさせられる。

この絵本をじいじに紹介したところ、じいじの俳句仲間の間でものすごく評判になったそうです。昭和のこの時期を生きてた人たちには、余計にグッとくるんだろうなあ。そして、ある方は「これは、文学です!」と言い切ったそう。

『からすたろう』に出会ってから、からすの鳴き声に耳をすませるようになりました。

ぜひ、一度出会ってもらいたい物語です。