『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

Zoomで絵本朝活に参加してみました♪

2017-09-20 12:39:02 | スペイン文学


絵本読み聞かせ講師のとんちゃんプレゼンツ、Zoom出絵本朝活にやっとやっと初参加!

はじめまして~、のみなさまも絵本という共通の趣味があると、お話しする前から親近感
40分という短い時間で、「あ~、もっと聞きたかったな。もっとしゃべりたかったな」と思う、このくらいの感覚がいい。素敵な朝の時間を、とんちゃん、ありがとうございました!

さて、今日とんちゃんが読んでくれた絵本がコチラ↓



『くんちゃんのはじめてのがっこう』ドロシー・マリノ作 まさきるりこ訳 ペンギン社


新しい世界の入るとき、誰しもドキドキするもの。あんなにワクワクしたのに・・・逃げ出したくもなる
で、くんちゃん実際逃げ出しちゃうんですね。でも、追いかけるでもなく(←コレなかなかできない)、自然とくんちゃんも参加したくなるように、さりげなく仕向ける先生。
ああ、いいなあ。

‟待つ”

これ今の私たちに欠けている姿勢だと思いました。
そして、自分が知ってる単語が黒板に書かれるたび嬉しくなり、自分の名前が書かれると思わず教室に飛び込んでいくくんちゃん。

この物語を思い出しました↓



『おじいちゃんは荷車にのって』(1994年)グードルン・パウゼパンク作 インゲ・シュタイネケ絵 遠山明子訳 徳間書店

大きめの文字でたったの78ページの本。ドイツの作家さんですが、挿絵を見るとアンデスが舞台なのかな。
95年の小学校高学年の部の課題図書にもなったようですが・・・例のごとく、絶版です。ぜひ図書館で。

「もうたくさんじゃよ」

こんな言葉から始まるこの物語。人生やりつくして、身体は動かないし、もう楽しみなど何もないという、気難しいおじいちゃんが出てきます。まあ、言ってみれば、かまってちゃんなやさぐれ老人(笑)。でも、誰しも、そういう投げやりな気持ちになるときってありますよね~。
で、孫に自分が乗っかった荷車を押させるんですね。頂上についたらもう戻らないつもりで・・・。

そんな死にたい病にかかっていたおじいちゃんですが、道中で出会う村人たちのあたたかい声かけで、少しずつ心をほぐしていきます。
その村人たちが、またさりげなくて(←ここポイント!)いいんです。「おじいちゃん死なないで~!」と変に騒ぎ立てるでもなく、おじいちゃんがまだ必要とされてることを、ごく自然な形で思い出させてくれるんですね。人生まだ捨てたもんじゃないってことを。
さらに、おじいちゃんをムリにこちら側に引っ張るのではなく、おじいちゃんが自ら心を開くまで待つ姿勢。くんちゃんの先生と同じです

これね、相手を信頼してるから待てるんです。心配して騒ぎ立てるのって、実は相手の力を信じてないんですよね。
短いお話ですが、とても考えさせられます

そして、もう一つ、おじいちゃんの気を変えさせたのが、文字を知ること。おじいちゃんは文字が読めないのですが、誰かに出会うたびに、孫のペピートは、砂に文字を一つずつ書いておじいちゃんに教えていきます。そう、それはおじいちゃんの名前の綴り!くんちゃんを読んでもらったとき、このおじいちゃんを思い出したんです。最後に「ヤッホー!」と、いたずらっ子のように叫ぶおじいちゃんの表情といったら!もはや少年


以前『老人と子ども』テーマの児童文学ピクニック(そのときの様子はコチラ)もやりましたが、老人と子どもって不思議な絆があり、親近性があるんです。どちらもあの世に近いという点で。

くんちゃんと合わせて、ぜひ『おじいちゃんは荷車にのって』も手に取ってみてくださいね。
 

ほとんど足音たてずにやってくるもの

2017-08-02 12:24:06 | スペイン文学

『日ざかり村に戦争がくる』(2013年)ファン・ファリアス作 宇野和美訳 堀越千秋画 福音館書店

今日の一冊も戦争文学からコチラ↑

昨日ご紹介した『ヒットラーのむすめ』の舞台が現代から戦争時代を振り返ったものに対し、こちらは1930年代のスペイン内戦が舞台。子どもの目から見た戦争を描いています。そんなに残酷な場面は出てきません(最後のほうに少しだけ)。なぜなら、この日ざかり村は戦地にはならなかったから。それでも、戦争はやってきた。

≪『日ざかり村に戦争がくる』あらすじ≫
スペインの片田舎の小さな村に住む主人公の少年は、ある日戦争が始まったと聞かされる。だが村では銃声一つしない静かな日々が続く。やがて、パンやたばこが届かなくなり、男たちが村からいなくなっていく。戦争に行きたくない少年の父親は、山に隠れるが……。いつのまにか忍び寄り、人々の暮らしを侵していく戦争の恐ろしさを、静かな筆致で訴えかける。スペインを代表する児童文学者フアン・ファリアスによる名作。(福音館書店ホームページよりそのまま転載)

字も大きめ、たったの86頁という短い本。でも、心に残る。小学校高学年から。

子どもたちの知らない間に、戦争は日ざかり村に入りこんできていた。
ゆっくりと、なにくわぬ顔をして、ひたひたとしのび足で。(P.22)


急に世界が変わるわけじゃない。知らない間に、日常生活の色んなことが、少しずつ少しずーつ変わっていって、気づいたらすごいことになってる。気付かないうちに、っていうところがコワイ。

印象的だったのは初めて兵隊が村にやってきたときの、主人公の男の子の言葉

いいほうか、悪いほうか、思い出したくない(P.28)

そう、子どもには関係ない。味方か敵かなんて。どちらも同じ。最後の言葉も考えさせられます。悲惨な場面は苦手だけれど、戦争の実態を知りたいときにおすすめです。