『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

たまにはイマイチ本のご紹介・・・

2017-06-13 20:33:23 | オランダ文学

『七つのわかれ道の秘密』上・下(2012年) 
トンケ・ドラフト作・絵 西村由美訳 岩波少年文庫


秘密シリーズ続きます。

あまり本の批判はしたくないのだけれど(だって、好みは人それぞれだし)・・・でも、もしかして、このブログを読んでくれていて、私と好みがあう人がいたら、“この本はちょっと読まなくてもよかったかな~”なんて本も知りたいかと思いまして
素晴らしい児童文学がたっっくさんある中で、読める時間は限られてますからね

上記の『七つのわかれ道の秘密』は私的にはイマイチでした(あくまでも、私的には、です)。トンケ・ドラフトといえば、『踊る光』や『王への手紙』が素晴らしかったので、それで余計にガッカリしてしまったのかも!?この話読んで、楽しかった方は、ゴメンナサイ!以下は読まないでくださいね。



『王への手紙』や続編の『白い盾の少年騎士』が、丁寧に丁寧にじっくり進むのに対し、『七つのわかれ道の秘密』は、展開がめまぐるしく、わちゃわちゃしてて、わけワカラナイままふりまわされる感じ
内容は、学校の先生と生徒たちが、伯爵家の宝物をめぐり、奇妙な冒険に巻き込まれていく・・・といったものなのですが、ホント奇妙でついていけないんですよ。子どもの頃読んでたら、また違った感想だったかもしれないけれど。オランダに伝わる古いわらべ歌からヒントを得て、その歌の通りに展開していく感じです。

うーん、『王への手紙』は格調高いというか品の良さが感じられたのだけれど、こちらにはとにかく感情移入できなかったんだな。フランス先生は生真面目で、赤毛のフランスの物語を生徒たちに語るような空想家に、まず映らなかったし、ロベルトの二重人格もしっくりこない

伝説、予言に無理やり当てはめるために、設定にムリがあったり・・・強引というか、これでは何でもありの安っぽい魔法ファンタジーみたいじゃないか~って。中には好きなキャラクターや設定もあっただけに、なんだか残念

でもね、信頼おける岩波少年文庫からの出版だし、レビュー読んでても評価高いし。私が読解力ないだけかもしれません

今こそ読みたい 『あらしの前』 『あらしのあと』

2016-08-18 06:23:09 | オランダ文学
 

『あらしのまえ』『あらしのあと』 ドラ・ド・ヨング作 寺島竜一絵 吉野源三郎訳 岩波書店

ああ、ああ、どうしていままでこの本を読まなかったのだろう!!!、
読み終えた今も静かにじんわりきています。ぐわっと一気に盛り上がって感動するものより、こういうじんわり来る物語のほうが、後のちまで心に残るんですよね

こちらの二冊、両親の蔵書であったので、幼い頃から背表紙は眺めていたのですが、戦争文学ということで敬遠してたんですよね。重そうだな~、暗そうだな~、なんて思っていて。先日父と話していたときに、ふと母がこの本を気に入っていたという話を聞き、ちょっと意外で読んでみようという気になったのです

『あらしのまえ』は、オランダの静かな村で、楽しく平和に暮らしていたファン・オルト一家の物語。ところがある日、ドイツ軍がオランダに侵入し、戦争の影がしのびよります。「あらし」とは第二次世界大戦のこと。『あらしのあと』は、『あらしの前』から6年後、戦後一年経ち、戦争がどう人々を変えてしまったのかを描いています。

挿絵は『ホビットの冒険』などでお馴染みの寺島竜一さん。そしてね、そしてね、もし私の勘違いでなければ、この名作、USとUKでは絶版!?!?・・・っぽい。そんなあ・・・。一方の岩波えらい!!(←何様

終戦記念日の前後でこの本を読んだこともあってか、とても考えさせられましたし、心が動かされました。激動の時代を、あえて抑えた感じで描いているので、ストーリー展開の早さやドラマチックな描き方に慣れてしまった現代っこにもこの感動が伝わるかどうかは疑問。ですが、私は久々に心洗われる思いでした

まず、何がいいってこの時代は日本もそうですが、家族間でも言葉遣いが丁寧なのがいいんですよねえ。背筋がぴっと伸びて、ほっとする。古典児童文学の典型かもしれませんが、兄弟が多くて、両親が本当に立派で子どもたちから尊敬されている。現代では消えてしまった家族の形。
児童文学で出会えるとほっとするんです。そうそう、この安定感!って。そして、その言葉遣いにあらわれるような凛とした生き方。忘れたくないのです。

登場人物はそれぞれに魅力的です
尊敬できる医者の父、それを支える母、しっかりもので、普段はアムステルダムの学校に通っていて家から離れているものの、何かと駆けつけてくれる長女ミープ。ピアノに才能を見出し、人とはちょっと変わった自分をしっかり持っている長男のヤップ。勉強嫌いだったものの途中で改心して努力する、家族の中ではちょっとアウトサイダー的な次男ヤン。感じやすくはみかみやながら常に正しく美しい心を持つ次女のルト。いたずらものの三男ピーター・ピム。生まれたばかりの赤ちゃんアンネ。それに加えドイツから逃げてきて一家と一緒に暮らすことになるユダヤ人の少年ヴェルネル。
『あらしのまえ』では戦争の影は忍び寄るものの、まだ平和だったころの家族のあたたかなストーリで占められているので、とっても幸せな気持ちで、それぞれの登場人物が大好きになってしまいます

そんな彼らが戦後どう変わっていくのか。戦争は人を一体どう変えてしまうのか。感じ入るところがたくさんありました。

全然知らなかったのですが、当時のオランダの人たちは中立国であることを理由に、ずいぶんと戦争に対しては楽観的だったんですね。平和ボケしたオランダの人たちの姿は今の日本と重なり、ぞっとします。あっという間に忍び寄る戦争。心配しすぎと言っていたのに、楽観視していたことを悔やむことになる戦争。戦争は非情です。そんな非情なときにこそ、人間どうあるべきかが問われる。この物語のファン・オルト家のお母さんは言います。

「・・・あたしたちは、まだこれからも、じぶんを守っていきましょうね、武器を使ってではなく、正しいことを信じる、あたしたちの信念の力でー」

と。『あらしのあと』では家族の一人が欠けてしまっているところから始まっているのですが、これがもうショックで。えっ・・・ウソ・・・死んじゃったの!?!?・・・って、死ぬってあらすじ読んで知っていたんですけどね・・・にも関わらず、一瞬頭真っ白。この人物に関しては、思い入れが強かったので、あっさりといなくなり、ぽっかりと心に穴が空いてしまったかのような喪失感を覚えました。そのことについて詳細が書かれていないだけに。人間味あふれたこの人物が大好きだったんです

とある仏文の児童文学者の方は、この本についてなかなか厳しい評論をお書きで、「この家族の死について詳細を書かないことの意図が理解に苦しむ」と書かれていましたが、これだけさらりと書かれていてもこの喪失感なんです!詳細書かれたら、インパクトが強すぎて、全てはそこに持って行かれ、残された家族が賢明に“正しい心”を持って生きようとしていることなどがぼやけてしまう、と私は思いました。

さらにはこの方、

ドイツ人のクラウスを描く時も「ドイツ人がみなナチスではなかったことがこの人を見ればわかるでしょう」という姿勢で、ここには作者のナチスにたいする怒りを風化させようという意図があるのだろうかと思わせさえする。

と書かれているのですが、へっ!?ちょっ、ちょっ、待って、待って?ポカーン
あの・・・書いていいですか・・・この方バカ(失礼!)なんでしょうか?私もかなりひねくれて受け取るほうですが、これはいくらなんでもありえない

ナチスに抵抗して収容所に送られた勇気あるドイツ人たちがいたこと、私は知りませんでしたし、そういう人たちのこと忘れたくないと素直に思いましたけど・・・。国とそこに暮らす国民とは別物なのです。この方、名誉教授というお偉いさんなのですが、戦争経験者らしいので、物事を素直に見ることが出来なくなってしまった犠牲者のうちの一人なのかもしれません・・・。私は逆に、物の見方がとてもバランスが取れている物語だと感じました。そして、どんなにめちゃめちゃに壊され、どんなにガラクタだらけになっても、花壇を作ることを忘れないオランダという国が大好きになりました

長文なわりに、ちっとも良さが伝えきれないのが、ほんとーーーーにもどかしいのですが
戦争文学の中で、一番好きになったかもしれません。出会えてよかったと思える名作でした。ああ、よかった


『ぼくとテスの秘密の七日間』

2016-08-14 21:39:45 | オランダ文学


『ぼくとテスの秘密の七日間』 アンナ・ウォルツ作 野坂悦子・訳きたむらさとし・絵 フレーベル館

昨日ご紹介した『夏の朝』は、昨年2015年の中学生の部の課題図書でしたが、こちらの『ぼくとテスの秘密の七日間』は小学校高学年の部の課題図書(2015)。
毎年書店に並ぶ課題図書見ると、「なんだかな~」って気持ちになるんです。表紙絵だけで。ただ、単に私の好みじゃないっていうだけなのかもしれませんが、課題図書に推薦してもらうために出版社側が相当お金がかかるという構造にも問題がありそうな気が・・・。いままで、課題図書って純粋に内容で選んでると思ってたんですよね、ある出版社さんの「課題図書への推薦のお話もありましたが、財政的に苦しく、わが社では課題図書からは一切手を引くことにしました」という一文を見るまでは

とはいえ、各部で1~2冊は読んでもいいかなと思うものはあります(←上から目線)。昨年でいうとその中の一冊が上記の本でした。


≪『ぼくとテスの秘密の七日間』あらすじ≫
テッセル島で出会った女の子、テス。ぼくよりちょっと年上で頭ひとつ分、背が高い。それに、ヘンなことが好きなんだ。テスはパパを知らないんだって。そんなことって、あるわけ?初めて会ったヒューホを「パパ」と認めるかどうか、テスはじぶんで決めたいと願っていて、サミュエルはそんなテスの秘密の計画に手を貸します。家族ってなんだろう。少年サミュエルの心が旅する七日間の物語。2014年旗と吹流し賞受賞(CPNB/オランダ図書共同宣伝機構選定)。 (BOOKデータベースよりそのまま転載)


とても読みやすいです。“ぼく(サミュエル)”の一人称語りなので、読書が苦手な子でもすんなり感情移入できそう。まあ、この“ぼく”は死についてぐるぐる考えちゃうタイプなので、人によってはイライラするかもしれませんが

題名からなんとなくロードムービー的なのかなと勝手に想像していたら、全然違かった。テスはテッセル島在住の地元っ子で“ぼく”がバカンスで島を訪ねてる形。お兄ちゃんがケガをしてしまったので、家族で島をまわることができなくなって、テスにふりまわされつつ、テスが初めて会うパパへの秘密の計画を手伝うはめになるんです。このテスが奇想天外かつ強引で面白い(サミュエルが情けない)。パパに自分が娘ということを知らせずに接触して、自分でパパがいる人生を選ぶか、いない人生を選ぶかを決めたい、というところはいいなあ、って思います。ストーリー展開も面白いので、本が苦手な子でも読みやすいかも。ラストのサミュエルの決断、賭けには拍手です

さて、ここからは辛口感想。読んで感動した方は読まないでくださいね






「家族」や「死」を考えるがテーマのようですが、大人である私は素直に読めないので、作者or出版社がテーマを読者に考えさせたいという感じがありありと見えると、冷めちゃうんです。読者のことなんか意識せず、自分の内面と向き合いった結果(結果というところがポイント)、普遍性を持つような物語になった、というのが個人的には好きなんですね。なので、これ読んで「家族」や「死」について私は考えさせられませんでした。ま、色んな形があるよね、それもいいよね、くらいは思ったけれど、それを我が身に振り返って考えるところにまでは至らなかった。ちょっと『ワンダーWonder』(今年2016年の課題図書)を読んだときと同じような感覚に陥った

いや、いいお話だとは思います。決して、よくないとは思わないけれど、なーんかなあ。サミュエルは自分が死ぬときにはテスがお葬式に出てくれるという約束(つまり「ずっと友だちよ」的な)に救われるのですが、そういうの読むと「あー、ハイハイ」ってなっちゃう私は性格が歪んでるのかも。さらには、それ支えにしたら、逆に危ないのでは?なーんて思っちゃったり。実際、「葬儀に出てくれるって言ったじゃないか!」って相手を逆恨みもしてますしね。まあ、この時期はこんなもんなのかな・・・徐々に学んでいくのかなあ・・・。

永遠に友だち!ってことほど薄っぺらいものはないなあって感じちゃうんです。転勤族の家庭に育ったので、私小学校は4つ通ったんですね。いつもみんな言ってくれるんです。「ずっと友だち」「忘れない」「手紙書くよ」って。でも、続かないし、自分も今目の前の生活のほうが重要になっていく(当たり前だし、そうじゃなければ逆に困るけど)。

そんな経験をしているから、いつしか人間関係は冷めて見るようになりました。続くわけないのに「ずっと」とか言われると薄っぺらいなあ、って。誠実であれば、ずっと続くわけなんてないと分かってるからこそ「今」を大事にしようと思える。「ずっと」だと思わないからこそ、その関係性自体は続かなくとも、自分の中では「思い出」という形で、永遠にできるんだと思います。

少しズレるけど、「運命の出会い」とか「永遠の愛」とか言ってた人ほど周りでは離婚したな(笑)。

というわけで、個人的には冷めた目で読んでしまった物語、まだ素直だった小学生のころに読んだら、また違った感想を持ったのかもしれません




おとぎの世界へ 『踊る光』

2016-08-10 22:57:05 | オランダ文学


『踊る光』トンケ・ドラフト作 西村由美訳 宮越暁子絵  岩波書店

こちらも書店で見かけて以来ずっと気になっていて読みたいリストに入れていた本。先日お訪ねした鎌倉の隠れ家文庫にあったので、借りてきました

オランダの人気作家トンケ・ドラフトの短編・中編集で、日本版は2015年出版と最近なんですね
個人的にはトンケ・ドラフトは当たりはずれがある(『王への手紙』『白い盾の少年騎士』はヒット、『七つの別れ道の秘密』ははずれ)ので、どうかなー、と思ってたのですが、短編・中編集なのに、ぐいぐいと引き込まれました!

挿絵、表紙絵がいいです!そして、光は闇があってこそ存在できるということを改めて感じさせてくれる表紙。今回も原書と比べてみましたが、どーです!?日本版のほうが格調高い気がしません?ちなみに岩波書店では原題がHET DANSENDE LIGHTとなっていましたが、これ最後のLIGHTではなく、LICHTですよ~

物語はおとぎ話が中心で、特に季節は関係ないのですが、なんだか夏の涼しい夜に、虫の声を聞きながら月明かりの下読みたくなる、そんなお話たちでした


≪『踊る光』あらすじ≫

・幽霊ナイフ:愛するひとを忘れさせる力を持つ幽霊ナイフ。ある王女をめぐる魔法使いと王子の物語。

・二人の王:ふたごだが、一人は善良、一人は邪悪な二人の王。二つに分かれた王国を再び一つに平和的に戻すため、隠者にもらった魔法の水薬を飲んだ結果・・・。

・十三番目の妖精:グリム童話の『いばら姫』に登場する、姫に呪いをかける十三番目の妖精。その妖精側の心情を描いた世界

・夢にすぎない:偉大な魔法使いでもあった母の血を引き、夢に予言を見てしまう三番目の王子。国を追放され、自らの運命に逆らっても逆らっても運命の通りになる。

・ドラゴンと鍵:1965年にベアトリックス元女王の婚約のお祝いにイラストと音楽付きのおとぎ話としてテレビ放映されたもの。愛する王女と結婚するためにある吟遊詩人がドラゴン退治に向かう話

・踊る光:『王への手紙』に登場するウナーヴェン王国の西のはずれ、白い川の河口にある灯台守の夫婦をめぐる物語。



個人的には「幽霊ナイフ」と「夢にすぎない」がお気に入り

「幽霊ナイフ」は魔法使いの存在が切なくて切なくて。愛する人のために身を引く・・・大人が読んでぐっとくるものがあるのかもしれません。

「夢にすぎない」は、魔法を迷信として排除してしまう国と魔法を大事にしている国の違いに、考えさせられるものがあります。この物語では、それを特に問題提起しているわけではないのですが、勝手に『はてしない物語』のファンタジーエンをちょっと思い出しました。

「ドラゴンと鍵」はネタバレになってしまうのですが、探してもない鍵は作ればいい!という発想が好きです

そして、最後の「踊る光」。個人的には思っていたのと違う展開でした。奥さん文句言い過ぎ(笑)。最後の二行がねえ・・・心にふと寂しい風が通り抜けたかのようです。

教訓的なわけでもなく、するりと読めるおとぎ話。時々こういうのが読みたくなるんです
贈り物にもよさそう