『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

第15回児童文学ピクニック

2017-11-30 17:47:52 | 児童文学cafe&picnic
 

先日は、児童文学ピクニックでした。最初はポカポカでピクニック日和だったのですが、おひさまが雲に隠れてからは、寒っ。やっぱり冬のピクニックは寒い。だけれど、そんなピリッとした空気を感じるのも、またよしなのです~(来月は室内にしようと思ったけれど)。

さて、今回のテーマは、

『秋の夜長に読みたい名作 ~映像化された物語たち~』

でした。

有名すぎる物語で、しかも映像化されていたら、すっかり読んだ気になって原作には手を伸ばさない、なーんてことありません?ん、私だけ???

例えばムーミン。日本では、キャラクターとして大人気ですが、みな原作ファンなのかちょっと疑問。プーさんもディズニーのに親しみすぎて、もはや百町森ではなく、百エーカーの森に子どもたちは耳慣れちゃったよね、など。


(ムーミンパンケーキ焼いてきてくださった方がいました

でもでも、モッタイナ~イ!だって、たいていは原作のほうが素晴らしいことが多いんです。
たいていは、というのは、思春期向けの最近のヤングアダルト本などは、最初から映画化を念頭に置かれて書かれたのでは?と思えるような内容が多くて、原作もさほどということも多いから

先に映像を見てしまうと、そこから原作に入るのってなかなか難しい。
そんな中でも、わりと原作に忠実で、続きが知りたいから原作読んでみようかなと思えるのは、リンドグレーン作品かな。
『長くつしたのピッピ』や『やかまし村』シリーズなど。

さて、ここでクイズ!映像化されたもので、原作者を激怒させてしまった物語が二つ。なんでしょう?

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答え:ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』(ネバーエンディングストーリー)&ル・グウィンの『ゲド戦記』

なぜ、原作者をそこまで怒らせてしまったのか。そんな話をしたり。この手の話になると、ついつい熱がこもっちゃいました

そのほか、アニメの印象強すぎ!(読みづらい原作)、アニメ化されたものの原作読んで後悔させないシリーズ、え!映像化されてたんだ・知られざる名作シリーズ、などなど話は尽きません。映像化されたもの、多すぎて、あ~、書ききれない!

個人的に思うのは、やはり原作が名作であるものを映像化するのは、ガッカリしないことが難しいな、と。それは、前回書いたような‟間がない”問題だからなのかな。どうしても、ダイジェスト版になりがちで、必要以上に強調してしまう。それゆえ、せっかく押しつけがましくなかったところが、さあ、ここで感動せよ!になってしまうんだな。映像化するのなら、『メリー・ポピンズ』と『メアリー・ポピンズ』(ミュージカル仕立て)が別物で面白いように、あそこまで変えたり、オマージュ作品にすればよいのかも。

映像は映像で好きだからこそ、それぞれの良さが出ればよいのにな、と思う。

さ、個人的に敬遠していた『指輪物語』に着手しようかな。(←え、まだ読んでなかったの!?)

読み聞かせサポーター実践講座

2017-11-23 06:47:16 | 講演会・勉強


インプット続きの今日この頃。先日は、JPIC読み聞かせサポーター実践講座@桜木町に行ってきました~。

今回は、読み聞かせの世界では、とても有名な「おはなしおばさん」こと藤田浩子さん(80歳!)のお話があるということで、申し込み殺到!
増員して、240名が集ったそうです。年齢層としては、わずかに若い方(幼稚園・保育園の先生など)もいましたが、圧倒的に子育て終わったお姉さま方が多かったです。ボランティアで読み聞かせ活動まわってくださってるんだろうな。ホント、ありがたいことです。子育て世代って余裕ないこと多いですもんね。

しかし、驚いたのは、みなさまの熱意!9:30会場の10:00開演で、私は9:32に会場についたのですけれどね、なーんと長蛇の列!私の前に100名はいたんじゃないかな。その熱気にびっくりしました。熱い!読み聞かせ業界ってこんなに熱かったの~!?!?席は半分以上埋まっていたけれど、前から4列目の奥のほうは空いてるのを発見。そこに陣取りました。プログラムは、こんな感じ↓

① 特別講演会(藤田浩子さん)
② 絵本サロン&模擬おはなし会(読書アドバイザー)
③ 紙芝居講座(童心社副編集長)
④ グループワーク



藤田さんのお話で印象的だったのは、日本の子どもの文化を支えているには、中間層っていうお話。お金持ちの人は総じて読み聞かせや語りに興味がない、お金に余裕のない家庭もやっぱり余裕がないから興味ない。熱心なのは、そんなにお金持ちでもないけれど、余裕がないわけでもない中間層だ、って。確かに。で、日本はそういうボランティアの人たちの善意によりかかりすぎてる、って。

うんうん。藤田さんが現首相をう~んと思うのは、そういう活動をしている人たちを評価しないから。
一方、そういう方たちをすごく評価してくださっているのが、美智子さま!JPICのスタッフの方からのおすすめの4冊のうちの一冊が『橋をかける~子供時代の読書の思い出』(美智子著)でした。↓



この本ホントに素晴らしい言葉が散りばめられています。美智子さまは、ごくごく小さな絵本や児童文学のイベントにもお忍びで顔を出されるそうで、本当に大切なものが何か分かっていらっしゃる。誰かさんと、全然違う~!!!

藤田さんは、ハンカチ、あやとりなどを使ったとても簡単な手遊びも教えてくださって、とても実践的でした。簡単なのに、思わず‟わ~”って声が出ちゃう。こういうのを覚えておくと、電車の中で子どもが退屈することがない。すぐスマホを渡しちゃう親が多いそうなのだけれど、もうね、なんていうんでしょう。お声を聞いたいるだけで、ほっこりして、自然とみんな笑顔になっちゃうんです。手作りの小道具は、なんだろ昭和レトロ感が素敵(笑)。販売もされていたけれど、あれ藤田さんもしくは、あの年齢の方がやるからこそいいんじゃないか、って気もしました。小道具に関しては。

こういう文化、なくしたくないです。


秋冬に出会いたい名作絵本

2017-11-22 18:23:05 | 絵本


秋・冬にかけて読みたい絵本2冊。こちらはぜひ大人に読んでもらいたいな~。

まずは、コチラ↓



『カラス笛を吹いた日』ロイス・ローリー著 バグラム・イバトゥーリン絵 島式子・島玲子訳 BL出版

まず、丁寧に描かれた絵に心奪われます。作者の自伝だそうです。地味な絵本かもしれません、でも、じわじわきます。
主人公の女の子のお父さんは戦争帰り。娘と一緒にカラス狩りにでかけます。長く家を留守にしていたので、親子なのに二人の間にはある種の壁というか、微妙な距離があるのです。どこかよそよそしい。

私の好きな食べ物(チェリー・パイ)も覚えてないなんて、長く家を留守にしてたせいよ、女の子は心の中で小さく不満をつぶやきます。寂しかった、そんな言葉じゃ説明のつかない、複雑な思い。お父さんも寡黙なところがいいです。

戦争のことは、直接的には描かれてはいないけれど、女の子が質問し、それに対するお父さんの回答が心にしみる。ああ、戦争なんて嫌だって思わされます。全く押しつけがましくなく。寒空と空をカアカア飛び交うカラス・・・凛と張りつめた空気を感じる、大切にしたくなる絵本。


そして、カラスといえばコチラ↓



『からすたろう』八島太郎作・絵 偕成社

これはね、もう名作中の名作!
実は、ちょっと表紙が不気味?で、知ってはいたけれど、なんとなく手にとっていなかった時期がありました。でも、子どもが「借りて」と選んできたので、読んでみたら・・・読めない。涙で読めない。嗚咽しちゃって読めない。ブログ書いている今も、思い出して涙ぐんじゃう。だから、学校の読み聞かせでは、読みたくても読めないんです。

きっと日本人の原風景を描いているのだろうな。こういう田舎に暮らしたことはないのに、郷愁にかられる。
見守るってどういうことなのか、受け入れるってどういうことなのか、大人は考えさせられる。

この絵本をじいじに紹介したところ、じいじの俳句仲間の間でものすごく評判になったそうです。昭和のこの時期を生きてた人たちには、余計にグッとくるんだろうなあ。そして、ある方は「これは、文学です!」と言い切ったそう。

『からすたろう』に出会ってから、からすの鳴き声に耳をすませるようになりました。

ぜひ、一度出会ってもらいたい物語です。

反戦文学としての『星の王子さま』

2017-11-20 14:00:43 | 講演会・勉強


先日(ってこれまた既に1週間以上たってますが)、子どもの本専門店・BOOK HOUSE CAFEでの文学うさぎの研究所に参加してみました~。

第一回目の登壇者は、千葉大学大学院人文科学研究院教授の土田知則氏『現代思想のなかのプルースト』(法政大学出版局)刊行記念講演会として、~児童文学は可能か~というテーマでした。プルーストとかちんぷんかんぷんだけれど、児童文学とどうかかわってくるのか、興味津々だったのです。

何に驚いたって、私以外は、みなさん教授仲間か生徒さんだったってこと。超絶アウェイ感・・・チーン。文学系のイベントって、大体いつも内輪なんだな~。だから、敷居が高くなっちゃうんじゃないかな、広まらないんじゃないかな、と感じます。

さて、土田先生ご自身は、お話も面白く、気さくでとっても魅力的な方でした!
児童文学とはなんぞや、ということを『ピーターパン』『ピノキオ』『星の王子さま』などを取り上げながら、また、プルーストの話も入れながらお話しされました。

中でも興味深かったのは、『星の王子さま』



‟これ、子どもの頃読んで面白かったという人いる?(いないよねえ)”


お一人いらっしゃいましたが、実は、私もそれほどは・・・と思ってた一人。読んだのは小3だったかな。岩波書店の内藤濯訳のもの。カラーの挿絵が嬉しくて、面白くないわけじゃないけれど・・・、周りが騒ぐほど自分には刺さらなかった、という感じだったかな。で、土田先生はいうわけです。

‟これ、大人が読んでも非常に難しい。これは児童文学なのだろうか”

って。そもそも、フランスには児童文学という表現はないそうです。確かに、フランスの児童文学って『みどりのゆび』『家なき子』『タラ・ダンカン』くらいしか思いつかない。↓



でね、『星の王子さま』に関しては、プルーストより難しいって土田先生はおっしゃいます。児童文学という概念はいまだに先生自身ワカラナイそうですが、子ども向けのものには必ず家族が出てくるということが切り離せないと。しかし、『星の王子さま』には家族が出てこない。これは、子ども向けなのか?さらに、なぜフランスではなく、アメリカで出版されたのか?

それは、ナチス批判を書いたものだということが、分かってしまうから。
戦争の話が色濃くまとわりついている寓話と明らかだから。


頼れるWikipedia(笑)によると、通説と異説が書かれていて(リンクはコチラ)、私は異説派かな。献辞にあるサン・テグジュペリの親友レオン・ヴェルトはユダヤ人で、彼に捧げられた物語。バオバブのような大きいものが小さいモノを飲み込むのは、非常に暴力的で、ナチュズムを象徴している、と。

そして、サン・テグジュペリはパイロットだったけれど、本当は飛行機なんて壊れてしまえばいいと思っていたのでは?とも。なぜなら、戦争に使われてしまうから。だから、物語の舞台に砂漠を選んだ。砂漠は、戦争が起こらない場の象徴。飛行機が飛べないときに、平和が訪れる。ならば、飛行機は壊れたほうがいいとしたのでは?と。

そんな風に、これが反戦文学という前提のうえで読むと、それぞれが何を象徴しているのかが見えてくる。しかし、一つワカラナイところがあるそうです。それは、キツネの言葉。王子さまとキツネが出会う場面でキツネはこう言います。

・「なんなら……おれと仲よくしておくれよ」(岩波少年文庫 内藤濯訳)

・「お願いだ……おれを飼い慣らしてくれ!」(集英社文庫 池澤夏樹訳)

・「おねがい……なつかせて!」(新潮文庫 河野万里子訳)


原文に一番忠実なのはどれでしょう?


私はフランス語は全然ワカラナイのですが、仲良くの部分、原文ではアプリボワゼ(apprivoiser)というそうです。一番忠実なのは池澤夏樹訳で‟飼いならしてよ”という意味。ほとんどが‟友だちになってよ”に意訳されているけれど、なぜわざわざこんな表現を使ったのか。そこが、土田先生はひっかかるそうです。
また、フランスではキツネのイメージは悪で、りんごの木の下にいたってことは、聖書的にはヘビの役割を半分以上キツネが担っているということ。
なぜ、アプリボワゼという言葉を使ったのか、そこをついている論文はフランスのものでもまだ見かけてないそう。フランス文学関連で卒論書こうとしてる方、これいかがでしょう(笑)?

そのほか、児童文学というジャンルを作ることで、現状の研究の形が狭い範囲に閉じ込められている、などジャンル論について述べられていました。
これには、賛成!児童文学って読めば読むほど、カテゴリーが分からないなあと日々実感しているし、このジャンルさえなければもっと大人にも読んでもらえるのでは?と思うのです。
これからは、横断的な、壁を作らないで分析することが面白い。例えば、ミッシェル・フーコーの中に、思春期(児童文学)を読み解く、こういう人が出てくると面白い、そんな話で幕を閉じました。




売れる本=いい翻訳!に物申す~

2017-11-17 21:24:47 | 講演会・勉強


金曜日の夜はちょっとデトックス(毒吐き)ブログ

先日の、金原瑞人氏講演会@教文館ナルニア国で、ちょっとそれは違うのでは?と思ったことについて。

普段はレジュメを用意しないという金原氏、この日は珍しく用意してくださったそう。さまざまな翻訳比較の抜粋は、本当に貴重で面白い資料でした。名訳といわれている石井桃子さんの訳と金原氏ご自身の訳を比較したり。すごいな~、よっぽど自信があるんだな
で、その読み比べの中に『星の王子さま』があったわけです。

あ、まとめサイトでも抜粋が見れます。コチラをクリック。
読み比べてるうちにクラクラしてきます(笑)。出版社だけでも、岩波少年文庫、集英社文庫、宝島社文庫、みすず書房、中公文庫、新潮文庫、平凡社ライブラリー、光文社古典新訳文庫、ちくま文庫、角川文庫。ふう~

金原氏のレジュメで比較されていたのは

・岩波少年文庫 内藤濯訳
・集英社文庫 池澤夏樹訳
・新潮文庫 河野万里子訳

 



で、金原氏のイチオシの新訳は河野万里子さん訳で、「これが一番売れてるんですよ!」って、まるでいい訳だから売れてるかのように力説。

ちょっと待って待って
私含めた一般ピーポー、そんなに翻訳おたくじゃない。読み比べた上で買ってるわけじゃないから~。

冷静に考えて、大人が買うとして、児童書コーナーに行くでしょうか?岩波少年文庫はごく限られた人の手にしか渡らないよなあ。

集英社は?・・・う~ん、なんだか漫画が強いイメージ?池澤夏樹訳には惹かれるけど。

で、新潮文庫だったら、なんだか大人が手に取っても恥ずかしくないって感じがしませんか?そんな感じで手に取る人も多いんじゃないかなあ?

売れる=いい翻訳

ってなんか違う。アニメ画表紙の新訳も売れ行きがいいから、やっぱり訳が分かりやすいみたいなこともおっしゃっていたけれど・・・訳うんぬんで選ぶ人ってそんなにいない気が。表紙の手に取りやすさで買ってみたら、‟結果”読みやすかった、だけでイコールいい訳ではないよなあ。
売れるには、プロモーションが上手とか、ほかにも色んな要素があると思うのです。

売れる=いい訳=良書、だったら、児童文学は全滅しそう

『星の王子さま』については、先日ブックハウスカフェで面白いお話を聞けたので、別途書きまーす。