『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

この本は失敗・・・したかも(笑)

2017-10-16 19:30:55 | テーマ別


『THE PASTRY COLLECTION 日本人が知らない世界の郷土菓子をめぐる旅』 林周作著 (株)KADOKAWA


今日の一冊はコチラ。結論からいうと、ちょっと買って失敗しちゃったかな?とも思うけれど、まあ、いいんですいいんです、眺める分には楽しいから

物語を読んでいると、たくさんの知らないお菓子や料理の名前が出ていて、幼い頃からワクワクしたものでした。特に郷土ものには惹かれて、どんなのだろうって思ってたので、この本にも惹かれたってわけです。

こちらは、極楽寺・稲村ケ崎アートフェスティバルで出会ったもの。青山から移転してきたDOPE&DRAKKERさんというお店で出会ったもの。DOPE&DRAKKERさんはデニムをはじめとしたオリジナルのアパレルなのですが、郷土菓子研究所というところのお菓子を、アートフェス期間中だけ売っていたんです(それが、先日のリラカフェさんで知らない方からおすそ分けいただいたもの)。

著者の林周作さんは、パティシエで、自転車で世界の郷土菓子を発掘するべく旅に出た方。世界16か国、67種類の厳選された郷土菓子が掲載されています。紙質は、わら半紙みたいで、それがとっても気に入ってしまったんですね。で、エッセイもついてるので楽しそう、あとでゆっくり読もう・・・と思ったのが、失敗だった(笑)。

エッセイは、旅先で暮らす人々を描いたもの、ではなく、著者の妄想話が大半。ちょっとうすら寒くなってくるるる~

でも!いいんです!写真もお菓子もとおっても素敵で、想像膨らむから。そうだ、文を読まなければいいんだ(←そこまで~!?)。いや、私の感性に合わないだけで、面白い人にとってはツボるのかもしれません。

こちらは、物語とは関係ありませんが、さも物語に出てきそうな郷土菓子がいっぱいだったので買ってしまいました。
そういえば、物語レシピはいままで、あまりコレ!っていうのにに当たったことがないかも・・・。小学生のころから繰り返し繰り返し眺めていたのはこちら↓


こちらは眺めているだけで、幸せな気持ちが満ちてきますが、レシピは、アメリカ~ンじゃなかった、カナディア~ンなものが多く、日本人には甘すぎたり。作る工程が複雑すぎたり。でも、このアンの手作りシリーズは、文章も素敵なので、手元にぜひぜひ置きたくなる三部作。

そして、こちらは、来月教文館ナルニア国に著者の方のお話を聞きに行くので、そのとき買おうと思ってます↓



おすすめの、物語レシピ本あったら教えてください♪


知らない=コワイから、ワクワクへ!

2017-10-03 13:28:05 | テーマ別


『多文化に出会うブックガイド』(2011年)
世界とつながる子どもの本だなプロジェクト編集 読書工房



今日の一冊はコチラのブックガイド。ブックガイドなので、色んな本の紹介が載っていて、見ているだけで楽しい

今月の児童文学ピクニックのテーマは『異文化理解 -隣のあの子ー』にするのですが、もうこのブックガイド持って行けばそれで終了でいいんじゃないかな、なんて(笑)。

ただね、こちらのブックガイド、中身は絵本と児童書なのに図書館で置いてあった場所は、児童書のブックガイドのコーナーではなく、一般書のコーナーにあったんです。モッタイナイなあ。児童書のほうと両方に置けばよいのになあ。

多分ね、異質なものに出会ったとき‟コワイ”とか‟排除したい”と思うのは、ごくごく自然な感情なのではないかな。それが、良い悪いは別として。外国人に対して差別をするのは、大体その地域から出たことない人のほうが多い。知らないものだから、コワイ。ほら、子どもたちが好きなセカオワも歌ってました↓

「知らない」という言葉の意味
間違えていたんだ
知らない人のこと
いつの間にか『嫌い』と言っていたよ

何も知らずに
知ろうともしなかった人のこと
どうして「嫌い」なんて言ったのだろう
流されていたんだ

「知らない」ことは怖いから
醜い言葉ばかり吐き出して誤魔化して
自分のことまで嫌わないで

(『プレゼント』より抜粋)


って。異質なものは知らないものであることが多い。知らないものはコワイ。
だから、小さい頃から絵本や児童文学通じて、異質なものに触れ合うっていうのには大きな意味がある気がするんです。異質なものって、知ってみれば‟憧れ”に変わったりするから。

そんな異質から生じた壮絶なイジメを、‟憧れ”に見事に転換させた児童文学がコチラ↓



『ディダコイ』ルーマー・ゴッテン著 猪熊葉子訳 評論社

読み応えのある名作!
私自身は小学校3年生のときに読んだのですが、あのときホントに理解してたんかいな?ジプシーと白人の混血児のキジィは壮絶なイジメにあい心を閉ざしているのですが、見守る周りの大人の姿勢がもうね・・・!これは、大人が読んだほうがいい物語。見守るって、支えるってどういうことなのか。ああ、こんな大人になりたい、としみじみ思う。

異文化への偏見さえ取れれば、知らないということはコワイことではなく、ワクワクすることに転換するハズ!
まだまだ知らない味(←え、そこ!?)があると思うと、もうね。食欲の秋、私は常に異文化の食にワクワクしてます(笑)。






読書で世界一周!

2017-04-01 22:35:24 | テーマ別


ミャンマーから帰国しました~
その話は追々。
あー、久々の海外はやっぱり楽しかったです
でも、次回行くときは、やっぱり一人がいいな、なんて密かに思ったり

帰国後も異文化熱冷めやらぬので、さっそく図書館に行き、鈴木出版の本を探します。

そう!鈴木出版さん、こーんな素敵なMAPを出しています。
≪児童文学シリーズで世界一周!≫



先日ご紹介した『モンスーンの贈りもの』も、鈴木出版のこのシリーズ。

ちなみに裏面はこんな感じで、各国の本の紹介がされています。↓



10代の君たちに手渡したい本当の物語がここにあります。

と書かれていて、10代向けなのでどれも平易な文章。
けれどね、この地球に色んな国があって、色んな人が生きてることを実感させてくれるので、ぜひ大人も読みたい。

子どもが読めば、まだ足を踏み入れたことのない異国に思いを馳せることができるし、大人でそういう国々をめぐったことがある人ならば懐かしく読める。
さらに、大人は政治や歴史的背景の知識もあるので、より深く読めちゃうんです

ニュースからでは伝わってこない、そこに生きている人々の息づかい、思い、それを物語は伝えてくれます
日々疲れていて、なかなか難しくて固い文章は頭に入ってこない大人でも、児童文学ならすーっと物語の世界観へ旅できます

鈴木出版の≪児童文学シリーズで世界一周≫(ホームページ上での紹介はコチラ)、子どもにも大人にもおすすめです


翻訳者で選ぶ海外児童文学

2017-03-19 17:24:38 | テーマ別


誰も見ていないであろう(笑)連休中には、ひたすら私の好きな翻訳者をアップしてみます
これ見るといかに私が正統派&王道好きかが分かる。ま、好みの問題なのでしょうけれど

この翻訳者さんが訳したものだったら、私的にハズレはないだろうな~、って方たち(敬称略)。
じゃんっ↓

 ◆ 村岡花子

 ◆ 石井桃子

 ◆ 瀬田貞二

 ◆ 渡辺茂雄

 ◆ 神宮輝夫

 ◆ 猪熊葉子

 ◆ 松岡享子

 ◆ 大塚勇三

 ◆ 中村妙子

 ◆ 脇明子

 ◆ 清水真砂子

 ◆ こだまともこ

 ◆ さくまゆみこ

 ◆ 千葉茂樹

 ◆ 上田 真而子(ドイツ文学)

 ◆ 菱木晃子(北欧文学)


清水真砂子さんは、ご本人の著作を読むとなんだか気が強そうで、あまりお友だちにはなりたくないタイプですが(小声・・・)。
さらに小声でいうと、児童文学といえば、最近は金原瑞人さんですが、『のっぽのサラ』以外はどうも合わない・・・

だから、なんだって話ですが。たまに聞かれるんです、おすすめの翻訳者さん。

私が翻訳者を意識しはじめたのは、子どもの頃、村岡花子さんの大大大ファンだった母が、

「やっぱりアンシリーズは村岡花子訳でないと!」

と言ってたのを聞いて、訳者によって違うんだあ、とおぼろげながら思ったのがきっかけ。
それから、あれ?いつも面白いと思う本は同じ人が訳してるなあ、って小学生ながらに気付いたんです。

本選びのご参考までに

母との確執、親じゃなく自分のために生きる

2017-03-09 20:57:43 | テーマ別


『マリオネット・デイズ』篠原まり著 ポプラ社 2006年 303頁

“今日の一冊”は、思春期真っ只中の子も、親もどちらも読みたい物語。

≪『マリオネット・デイズ』あらすじ≫
主人公の秋音には6歳以前の記憶がなく、6歳以前の写真もない。ところが、ある日偶然あるはずのない写真を見つけてしまう。そこには見知らぬ男の子が一緒に写っていて・・・。崩れていく母への信頼。良き友情を得て、母から自立しようとする少女の物語。



一歩間違えれば安っぽい少女漫画的になりがちだけれども、なかなか考えさせられる内容です。

【ここがポイント】
・親じゃなく、自分のために生きる(自己肯定感を取り戻す物語)
・会話文も多くて読みやすく、本が苦手な中高生でもいけそう
・恋愛要素満載&謎解き的な面白さもアリ
(誰がタイプ?なんてキュンキュンできるかも
・親に対してモヤモヤしている子、アダルトチルドレンの大人にもおすすめ
・不登校の子の気持ちがよく描かれている

秋音のお母さんってね、いわゆる毒親って感じじゃないんです。上品で、永遠の少女って感じで、一見娘に理解がある母親なの。
でもね、うま~く論理をすり替えて、自分の思う方向に持って行くのが得意。自分の都合のいいように事実をねじ曲げておいて、自分でもそれを信じこんじゃってるタイプ。だから、やっかい。

「最近気づいたんだけど、あの人はたいがいのことを思い通りにしてきたのよ。大声で叱ったりしないけど、やんわり釘さしたり、とがめるような目つきで見たり、さも傷ついたようにため息ついたり、そういうやり方で。だからわたしは、あの人がやらせたがっていることを言われる前に進んでやってしまうの。操り人形みたいで気持ち悪いよね」

ここーっ!読んだときドキッ!!!
あー、私やっちゃってる。大声で叱らないけどお母さん悲しいって伝えて、思い通りに子どもが動いてくれたら“いい子だな”なんて思っちゃってる!!!

不登校のところも、とてもリアルだなあ、と思ったら、作者の娘さんが不登校になったそうです。秋音の友だちでなかなか鋭い洞察力を持った美由紀の言葉、不登校の子を持った親ならドキッとするんじゃないかな。
はじめはおだてたり脅したりなだめたりして、学校へ行かせようとする。そのうち本買って勉強会に行って、子どもの気持ちを受け止めることが大事だと学び、登校拒否を受け入れてあげたら自然に学校に行けるようになると聞く(うんうん、うちも経験アリ!)。

「ところがさ、三学期になっても登校しないあたしに、親はだんだんイライラしはじめた。口では『行かなくてもいいよ』と言うんだよ。でも母親の背中には『なんで行かないのよ。ちゃんと行かなくてもいいやと言ってやったんだから、そろそろ学校に行きなさい』と書いてあるわけ。『学校に行かなくていいよ』って、本心じゃなかったんだよ。学校に行かせるための方便だったの。味方のふりをして裏切ったの。本音では『学校へ行けないような情けない子どもはいらない』って思っているのに、口では恩着せがましく『あんたのためだ』と言うんだ。最低だよ」

・・・。
はーい、これ、まんま過去の私です

子どもってね、大人が嘘くさくて許せないのは、大人が本音で生きてないとき

その辺すごーくよく観察して分かってる。秋音の幼なじみで元不良の広介という子が出てくるのですが、その子が荒れていた理由も、父親が浮気してるのを知っていながら、平和な家族のフリしてた母親が許せなかったから。父親じゃなく、ね。このコウちゃんもかっこいいんだなあ

そんなこんなで、周りに恵まれて、秋音は母親の偽りに気付き、自分の気持ちに気付き、ぶつかっていきます。そのまま秋音が母親を憎むようになったら悲しい。そう、鏡子おばさんは心配して、お母さんのことも少しかばったりするのですが・・・それに対して、その娘の美里の言う言葉にまたまたドキッ。

「そうやって先まわりして、あの子の力を奪っちゃダメよ。体当たりで確かめて初めて、先に進めることもあるわ。わたしたちは信じてあげなくちゃ。あの子が自分の力で乗り越えられると、信じて祈ろうよ」

先まわり育児をしない、私はそうしてるつもりでした。でも、気づいたら、自分は鏡子おばさんの心情のほうに乗っかってたことに気付いてビックリ。

こうやって、物語で読むことで、自分はできていると思ってることが、実はできてないことに気付く
ああ、いつだって、子どものほうが確かな目を持ってるなあ。