『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

価値観変わるかも?日本でイスラム体験!

2017-09-05 19:14:03 | フランス文学


『パリのモスク -ユダヤ人を助けたイスラム教徒』(2010年)
カレン・グレイ・ルエル著 デボラ・ダーランド・デセイ著 池田真理訳 彩流社


今日の一冊はコチラ。

週末は、旅の思い出アクセサリーの真田亜希子さんに案内してもらって(ありがとう!)、代々木上原にあるモスク、東京ジャーミイを初訪問してきたのですが・・・。
なーんとその前日、偶然見つけた本。偶然というか必然!?
いつも三男の送迎で通る道に、青空無人文庫が出ていて、一番目立つようにドーンって置いてあったんです。すごい、シンクロ

ナチスが執拗にユダヤ人排斥を行っていた第二次世界大戦中、パリのモスクが極秘でたくさんのユダヤ人をかくまい、助けていたことは、ほとんど知られていません。実は、北アフリカのユダヤ人とムスリムは、元々お互い兄弟姉妹として平和に共存していたそうなのです。

「一人のいのちを救うならば、それは全人類を救ったのと同じ」

イスラム教、ユダヤ教に共通する教えだそうです。人間って恐ろしいほとまでに残酷にもなれるけれど、そんな非人道的な極限の状況の中でも、危険を冒してでも人間の尊厳を守ろうと思っていた人たちもいた。
それは、未来への希望です。たった、56頁の短い長文絵本ですが、ここには私たちにあまり知られていない事実が書かれていました。



価値観がひっくり返るときって、衝撃ですよね?
しかも、それが自分の持ってる価値観とすら認識していなくて、無意識のものだったらなおさら

私にとっての、イスラム教はそんな体験の一つでした。
キリスト教の家庭に育ち、中学・高校・大学とミッションスクールだった私にとって、イスラム教ってなんとなく怖い存在。女性蔑視の排他的なイメージ。思えば、誰にそう言われたわけでもないのにね。なんとなく怖いって、知らないからなんですよね

はじめて、ムスリム(イスラム教徒)の友だちができたのは、大学時代に一年間留学してたとき。

あれ????なんか、違う!イメージしてたのと違う!
どんだけ私、偏見メガネかけて世界を見ていたんだろう!そんな自分に大ショック

びっくりするほど、フレンドリー。排他的ってどこが!?!?

ほぼ無宗教といってもいい日本人と違って、各々の宗教を大事にしている留学生たち。キリスト教も、仏教徒もムスリムも一緒に仲良くBBQしてる光景も最初は不思議でした。
なんだ、共存できるんじゃない!
まず、ハラールフード(ムスリム用の食材)を焼いて、それから、他の人たちのを焼く。
めちゃめちゃ楽しかった



それから、イスラムに関する色んな本読みました。といっても驚くほど、ムスリム側の観点から書いた本ってなかったんです。でも、立場違えば、こんなにも違う印象というのは衝撃でしたねえ。イスラム教って平和で美しい信仰なんだ。全然イメージと違った。

日本のイスラム教のイメージって、ニュースで流れてくるISのような過激派のイメージが多い気がします。
でも、大多数は違うんですよー。いまだからこそ知りたい、自分が偏見メガネかけてることを。

東京ジャーミイで、ちょうど礼拝時間に重なり、コーランを読むお経のような声が流れてきました。礼拝強要の時間じゃないんです。静謐な平和な時間。祈りの場。心に染み入りました
が、礼拝堂内撮影禁止なのに、パシャパシャ撮るシャッター音が、気になりました。いや、私だって、美しい内装、写真撮りたくなったけど、けどけど我慢よ!相手へのリスペクトです。

私はまだ読んでいませんが、こちらは真田亜希子さんおすすめの本↓



『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』(2016年)
内藤正典著 ミシマ社


子ども向けの本って、分かりやすい言葉で、でも的確に大事なことを伝えてくれます。
大人も読みたい

東京ジャーミイ、週末は14時半から日本語ガイドによる案内もあり、ちょっとしたお土産も買えます↓





天然歯ブラシってなんだ?柔らかい木の枝が入っていて、自分で割いて、毛先つくって磨くんですって~
モチロン、買いました♪東京ジャーミイ、素敵なところでした

人生の終焉に求めるもの 『おじいちゃんの休暇』

2017-01-12 06:36:52 | フランス文学


『おじいちゃんの休暇』イヴォン・モーフレ作 末松氷海子訳 偕成社 204頁


字大きめで、大人なら1時間ちょいくらいで読めてしまう物語。小学校中級からいけそうだけれど、でも、内容を考えると、小学校高学年からかな。
児童文学ピクニック仲間のMMちゃんが、『老人と子ども』テーマのピクニックのときにおすすめしていた本。ぜひ、映画化してほしい、と

フランスの児童文学って意外と思いつかなくて、すぐに思い浮かぶのは『星の王子さま』や『緑のゆび』くらい。なので、珍しいなと思って読んでみました。

≪『おじいちゃんの休暇』あらすじ≫

おじいちゃんの生まれた美しい島ブルターニュにあるベル・イール。おばあちゃんも亡くなり、あるおじいちゃんの誕生日、おじいちゃんは突然生まれ故郷へ旅する宣言をします。さあ、そこで大騒ぎしだしたのが親族。72歳のおじいちゃんを、まるで幼児扱いなんですね。おじいちゃんは家族から大事にされている、でも一個人としての生き方を尊重されているかといえば・・・そこは疑問。おじいちゃんの固い決心を聞き、孫の12歳トマが同伴者として選ばれます。最初は迷惑がってたトマですが、次第に旅はワクワクするものに!


都会だと、例え親族でも人間関係が希薄になりがちだなあ、って改めて思わされました。関係悪くもないけれど、特に個性もないと思っていたおじいちゃん。日本人にもいっぱいいそうな、自分を前に押し出さない性格なんです。が、旅していく中で、どんどん魅力的な一個人となっていく。自分を取り戻していく。トマは目を見張ります。おじいちゃんってこんな人だったんだ・・・!!!語るに値しない人生なんてないんだな。そして、幼なじみと再会したおじいちゃんは、ナント恋に落ちるのです

MMちゃんからこのストーリーを聞いたときは、「きゃ~、さすが恋愛体質の国おフランスぅ」とキャピキャピしてたのですが、実際に読んでみたら、そんな浮ついたものではなく(笑)、もっと純粋で素朴な思いでした(ドイツの強烈なヨーンじいちゃんとはまた違う感じ)。

人生の終焉を、どう迎えたいのか。自分が一番自然体でイキイキといられる場はどこなのか。誰とどう過ごしたいのか。残り少ない日々かもしれない人生、世間や親族の目を気にしている場合じゃあないんです。このおじいちゃんが一緒に過ごしたい相手というのが、魅力的でいいんだなあ。日常を丁寧に紡いでいってる人。かくありたい

選択肢のなかった戦時中のおじいちゃんの人生にちょっぴりしんみりもしますが、昔から変わらない島の丁寧な暮らしぶりがまぶしい、楽しい素敵な物語でした