『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

断捨離と読書のコツの共通点とは?

2018-01-24 12:40:33 | エッセイ

『モノが減ると、家事も減る 家事の断捨離』やましたひでこ著 大和書房

ここ数年、断捨離ブームですが、今日の一冊であるコチラの本に書かれていたことと、読書のコツに共通点を発見しました!
それは・・・流れを止めない、ってことです。


■ 家事のコツはためない、手間がかからない方法を選ぶ

私は家事が苦手。人が来ないと片付かない家です。いや、「でした」と過去形にしておこう、願いをこめて(笑)。

我が家を訪問してくれる人たちによると、我が家はモノがないそうなのですが、いやいやいやいや。あふれる、あふれる!ちょっと時間がたつと、床からテーブルからモノがニョキニョキって生えてくるんですよねえ(笑)。

だからか、私は断捨離好き。モノは持ちたくないし、捨てることにあまり躊躇がないほう。書かれていることの半分は、既に実践してることでした。帯に

「きちんとしなきゃ」に縛られていませんか?

とありましたが、もうちょっときちんとしなよー、ってくらい縛られていないので(笑)。

個人的に参考になったのは、「動線」を考えないっていうところと「まとめ家事」は実は大変というところ。
「まとめ家事」より「こまめ家事」、家事はそのつどそのつどが基本。例えば、洗い物は溜めない。即洗っていく。「動線」よりもアクション(手間)をカウントしてみると、カウント数の少ない方がいい。例えば、たまにしか使わない土鍋は、箱にしまって、棚にしまってとアクションを数えると8カウントもある!


■ 読書のコツも細切れ時間

これ、読書のコツと一緒!!!

いつ本読んでるの?とよく聞かれるんですけど、読む暇なんて基本ないんですよね。夜は子どもたちと一緒に寝落ちしちゃうし。

まとまった時間ゆっくり読みたいと思うから、ない。でも、細切れ時間はそこかしこにあるんです。5分、10分でもあったら、本を手に取ってみる。

えー、なんだか落ち着かない!と思われるかもしれませんが、児童書に関しては、10分あればかなり読み進められちゃうんです。そしたら、しめたもの。エンジンかかって、自らすき間時間、細切れ時間を取りに行くようになるから不思議です。

そして、もう一つアクションのこと。本読もうとするのに、別の部屋に本を取りに行ってという時点で、すでにアクションが増えてる。手に届く範囲に本を何冊も置いておくのがおすすめです。台所にも。リビングにも。そして、並行読み。

映画を見ると予告編見て、次々映画が見たくなりますよね。あれと一緒で、本も一冊読み終えると、次々読みたくなるんです。
読みたいと思ったら、流れを止めないこと。細い細い流れでも止めないこと。一度流れを止めると、気付いたら数か月本に触ってなかったなんてこと、私もざらにあります~!


読む暇ないと思ってる方、細切れ時間で流れを止めない、とりあえず手に取って読んでみる、やってみてくださいね♪


物語のティータイムと里子ちゃん

2017-12-23 21:30:45 | エッセイ


『物語のティータイム お菓子と暮らしとイギリスの児童文学』北野佐久子著 岩波書店

今日の一冊はコチラ。
里子ちゃんにクリスマスプレゼントに渡す予定で、渡せなかった一冊

今日は、毎年子どもたちも私も楽しみにしている、里子ちゃんの児童養護施設でのクリスマス会。が、今年はみな体調不良で断念しました。残念すぎる・・・。
ここの施設のクリスマス会は、本当にあったかくて、一人一人の成長に毎回ウルウルしちゃう。来年は高3で最後(入所できるのは高3まで)なので、来年こそは体調管理せねば!

さて、今回、里子ちゃんへの選書、かーなーり迷いました。
というのも、あれほど本の虫だった里子ちゃん、高校に入って以来全然本を読まなくなっていたからなんです。読まないというか、読む時間がない。とにかく、部活!部活!の青春!

それは、それでとっても眩しくて。そんなときに、本を差し出すのは野暮かな~、って。

確かに、本は里子ちゃんと私を結んでくれた共通言語。まだまだ、手渡したい本もいっぱいある。でも、心の距離が遠かったあの頃と比べて、随分と近くなってる今は、親が子どもに本を差し出すのと同じくらいの難しさがあるんです。よほど気をつけないと、価値観の押しつけになっちゃう。この時期読んでほしいなあ、という内容ほど、プレッシャーにもなりうるし。

で、なぜ上記の本を選んだか、というと里子ちゃんの興味が一緒に料理したり、お菓子を作ったりすることだからなんです
ホームステイの最終日には、毎回必ず、施設の子たちにお土産として渡すお菓子を、一緒に焼くんです。里子ちゃんの希望で。

お菓子焼くにも、その背景に物語があったら、楽しさが倍になる!
あ、この話知ってる、読んだ~。ってものもあれば、まだ読んでないってものは、ここに出てくるからいつか読もうと思うかもしれない

著者の北野佐久子さんは、立教大学学生時代に、ピーターラビットの研究では第一人者の吉田新一先生に出会われて、そこから児童文学にのめりこんでいったそう。児童文学をお菓子とハーブという切り口で、切り込んでいってくれるんだから、食いしん坊にはたまらない(笑)。
里子ちゃんと一緒に作れるといいな。

ちなみに、ステイ期間中に、里子ちゃんリクエストでよく作るレシピは、コチラから↓



里子ちゃんが教えてくれて、私も大好きになった上橋菜穂子さんの『精霊の守人』シリーズのレシピ本です。表紙の絵が好みじゃないから、里子ちゃんが教えてくれなければ、読まなかったかもしれない。

料理やお菓子作りも、背景に物語があれば、ぐーんと楽しくなります




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古書の適正価格って???

2017-05-05 21:30:31 | エッセイ


『物語のおやつ』松本侑子著 WAVE出版

実家近くのBOOKOFFに行ったら、良い児童書がお手頃価格でついつい手が伸びてしまいました。何冊か購入したのですが、そのうちの一冊がこちら。

ほぼ新品で、200円でしたの。

写真付きレシピとエッセイ。なかなかよいのですが・・・なぜこの表紙にしたかな~

古書ってね、安く手に入ればそりゃあ、嬉しいのですが、安すぎると、その本の価値が認められてないみたいで悲しくもなるんです

例えば、私が大好きな『スピリット島の少女』↓(紹介記事はコチラ



私は150円で買って、それでも悲しい思いしてたのに、その後4円で売り出され・・・。何人か買う人がいたのか今は447円~。

こちら、私が名作だと思っている『銀の馬車』↓(紹介記事はコチラ

こちらにおいては、1円ですってよ!おーーーい、もっとちゃんと評価して~(叫び)。

かと思えば、私が数百円で買ったこちら↓



今では在庫が希少になったのか、ぬわわわんと39,800円ですってよ!!!
ふざけるなーーーーー(失礼!)

絶版本が貴重なのは、とてもよく分かります。
でも、手に届かない価格ってなんか違うと思うのです。私、フツーの感覚なので。
物語はみんなのもの。コレクターアイテムにしてはいけないと思うんですよねえ。

安すぎるのも、高すぎるのも、おかしい。

例えば、古書なら1,000円均一とかどうなんだろ?どうですか?
自分が古書も扱うなら、1,000円均一文庫とかやりたいなあ。

アクセス数が少ないと思われるGW中のぼやきでした

『ツリーハウスをつくる愉しみ』

2016-05-12 10:19:22 | エッセイ


『ツリーハウスをつくる愉しみ』小林崇著 メディアファクトリー

活字に疲れるとパラパラめくりながら、空想広がるものが見たくなります。
ムカデ安静でここ数日めくっていたのが、『ツリーハウスをつくる愉しみ』。
もうね、帯に書かれている言葉からして素晴らしい

  森林のツリーハウスで、自然と対話する
  海辺のツリーハウスで、地球の広がりを知る
  都会のツリーハウスで、自分自身と向き合う

私が実現させたいものの一つがツリーハウス。昔長野までダグラス・ファー氏のツリーハウスが見たくてワークショップに参加したこともあったっけ。そういえば、ダグラス・ファー氏って今何してるんでしょう?2007年以降の情報がぱったりネット上では出てないのですが・・・。どなたかご存知ですか?ネットだけに頼るなってとこでしょうか?

余談ですが、大型本屋さんでこの本どこに分類されてると思います?
・・・なんと『工学』の棚!自然を求めてる人はこのあたりの棚はうろつかないから、これじゃあ出会えないよなあ。だから、私は私の大好きな本だけを集めた空間を作りたいと思っちゃいます。

ツリーハウスのもたらしてくれるワクワク感、そこに理由なんていらない。この本の著者でツリーハウスの第一人者小林氏は、子どもたちが幼稚園、小学校と一緒だったパパさんなのだけれど、恐れ多くて話しかけられない私

ツリーハウスって木を痛めないのか?そんな疑問もわきます。木にボトルで穴をあけたりするので、やっぱり痛めてないとは言えない。けどね、

自然を守るためには「入らない」「触らない」がいいという意見もあります。でも、それだけが自然を守る方法ではありません。実際に「入って」「触って」、自然を肌で感じてもらうほうが大切な場合もあるのです。・・・ツリーハウスは自然を感じるための装置なんです

と小林氏。宅地開発のためにブルドーザーが自然をなぎ倒していくのには目をつむるのに、子どもがたった一つ花を抜き取るだけで「あ~、抜いたらかわいそうよ!自然を大切に」と声をかけてくる通りすがりの人々。花を抜き、虫にいたずら(時には踏みつぶしたり)をする子どものほうが自然を感じたり、愛しんでいるのではないか、っていつも思います。自然がかわいそう、は頭で考えてることで感じてはいないでしょう?ツリーハウスに意味はいらない、と小林氏は言います。だけど、何かを“感じる”場所。

子どもから大人になるときに置き忘れてきた“心”が詰まったツリーハウス。社会で生きていくために、置き去りにしなければならなかった無邪気さを思い出す、そんな場所が今、求められているのかも

と。私にとって、児童文学を読むことも、まさに置き忘れてきた心を思い出すこと。ツリーハウスで緑に囲まれながら、ウトウトしたり児童文学を読んだり、そんなことをしたいのです。FreedomならぬTreedomという言葉を記す小林氏。『綱渡りの男』も思い出しました。
そこにあるのは、限りなく広がる自由なんだなあ

『物語の役割』 by 小川洋子

2016-03-31 21:07:14 | エッセイ


『物語の役割』小川洋子著 ちくまプリマ―新書


物語について小川洋子さんが語った講演を元にまとめたもので、とっても読みやすいです。

第一部:物語の役割
第二部:物語が生まれる現場
第三部:物語と私

という構成で、第三部には私も大好きな『トムは真夜中の庭で』をはじめとした児童文学も登場してきますよ~

小川洋子さんといえば『博士の愛した数式』しか読んだことはないけれど、あれは数字アレルギーの私に数字の世界の美しさを見せてくれたという点で衝撃的でした。無機的だと思っていた世界に、こんな美しい世界が広がっているのか、と。この『物語の役割』の中では、いかにして『博士の愛した数式』という物語が生まれたのかという、物語の生まれる裏側にも触れられていて興味深いです。

私が好きだなあと思う物語の作家さんはみな物語が「降りてきた」ようなことをいうんですよねえ。上橋菜穂子さんしかり。イメージがまず目に浮かんで、それからは何かに操られるかのように書かされて、時として自分が意図した方向とは違う結末になる、と。

作家も現実のなかにすでにあるけれども、言葉にされないために気づかれないでいる物語を見つけ出し、鉱石を掘り起こすようにスコップで一生懸命掘り出して、それに言葉を与えるのです。自分が考えついたわけではなく、実はすでにそこにあったのだ、という気持ちになったとき、本物の小説が書けるのではないかという気がしています

と小川洋子さんは述べていらっしゃるけれど、そういう物語が普遍性を持つんだと思います。

作家から何かを仕掛けるというのではなく、向こうからやってきたものを受け止めただけ、ストーリーは作家が考えるものではなくて、実は既にあって、それを逃さないようにキャッチするのが作家の役目である

と述べられてますが、テーマがありありと分かるもの、作者の意図が読め過ぎてしまうものってなんだか白けてしまうんですよねえ。これ書くと叩かれそうだし、私の思い違いかもしれないけれど・・・、例えばゲド戦記シリーズ4巻の『帰還』は前作3巻と比較してあれ?って思ったんです。作者の書きたいことが前に出過ぎてるって。ストーリーを拾いに行ったのではなくて、作者がしかけてるな、って。だから好きになれませんでした(はあ、ドキドキ!書いちゃった)。
あと、YA(ヤングアダルト)に分類される本もどこがいけないってわけじゃないけれど、どこか狙った感が透けて見えて自分にはしっくりこないことが多いのですが、作者がしかけることが多いからなのかも、と思い当たりました。

第三部の、幼い頃小川洋子さんがどう物語から影響を受けていたかのお話も興味深いです。
本を開くと本の世界へ行って、閉じるとまたこちらの世界へ戻ってこられる。本を開くというのは、あっちに行ったりこっちに行ったり自由に繰り返すことなんだ
って。当時個室は与えられてなかったそうですが、本箱の中に自分だけの部屋を持つことができた、って素敵じゃありませんか。そして、不器用でボタンがうまく留められない自分に対して、「ボタンちゃんとボタンホールちゃん」という物語を考え、ボタンがうまくはめられないのは、ボタンちゃんが冒険に出ているからで自分のせいではないという言い訳を思いついた、と。自分の内側に物語を据えることによって、外側の現実のありようを変化させた、と述べられていますが、今の子どもたちには物語が足りないといわれる意味が分かるような気がします。自殺された息子さんに対して柳田邦夫さんの作り出した物語も印象的でした。自分の中に物語があれば、人は色んなことを乗り越えていけるんですよね。