『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

やられたぁ

2016-06-29 21:41:15 | 幼年童話
   

『かいぞくオネション』山下明夫作 長新太絵 偕成社

ああああああああ、やられたぁ~。
まあるく濡れたシーツに羽毛布団。羽毛布団もかいっ。大物やってくれるなあ。怒ったって仕方ないし、怒っちゃいけないことなんだけれど、梅雨時にやられるとへこむんです・・・。しかも、こういうときに限って来客。

三男は2歳のときから既に大丈夫なのに、次男だけはなかなかオネショを卒業できない。一時期は大丈夫になってたのにまた戻ってしまった。長男からボコボコにされてることがかなり影響されてますが、これやっぱり「僕にも関心持って」という無意識からのメッセージなんだろうなあ。まともな会話ができない長男と違って、次男は大人の会話ができるし、情緒も安定してるから私もついつい頼っちゃうんです。いっぱい抱っこはするし、いっぱい甘えさせてるつもりだけれど、でも言ってみればラクな子なので、ついつい意識は大変な長男のほうに集中してしまう。河合隼雄氏の『家族関係を考える』(これ面白いです!)にも書かれていたけれど、真ん中っ子っておねしょする子が多いんですって。兄弟関係において忍耐せざるをえない立場が関係してるのかな~。

そんなオネショの終わらない次男に以前読んであげた本が上記の『かいぞくオネション』。
ナンセンスが男子にはツボらしくて(私には正直いまいちその面白さが理解できない)、ちょっとほっとできるのか、時々思い出したかのように「あのおねしょして海賊になる本借りてきて~」と言います。

毎日のようにおねしょをしてしまう男の子ヒロ。ある日窓がノックされ、「オネション様」と海のマンボウがヒロを迎えにくるのです。シーツのおねしょの跡がどくろマークに似ていることからヒロは海賊と間違われてしまったというわけ。海の魚たちとオネション様の冒険物語。

実は私自身は幼年童話自体があまり得意ではなくて。自分自身の幼少期振り返ると、幼年童話すっ飛ばして児童文学読んでた傾向にあったので思い入れが少ないのと、やっぱり大人が読むには物足りないところがありまして。しかも、この手のナンセンス童話も不得意{ときてる/namida/}。

でも、この本読んだとき次男がほっとした顔してクスクス笑ってるのを見ると、ああ読んでよかったなあ、って。
全国のオネション様たちの強い味方の本です

弱虫さんの味方といえば

2016-06-28 21:13:05 | 絵本
 

『ラチとらいおん』(世界傑作絵本シリーズ)マーク・ベロニカ作・絵 とくながやすもと訳 福音館書店

今朝は2年生の読み聞かせ。今回は次男の強いリクエストにより以前ご紹介した『かさどろぼう』と『ラチとらいおん』を読みました~

『かさどろぼう』のほうは意外や意外。うちの子以外知ってる子がいませんでした~。今日は珍しく落ち着きのない雰囲気でガヤガヤから始まったけれど、数ページ読み進めれば気づけばみんな食い入るように見ているし、どろぼうの犯人当てっこできゃあきゃあ楽しそう。犯人はみなすんなり当てちゃいましたね~。さすが。今朝は雨で、自分たちも傘をさしてきたので余計に嬉しかったようです

『ラチとらいおん』のほうは知ってる子が5~6人いたかな。サイズの小さな絵本なので読み聞かせには向かないかな、と思っていたのですが、次男がどうしても!と何度もせがむのでやってみました。結果、小さいから余計に集中してくれたような気がします

『ラチとらいおん』は世界一こわがりな男の子のお話。ハンガリーの絵本です♪
犬がいれば逃げる、暗い部屋には行けない、おまけに友だちと話すのもこわいというびくびくしている男の子。そんなラチはある強そうなライオンの絵に憧れていたのですが、実際に自分の元に来たのは小さな赤いライオン。その小ささに笑い転げるラチでしたが、小さくったって強い赤いライオン。その日から体操をしたり、ラチとらいおんの訓練が始まります。そして、どんどん勇気が出てくるラチはあるとき意地悪な“のっぽ”と呼ばれる男の子からついにボールを取り返すのですが、そのときポケットに入ってたのはライオンではなくて・・・赤いりんごでした。
そう、ライオンは次の弱虫の子を助けるために行っちゃったんですね。

ポケットに入るサイズの小さな赤いライオンがうちにもいてくれたらなあ、って幼稚園当時一人でトイレに行けない怖がりの次男のために作りましたよ。こちらを↓



市販品もあるようですが、手作りです。全日本不器用連盟所属の私、がんばった!次男だけじゃ長男が焼きもち焼くので二つ作ったところ、さびしがり屋の長男のほうが心の支えにいまだにしてくれていて。一人で先にお布団に入るときは枕の横に赤いライオンが一緒に寝ています。ぷぷぷ、日中はあんなに暴言吐いてる子がね

こだわりポイントはシッポ!絵の中でラチがシッポを綱のように引っ張っていたので、太くてちぎれそうもない紐を選び、フェルトの内側には羊毛ボールを入れて、絶体に抜け出ないようにしました。だってね、この長~いシッポ、男子だったら絶対ぶんぶん振り回したくなるでしょ(笑)?次男のリクエストで読み聞かせにも持って行ったら、案の定、一番前の席の子がぶんぶん、ぶんぶん、どこまでも振り回す~(笑)。女の子でしたけどね。荒い扱いは別に男子とは限りませんでした

素直な子どもたちから、逆に読み手の私のほうが元気がもらえる読み聞かせ。朝からバタバタだけれど、幸せなひとときでした

奇跡の猫ちゃん!

2016-06-27 06:00:38 | 絵本


うちの近所にですね、この通りの守護神的な野良猫ちゃんがいたんです。名前はトラちゃん。
もうヨボヨボで病気持ちで、正直子どもが触ったら「手洗ってね!」って言いたくなるような猫
でも、この通りに住人みんなから愛されていて、人間の言葉が分かると言われていました。エサに不自由したことはないし、病気になれば誰かしらが自腹を切って動物病院へ連れて行ってくれる、そんな幸せな猫ちゃんでした。実家で隣の猫にずーっと迷惑をかけられていたこともあって、実は私は猫派ではないんです。でも、トラちゃんだけはなんか特別。

次男なんて幼稚園のころ、「大きくなったらトラちゃんと結婚することにした!」なんて、言ってたくらい。友だちのところへ行くと言ったっきり次男が見つからなくて探し回ったときは、よそのうちのお庭に勝手に入って(←)一時間以上ずっとトラちゃんと過ごしてたなんてこともあったなあ

そんなトラちゃんが約1か月間行方不明だったんです
ヨボヨボになってほとんど動けなくなったトラちゃんの居場所だったアパートが取り壊されることになって、トラちゃんにいつもエサをあげてくれていた人が引っ越し先のおうちへ連れて行ったんですね、そしたら逃げちゃって・・・。こちらに戻ってくるにはヨボヨボ猫には遠すぎる距離なので、みな心配。

猫好きのうちのお隣さんはみんなにメールして捜索願いだしたり、ポスター張ったり・・・でも梨のつぶて。あきらめて、昨日ポスターをはがしに行ったんです。でも、知り合いのご好意でたった一か所だけ張ったままにしておいたところがあったら、ナント!!!

今朝そのポスターを見た方からが・・・!!!奇跡的にトラちゃんが見つかったのです
もう朝から大騒ぎ!!!
おそらくこの25日間何も食べてないと思われるトラちゃんは衰弱しきっていて、もうカラスが狙っていたそうです。お隣さんが速攻動物病院へ連れて行くと「今日死んでもおかしくない状態」と言われたそう。まさにギリギリ。奇跡です。たった一か所残しておいたポスターも奇跡だし、病院から帰宅したお隣さんが食べたヨーグルトのフタの裏側に書かれていて言葉にも鳥肌が立ちました。書かれていたのは「顔を見れて、ほっとしたよ」だったんです!わ~ん

いや~、すごい!トラちゃんの生命力すごい。野良猫だったからヨボヨボでも生き延びれた。トラちゃんの生命力の強さを見ると『おき去りにされた猫』を思い出します。ただ、違いはトラちゃんのほうは近所中から愛されているってこと。正直、小汚い猫です。ヨボヨボです。でも、存在しているだけでいい、ってことを教えてくれる猫なんです。おかえりなさい、トラちゃん

トラちゃんとは違うけれど、奇跡の猫といえばこの絵本が面白い↓



『ネコとクラリネットふき』岡田淳 作・絵 クレヨンハウス


猫がテーマだったときの図書館とともだち・鎌倉のおはなし飛行船で紹介されていた絵本。楽しくてホッコリする絵本です。ある日家のドアの前にネコがいるのですが、ミルクをあげても飲まないんです。ところが、ぼくがクラリネットを吹くとネコはどんどん大きくなる。仕事に行ってる間も録音されたクラリネットを聞いてどんどんどんどん大きくなっていく。もう驚きだし、純粋にワクワクします!背もたれによかったネコはベッドにちょうどよくなり、ついには大きすぎて家を壊してしまいます。そこで、ぼくは引っ越しの荷物も自分も全部ネコの背中に乗せて演奏の旅に出発!その間もネコはもっともっと大きくなって、空をふわふわ飛んだり、時には観客もはしごをのぼってネコの背中で演奏を聞いたり。大人も子どもも思わず「いいなあ!」って憧れでため息の出る絵本です

五月蠅読める?『兎の眼』

2016-06-26 06:29:23 | 日本文学



『兎の眼』灰谷健次郎著 理論社


五月蠅・・・今の子は読める子少ないんじゃないでしょうか

谷戸にある家の周りには時々うっとりするくらいきれいな蠅がいてびっくりすることがあります。思わず眺めちゃう。背中のところが光沢のあるブルーで輝いているの。けれど、ほーんと蠅自体を見なくなったなあ。生態系が変化してるんだな、って身に沁みます。

以前養老孟司さんもお話の中でおっしゃっていたけれど(このときです)、旧暦の五月(つまり今の六月)はブンブン蠅でいっぱいだったから、「五月蠅」と書いて「うるさい」と読ませていた、ところが今の人にはこの感覚が分からない、と。・・・はい、分かりません
自然がいっぱい残ってるという鎌倉でも養老さんの小さい頃とはもう全然違うんだとか。確かに、蠅はあまり見ません。6月になってもね。

そんな蠅、個人的にはあまり歓迎したくないお客さんではあるのだけれど、それでも蠅に対して少し嫌悪感が減ったのはあきらかにこの物語のおかげ。
初めて読んだのは小学4年生のときでした。いやあ、衝撃的でした。一つは被差別のこと。全く知らずに生きてきたので。もう一つは蠅がここまで面白いんだってこと、に。

≪『兎の眼』あらすじ≫
大学を出たばかりの新任教師・小谷芙美先生が受け持ったのは、学校では一言も口をきこうとしない一年生・鉄三。決して心を開かない鉄三に打ちのめされる小谷先生だったが、鉄三の祖父・バクじいさんや同僚の「教員ヤクザ」足立先生、そして学校の子どもたちとのふれ合いの中で、苦しみながらも鉄三と向き合おうと決意する。そして小谷先生は次第に、鉄三の中に隠された可能性の豊かさに気付いていくのだった…。学校と家庭の荒廃が叫ばれる現在、真の教育の意味を改めて問いかける。すべての人の魂に、生涯消えない圧倒的な感動を刻みつける、灰谷健次郎の代表作。(「BOOK]データベースよりそのまま転載)



大人になってから、この文学に色々な批判があることを知りました。社会派だと余計に好き嫌いが分かれるのかな。兵庫出身の人が、灰谷文学は苦手で手に取る気がしない。場所柄気持ちが分かり過ぎて読めない、近すぎて読めない、と言っていました。批判を読むと、ナルホドと思うところもいっぱい。『灰谷文学の是非を問う』というコチラのサイト、興味深いです。
でも、私自身のことを思い返してみるとすごく感動して何度も読んでいました。まず、被差別のことを全く知らなかった自分にショックで、知ろうと思うきっかけになりました。そして、自分の目にはどうしようもないと思える子(鉄三)でも、ちゃんと知りあってみれば実は魅力的なんだということがあるんだなあ、って。自分の目に見えてることだけがすべてじゃない、ってことをこの物語から学んだ気がします。

ところで、批判の中に小谷先生が夫に対しては優しくない(夫が悪く描かれ過ぎている)というものがありますが、これに関しては個人的にはそりゃそうでしょー、って思います。一番大事なところ分かってくれない旦那さんなんて冷めますよ、正直。切り捨てたくなる気持ち、分かるわ~。聖母じゃないんだから、同じレベルじゃなければ一緒にいるのキツイと思います。分かってくれない旦那さんから卒業して、次のステップに行きたい小谷先生の気持ち、よーく分かるので、この批判には賛同しかねるかな

多分ね、大人になってから読めば私も色々モノ申したくなったのかもしれません。でも、小学生のころ純粋に感動したという記憶が強すぎて、どんな批判も「考えすぎじゃないかな~」なんて思ってしまうのです。これ読んで蠅の奥深さにも開眼したし。あんまり大人たち、文句つけないでほしいな・・・なんて思います。

ひとつのきっかけとなる物語があってもいいと思う。必ずしも完璧でなくても、その物語に批判、矛盾を感じたのならば、なぜ自分がそう感じたのを“個人的に”掘り下げて行けばいいのかな。な~んて自分は『ワンダーWonder』で感動した人に水をさすようなこと書いておいて、思う現金な私なのでした

『ややっ、ひらめいた!奇想天外発明百科』

2016-06-23 21:04:19 | 絵本


『ややっ、ひらめいた!奇想天外発明百科』 マウゴジャタ・ミチャルスカ文 
アレクサンドラ・ミジェリンスカ&ダニエル・ミジェリンスキ 絵 阿部優子訳 徳間書店


今日は息抜き的な百科をご紹介。馴染みがなくて、とっても打ちにくい名前だな~、と思っていたらポーランドの方なんですね
とにかく字を読むのが嫌い、読み聞かせは好きだけれど、基本ストーリーを追うものは苦手という国語力の弱い三ねんねたろうの長男のために購入。学校を休んでた日に暇つぶし用、ちょっとは好奇心刺激になるかなあ、と

絵を描いたのは『マップス』で人気を博したミジェリンスカ夫妻。ん?ミジェリンスカ、ミジェリンスキって苗字にも男性名詞、女性名詞があるの???どなたか、ポーランド語分かる方教えてください

こちらの百科は漫画的で、説明も分かりやすく、肩の力を抜いて楽しんでページをめくれる感じ。お勉強的でなく堅苦しくないから、お勉強が苦手な、ひょっとして天才肌!?奇想天外な我が家の長男にぴったり
内容は紀元1世紀~2013年の発明まで多岐に渡ります。それぞれ発明説明のページの次のページには実際に使用している使用者が吹きだしで感想を述べていたり、発明当時の周りの人の反応が描かれていたり。ユーモアのある会話が楽しくて、とっても親近感がわきます!

それにしても、ほっんとにくだらない素朴な発明を大真面目にしていたり、発明する人のひらめきってやっぱり普通じゃない。天才のひらめきは凡人には理解できないな~。
古代の神殿の自動ドアの仕組みなんかは水と熱を利用していて、感心ひとしきりなのですが、音をさえぎる分厚い素材のヘルメットに酸素ボンベから酸素を送る「集中力アップヘルメット」(1925年)なんて思わず“アホだ・・・”と思ってしまいましたよ。いや~、でもその大真面目なくだらなさ(失礼)がブラボーなのですよ。実現しなかったアイディアも載っているので、ほーんと発明家は試行錯誤とにかく色々作ってたんだなあって。うちの子たちは「キャンディ色わけ機」に一番興奮してましたが、多分キャンディーいっぱいの絵柄に惹かれたかと。冷めてる女子からは白い目で見られそうな発明もややありですが、男子たちはワクワクしてページをめくるに違いありません。贈り物にも楽しい一冊かも♪