『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

魔女といえば・・・

2016-10-31 21:10:25 | ドイツ文学


週末はハロウィン三昧。写真はこれだとなんだかよく分からないかもしれませんが、次男が考えた、自然を活かしたハロウィンの飾りつけだそうです(笑)。カラスウリをジャックオーランタンに見立ててます
私こういうイベント大の大の苦手なんです。けど、仲良しご近所さんたちとの気を遣わなくていいハロウィンは好き~。久々に二日酔いになるくらい楽しみました♪集まった中には何人かWikipediaに掲載されるくらい有名な方々もいらっしゃるのですが、子ども通すとフラットな仲(ただの飲み友だち)になれる。自分だけでは出会わなかった世界を子どもは運んできてくれて、ありがたいな~、って思います。

さて、ハロウィンといえば、魔女の格好してる子が多いですね~(一番はプリンセスですけど。単なるコスプレイベント化してる点も苦手な理由・・・)。魔女ものの物語はたくさんありますが、まずぱっと頭に浮かんだのが、小学校2,3年のころ大好きだったコチラ↓



『小さい魔女』 オトフリート・プロイスラー作 大塚勇三訳 ウィニー・ガイラー画 学習研究社

≪『小さい魔女』あらすじ≫
127歳のしんまいの魔女がいました。この魔女は、気のいい魔女で、よい魔女になろうと修業にはげみ、あの手この手の魔法を使います。でも失敗ばかり…。無邪気でそそっかしい小さい魔女の、明るくてユーモラスな物語。(BOOKデータベースよりそもまま転載)


え、学研なんだ!?岩波か福音館っぽいけれど、学研出版ということに今気づいてちょっと驚き。あー、でもやっぱり絶版。私の中ではこ~んなにもメジャーな物語なのに!
プロイスラーは『おおどろぼうホッツェンプロッツ』や『クラバート』を書いた人。大人が読んでうならされるのは『クラバート』なのだけれど、『小さい魔女』昔読んで楽しかったという思い出はあせませんね~。とにかく、楽しかった!という記憶だったので、大人になって読み返し、ほうほうこんな感じだったか、と。すごく美味しい焼き栗が出てきたとい強烈な印象があったのですが、読み返してみてビックリ。焼き栗の美味しさが特に力を入れて書かれているわけではなく、ただ「外で焼き栗売ってて寒そうな小男に、栗をつかむ指がやけどをせず、足の指が凍えないように魔法をかける」という内容だったんですね。いかに自分が食いしん坊だったか。子どものころって、こういうちょっと書かれた一文や出てくるモノに、限りなく惹かれたりワクワクするんですよね

小さい魔女が意地悪な年上魔女たちをやっつけるところは痛快。最後は小さい魔女と一緒になって、「ワルプルギスのよーる!」と叫びたくなります


辛口感想『夜明けの少年』

2016-10-28 21:26:45 | アメリカ文学


『夜明けの少年』 ローラ・アダムズ・アーマー著 和田穹男 アキコ・フリッド共訳

≪『夜明けの少年』あらすじ≫
ナバホの少年シュツィリの心には啓示のように歌が湧いてくる。周囲の大人たちは、みな賢く、やさしいが、美への憧れは誰と分かち合えばいいのだろう。少年は、その人を探すために、はるかな西の海へと、ひとり旅立った。(MARCデータベースよりそのまま転載)

ニューベリー賞受賞作。う~ん、個人的にはイマイチでした。立て続けに先住民族テーマのものを読み、食傷気味というのもあるかもしれませんが。子ども時代に読んでいたら、純粋に感銘を受けていた・・・かもしれない。それとも読む順番が違ったら、また違った感想を持ったのかしら?

作者は白人女性です。文化をや生活習慣の純粋性を保つために保守的・排他的にならざるをえないナバホの人たちから信頼を得、外部の人たちに見せるのはタブーとされる砂絵も見せてもらえるほどまでに信頼されます。ナバホの人たちはこの物語をどう読んだんでしょう?そこが知りたい。

なんだかすごく美化されてしまっているなあ、と感じちゃったんですよね。特に主人公の男の子と交易所を営む白人男性。清らか過ぎて、逆に大丈夫!?って思っちゃう私はかなり心が黒い?同じく選ばれた類でも、『スピリット島の少女』のオマーカヤズなんかは、内面を見ると戸惑いや人間くささがあって、とっても好感&親近感が持てたんだけどな。この主人公シュツィリは純粋無垢すぎて、なんだか嘘くさく感じちゃう

なんだろうなあ・・・・?『イシ 二つの世界に生きたインディアンの物語』も、作者のイシへのものすごいリスペクトが前提にあって、人によっては美化されてると感じるかもしれません。でも、『夜明けの少年』に感じたようなフワフワ地に足がついていないような感じは、イシにはなかったんだなあ。

美への憧れから、あふれだす神聖な歌もどれもいいと思わなかったし。うん、私の感性が鈍いのかも(もしかして訳が下手?という可能性もなきにしもあらず・・・ブツブツと小さな声で言ってみる。)
ナバホの生き方の美しさを、手放しで称賛しているにも関わらず、白人作者の傲慢さをどこか感じてしまうのはなぜなんだろう?インディアンになりたい白人を、インディアンたちはWannabeと読んで敬遠したけれど、そんな匂いを感じてしまう。でも、作者は彼らから信頼されてたというしなあ。

読んだ方の感想聞いてみたいです。



第6回児童文学ピクニック

2016-10-27 21:10:00 | 児童文学cafe&picnic


昨日は第6回児童文学ピクニック。テーマは『先住民族』で、写真は木登りする現代の野人(笑)。青空自主保育の子たちって、ある意味先住民族みたいよね、なんて話も。秋晴れのポカポカ陽気に恵まれ、まさにピクニック日和でした!今回も美味しかった~&楽しかった~

持ち寄りのご馳走は、かぼちゃにサツマイモ秋の味覚が並びます。里いもグラタンも美味しかったし、手作りトルティーヤにくるくる豆ペーストやら具を巻き込む中米料理も美味しかったな~。デザートもどんぐりクッキー(先住民ならぬ縄文!?)、かぼちゃパウンド、アップルシナモンケーキと充実。あ~、幸せ♪

と、ついつい食べ物の話が先に来てしまうのですが、ブックトークも楽しかったなあ。今回は、先住民族求めて、アジア、中米などを放浪していたAさんが初参加してくれて、本そっちのけでそちらの話のほうが聞きたい私。体験談を生で聞けるってほーんと貴重。時間が全然足りませんでした!

先住民族をテーマにした本ってあるの?と思いましたが、意外とありましたね。彼らの世界観は実に奥が深い。森羅万象に神が宿るという意識がいまだ日本人の無意識下にはある、と個人的には思っているので、彼らの世界観って実は日本人にはとても受け入れやすいものだと思うんです。大人が児童文学を読む面白さは、純粋に物語を味わうだけでなく、そこを切り口に色々考えたり、その視点から世界を見つめ直したり、興味の幅を発展させられることにあるんですよね。本はきっかけ。窓口。話すたびに、新しい発見があって、やっぱり大人にだって、いや大人に“こそ”児童文学、っていう思いを新たにするのでした

『エミリーときんのどんぐり』

2016-10-25 21:27:35 | 絵本


『エミリーときんのどんぐり』イアン・ベック作・絵 ささやまゆうこ訳 徳間書店


今朝は2年生の読み聞かせ。毎回楽しみにしているんですけど、読み聞かせボランティアさんの数が多くて、なかなか順番が回って来ないんです

本日の1冊目はこちらの『エミリーときんのどんぐり』。絵本ながら、迫力のある冒険物語です
エミリーと弟のジャックのお気に入りは庭のかしの木。この木を海賊船に見立てていつも遊んでいたんですね。ところが、ある日・・・。目を覚ますと、なんと窓の外は海!!!そして、そこには本物の海賊船が。もう、これだけでワックワクです

エミリーとジャックは地平線の向こうに見える光に向かっていくと、岩の上にあったのは金色の光を放つ金のどんぐり。ところが、嵐に巻き込まれてしまいます。危機一髪!なんとか、家にたどりつき、翌日目を覚ますと・・・かしの木は倒れていました。エミリーは金のどんぐりをその場所に埋めて、また大きなかしの木に育つのを待つことにするのです。

夢?でも、金のどんぐりを手に握っていたし・・・。夢(空想)なのか現実だったのか、あいまいな点も魅力的。
『エレンのりんごの木』『だいすきなマロニエの木』同様、木をめぐる死と再生をテーマとした絵本ですが、ファンタジー要素も強く、ダイナミックで、毎年秋になると読みたくなるんです

もう一冊目はこちら↓



『おによりつよいおれまーい』(サトワヌ島民話)土方久功再話・絵 福音館書店


読み始める前に「このクラスで一番強いのは誰?」と聞いて、かなり盛り上がったこともあって、子どもたちの感情移入の仕方がすごかった!
おれまーいという男の子はとにかく強い。強すぎて恐れた島民たちは、なんとかおれまーいを殺そうと色々企てるんですね。これがことごとく失敗。ついには、鬼が住むという遠くの島におれまーいを置いてきぼりにしてしまうのです。ところが、おにより強いおれまーい。もう、参りました~、の一言です。鬼も日本の鬼とはずいぶんイメージが違くて、そんなところも興味深かったです。

あ~、子どもたち、今日もかわいかったな。読み聞かせって、読むほうもホント幸せな時間です


静かなる感動 『イシ』

2016-10-22 06:37:49 | アメリカ文学


『イシ 二つの世界に生きたインディアンの物語』 シオドーラ・クローバー作 ルース・ロビンズ画
中野好天・中村妙子共訳 岩波書店


名著と言われているし、これは読んでおかないとなあ・・・と、どちらかというと課題本的な感覚で消極的に手に取った本。結果・・・読んで、よかったぁ(涙)!!!
表紙で損してる(?)し、内容もわりと淡々としているので、本好きの子向きに限定されるかも。でもね、例えこれが実話じゃなくて物語だったとしてもいいなあ、と思う。なんていうのか、シンプルな表現の中に美しさがあるというか、見事に自然と“共に”ある暮らしに感銘を受けたというか。文化って一体なんだろう?こういうネイティブな人たちの暮らしのほうが文化が高いというのではないか、と思ってしまう。表面的な“知識”は自然界では通用しない。身についた“知恵”が必要なの。白人とヤヒ族、一体どちらが野蛮人なのか、そんなことを思いました。

作者は『ゲド戦記』の作者ル・グウィンのお母さんで、イシと共に過ごした人類学者の夫が残した記録をもとに書き上げたもの。原題は“ISHI, LAST OF HIS TRIBE”とあるように、アメリカ・カリフォルニア州にいたヤヒ族最後の生き残り、イシの生涯を描いています。原書はこんな感じ↓



イシが白人たちに見つかったのは、1911年、50歳前後のころ。それまでは、白人に見つからないように、いわば潜伏生活をしていたんですね。自由に歩けない、自分たちの足跡を完璧に消しながら移動しなければいけない、なんと息の詰まる!!!・・・と、傍から見ると思うのですが、イシたちは大好きな家族に囲まれ、そんな中でも雰囲気はとてもあたたかいのに驚き。食べものを獲るのにも苦労しているのに、不思議と悲壮感はなく、逆に豊かささえ感じてしまうのです。そう、自然界の中の完璧な“環”の一部。body, mind, spiritの三角形のバランスが完璧なのです

周りの人がみな亡くなってしまい、一人ぼっちになったイシはいつの間にか中年になっており、ついに白人に捕まってしまいます。そして、好奇の目にさらされはするけれど、出会った保安官が良い人で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の人類学者たちに紹介され、そのキャンパス内の博物館にイシは住むことになります。正直、全然ワクワクしない生活だっただろうなあ。でも、白人の心から信頼できる友人もでき、彼らに誠実であることにイシは生きる意味を見出していた気がする。親友ともいえる人類学者のマジャパ(これがル・グウィンのお父さん?)と診察してくれる医者の息子マリワルと共に、イシは後に原点に戻る旅をするのですが、イシの世界観を心からリスペクトするマジャパとマリワルにも心打たれました。

過去と向き合わなければ前に進めない。だから、きっとイシは元の世界への旅をしたんだと思います。でも、そこに残るのは過去の亡霊たち。イシは過去へ回帰したいとは思わないんですね。自分の今は、どんなに輝いていなくても今の生活にあり、そこに自分の使命がある。こうして、イシは博物館でヤヒ族の文化を残すことに貢献するんです。そのイシの決意を知ったとき、胸がぎゅっとしめつけられました。

とても尊い魂に出会えて、背筋が伸びる思い。静かに・・・けれど、深く感動しました。