
『ホイッパーウィル川の伝説』(2016年)キャシー・アッペルト&アリスン・マギー共著
吉井知代子訳 あすなろ書房
MAYBE A FOX,2016
今年度2017年の中学生の部の課題図書。
課題図書は毎年、う~ん、となってしまうのですが、これが選ばれたことはちょっと驚き

【『ホイッパーウィル川の伝説』あらすじ】
ヴァーモントの神秘の森でくりひろげられるスピリチュアル・ファンタジー。
12歳の姉のシルヴィは、走るのが大好きな学校一のランナー、11歳のジュールズは、石に惹かれる「石ガール」。幼い頃に母親を発作で亡くした仲良し姉妹には、パパ憲法と呼ばれるパパとの約束があった。そのうちの一つが、奈落の淵には近づかないこと。でも、その危険な場所は、願いごとをかねてくれるかもしれない〈願い石〉を投げ込む特別な場所でもあって・・・。
ある雪の朝、ジュールズの目の前から森へと走り出したシルヴィは、そのまま姿を消してしまいます。奈落の淵の前で、不穏な足跡だけをのこして……。シルヴィの秘密とは?ふしぎな力を持つキツネ「セナ」の物語と、ジュールズの物語が交差し、やがて一つになる幻想的な物語。
表紙絵に惹かれたのと、作家二人による合作のスピリチュアルファンタジー、とちょっと異色なこともあって、前々から興味はあった物語。日本版の表紙イラストは伊藤彰剛さんによるもので、物語の世界観がよく現れてると思う


とてもとても悲しくて切ないお話です。でも、お涙頂戴をねらってるわけでもないところがいい。
‟どうして?なぜ!?”という激しさや怒りもあるけれど、それよりも印象に残るのは、心の奥底にズンと沈み込むような静かな悲しみ。
でもね、大自然そして人智を超えた大きな存在に包み込まれているせいか、凛とした美しさと透明感がある

エルクとピューマの関係ももっと描いてほしかった、という思いもありますが、想像の余地を残しておいてくれたのかもしれません。
身近な人の死は、遅かれ早かれだれにでも訪れるもの。そして、悲しみも逃れられないもの。亡くなった人の魂が時には、そばに寄り添っていてくれることを知ることは、大きな慰めになるのではないでしょうか。
ぜひ、一度読んでおきたい一冊です

しかし、なあ

これで読書感想文はキツいなあ

だからね、ネットで『ホイッパーウィル川の伝説』感想文攻略、とか感想文書き方のコツ、っていうサイト見つけるたび、げんなり

森の感じや、以前と同じではいられない帰還兵の複雑な心境、『この森で、天使はバスを降りた』(1996年)という映画をちょっと思い出しました。この映画もおすすめです!↓
